騒動
街の教会でシスターの仕事をしていた私は、顔なじみになった人たちから話を聞いていた。はじめは私が伯爵の娘だと分かると恐縮していた人たちも、もともとここで知り合ったこともあって、だんだんと打ち解けてきた。最近では、新しく生まれた赤ちゃんや、結婚したお相手まで紹介されるほどだ。
話によると、バルミラ伯爵領の生活水準はかなり高くなっているみたいだった。
以前のようにボロを着て、食べる物にも困っている人は随分と少なくなった。働けば十分に食べていける環境が整いつつあり、皆の瞳には力が宿っていた。
「しかし、孤児院まで作られるとは」初老の男が首をひねりながら言った。「最近では物乞いをするものまで減っていて、本当に暮らしやすくなりました。ですが、そのようなことをしていては、いくらお金があっても足りないでしょう?」
彼は近くの村の村長をしている。責任ある立場に長年ついているだけあって、心配ごとも的を射ていた。
「それが大丈夫なんです。バルミラン・グラスが諸外国にも好調なんですよ。貴族の間では、夜会の際にどれほどのバルミラン・グラスを出すかでステータスが決まると言われるほどなのです」
「ほお。それほどになっているのですか」
以前から、バルミラ領で生産されるガラス製品は、ブランド物として富裕層に好まれていた。けれど、政策によって職人たちの立場が大きく向上したことによって、さらに芸術性の高い作品が数多く作られるようになり、需要が増したのだった。
「ですから、心配はしなくていいのですよ。孤児院で育った子供たちが、技術や知識を身に着けて当家を支えてくれれば、それは何よりも代え難い財産になるのですから」
「お嬢様はそこまでお考えになっているのですね」
村長は深くうなずき、感心したようだった。
領民自体の生活が豊かになり、人材がそろってくれば、税率自体は少なくてもお金は入ってくる。
多くの貴族は、自分たちの生活を豊かにするために贅沢にお金を使うばかりだが、それでは出費が増えるばかりで豊かにはならない。
「本当にマリア様には感謝だな」
村長たちがそう言って深々と頭を下げてくれた。私がそれに微笑で答えているとき。
「ここにマリア・バルミラは居るか!」
突然、教会の入り口の方で私を呼ぶ声がした。
皆何事かと振り返る。
神父様が話に出向いたようだが、侵入者は高圧的な態度で叫び続けている。
「アリア・バルミラには魔女の嫌疑がかけられている。庇い立てするなら、お前も拘束するぞ。すぐに連れてこい」
ただならぬ事態のようだ。
私はすぐに治療室から出ると、声高に叫んでいる男たちに言った。
「私がマリア・バルミラです。そのように大きな声を出しては病の者に差し障ります。私は逃げも隠れもいたしませんので、お静かにお願いいたします」
実際、周囲の人たちは武装した男たちの出現に怯えているようだった。
「ほお。お前が魔女か」
ぶしつけな視線で私を見ていた男は、周りの兵士たちに命令を下す。
「この女を拘束しろ! 魔女の嫌疑によってアリア・バルミラを連行する!」
その場で押さえつけられ、縄をかけられた私は、突然やってきた神殿警察によって逮捕されることになった。
「……お嬢様」
不安そうに見つめる人々に、私は笑顔を浮かべる。
「大丈夫です。魔女の嫌疑などすぐに晴れますから。安心して待っていてください」
私は男たちに乱暴に引かれながら、教会を後にすることになった。
面白いなと思ってくださった方、更新頑張ってと応援してくださる方
①ブックマーク
②評価の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」
していただけますと、スライム並みに溶けやすいモチベが保てます(*´ロ`*)




