決意
「俺は見たことが信じられなかったよ。でも、本当にあいつは死んでしまったし。その後、生き返ったんだ」
男が話し終わると、皆一応に頷いた。
「戦いに加わった奴の間じゃ、その話でもちきりよ」
「でも」と、おかみさんが訊く。「そんなことができるなんて、そのお嬢様は何もんなんだろうね」
「俺は難しいことは分かんねえが、……お嬢様は大したお人だよ」
皆が静かにうなずく中、一人の若者が手を上げていた。
「俺は、戦姫様に恩返しがしてえ」
彼は上げている手と反対。その肘から下がなかった。
「戦姫様は腕を落とされて虫の息だった俺を、こうして元気にしてくださった」
「お前さん、戦場から帰ったばっかりなのに、もうそんなにきれいに治ったのかい?」
おかみさんが驚いたように、彼の腕の先は、きれいに肉が盛り上がり痛々しい傷跡は無くなっている。
「腫れも膿もないし、痛みさえない。でも、戦姫様に受けた御恩はこれだけじゃないんだ」
彼は懐から金の入った袋と、一枚の手紙をテーブルに出した。
「これは、腕を亡くした俺が、仕事に困るだろうと持たせてくれたものだ。生活の足しにしろと金を持たせてくれた。しかも、仕事を見つけられなかったら、自分の屋敷を尋ねるように手紙まで持たせてくれたんだ。これがあれば必ず自分に会えるからと言って」
「どうしてそこまで」
「分からねえ。自分とこの領民でもない俺にどうしてここまでしてくれるのかは。……でも、俺は本当に嬉しかったんだ。腕がなくなって、痛くて、苦しくて。もう生きて帰っても家族に厄介をかけてしまうから、一層のことここで死んだ方がいいんじゃねえかと思ったよ。でも、戦姫様のおかげで生きていく希望を持つことができたんだ。安心……できたんだ」
男は目の前のエールを一気に飲み干すと言った。
「俺はバルミラ伯爵領に行って、戦姫様のためになにかしてえ。片腕のない俺でも、何かお役に立てることがあると思う」
決意に満ちた男の瞳は、どこか穏やかなものだった。
バルミラ伯爵領の兵士たちが立ち上がり、その男を囲む。
「もちろん歓迎だ! 一緒に戦った俺たちに任せろ。俺たちもお嬢様のために何かしてえ。お嬢様に一生ついて行くんだ!」
男たちの歓声に、再び酒場は盛り上がっていく。魔族を退けた戦勝の夜。一時の平和を誰もが楽しんでいた。
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