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聖女と呼ばれたいので、世界最強の魔王であることを隠して生きていきます  作者: 泣き虫ピエロ
魔王であることは内緒です
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酒場

 一月後、双方に多くの死者を出したスカルド王国の戦闘は、大きな爪痕を残して終結した。人間側にとっては、戦闘に参加したかなりの兵を失っただけでなく、勇者が重傷を負うという痛手を被った。


 しかし、占領されていた拠点を取り返し、『魔王』にも一撃を加えて退けたことは大きかった。勇者がいれば魔王を撃退できるという希望を人間は持つことができたからだ。


 そして、大規模な戦闘が終わったことは、しばしの安息がやってきたことも意味している。



 王都では戦勝パーティと賞与の授与が行われていた。


「第一等褒賞授与……中央軍司令官 アルメニクス将軍! 第二等褒賞授与……」


 戦争で多くの功労を成したものが次々と呼ばれ、王からお褒めの言葉を賜り、褒美が伝えられていく。特に、名前の呼ばれた者の身内は、自らのことのように喜び、栄誉に感嘆していた。



 その頃、王都の酒場でも、一応の勝利を祝いながら志願兵たちが歓声を上げていた。


「俺の中ではな! 今回の第一等褒賞授与はマリアお嬢様だ! 俺はお嬢様に褒賞を贈る!」


 エール酒をたらふく飲んで気持ちよくなっている男は、バルミラ伯爵領の志願兵だ。


「お前みたいな漁師が、お嬢様に何を贈るんだよ!」


「そうだ!そうだ!」


 無遠慮なヤジと愉快な笑い声が響く。


「なら、お前たちは誰が第一等にふさわしいと思ってんだよ」


「俺か?……俺も戦姫様が一等だといいと思うけどな」


「そうだろ!」男は気持ちよくジョッキを飲み干すと言った。「俺はお嬢様の背中について戦ったんだ。お嬢様の働きは、俺がよく知っている!」


「確かに、俺たちも戦姫様には助けられた! 戦姫様が第一等だ!」


 酒場にいるほとんどが今回の戦場に行った者たちだった。伯爵の代理で、しかも500しか兵を率いていないマリアを戦場で見かけた者は少なかったが、衛生用の幕舎ではそうでもなかった。


「俺は戦姫様にけがを治してもらったんだ。今回の褒賞の中には、勇者を治癒した従軍司教がいるらしい。……もしかしたら、俺たちじゃなくて、勇者様のところへ戦姫様が行っていたら……褒賞を受けれていたかもしれねえな」


「俺たち平民を治癒してもな……褒賞にはならねえよ」


 酔いが回ってはしゃいでいた男たちが、急にしんみりし始めた。


「なんだい。さっきまでうるさかったのに。その戦姫様はそんなにすごいのかい?」


 酒場のおかみさんが、男たちを励ますように声を掛け、テーブルの上に音を立ててジョッキを置いた。


「それがな……すごいってもんじゃねえだ。死人を復活させちまったんだよ」


「はあ? 死人を? そんなの教皇様でもできないよ」


「いや、俺は見たんだ。俺の同郷の奴が生き返るのを」


 彼はエールを一口静かに飲むと、皆の顔を見て話し始めた。


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