表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/54

幕間ーアン4

 幕間ーアン3から現時点までのアン視点の短編になります

 私とヘンリーの結婚式と披露宴は終わった。

参列者は、それぞれの家に帰っていく。

父は私に非難するような目を少し向けた。

父は私がチャールズとまた関係を持ったと察したのではないか。


チャールズはメアリに付き添われて、自宅に帰っていく。

チャールズ、と私は叫んで、彼の胸に公然と飛び込みたい。

でも、もうできない。


 それも、死んだ後の来世であろうと、永遠にできない。

最後の審判の時まで、私はヘンリーと添い遂げると神に誓ってしまった。

一方、チャールズはメアリと同様の誓いをした。

私は永遠にヘンリーの籠の鳥で、チャールズはメアリの籠の鳥だ。


 メアリがここまでの報復を考えてしてくるとは思わなかった。

ヘンリーと協働しているはずだが、私はメアリが考えついて主導したという確信がある。

ヘンリーがこのような報復を考えてするような感じはないからだ。

本当にメアリは結婚してから変わってしまった。


「ダメです。絶対に気づかれます。メアリ姉様を甘く見てはいけません」

ソフィアは私に警告した。

「メアリ姉様と呼ばないで、と言ったでしょう」

私はソフィアに言い返した。

私は自分とヘンリーの結婚式が近づくにつれ、もう2度とチャールズに逢えなくなるのが私には我慢できなくなっていた。


「何とか秘密裏にチャールズに連絡を取って。チャールズと逢いたいの」

私はソフィアに懇願した。

ソフィアは私に根負けして、自分の息子に封書を託し、宰相府でチャールズに手紙をすれ違いざまに渡すという方法を考えついた。

そして、チャールズと連絡を取ってくれた。


 この方法で私とチャールズは密会の手はずを整えた。

ソフィアの息子は宰相府に勤務しており、チャールズとすれ違うことがある。

そして、宰相府にメアリの目は届かないので安全なはずだった。

だが、メアリは知っていた。

どうやって知ったのか、私にはどうしてもわからない。

そして、知っていたのに、密会をメアリは何故、阻止しなかったのだろう。


 やっと逢えた、私はチャールズと密会場所で逢えた時、嬉しかった。

だが、チャールズは渋い顔をしていた。

私は不安になった。何があったのだろう。


 チャールズは開口一番に言った。

「メアリが気づいている。この場所は遠巻きに大公家の騎士に包囲されているようだ」

「ええ」


 私は思わず大声で叫びそうになった。

微かに希望があった。

チャールズとどこか遠くに逃げたいと。

でも、そんな状況では逃げること等できはしない。


「大公家の騎士なら、あなたから話せば」

私が言いかけたが、チャールズは頭を振った。

「彼らはヘンリーに第一の忠誠を誓っている。僕達が会っている位は見て見ぬふりをしてくれるが、それが精一杯だ」

「そんな」


 メアリの手はどこまで長いのだ。

私は足下が崩れ去る思いがして、倒れかけた。

チャールズは私を抱きしめて支えてくれた。

その後、密会の間中、私とチャールズはお互いを求めあった。


 私は決して許されない想いさえ抱いた。

ヘンリーは私より21歳も年上だ。ヘンリーは私より早く亡くなるだろう。

後はメアリさえ死ねば、私はチャールズと再婚できる。

あんなに大好きだったメアリ姉様の死を願う。

私は自分の荒んだ考えに自分で自分に愕然とした。


 そして、結婚式と披露宴当日、メアリは私を巧妙に自白させて、ショックから放心状態になった私を永遠にチャールズと結ばれないようにした。

現世ではヘンリーが死んでも、私は誰とも再婚できない。

チャールズも同様にメアリが死んでも誰とも再婚できない。


 そして、最後の審判まで繰り返される輪廻転生の中で、私はヘンリーと繰り返し結婚し、チャールズはメアリと繰り返し結婚する。

そう2人共、神に誓ってしまったのだ。

裏返せば、私とチャールズの関係は永遠に結ばれない呪われた関係になったのだ。


 もう諦めるしかない。でも諦められるだろうか。

私は自問自答しながら、チャールズを見送った。


 一方、私には奇妙な想いがなぜか生まれた。

私のお腹の中にはチャールズの子がいる。

メアリの奇妙な行動はそのためではないのか。


 まさか、メアリは私をチャールズの子を産む道具と見ているのか。

メアリがそう考えているのではないか、という私の考えに私は自分自身であらためてりつ然とした。

 この章で、主人公のことをメアリと基本的に書いているのは、アンにとって主人公を最早、姉と思っていないことを示すためです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ