幕間ージェームズ
「大公家当主のヘンリーの結婚式はつつがなく終わったそうです。先程、披露宴も終わったとか。参列者はそれぞれの自宅に帰りつつあります」
側近の1人が報告した。
「叔父め、娘を2人共に大公家に嫁がせるとは。帝室をそこまでないがしろにするのか」
元皇帝のジェームズは獅子吼した後に続けた。
「長女のメアリは我慢した。だが、アンは、わしの息子ジョンに嫁がせるということもできただろうに。わしにもジョンにも嫁がせないだと。しかも、こちらから求婚したにも関わらずだ。本来なら、叔父から頭を下げて娘を帝室にと言ってくるものだろうが」
「もっともですな」
別の側近が相槌を打った後で続けた。
「それにしても、大公家の武力は本当に軽視できなくなりましたな。大公家当主の結婚式でもあり、教皇が執り行うので、帝都の自主警備を大公家で執り行いたいと言ってきた時は、どのようなものかと考えておりましたが、100騎の騎士を帝都近辺から新たに集めてきて、帝都の警備を行うとは」
「教皇トマスの動きも不穏です。大公家の騎士の宿舎に教会騎士団の空いた宿舎を提供するとは。教会と大公家が荘園削減反対の一点で秘密裏に手を組んだのでは」
第3の側近が発言した。
「馬鹿な。トマスはわしの叔父だし、教会は政治には不介入が大原則だと、この国に宣教を開始した際に時の皇帝に約束しておる。実際にそれ以来、教会は帝室に従順だったしな。教会が帝室に刃を向けるわけがない」
ジェームズは笑って否定した。
だが、第3の側近は思った。
叔父とはいえ信用できるものか、メアリとアンの父、自分の叔父が自分をないがしろにしているのを忘れたのか。
「それにしても腹立たしい。大公家当主のヘンリーに叛乱の嫌疑を掛けて、大公家を粛清できないものか」
ジェームズは側近達に尋ねたが、皆一様に首を横に振った。
「大公家当主のヘンリーは大宰相です。大宰相が国の政治を握るのが帝国の決まりです。国の政治を自分が握ろうとするのが反乱罪ですが、大宰相が反乱を起こすわけがありません。何しろ政治を既に自分が握っているのですから」
「叛乱罪となると旗頭となる皇族が必要ですが、その皇族がいません。皇帝以外の男性皇族はあなただけです。どう考えても無理です」
帝国の反乱罪と叛乱罪は微妙に違う。
反乱罪は、政治を握っていない者が武力等で政治を握ろうとすることだ。
叛乱罪は、現在の皇帝の代わりに別の皇帝を立てることだ。
チャールズの父は、巧みにジェームズを自主的な退位に追い込み、ジェームズの息子ジョンを皇帝に擁立した。
そして、叛乱の罪が自分以外に広がらないように秘かに病死を装って服毒自殺をした。
そのために、ジェームズはチャールズの父を叛乱罪には問えず、大公家は健在であり続けている。
現大公家当主のヘンリーも兄に似て辣腕の政治家だ。
大公家には今のところ、隙がない。
「ですが、チャールズは凡庸な人間のようです。宰相の仕事を度々失敗して、ヘンリーが尻拭いをする羽目になっているとか」
ある側近が言った。
「ヘンリーが死んだ時が好機だな。その時に、大公家に反乱の罪を被せて、帝室で帝国の政治を握り、帝国を正常な状態にしてやる」
ジェームズは吠えた。
その後、メアリとアンは自分の愛人にしてやる、ジェームズは秘かに内心でほくそ笑んだ。
幕間の終わりです。次章から本編に戻ります。




