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 ミホナちゃん 一皮むけば ヤンデレちゃん(字余り)




 ……ああ。思わず、一句詠んでしまいました。

 

 土曜の二人でお出かけ事件の翌週、月曜。今は放課後です。


 私はいまだあのショックから立ち直っていません。


 今日登校して学校で会ったミホナちゃんは、にこにこキラキラ美少女でした。


 クラスの約半数の男子が、顔を赤らめて彼女を見ているという。恐ろしい美貌の持ち主です。


 なのに、ヤンデレ。友だちに。ヤンデレ。


 もったいなすぎる。



 ミホナちゃんに友だちいっぱい…は高望みしすぎかな。とりあえず、私以外のお友だちができるようにしてあげたい。


 そう。これ、もう乙女ゲーとか関係なく、私の目標になっています。


 とりあえず、あのダークマターな部分を隠せば、誰にだって彼女は好かれます。


 そうです。騙しきればいいのです。


 というか、仮面なんて多少誰もが被っているものです。ただ、その仮面がすぐペラペラ剥がれそうになっちゃうのが問題であって…。


 ということで。


 ここは、人付き合いのうまい先輩にアドバイスをしてもらいましょう。






 生徒会は、今日はお休みです。が、ちょっと。ご相談があるので呼び出しました。


 たぶん、もう来ていてくださるはずです。


 こんこん。


 生徒会室の扉を叩きます。


「失礼します。」


「やあ。僕の子猫ちゃん、どうしたんだい?」


 望月生徒会長が余裕たっぷりの微笑みで、私に近づいて、さりげなく手を握ります。

 

 きゃあああああ。

 顔が赤くなるから、不意打ちするの禁止です。

 だいたい貴方が「それ」を披露するのは私じゃなくて、ミホナちゃんにですよ。もうまったく。心臓がどきどきするのでやめてくださいね。

 という動揺が顔が出ないよう頑張りながら、会長の上達をたたえます。


「え、演技が完璧になりましたね。会長」


「うん。練習続けたから。おかげさまで」


 さらり、と返されるイケメンスマイル。悔しいくらいスマートです。

 こうしてると、元いじめられっこの面影はありません。

 完璧な目の保養です。ほぅ。



「その、今日お呼び立てしたのは、いじめられてた人の人間不信ってどうやって直せばいいと思いますか?ということをお聞きしたくて……」


「……ええと、それって、ミホナさんのことだよね?」


 いえす。いえす。

 こくこくと頷きます。


「うーーーん。ありきたりだけど、最低限は自分を信じることだろうね。」


 会長は腕を組み、ゆっくり言葉を選びます。


「心のどこかで自分は嫌われて当然の人間だって思ってる間は、どうしても変に緊張しちゃうし。……そういうのって隠したつもりでも相手になんとなく伝わるものだよ」


「ああ。ミホナちゃん。今は自信、全然ないです」


 自分といるメリットがお金以外思いつかないって言ってたものね。ミホナちゃん…。

 そんなことないんですが。


「……でも、自信って奴は目に見えるものでもないし、身につくための方法論が確立してるわけでもない。ゆっくり、ゆっくり。長い時間、誰かが傍にいてくれることでやっと身につくんだ。一朝一夕でなんとかなる問題じゃないよ。もしそんな簡単なら、ミオトがとっくになんとかしてるさ。」


 あっさりと厳しいことを言う会長。

 あ、はい。そうですよね。


「ううぅぅ。つまり、私にできることはない、ってことですか?」


「いいや。そんなことないさ。……君は君しかできないことを、ちゃんとやってるよ。とりあえず焦らず、隣にいてあげたらいいんじゃないかな?」


 くしゃりと頭を撫でられました。


 なにこの、乙女ゲーみたいに普通にかっこいい人っ。


 私相手にこんな萌える言動してもなにも出ませんよ。


 動揺しきる私を楽しげに見つめて、わしわしと髪の毛を撫でる生徒会長。


「いい子いい子」


 とか呟いてます。完全遊ばれています。くっそ。ミホナちゃんの前では赤面男子のくせにぃぃ。


「……」


(えっと、気恥ずかしいんですけど)という意思をこめて会長を見るけど、彼はにこにこ笑うだけ。手を止めていただけません。



「僕さ。感謝してるんだ。」


「ミオトが僕にしてくれたみたいに」


「ミホナちゃんを助けてあげよう、って望む誰かがいること。」


「だからありがとうね?」


 いや、うん。気持ちはわかりました。わかりましたってば。


 にこにこ笑いながら、頭を撫でられるのは、本当に恥ずかしくて。

 会長はミホナちゃんの攻略対象者だよ。会長はミホナちゃんの攻略対象者だよっ。

 と念仏のように唱えていたので、セーフだったけど。

 心臓には悪かったです。


 くぅぅ。罪作りなイケメンめ。


 あれだよね。……広瀬先輩といい、会長といい、私が女の子だって意識してなさすぎやしませんかっ?!







 とりあえず、今、できることは

 ミホナちゃんが自信をつけられるようにできるかぎり傍にいることらしいです。




 それだけでいいのかなぁと思うんだけど


 会長には


「誰かがちゃんと傍にいてくれるって本当に嬉しいものなんだよ」


 と微笑まれました。





 靴箱に行くと、なぜかミホナちゃんがいました。


「あっいた!由紀子!」


「あれ?!ミホナちゃん?!」


 今日は図書室で借りたい本があるから先に帰ってねって言ってあったのに。


「……なんか寂しくて。……図書室ならそんな時間かからないだろうし、待ってようかなって」


 てれてれと頬をピンクに染めてそう言うミホナちゃん。


「ありがとう…?」


 ああ。でも、なにかがちょっと重いような。


 うーん。でも、確かに、会長が言ったように、私が傍にいるだけでも、嬉しそうですね。ミホナちゃん。



「ん。じゃ、一緒にかえろっか。」


「うん」

 


 そんな一日でした。



会長回でした。

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