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今宵、きみを想う  作者: 桜倉ちひろ
君と彼
42/44

6


 突然、眼前に翳された小さな輪に、声を失った。



 まさか彼がそんなものを出してくるなんて思わなかったから。



 息を飲んで、目を見開いたまま固まる私に彼は囁く。



 そんな彼に私は―――




 「ばかっ」




 素直に喜べずに、悪態をつく。



 つきながら無理矢理嵌めて、彼の方をクルリと向いた。




 「だから、もっとカッコよくやりなさいよ」




 笑って言いたかったのに……



 言った瞬間、涙が零れた。



 

 「大きすぎるから」

 

 「ごめん」




 サプライズすらまともにしてくれない彼が、やっぱり愛しくて―――



 シーツが肌蹴て落ちてしまうのも構わず彼に抱き着いた。


 「世界で一番、愛してあげるから傍に居て」







 ギュッと抱きしめて、そっと離れて彼を見つめる。



 瞳がぶつかって、彼の瞳も涙で滲んでいて。



 二人で泣き笑いながら、ゆっくりと顔を近づけた。



 


 今すぐに、貴方との距離は埋まらないかもしれない。



 でも―――





 今日よりも明日。



 明日よりも、明後日。



 1年後よりその先―――




 ずっと、貴方が好きで、貴方を愛していける気がする。




 だから、傍にいよう? 私たち。



 ――――――




 私は



 貴方は



 君は



 キミは



 彼女は



 彼は





 今宵、きみを想う――――






 (fin)




 24.5.18




 By 桜柚姫 



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