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「最後まで優しすぎたよね、キミって」
そう言って彼女はカラリと笑ってカフェオレをコクリと飲んだ。
10年前にはなかった女っぽさを纏った笑い。
その表情に彼女は彼女の10年があったんだな……と感じた。
「優しくは、ないよ。優柔不断で、自分のことしか考えてなかっただけだよ」
彼女が俺の何をやさしいと思っているかはわからないけれど―――
俺はただ、自分にすらハッキリと答えを出せなかった臆病者だ。
だから
「だって、キスしてくれなかったじゃない」
彼女は笑うけど……
「根性がなかっただけだよ」
俺はまた苦笑いを浮かべた。
「本当はしたかったけどね」
冗談めかしてニッと笑いながら言うと
「ハハッ。本当? 私、女に見えてた?」
「当たり前。俺、いっぱいやっかまれたんだから」
わざとらしく肩をすくめてそう言うと
「もー、嘘ばっかり」
と言いながら、彼女は昔と変わらない笑顔を浮かべた。
本当に。
君はずっと可愛らしい女の子だったよ―――




