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24話

 戸井の自殺未遂を騒動の後、記者会見が開かれた。

ベストは、達成であったが、坂井らに阻止された。

仕方ないことだ。切り替えろ。計画は破綻してない。

蔵元、メディア側の協力者を扱い一足先に報道を演出した。


いじめの有無や如何に?数十年前の悪夢再来か?

安っぽいく、キャッチーな副題で視聴者を釣り上げる。

ネガティブをエンターテイメントにしていることなんて、誰だってやっている。

悪びれるつもりはない。返答者は、舞川校長。


「戸井君のご容態は?」


「多少心に不安が残ってはおりますが安泰です」


「それは、安泰と呼べませんよ校長。今もなお、戸井君は心は蝕まれいる状況ということです。不安というのは次期に体も蝕みます。そしてその不安は他の人々にも伝染します。今必要なのは、その不安を解消する何かかと思います。それについてどう思いますか?」


「不安…そうですね。その解を解くのは不可能です」


「あなたそれでも、校長ですか?」


「解けないことを世迷い言で惑わすことが校長のすることではないかと思いますが」


「あなたの立場でそれはあんまりではないですか。責任を果たさないのですか?」


「責任とは校長の任を解けということでしょうか。まぁ、いいでしょう。特ダネを言いましょうか。戸井君をいじめました」


「は?」


記者がペンを落とした。俺も驚いた。は? という言葉の声主がどちらなのか、はたまた両方の発したのかわからない程に。

裏方で出るタイミングがあるため声を漏らさないように辛うじて意識はできている…はず。

協力するんじゃないのか?


「具体的なこととして、戸井君へ私の心中を書いたノート読ませた。まぁ、邪悪な感情だととらえて下さい。お望みであれば、お渡しします。彼は、中学の頃、いじめを止めたきっかけにいじめの標的になりました。彼は耐えました。しかしそれは自身の自尊心によるいつ壊れてもおかしくないものによるものでした。そんな彼に希望であるこの学校が実はそうではなかったと打ち明けられるのは、いじめととらえて間違い無いでしょう」


「衝撃…です。まさかそのようなことをしてるとは。何故、何故なんです」


「好奇心です」


「好奇心って…あなたはそんな人では、無かったはずです」


 記者の彼が言うように、世間のイメージは、いじめの救世主だった。

一度、いじめで壊れかけたこの学校を復興に努めた校長。

何故と。俺も思う。別の事でだが。

計画に不安要素を作るな。

おとなしく悲撃のヒロインぶってろ。

それに共感して、こちらは計画の門出とする筋書きなんだよ。


「学校の再興を考えていた頃は、その感情が薄かった。蓋をしていたというのが適切です。当時いじめを目の当たりして、いじめを止めないとと思いました。そのためにいじめ撲滅委員会という組織を学校がバックアップする形で作った。

しかしいじめを起こさないが為に過激な支配が横行するようになった。いじめを風化させてはいけない。この信念に嘘はない。それなのに、曖昧ないじめが蔓延(はびこ)る状況が最良なのかと私に疑問が生まれました。いじめを失くす象徴ではなく、いじめを意識させる象徴になるべきではと。そのために、戸井君には犠牲になってもらいました」


「そんなの」「おかしいでしょ!!」


もう、耐えられなかった。

計画がめっちゃくになる前に、俺が軌道修正しなくてはいけない。

めっちゃくにされた怒りを戸井の扱いへの怒りへとシフトするイメージで調整する。


「舞川校長のやってることはおかしいですよ」


「向井間君、来てたんだね」


白々しい。誰のせいだと思っているんだ。


「戸井君をなんだと思っているんだ。彼は被害者だったんだ。それをまた繰り返すような真似、人間のやることじゃない」


「人は悲劇を目の当たりにしても、ほとんどが行動のきっかけにならないんだよ。皆さん気づいたでしょう。皆、いじめを見て見ぬをふりした。思考を放棄したらだめた。皆、不安になってください。常に怖いという意識を持ってください。いじめを風化させてはならない。それが少しでは、あるけど、抑止につながる。いじめなんて無いと盲信する時代は終わりました」


「その不安で、戸井君が死にそうになってるのが何故わからないんだ。それともなんだ? 見て見ぬふりするなという癖に肝心の舞川校長は、戸井君を見て見ぬふりをするのか?」


「…」


なんだよ。だんまりかよ。

こっちが共感路線でと言ったにもかかわらずに、吹っ掛けたのは、そっちだ。

徹底的に責めてやる。


「第一校長は」「戸井君の自殺を止めるために屋上の柵に接着剤をつけていました」


「…そんなの結果論じゃないか」


「自殺の有無という点ではそうだね。ただ私は見て見ぬふりはしない。その点は知ってもらいたい。その功労者を今紹介させて欲しい」


「…! ?」


「坂井君と阿多谷君だ。いじめを直接的に止めてくれたのが彼らだ。そして向井間君は阿多谷君にいじめられた。坂井君も直接ではないにしても傍観した人物。それを踏まえて、向井間君。彼らを許せるか、許せないか問わせて欲しい」


は? 校長が何を考えているのかわからない。

許す、許さない?

当然、建前的には、許さないだが、正直どうでもいい奴らというのが本音。

いじめられた体で利用しただけなのだから。


ハッタリをメディアに通すには、リスクがある。

計画のためにいじめの有無に疑念を産ますわけにはいかない。

かといって、許すか? いや、それはもっとない。

だったら、許さない選択しかないだろ。


しかしこのままでは、演技をまっとうしたとしても、聴衆の全てを欺ける自信が無い。

俺の計画を【壊す】気か?

壊す…?

ああ、この校長は、一貫して壊したい。そう願っていた。

ならば、それを許すのか?


許せるわけが無いだろ。

演技には、限界がある。なら、俺の許さないの象徴を思い出せ。

オヤ、そして伯父。

中学の時に裏切った伯父を許せない。


だから俺は、今の計画に伯父を入れていなかった。

計画の促進につながると知っていながら。

私情が邪魔をした。

けど、もうやめだ。

半端な心構えでは、すぐに追い詰められる事は今までに嫌という程わからせられただろう。


自覚しろ。

壊される位なら、計画の最善を尽くせ。

俺はそのために、伯父への怨みを(ゆる)す。


 オヤ、伯父への怒りを憑依させる。


「赦せる? 赦せるわけが無いだろっ! !いじめから助けたからって、やられたことが無くなる訳じゃない。中学の頃いじめられた。オヤもたよりにできなかった。けれど、何よりも赦せなかったのは、伯父の裏切りだ。いじめを失くす協力をすると信じていたのに裏切られた。信じていた対象に裏切られた気分がわかりますか? それが唯一だったときの絶望が。


_しかしここで伯父を赦します。今から僕の計画の話をさせて下さい。僕はいじめの対応策としての法律を作りたいと思っています。つまりは、議員になろうと考えています。具体的な案はまだできていません。専門的な法律の知識が不足しています。ですので、弁護士の助手になろうと思います。伯父の助手になります。元々そのつもりでしたが、裏切られて踏ん切りがついていませんでした。他の弁護士へ要請をしようかとも考えてました。しかしそんな中で、戸井君が自殺しようとしました。この学校が直接のきっかけではないのかもしれません。それでもいじめは、根深く消えることのない傷を帯び続けていると、被害者である僕も感じずにいられませんでした。だから僕も本気で向き合う。皮肉にも、伯父には負い目ができた。もう裏切ることは赦されない。計画を成功するために私情で妥協しない。そう決めました。ですので、僕の歩みを見守ってもらえると幸いです。それでは失礼します」


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