23話
戸井を気絶させることに成功した。
気絶してはいるが、念のため拘束した。
そして。
「妨害してやったぞ向井間。僕を自殺しようとしたやり方と全く一緒じゃないか。読んでるんだよ。芸無し野郎が。勝った勝った勝った勝った!」
阿多谷の感情が爆発した。
取り繕う自我を忘れて。
彼の屈辱を考えれば当然のことであった。
中学の時、向井間は、阿多谷を陥れた。
決して自身の能力が劣っているとは阿多谷は考えていない。
しかし生まれに恵まれていた。向井間は持たざる者の部類。
それに打ち負かせられた事実を否定したくとも、認め生きてきた。
そして、今度はアウェイな状況で向井間の思惑を阻止した。
阿多谷にとっての意趣返しを果たしたのだった。
そんな喜びの渦中にいるのも束の間。
「喜ぶのは、まだ早いと思うんだ」
坂井が異を唱えた。
「………何故でしょうか?」
「ギャップ…いや、確かに僕らは、戸井の自殺を食い止めた」
「なら、それで終わりでしょう」
「そう食い止めたんだ。阿多谷君が向井間に執着してくれたおかげだ。彼の悪意を直に受けた君だからこそだ。ただ…終わりではないと思うんだ。確証があるわけではない。あの時と同じ感覚だ。中学に阿多谷、君を自殺を追いやった後の様に。ただの悪意だけではないと思うんだ。そのさきを考えているように感じる。それに、阻止されたからって何かをやめる向井間君だと思う?」
「それに関しては、同感です」
「なら、どうしようか?」
「愚問ですね。完膚なきまでに、瓦解する。それだけです。一度の勝利程度で、僕の溜飲が下がる訳がない。望むところです」
「そうだその意気だ。僕らで、向井間君の計画をめちゃくちゃにして、真人間にしよう」
「一緒にしないで下さい。ただ、向井間の計画をめちゃくちゃするという点では、協力しましょう」




