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21話

 僕は、校長に促されるように、譜面台に置かれた書物の続きを読もうとする。

正直、読みたくない。

読む原動力になってるのは、この校長が腐りきっていない。

自身の信念を間違った方向で行使していないんだと。

そう言い聞かせられる材料を求めているため。

そんな一抹の期待にすがっているからに他ならない。




 関係ないんだ。

何故なら、私、校長は、もういじめを止めようとは、思っていないのだから。


《…》


だからと言って、一方的にいじめを蔓延させたいわけではない。

少し誇張しすぎた。


《よかった。やっぱり何かの間違い決まって…! ?》


私はどちも望んでいる。

しかし片方を願えば、もう片方が途絶える。

両方の成就は叶えられない。

私には、とても選ぶなんてことはできない。

甲乙つけ難い。


私には、もう時間が無い。定年の時間が迫っている。

そして、私は今期の委員長に委ねることにした。

・この現状を許さず、律する立場へと、戻るのか。

・権力に溺れて、不満の捌け口として扱うのか。

舞台を作り、その結果を見届ける。


どちらに転んでも、美味しい。

そして、どちらに転ぶのかわからないワクワク感。

先生という立場でありながら、やんちゃな生徒よりもはしゃぎそうになる。

いけない。双方のケース提示していながら、これでは、後者の方が心情的に選びたくないではないか。


一方的な押し付けは好ましくない。

先生として、寄り添い、どちらを選んでも良いと示さなくては。

・権力に溺れて、不満の捌け口として扱うのか

こちらを選ぶ事を私は責めない。両方を肯定する。


それは、私も悪意を自覚しているからだ。

私は自身の後ろめたさを棚に上げて、相手に律することを強要する不届き者になるつもりは無い。

悪とは、悪いことだろうか?

哲学じみた話になってしまう。


これでは、ふさわしくないな。

悪は善に劣っているのだろうか?

悪は不要なのだろうか?

私はそうは、思わない。

何故なら、私がそう思うから。


シンプルだが、真実である。

文中の通り、私は、いじめを止めるのも、いじめを行うのも、両方大切だと考えている。

いじめを抑圧するだけの状況は、よろしくない。

いじめを行うのは、悪意と向き合うことと同意である。

それは、当事者だけではない。

周りの人間もまた、悪意に向き合うことになるのだ。

寧ろ周りが主だ。当事者は、目の前の事に夢中で、それどころではないだろう。

ならば、周りが向き合わなければ。

その事象が何故起きたのか、理由が無い憂さ晴らし?

ならば、その者に、相応の罰が必要になる。

正義の執行の繰り返しによって、より濃くなる悪を体感できる。

その屈折が私の心を豊かにする。

これほど貴重なことを前に、傍観に専念することなんて

____________もったいない。




「…」


「最後まで読んでくれたようだね。おっと、もう、お帰りかい? 構わないが、余韻も無いのは、いささか寂しいね…」


 戸井君は、読み終えると、すぐに立ち上がり、部屋へ出た。

このままだと、一方的な結末になりそうだ。




 校長は、狂っていた。いじめを許さないをモットーだと思ってこの学校に、進学したのに。ここにいればいじめられないはずだった。

 いじめは撲滅(ころ)さなきゃいけない。


ーどうして?


「それは…あ…あ…あぁ~ー~ーー!!」


撲滅(ころ)されないため。


そうだ。僕は殺されたくなかった。だからいじめを殺さなくちゃ。

あれ? でもいじめ撲滅委員会の任期は一年。そこで後ろ楯はなくなる。

そしたら、いじめの標的になる。

しんや君は、いじめから半年後に亡くなった。

僕の寿命も一年と半年。


いやだ殺されたくない。けど一年後にいじめを殺せなくなる。

どうすれば。

…どうすることもできないじゃないか。

迫り来る死の未来に抗う術がないのなら…。


終わらそう。


僕はもう、生きるのを続けられない。


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