19話
「呼び出しに応じてありがとう戸井君」
「そんな。向井間君のためならお安い御用さ」
戸井を観覧車内に呼び出した。当然応じてくれた。
仲間意識でもあるのだろ。同じいじめられた同士だから。
こっちは、仮初めのいじめだがな。
そんな仲間意識もここで終わりだ。
自身の利益のために、続けていた関係性だ。
せめて利益のために、役割をまっとうしてくれたピエロに手心をもって終わらせてあげよう。
「戸井君。単刀直入に言うよ。阿多谷に酷いことをしているね」
きりが無いので、証拠の類いを見せる。
「…。僕はこの行いを悪いとは思わない。現に校長は黙認している。いじめをした者がここにいてはいけない」
「だから強行手段も辞さないの?」
「仕方がないことだ」
ああ。そうか。一言で崩れるとも知らずに。
「証拠として認めない! ? どういうことですか校長」
驚きの隠せない坂井が言動にも現れた。
「穏やかじゃないですね。しかるべきところに提出することになりますが」
僕阿多谷がトイレでの暴行を受ける前日までさかのぼる。
坂井を含めて校長に提案をしていた。
「校長、おそらく僕は脅しや暴行を受けることになります」
「…そうか。君への警戒を深めて、事が起きたら迅速に対応しよう」
「いえ、そうなった場合止めないでください」
「どうしてかな?」
「決定的な証拠を用意したいので。それに僕には後ろ楯が存在しない。止めた所でその場合しのぎにするつもりと考えている。証拠があれば、外部も巻き込められますからね」
「了解した」
現在に戻る。
「まぁまぁ。誤解だよ阿多谷君。証拠は必要ないが適切だ。何故なら…」
「校長は君の委員長の座を無くす方向だ」
「…嘘だ」
「ここで証明はできない。だから嘘かもしれないね。でも、ここは観覧車の中だ。聞きたくなくても、聞いて欲しい。まず、このことを聞いて、どう思った。信じたくないし、もし本当だったら、【死にたい】と思ったと思うんだ。そうだったなら、都合がいい。つまりね、戸井君に出来れば、自殺して欲しいんだ」
「何を言っているんだい?」
「大丈夫君の死を無駄にするつもりは無い。その死を持って、学校のいじめ問題に異を唱える材料にするつもりなんだ」
「だからわけわかんないよ! !」
「理解して欲しいな」
「こんなのおかしいよ」
「戸井君はおかしくないの? 執拗に阿多谷を目の敵にして。例え悪者でも、赤の他人がそれを裁こうとするのは、異常だよ。でも、君もいじめられていたから許せなかったんだろうね。いや、許せないよりも、使命感の方が強いか。そう、使命感だよ。いじめは絶対に根絶やしにしないといけない。漠然とした悪の嫌悪じゃ足りない。世間に実状を、揺るぎ無い悪を見せないといけないんだ。その為にも、戸井君には、多いに絶望して欲しいんだ。学校で自殺するくらいに。だから頼むよ」
「…断る…」
「そうか。残念だよ」
観覧車を先に出る。
言葉が真意なのかは、定かではない。
だから今はその言葉を受け入れられないだろう。
今は…ね。
校長の本性は、俺よりもどす黒い。
アレを見て戸井は平静を保てないだろう。
どうせなら、面白い方に転んで欲しいな。




