18話
僕阿多谷は、性懲りも無く、面倒事に巻き込まれている。
「補佐役を降りろ」という抗議活動から事態はエスカレートした。
まず下駄箱に靴が無かった。
別に立場的に靴などすぐに手元に入る。
大した問題では無い。
ただ、このまま親の七光りを行使して、事を無かった事にしたくない。
それは、向井間の敗北に起因する。
奴は、中学の頃に僕の土俵で勝った相手だ。
ならば、こちらも同じ土俵で勝たなければ意味がない。
教室に入って自身の机の異変に気づく。
机にも、とうとう補佐役を止めるよう訴えた文言綴られていた。
ここまでくれば、いじめと言っても過言では無いだろう。
普通のいじめと違うのは、「止めろと聞こえないのか? 耳無し。お前は存在してはいけない」と私怨を込めた言葉が込められている点だろう。
いじめに私怨は無い。それが有るのは、いじめられた者だけだ。
いじめられた者がいじめか。
言えた義理では無いが、その心境はわからない。
机に気にせず、授業を受け、一時限目が終わった矢先に声をかけられる。
「トイレへ行きましょう」
戸井委員長の傘下達だ。
「構いませんよ」
その言葉通りに着いていった。
案の定、化粧室の中で、暴行を受ける。
「っ………戸井君。そこにいますね?」
「…」
「僕が憎いなら、聖人ぶってないで、お仲間の和に入れば、いいじゃないですか」
挑発に乗ってくれたようで、ドアを開けてきた。
「減らず口なんて言える立場じゃないだろ。阿多谷君」
「その安い減らず口に乗って来てくれたのは、君でしょう? 戸井君」
「このっ! !」
「やめるんだ! !」
その声の主は坂井だった。
「…興が冷めた。引き上げようか。阿多谷君。君が補佐役を降りない限りこのような事は続くよ。これは校長にも黙認されている。そもそも阿多谷君が居ていい場所では無い。身の程を弁えたらどうだ。あと坂井君も同様だ。いじめを黙認した者にここにいることを僕は認めない。歓迎されることは無いだろう。それじゃあ、またね」
一悶着を終えても、頬の痛みすぐには消えない。坂井は戸井の言葉にむきになるのを耐えている用だった。
「坂井君。録音は出来ましたか?」
「…うん」
「辛そうですね。戸井君の話が堪えましたか?」
「お互い様でしょ。世間では、向井間君がいじめれられている事になっている。知ったような口をってそりゃ思うよ。けど、自身の落ち度もあり、過ぎた事だ。戸井を見ていると、中学生の頃の自分を思い出す」
他者を洞察できると自負している。
だからこそ、戸井がいじめられた判断ができた。
しかし、例えいじめられたていたとしても、僕までも目の敵にする心境がわからない。
私怨はそこまで続くのか。
そこは、いじめられていないとわからないことだろう。
「もしも、坂井君が戸井君の立場だったら同じ事をしますか?」
「するね。中学生のままの僕ならね。いじめってさ、いたちごっこなんだよ。やられたら、やり返したい要求を永遠に飼って生きないといけない。それを一時でも解消できる大義名分があれば行使したい。今だって、きっかけがあって、自身で折り合いをつけているに過ぎない。ただ、そのきっかけがあって、向井間君は止めなければいけないと思うようになった。だから向井間君の暴走を止めよう」
「僕は勝つだけです」
「今はそれでいいよ」




