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11話

 いじめ撲滅委員会の演説が始まった。

本日中に当選結果の発表まで行われる。その影響で授業は行われない。

俺向井間の順番は最後だ。順番は抽選によって、決められたと言われているが、意図的に、俺が最後になったと思っていいだろう。

最後の演説の方が確実に印象が残る。


校長は俺を選任させる気満々らしい。

そんなの関係なく、当選するだろう。

メディアに取り上げられる程のいじめをされたのだから。

それよりも大したバックボーンが他の奴らにあるのなら教えて貰いたいものだ。


 しかし坂井と阿多谷も立候補するとは。

いったいどういうことだ? 校長に何か言われたか?

いずれにしろ、あいつらが当選することは無い。


 演説最中特に目立ったこともなく、ありきたりな言葉しか耳にしない。

 そして、戸井の演説の番となる。


「みんな聞いてくれ。この学校は美しい。いじめ撲滅委員会という生徒が主体的にいじめを無くそうとする組織がある。そして、いじめが無くなった。いじめをゆるさない確固たる意思がある。他の学校にはない素晴らしいシステムだ。僕もここに参加したい。身の丈話をさせて欲しい。僕の中学では、友達がいじめにあっていた。止めるように努めたが、力及ばずだった。そのせいで、友達は不登校になってしまった。このようなことはあってはならない。僕が当選したからには、いじめをしたものを刑罰する懲罰室の設立を求める。いじめには、抑止力というものが必要だ。いじめをしても、大丈夫と思うから出来てしまう。過去を悔やんで、そう考える他なかった。運営は僕一人で行う。抑止力を見せるだけでいじめる人は誰一人いないと僕は思うからだ。みんなを信じてる僕を当選して貰いたい。以上だ」


 演説後に絶え間ない拍手が響いたことで、この演説が好評であることがわかる。

バックボーンは、一応あるのか。本当かどうかは置いといといて。

俺からしたら、いじめの起きないこの学校、安全圏から立派な事を(たわ)ける間抜けにしか見えない。

いずれにしろ、本気で立候補したと伺える。

俺がいなければ、まず当選していただろう。

玉川のおかげで、真意を把握した上だと、見え方が変わってくるな。



 次は、坂井だ。


 それは演説と呼べるものではなかった。

見ている生徒、先生までもが反応が明らかに違う。

演説者を見ない、見たとしても高圧的な表情。

完全なアウェイだ。

そのせいもあり、坂井はたどたどしく、おろおろと、顔を明後日の方向に右往左往時々下を向いている。


 いじめをゆるさない学校。

それは、表面上ではいい意味だろう。ただ、それはいきすぎれば、加害者への憎悪になる。

加害者と何ら変わらない。

それを知らずに、やっていると思うと、本当に馬鹿馬鹿しくて、面白い。

いじめる奴もいじめられる奴もそれぞれ面白い馬鹿だ。


 しかし坂井。お前は何をしに来たんだ?

俺を止めるのではないのか? アウェイな状況が理由なのなら、肩透かしもいいとこだ。お前の過去はその程度なのか? 敵ながら、がっかりだ。


 進展も無く、坂井の演説は終った。

戸井の前の有象無象の方がまともにやれていた。


 次は阿多谷の番だ。

第一声を上げる矢先に。

「お前に立候補する資格はない!」


ああ、そういう馬鹿だよなお前らは。

坂井の比にならない嫌がらせをしてきた。

奴らの意志でやっている。煽動などしていない。

戸井の様子を見ると、満足気な表情。おそらく奴が仕向けたのだろう。

仕向けてなくても、やるだろう。

どうでもいい。


「皆落ち着いて僕の話を聞いて欲しい」


阿多谷がなだめる為に下手で話している。

その願いは叶わず、騒音でかき消される。


「……。静かにしろ! ! 烏合の衆ども」


次は遠慮無しに、貶した発言をする。

想定外なのか、騒音は静かになった。そして続ける。


「お前たちの怒りは良くわかった。それを弁解するつもりもない。紛れもない事実だ。僕は向井間君をいじめた。けど、今やっていることもいじめだ。いじめをゆるさないが為に、不良分子を強引に潰す。この学校として相応しいのか? そもそも人間関係上歪だと、自覚はしているのか? 確かに僕は当選されないのは明白だ。しかしここで何か訴えなければ、いじめの延長線上で、謂れのない行為をされる。現に今だって、学校に登校した時にも、あった。いじめられた当人なのかお前たちは? 自警団になったつもりでいきすぎた粛清行為はやめろ。話たかったのはそれだけです。ご 清聴ありがとうございました」


 阿多谷の演説? は己の意思を伝えることで幕を閉じた。

喝采は無かった。ただ、さっきの罵詈雑言も再び続くことはなかった。


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