不吉な寒気
主神は、扉の前に立ち険しい表情である。扉から、黒く禍々しいものが滲みでている。そして、目を閉じてから決意したように扉に背を向けて歩く。
「主神様、もう時間がありません!」
「ああ、分かってる………。」
仲間の神に言われて、辛そうな苦しそうな表情で俯く。そして、顔を上げてから真剣な表情で言う。
「神王には、天界の《閉鎖の楽園》で眠って貰う。抗えば、武力を使っても構わない。もう、手段を選んでる暇はない……。ハイリヒが、神王が死ぬのだけは全力で回避しなければ。主神が、命じる………ハイリヒの拉致と監禁をせよ。理由は、話すな。」
『主神様の、仰せのままに!』
神々は、緊張と焦燥の思いで動き出した。主神は、もう一度だけ振り返り扉を見ている。
「お願いだ、初代様や化け物より先にユラを天界へ連れてきてくれ。もう、身内を失うのは……嫌だ。」
主神は、泣きそうな表情でその場に座り込んだ。
白銀の長い髪に、黄金の瞳はの青年は小さく呟く。
「ふむ、彼は殺してしまわないとね。」
「初代様、ハイリヒ様を何故に殺すの?」
天使が、首を傾げて問いかける。
「偽りの神は、脆く不安定な存在だからさ。彼は、危険な存在だし。そもそも、世界の理を覆した時点で異物だし排除対象だよ。だから、殺すのさ。君達は、不服かい?でも、生かしてはおけないよ。」
青年は、笑顔で歩きだした。
やっと、外に出られる。欲しい、お腹すいた。異世界人は、何処に居るんだ?食わせろ、魂と肉体が食べたい。食わせろ、何処に居るんだ異世界人!
扉がこじ開けられ、黒い異形の化け物は解き放たれてしまった。主神は、引き止めようと神力を使うが、相手は初代邪神にして不死身の災厄である。
「ぐはぁっ!」
「オマエ、ジャマヲスルナ…………!」
異形の化け物は、力が強く栄養のある異世界人を求めて下界に降りていった。
「ユラ、逃げて………逃げて………くれ………。」
主神は、それだけ言うと気を失ってしまった。
ユラは、寒気がして震える。
「ユラ?」
カリオスは、キョトンとしてユラを見る。
「え、ごめん………。」
ユラは、慌ててカリオスとオズの隣を歩く。
今、凄まじい寒気が。何か、胸騒ぎがして落ち着かないなぁ………。今はでも、サーカスだよね。
「ユラ………」
「ん?」
ユラは、首を傾げる。カリオスは、困ったように言う。オズは、真剣な表情で視線を一瞬だけ左斜め後ろに向ける。勿論、2人が気付いてユラが気付かないはずはない。
「気付いてる?」
「俺達、つけられている。」
ユラは、苦笑してから言う。
「知ってる。恐らく、さっきの裏路地からつけてる人だよ。周囲にも、子供を配置させてるしね。」
「もしかして、サーカスの子供達か?」
ユラは、最悪だとため息を吐き出して言う。
「おそらく………。」
「もう、問題をおこした後かよ…………。」
オズは、困ったように苦笑する。
「ユラは、どうしたいの?」
「下手に、支援すれば貴族達の良い餌だぞ?」
ユラは、苦笑してからため息を吐き出して言う。
「これは、招待状どころじゃない。最悪、団長が知らない可能性がある。そうなれば、子供達の管理不足の責任を取らされ投獄だね。子供達は、路頭に迷って娼婦か奴隷にされるんだろうな。」
カリオスは、頷いてから続きを促す。
「だから、団長に会おうと思う。」
すると、オズとカリオスは変装を解除する。それを見て、ユラも素早く変装を解除して歩き出す。
ヴァイスが、現れついてくる。
「私が、居た方が良さそうでしたので。」
「さすが、ありがとうヴァイス。それで、ネヒトは現在はどうなってるの?あれから、見てないよ。」
ヴァイス、無言でにっこり…………。
「あー、うん。OK!」
「聞きたいですか?」
「いいや、聞くのが怖いから聞かない。」
「「…………………。」」
よし、では勝手に入っちゃおう。
「さて、お邪魔しまーす。」
「邪魔するなら、帰ってやー。」
おっと、これはもしかして異世界人?
「ねぇ、君の名字は?勿論、異世界の……。」
すると、青年は笑顔で振り向いて言う。
「お前は、何て名なんや?」
「僕は、榊だよ。」
「わては、岩水っちゅうねん。ほんまに、同郷やぁー。嬉しいわぁー♪訛り、でてまう。」
何か、濃いキャラ出てきたなぁ………。冬馬も、濃いキャラだけど岩水君には負けるね。
「えっと、少し話したいんだけど。」
「そうかぁー、何でも良いでぇー。」
ユラ達は、椅子に座り話をする事にした。
「それ、ホンマか?」
「うん。だから、この世界の僕の家に招待したい。それと、僕はユラって呼ばれているから。」
ユラは、暢気に笑いながら言う。
「了解、ユラな。」
「君は、何て名前?」
「わては、団長としか呼ばれへんからなぁ。」
「そっか………」
さて、そろそろ帰ろかな。
「じゃあ、お邪魔したね。」
「また、来てなー。ユラなら、歓迎するさかい。」
ユラは、カリオス達と別れて帰路につくのだった。




