出発!
さて、ついに副団長任命式が終了した。
だが、事件は起きた。ブラックバカラの花が、4本リボンに結ばれて僕の近くに落ちてきた。
「ちっ……、燃やせ!」
ブラックバカラ、花言葉は………。そこまで、殺したいのかな?でも、1回しか会った事は無いのに。
ユラは、悲しげに燃える赤黒い薔薇を見つめる。
「ユラ?ユラ!大丈夫?」
「おっと、ごめん。少し、考え事をしてたよ。」
カリオスの言葉に、ユラはハッとして困ったように笑う。そして、無言でもう一度だけ灰になった花をみてから、複雑な表情で苦々しく言う。
ブラックバカラ、花言葉は……【貴方に永遠の死を】
「少し、なれない人付き合いで疲れた。だから、今日は家に帰って寝る事にするよ。ヴァイス、帰るから馬車の用意をお願い。あ、オズ達はどうする?」
「………俺も、一緒に行く。それと、大丈夫か?」
オズは、どこか気づかうような、心配そうな表情でユラを見ている。周りも、無言だが心配そうだ。
「あの薔薇、確か季節外れの花だけどブラックバカラだよね?この流れは、ベーゼからなの?」
クルトは、ユラを見るがユラは表情を隠した。
「さぁ、どうだろう。」
ユラは、分かんないとジェスチャーして笑う。
「ユラ様、馬車の用意が出来ました。」
「うん、今すぐ………っ!?」
ユラは、素早く剣を抜くと剣を受け止めた。
「お前が、何故……何故に光なんだ!」
なるほど、理解した………。そうか、彼は邪悪な力のせいで傷ついて来たのだ。それは、恵まれている僕を恨み、敵意を持ち殺したいはずだよね。
「知らん、好きで光になったんじゃないだし。僕だって、人間で居られるならば人間でいたかった。でも、僕には選ぶ権利は無かったんだよ。分かる?君は、僕の立場を羨むけど僕は地位も名誉も、神族という種族だって全て欲しくなかった。僕が求めるのは、平和で自由な暮らしだけだったから。」
すると、ベーゼは驚いた表情をして固まる。
「君は、自由でしょ?自ら、縛られる地位に立つ必要は無いんだよ?それでもと、言うのならば主神様に、自らの役割を問えば良いよ。さぁ、去れ。」
ユラは、無表情で感情を隠す事なく言う。最初は、ベーゼも戸惑いを隠せなかったが言う。
「でも、いつか俺はあんたを殺すだろう。」
「別に良いけど、カリオス達が死ぬまで僕も全力で抗うよ?まぁ、死んでからも一応は抗うけど。」
ユラは、ケロッとした表情で暢気に笑う。
「あんたの代わりは、いくらでも居る。だから、俺はあんたを殺して次代も殺し尽くす。」
「そう、それは大変だね。まぁ、頑張って。」
ユラは、素っ気なく笑うと剣を納めて歩く。
「何故、お前は怒らない!代わりが居るとか、失礼な事を言う俺を許す!お前は、穢れている!」
「まぁ、代わりが居るのも、穢れているのも事実だからね。僕は、爆弾持ちだし恐怖の対象だし。」
すると、ベーゼが驚いてから悔しそうに、何か呟いて消えてしまった。だが、ユラには聞こえた『その爆弾さえ、他人に押し付けられた物だろ!』と。
まぁ、良い子なのだろう。あの子が、二十歳になれば邪悪な力は彼を取り込んでしまうんだろうなぁ。
それが、とてつもなく悲しかった。
ユラは、また歩き出し馬車に乗る。
邪悪から、解放される術はただ1つ。対なす、僕を殺す事だからだ。だから、彼は僕を殺すしかない。
知っていた、だけど知りたくなかったな。
「ユラ、爆弾ってどういう事?」
「………ごめん、話せない。」
「「…………ユラ?」」
ユラは、黙り疲れたように目を閉じた。
ユラは、馬車を降りると自室に戻った。ユラは、久しぶりの眠気に驚きながら、眠気を振り切る仕草をする。しかし、書類の確認中に、うっかり寝てしまうのだった。余程、疲れていたのだろう。
「ユラ、寝るならベッドで寝たらどうだ?」
「あちゃー、寝落ちした。今は、何時………」
オズの声で、ハッとして落ち込む。そして、時間を確認しようと顔をあげて、そこに全員が居る事の気づいて固まる。そして、時間を横目で確認。既に夕方で、自分が寝すぎているのに気づいた。
「働きすぎ。僕らに、気付かないくらい深く眠るだなんて。やっぱり、疲れてるんじゃない。」
カリオスは、怒った表情でユラに言う。
「うん、ごめん。今から、寝てくるね………」
ユラは、書類をヴァイスに渡してから立ち上がる。
「ユラ、その前に質問に答えて。」
「あー、質問によりけりだね。一応は、僕も神様だから黙秘しないといけない事もあるし。」
ユラは、目を擦りながら暢気に言う。
「それは君が、神々から怖がられてる事や、穢れている事…………そして、爆弾の事も含まれる?」
すると、ユラは一瞬だけ動きを止めたが言う。
「穢れているのは、邪竜の力がまだ存在しているから。他は、残念だけど言えないかな。」
ユラは、困った笑顔でカリオスを見る。カリオス達は、不機嫌そうにユラを見ている。言っても、何も変わらない変われないのだ。だから、諦めよう。
「最近、ユラは困ったような、悲し気な笑みを浮かべるよね。それは、君が抱え込む事柄なのかな?」
「カリオス、変な探りは止めて?」
ユラは、突き放すように言うと隣の部屋に行った。
明日は、大会会場に行く日だね。はぁ~………。
カリオス達を、なるべく神々関係の事は遠ざけたいと思った。彼らが、簡単には傷つくとは思ってはいない………けど、巻き込みたくないし、傷つくのを見るのも嫌だった。だから、突き放すしかなかった。これは、僕のくだらない我儘……。そう、我儘だよ。
「おはよう、副団長任命のお祝いだ。後、ベーゼが乱入したらしいな。すまん、予想外だった。」
「おはようございます。そして、ありがとうございます。まぁ、そこは………仕方ないですよ。」
主神は、真剣にユラを見てから言う。
「ごめんな、ユラ。今のお前が、不自由なのは俺のせいだ。本当は、怒っても良いんだぜ?」
「怒っても、現実は変わりませんからね。」
ユラは、暢気に笑うが主神は悲しそうだった。
「神々は、お前が世界の理を覆した存在だと知っている。だから、恐れ怯え従うんだろう。しかも、その力が制御不能とか爆弾だよな。ごめん、本当に。俺は、お前に死んで欲しくなかっただけだった。」
「別に、気にしていませんよ。どうせ、神々とは必要最低限しか会いませんし。神の姿に、変わる事も少なくしています。でも、カリオス達が知れば、神々が彼らに何をするか分からない。だから、神々の関係する事に彼らを、巻き込まないよう手伝ってくれませんか?あくまで、これは僕の我儘です。」
ユラは、心配そうな不安そうな表情をする。
「………お前は、それで良いのか?」
「自分のせいで、大切な彼らを失いたくない。」
それは、紛れもないユラの本心。主神は、真剣に考えていたが優しく笑う。そして、暢気に言う。
「まぁ、久しぶりの我が子の我儘だ。分かった、出来るだけ手伝うよ。でも、神々の方の身内はちゃんと頼る事。良いな?じゃあ、俺は帰るからな。」
ユラは、素で嬉しそうに笑うと主神を見送った。
さて、そろそろ準備して。
「おはよう、ユラ。」
「カリオス?おはよう。」
ユラは、キョトンとして笑う。
「良かった、いつもの顔色に戻ったね。」
「僕って、そんなに顔色が悪かった?」
ユラは、眼鏡をかけて白衣を着てから言う。
「まぁ。朝食は、移動中に食べる事になったよ。」
ユラは、鞄を持ち身だしなみをチェックして歩く。
「師匠、行ってらっしゃい!」
「ノア、早起きしたの?」
「はい、師匠。たまには、休んでくださいね?」
「ありがとう、行ってきます。」
ユラは、親として優しくノアを見て笑う。ノアとヴァイスに、見送られて馬車に乗るのだった。




