嬉しくない花束
カリオスは、団長室で書類を見つめため息を吐き出した。全国で、最強の魔法騎士・騎士を決める大会がそろそろ行われる。それに、出ないかと言われたのだ。本音を言えば、何故そんな技術をさらすような、大会に出なくてはならないのか理解できない。最強なんて、カリオスにはどうでもいいのだ。
本人は、最強の自覚が無いので仕方ない。
「まったく、面倒なものだよねぇ…………。」
カリオスは、書類をゴミ箱に投げ入れる。後数分ぐらいで、休憩なのでユラに愚痴を聞いて貰おうと、お茶の準備をするのであった。
だが、その他は来てもユラは来ない。
「シアン、ユラはまだ仕事をしているの?」
「あー、それな。そろそろ、来るんじゃないか?」
シアンは、苦笑を浮かべて言葉を濁した。すると、ユラの不機嫌な声と、ユラを説得するような男の声がする。ユラは、仕事の邪魔をするなとピシャリと言うと男は下がった。そして、ユラはため息。
そして、ドアが開いていつもと変わらないユラが、暢気に入ってくる。まぁ、明らかに疲れているが。
「あの男、なかなか諦めないよな。」
「まぁ、僕のネームバリューは医療関連では凄まじいからね。何せ、国際医療同盟が僕のネームバリューを無断で使った組織を、塵も残さず消滅させてるから必然的こうなっちゃうんだよ。」
シアンの言葉に、遠い目で答えて椅子に座るユラ。
「何か、ユラも大変なんだね。」
「まぁね。でも、カリオスも大変だよね?」
ユラは、僕が話しやすいように空気を読んでくれたようだ。確かに、愚痴を聞いて貰おうとは思っていたんだけど………。うん、ぶっちゃけようかな。
「そう言えば、カリオスは大会に出るのか?」
レオは、なんの話をしたいか理解して言う。
「僕は、大会に出ないよ。だって、面倒だし。」
ぶふっ! カチャーン! ポカーン………
あれ、シアンとユリスが吹き出した。ベイルとレオは、動揺してティーカップを置く。クルトとオズ、そしてパゴンと冬馬は思わずポカーンとしている。
それに対して、ユラは暢気に笑ってから言う。
「だよねぇー。何で、手の内を相手に見せる大会に出ないといけないのやら。僕も、そう思った。」
「うん、そうそう。なのに、面白くないとかさ。」
カリオスは、苦笑しながら困ったように言う。
「まぁ、分からなくは無いが意外だな。」
「カリオス、真面目な性格だと思っていたけど。それも、ユラ君が居てこその性格なのかもね。」
レオとユリスは、笑ってから暢気に言う。それから暫く、愚痴や仕事のストレスを言い合うのだった。
すると、ベガが入ってくる。
「ユラ、君に花が届いたんだけど………」
「花?誰から?」
ユラは、キョトンとして言う。
「それが、書かれてないんだ。しかも、全ての花が折られててさ。確認したら、元々から折れていたらしいよ。花を渡した、人の顔も分からないし。」
「何だ、嫌がらせか何かか?」
そこで、皆は気づいた。ユラが、冷たい瞳で黙っていたことを。そして、ユラはゆっくりと言う。
「もしかして、折られた花は白い薔薇?」
すると、ベガは驚いてからユラを見る。
「え?えっと、何で分かったの?」
「ふぅ………、まさか死を望まれるとは。」
すると、全員が驚いて固まる。
「ユラ、どういう事なの?」
「折れた白薔薇の、花言葉は【死を望む】だよ。」
ユラは、そう言うと紅茶を飲み苦笑して言う。
「昨日は、オトギリソウだった。まぁ、時期では有るけど、人に送ってはいけない花だよね。」
カリオスは、嫌な予感がしてユラに聞く。
「ユラ、オトギリソウの花言葉は?」
「…………それは。」
ユラは、言うか迷う仕草をする。しかし、カリオス達の真剣な表情に、根負けしてしぶしぶと言う。
「オトギリソウ、花言葉は【恨み】【敵意】。」
シーン………。その場を、沈黙が支配する。
カリオス達は、深いため息を吐き出す。
「まぁ、仕方ないよ。貴族って、そんなものだし。さて、紅茶でも……カリオス?おーい、カリオス?」
「うん、分かった。」
カリオスは、満面の笑顔でそう呟くと言う。
「やっぱり、大会に出るよ。ただ、担当医をユラにしよう。その間に、ユリスとベイルは犯人を捕まえて、罰しててくれない?僕達が、居ない方が動きやすいでしょ?僕とレオ、それとユラとシアンが居れば大会は何とかなるし。どう、良いかな?」
『賛成、それで行こう!』
「え?ちょっ、行かないよ?」
ユラは、驚いてから思わず言うが………
「はいはい、研究はベガとヘルズに任せるから。」
シアンは、笑顔でベガと頷きながら言う。
「いや、だから………そう言う問題じゃ…………」
「そう言う、問題だからまかせてー。」
ユリスは、笑顔で手をヒラヒラ振る。
「待って、僕の話を……聞い『聞かない!』」
ユラは、言葉を潰されて困った表情を浮かべる。
「あのさ、何でこんなにいきたくねぇの?」
オズが、真剣な表情でユラを見る。
「カールナク王国には、二人の守護神が居る。万が一に、何かあっても神力は使えないからさ。」
「万が一?でも、使えないって?」
ユラは、困ったように考えてベガに花を持って来てもらう。すると、花が化け物になって襲って来る。
あっさり、ユラが無力化して灰になったが。
「分かった?花が、化け物になったのに使われたのは神力。つまり、神がらみ!行けば、力が使えない僕は獲物。それに、人間の姿の僕に二人が跪いたら大変な事になっちゃう。僕は、基本は監視者だから神力は、滅多に使っちゃいけないし。」
「なら、クルトとオズを護衛に連れていこう。せっかくだし、観光とかして羽伸ばしすれば?」
聞いてた?これ、神様と貴族がらみだよ?下手すれば、死んじゃうんだよ?何を、考えてるの?
「とにかく、僕は自分で何とかするから。関わらないで、すぐに終わらせるから!」
「駄目。君は、背負いすぎだよ。」
ユラは、花言葉を言った事を後悔しながら動く。
「主神様から、手紙をお預かりしました。」
ヴァイスが、素早く扉をふさぐ。ユラは、手紙を読んでから思わず手紙を破り捨てる。
「ヴァイス、主神に伝言を頼むけど良い?」
「はい、承ります。」
「残念だけど、後手に回った今……既に、手遅れ。」
「…………っ!?そうですか、ですがユラ様が自ら動くのは禁止です。眷族に、命じてください。」
ユラは、少し考えてから首を横に振る。
「あいつを、眷族だけでは押さえられない。ヴァイス、これは僕の仕事だよ。ましてや、相手が僕を殺したいなら好都合……。だから、カリオス達を止めてくれる?死ぬ事は、絶対にないから安心して。」
「しかし、ベーゼは………邪神は貴方を………」
その言葉で、全員が驚いた。ベーゼは、ハイリヒと対なす存在だ。ハイリヒは、神聖ならベーゼは邪悪を意味する。要するに、ユラの対なる存在である。
「さて、お仕舞い!出掛けるから、今日は帰らない予定だよ。だから、後は任せ………放して?」
「駄目。ユラ、お話しをしようか?」
「ごめん、急いでるからあとで…………主神様!?」
「ハイリヒに、主神として命じる。大人しく、カリオス達に任せとけ貴族方面はな。神族方面は、俺が全員で叩き直す予定だし。お前、働きすぎ。強制的に、眠らされたくないなら、言うこと聞こうな。」
ユラは、何か言いかけて口を閉じた。そして、小さくため息を吐き出して無言で頷く。
「じゃあ、遊んでこい!」
「え?いや、主神様が動くし行く意味も無いよね?このまま、研究を続けてても…………」
主神は、笑顔でヴァイスに指示を出す。
「ヴァイス、準備しといてくれ。」
「かしこまりました。」
ヴァイスは、笑顔で退室してしまう。
「ユラは、もう少し力を抜くべきだ。まぁ、色々と次から次に起こって、気が抜けないのは分かる。でもさ、仕事ばかりで遊んだりしてないだろ?」
「それは、その………」
研究が楽しいから、別に構わないとか言えない。
「あれなら、こっちの仕事は、他の神々に割り振るからさ。たまには、気ままに羽を伸ばせば?確か、1ヶ月間の主張だよな。ノアも、そろそろ14歳だろ?だから、もう気づかわなくて良いんだぜ?」
これは、タイミングを狙って入って来たね。
「……分かりました………。」
ユラは、苦笑してから頷いた。
「ユラ、明後日は副団長任命式だ。一応だけど、白衣とかサイズを計り直すから後でな。」
シアンは、思い出したように言う。
「ついに、ユラも副団長になっちゃうね。」
「別に、このままでも…………」
「お前な、逃げられると思うなよ。俺達でさえ、逃げられなかったんだからな。」
「はぁ………、面倒くさい……………。」
ユラは、そう呟くと出ようとする。すると、オズがさりげなくついてくる。ユラは、苦笑する。
「出発日は、副団長任命式の次の日だ。それまで、俺達と行動する事になる。貴族的な、問題だ。」
ユラは、頷いて帰る準備をするのだった。




