昔からの契約
カリオスは、目を閉じて眠りにつくユラを見る。
そして、小さく詠唱を始める。
「契約………。カリオス・テナードは、竜神ハイリヒの重荷をともに受け止めて支えよう。対価に、寿命を支払い賭けには記憶を賭けよう。」
紫の魔方陣が、カリオスの足元に浮かび上がる。
カリオスは、吐血して苦しげに座り込む。
「カリオス!何故です!なぜ、ユラ様が悲しまれる契約など!そんなこと、ユラ様は………」
「うん、分かってる。ユラが、そんな事を望んではいない事くらい。でも、ユラの為だからね。」
カリオスは、笑顔で笑うと血を拭いフラフラと立ち上がる。ヴァイスは、慌ててカリオスを支える。
「大丈夫、ユラなら分かってくれるよ。」
「そう言う、問題じゃありません!」
それから、2週間が過ぎた。
カリオスは、パーティー会場で皇帝に声を懸けられる。ユラは、どこにいるのか?だ。
皇帝は、白髪に赤い瞳の青年だ。
「ユラは、どこにいる?」
「さて、私にも存じませんが。」
カリオスは、笑顔で首を傾げる。周りは、警戒体制で身構えている。皇帝は、一瞬だけ魔眼を使う。
しかし、カリオスには届かない。竜神の加護が、カリオスにはあるので、呪いや邪眼の類は弾かれてしまうのだ。皇帝は、何故か笑っていた。
「へぇー、あのユラが人に心を許すとは。化け物のくせに、大人しく鎖に繋がれれば良いものを。」
「それは、違います。もともと、彼は人間でした。強いだけで、化け物と言うのであれば…………私や皇帝様も、同じ穴のむじなだと思いますが。」
カリオスは、暢気に笑い否定する。皇帝は、驚いてから笑う。そして、カリオスを見ている。
「私に、意見するな!殺すぞ?」
攻撃魔法を、カリオスは魔法を無詠唱で完成させて弾く。カリオスは、杖を抜いてから構える。
「これは、我儘な子だな。」
この時、契約の賭けが発動する。ここで、カリオスが倒されればカリオスは、対価に記憶を失なう。
「カリオス、手伝うよ。」
ユラの声が、広場に響くとカリオスは身体が軽く感じる。そして、魔力を使っても減らず疲れない。
しかし、ユラの姿は見えない。
「ユラ様の命で、カリオス様を負けさせるなと命じられました。出来るだけ、サポート致します。」
ヴァイス含む、四人は天使の姿で現れる。ヴァイスは、呆れたようにカリオスを見てから言う。
「カリオス、ユラ様からの伝言です。では、『後で、覚えてろ!後悔させてやる!』だそうです。」
「あはは………、ユラは激怒してるんだろうな。」
すると、青年の姿のユラが背後から現れる。
「そうだね、かなり激怒しているよ。」
「どわぁー!?もう、いきなり現れないで?」
「さてさて、カリオスは契約を今すぐ解いて。」
「えっと、禁術だから少し難しいかな。」
ユラは、悪戯な笑みを浮かべる。
「じゃあ僕は、カリオスの事をご主人様って呼ばないとね。だって、契約を解除しないんでしょ?」
「なっ!?」
カリオスは、驚いて言葉を失なう。
「と言う訳で、ご主人様を失なう訳にはいかないんだよねぇ。だから、一瞬で潰してあげるよ。」
ユラは、竜神器である竜神紋の神聖杖を構える。
「待って!何で、主従の契約はしてないよ!?」
「はーい、そんなカリオスに質問!」
満面の笑みで、はっちゃけた口調のユラ。
「えっと、何かな?」
「僕が、カリオスと出会った時の会話を覚えてる?森の外まで、全力の追いかけっこしたでしょ?」
「えっ、うん……。確か、君に街までの道を聞かれてから怪しかったから話して………。」
カリオスは、思い出しながら暢気に言う。
「うん、竜神様が僕を森の中に放り出して放置。」
「それで、名乗ったらいきなり君が逃げた。敵では無いのは、何となく分かっていたけど、見た目も幼いし心配で僕も全力で追いかけたんだ。」
「うん、本当に全力の追いかけっこだったよね。」
ユラは、暢気に思い出したように笑う。
「それで、逃げないように言って…………」
そこで、カリオスは言葉を止めて青ざめた。
「ユラ!何で、言ってくれなかったの!」
「うーん、何の事かな?」
ユラは、肩を震わせて笑いを堪えている。
「つまり、出会った日からずっと主従の契約を?」
「Yes♪と言う訳で、君は僕の主なんだよね。」
「待って!普通、神様と主従の契約は………」
「契約した時、僕は人間だったもの。しかも、実力は君より下で弱い見た目は5歳くらい。」
カリオスは、撃沈したように俯く。苦笑して、ユラを見てから真面目に言う。
「でも、神様とは主従の契約は出来ないよね?」
「いや、出来るよ?ただし、その神がその者を主と認めた場合だけど。僕は、友人である君の力になりたくて契約を受理した。この国は、医者不足と聞いたから外に学びに行って帰って来たしね。」
カリオスは、疲れたように苦笑している。
「あー、なるほどね。よし、契約を解除……」
「それは、そこのバカ皇帝を倒してからね。」
「了解だよ。」
二人は、武器を構えるのだった。




