本音
ヴァイスは、深い眠りについたユラを見る。主神の神魔術で、新たな肉体を得たが力が弱まり、魂が肉体を受け入れるまで深い眠りについてしまった。
ちなみに、力が弱まった事により子供の姿だ。
いつものユラは、落ち着いていて素直じゃないが、根はとても心優しい穏やかな性格だ。
少しだけ、ひねくれた所もあるが、それも性格に味を出していて親しみやすい。
「そう言えば、ユラ様にも主神に与えられた護衛天使と戦闘天使が居るはずなのですが。1度も、お会いした事はありませんね。」
ヴァイスは、ユラを見てから苦笑する。
きっと、護られる事になれていなくて逃げたとか?
そこで、ヴァイスは真剣な表情になるとナイフを構える。すると、3人の天使が入って来る。
「えっと、ユラ様の様子を見に来ただけだ。俺は、ユラ様に使える戦闘天使長のジルだ。」
「私は、ユラ様に使える護衛天使長のライフだ。」
「僕は、ユラ様のお世話係天使長のミラルだよ。」
ヴァイスは、警戒しながら構えを解き一礼する。
「ユラ様の、執事兼お世話係であるヴァイスと申します。現在は、主神の命でユラ様の守護天使をしております。全ては、私が悪いのですが…………。」
すると、3人は苦笑している。彼らは、実は知っていた。ヴァイスは、神々に命じられた日に何度か命令を断った。神々は、イラつき怒りからヴァイスから大事な感情を奪ってしまったのだ。
ヴァイスは、そのせいで弱体化してしまい、神々の命令に逆らえなくなってしまった。
勿論だが、ユラにも素早くその事を伝えてあった。
だから、ユラはヴァイスに怒りを向けた、カリオスを止めようとした。ユラは、知っていたうえであえて毒を飲んだのだ。命令が、実行されればヴァイスの弱体化や感情が戻るのを知っていて。
それに、今のユラは長くはなかった。魂が器を、大きくうわまわり不安定な状態をだったからだ。
「お前は、悪くない。俺ら天使は、神々のお言葉には逆らえん。ユラ様も、そうおっしゃられていた。むしろ、事情を聞かずに放置していた自分に、腹が立つと珍しく苦々しい表情を浮かべておられた。」
ジルは、笑顔で励ますように明るい口調で言う。
「あれは、私らも驚きましたよね。ユラ様は、天界では感情を余り出しませんでしたから。」
ライフは、思い出したように苦笑している。
「でもさ、ユラ様は優しかったよ?感情は、どちらかと言うと押さえ込んでいたから無表情に見えてただけで。基本は、無言だったけどね。」
ミラルは、暢気に笑いながら言えば驚く3人。
「ユラ様は、天界に行かれたのですか!?」
ヴァイスは、驚いて思わず目を丸くする。
「はい、1週間だけですが。ユラ様は、2日で帰る予定でしたが神々の力で部屋に閉じ込められてしまい。出入りは、私達しか出来ないようになり………。主神様が、激怒してお屋敷を崩壊したので、ユラ様はそのまま下界に黙って帰られてしまいました。」
ライフは、悲しみと苦痛の表情を浮かべている。
「でもさぁ、ユラ様は下界だと生き生きしてて僕達はとても嬉しかったんだ。だから、ヴァイス。」
ミラルは、心からの笑みをヴァイスに向ける。
「「「ユラ様を、頼んだ。」」」
3人は、頭を下げて笑う。ヴァイスは、嫌な予感がして思わず3人に思った事を言ってしまう。
「まさか、貴方達が次は命じられたのですか!?」
「そうだ、そして断った………もう、天界で俺達の居場所は無いに等しい。有らぬ罪で、断罪されるのもきっと時間の問題だろう。だから、最後に我らが主に顔を見せに来た。気にするな、こうなる事は分かっていた。だから、特に何も思わない。」
3人は、苦笑して悲しみを浮かべる。
「そう、やっぱりなんだね………。」
4人は、驚いて振り向く。ユラは、眠気を振り切り起きあがる。ユラは、静かに涙を流した。
「ユラ様!寝ていないと!」
「誰かを、犠牲にするくらいなら……命なんていらない!助かっても、そこに君達が居ないのなら………!こんな命、あっても意味が無いじゃないか!」
心を引き裂かれ、ついに溢れる感情………思わず、叫ぶようにユラは本音を吐き出した。
扉越しに、主神とカリオスはユラの本音を聞いてしまい固まる。ユラを、また泣かせてしまったと。主神は、愛する息子を傷つけてしまったと。
ユラは、子供のように泣き止まない。押さえ込んでいた、恐怖や苦痛などの感情が溢れて、自分でも押さえ込む事が出来なくなったのだ。
唯一の救いは、ここにノアが居なかった事だろう。
「ユラ様………」
「何で……、何でこんな事になったんだろう………。」
ユラは、神々の執着に心から震える。
「ユラ、お前が泣くなんて珍しいな。」
「主神様………。」
「まぁ、姿が子供だから違和感が無いが。」
ユラは、カリオスが居る事に気づいて顔を隠す。
「ユラも、怖いとか思うんだね。」
「カリオスは、忘れているようだけど、僕は元人間だよ?弱くて、小さな命だったんだ………。」
ユラは、顔を隠すのをやめる。そして、苦笑する。
「にしても、今のユラの姿……懐かしいね。」
「そうだね。カリオスと、出会ったのもこの姿くらいだった。最初は、楽しかったのになぁ………。」
ユラは、笑顔を浮かべてからため息を吐き出した。
「ユラ、そろそろ眠れ。余り起きてると、後で痛い目にあうのはお前だぞ。それにしても、強くなったな。もう、眠気に抵抗が出来るなんて………」
主神は、言葉を続けられなかった。
もう、俺の力の領域を越えてしまったのか。
なんて、簡単には口に出せない。今現在、ユラは最強の主神ユニバースの実力を軽く凌駕している。
しかも、ユラの力は………まだ、伸び代がある………。
主神は、早めに天界の事を片付けてユラを守らなければと思う。このままでは、竜神として暴走状態を起こすだろう。そうなれば、もう………誰にも止められない。世界は、消滅されるだろう。
「はい、主神様………おやすみなさい。」
ユラは、眠そうに小さくあくびをして横になる。
「おう、おやすみ。」
ユラが、再び深い眠りについたのを見て、主神はため息をつく。そして、決意の眼差しでユラを見た。
「ごめんな………。」
そう言うと、ユラの神力を封じて神眼の力を増やしユラに大きなダメージを与えた。ユラは、激痛に思わず声にならない悲鳴をあげる。そして、抵抗は出来なかった。ユラは、ぐったりとして闇に意識が呑み込まれた。ユラは、悲しみに涙をこぼした。
「何で、ユラにダメージを!?」
「今のユラは、強すぎる。これでは、あいつらの執着を酷くさせるだけだ。俺だって、出来る事なら傷つけたくないよ。だって、我が子だぜ?」
主神は、辛そうな表情で拳を握る。
「……ユラは、大丈夫なんですか?」
「見れば、分かるだろ?重傷だし、暫くは医者としても冒険者としても使い物にはならない。」
主神は、掠れた声で苦しげに答える。
「ユラは、回復しますか?」
「一段落すれば、治しに行くさ。同時に、俺はユラと縁を切る予定だ。だから、帝国の件は任せた。」
カリオスは、静かに頷いてユラを見つめたるのだった。主神は、無言でその場を去った。




