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ノア

カリオス達は、ユラが深く眠りについてから、必死に仕事を進めていた。ユラが背負う、いくつもの問題を少しでも軽くするためだ。


「あの、皆さん?良ければ、区切りの良いところまで終わらせて少し休憩をしませんか?」


ノアは、そんなカリオス達に感謝する一方………身体を壊さないか、などの心配していた。


なので、こまめに顔をだしお茶を入れて、息抜きにお菓子を持参するのであった。しかも、流行りのお菓子を持ってくる事からして、ユラ同様に甘いものがとっても好きなのだろう。うん、可愛い…………。


まぁ、簡単に言うと昔にユラがしていた事をしているのだ。違うのは、ユラの場合は手作りのお菓子でノアは買ったものという事だけ。


「うーん、もう少しだけ書類を…………」


「はい、カリオス様ストップ。シアン様も、研究資料を見て何も思いつかないのでしょ?それなら、1度息抜きにしましょう!ユリス様も、資料に目を通しながらとか許しませんよ!オズさん、資料を没収です。クルトさんは、きっぱりストップしてますし大丈夫そうですね。レオ様、台所をお借りしても良いですか?お皿とかも、割らないようするので。」


カリオス達は、思わず思ってしまった………。君は、まるでお母さんみたいだ。いや、男だから違うか。


「食器は、自由に使っても構わない。」


「なら、私が紅茶を入れるのでノア君はお菓子をお願いしますね。オズ、ノア君を手伝ってあげて。」


レオは、優しく笑って言う。ベイルは、身長の低いノアを気づかって自分から動く。


「はい、ベイル団長。さて、皿は確かここに………ほいっと。この皿で、良いかな?」


「はい、ありがとうございます。」


すると、資料から目をはなしていたユリスが驚く。


「えっと、ノア君って………実は、ノアちゃん?」


「………っ!?えっと、はい…………。」


すると、全員が驚いた表情をしている。


「まさか、男の娘だとは驚いた…………。」


「ええっと、ユラは知っているのかい?」


オズとクルトは、戸惑いながら言う。


「はい、師匠は知っています。あっ、でも師匠は悪くないんです。僕が、我が儘なだけであって。」


「どう言う事かな?」


カリオスは、キョトンと首を傾げる。


「えっと、そのですね………。師匠は、僕が女だと分かると、女の子らしく生活が出来るよう手を尽くしてくれました。ですが、僕は………医者になるのと同じくらい冒険者にも憧れたんです。」


「まぁ、普通の親なら断固反対するよな。」


シアンは、真剣な表情でノアを見ている。


「はい、反対されて説教されました。」


「そりゃ、そうだわな。幼い女の子が、冒険者なるにはかなりのリスクを背負う事になるし。」


「そうなんですよ。だけど、冒険者になりたくて師匠と本気の喧嘩したくらいです。」


すると、カリオス達は思わず笑う。


「まぁ、ユラは君を思って言ったのかもね。男女差別が、表面化しなくなったとは言え、ギルドにも騎士団にも男女差別のな残りや溝はやっぱりある。ユラは、知っていて君を守ろうと反対した。かな?」


「はい。当時の僕には、全く伝わりませんでしたけどね。冒険者をして、男女の差別意識を体験して師匠の気持ちを知れました。正直、怖かったです。師匠が、助けに来なかったら確実に死んでました。」


ノアは、苦々しく言う。 


「だろうね。君は、顔立ちが良いから暴力以外でも狙われるだろうし。ユラからすれば、頭の痛い話であり胃の痛む問題だろうけど。」


カリオスは、紅茶を飲みながら笑う。


「それで、実力をつけて自分の命を守れるようになる事。暫くは、男の振りをして立場と言う足場と、実績と言う権力をつけるように言われました。そうすれば、後は自由にしても構わないと。」


「まぁ、それが妥当だろうな。」


シアンは、ティーカップを置いて頷く。


「はい。だから、見破られたのがショックで。」


「まぁ、ユリスは暗部団長で観察力が高いしね。」


カリオスは、慰めるように言う。


「しかも、師匠には男装がばれたら課題を増やすって言われてますし…。うわぁー、どおしよう……。」


それを見て、皆は思わず吹き出すように、ひとしきり笑ってから優しい表情で頷く。


「だからか、ユラの出した戸籍に君の名前があったけど性別が空欄になってた。貴族戸籍の隠蔽は、重罪だからね。ユラは、一応だけど君の逃げ口を残しているようだよ。何かあっても、君が戸籍や書類で苦しまないように抜け道を見つけてね。」


「まぁ、ユラらしいって言えばユラらしいな。」


カリオスとシアンは、思わず優しく笑う。


「本当に、ノアはユラに愛されてるな。」


「ユラの、親としての本気を感じますね。」


レオとベイルは、羨ましげな表情で言う。


「ユラも、親として頑張ってるんだね。」


ユリスは、ケラケラと明るく笑う。


「ユラは、身内には砂糖のように甘いからな。」


「本当に、ユラが親で良かったね。」


オズとクルトが、暢気な表情で笑って言う。


「はい!僕も、師匠が大好きです!」


「それは、ユラに直接に言ってやりなよ。」


カリオスは、紅茶をゆったり飲んで笑う。


「言ってます!でも、いつも反応が薄いんです。」


「それって、照れてるだけじゃない?ユラは、気難しい性格だから、誤解されやすいけどさ。」


カリオスは、少し困ったように頷いて、視線をそらすユラを想像してクスッと笑う。


「そうですかね?」


「君が女性・・・として、ユラが好きだとしたら話は別だけどね。あっては、ならない事だし。」


カリオスは、顔を赤らめるノアを見て確信した。それは、ユラの反応が薄いはずだ。ユラは、ノアを我が子として見ている。恋愛感情など、微塵もないし親から子への愛しかあげるつもりはない。


ユラは、ノアの恋愛感情を見抜いている。そして、あくまでも自分は親だとわざと加減して薄い反応をしている。カリオスは、距離関係に苦労しているだろうユラに、良くやったと心の中で褒めてあげた。


「えっと、何であってはならないんですか?」


「…………法律上だけど、身内の家族との結婚は禁止されている。例え、血が繋がっていなくてもね。」


カリオスは、真剣な表情で冷たい現実を教える。


「それは、少し残念ですね。まぁ、師匠が女性として僕を見ていないので望み薄でしたが。」


「それに、ユラは竜神だ。どうせ、全ての者に置いていかれてしまう立場にある。僕ら長命種族さえ、ユラより長くは生きていられない。ユラは、いずれ独りになる。でも、もし自分の血が繋がった子が出来れば、きっと後悔すると思う。我が子が、独りになるからね。だから、ユラは恋をしない。」


カリオスは、苦笑してノアが運んだケーキをゆっくり食べた。皆も、苦笑してお茶を飲んだりする。


「だから、今のうちに諦めていた方が良いよ。」


「はい、少し複雑ですけど分かりました。」


ノアは、失恋に苦笑するのだった。

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