白の監視者
ユラは、息をついて座り直す。大切な話だと、主神が言ったので落ち着いて対応しようと思ったのだ。
カリオス達も、主神の会話を聞く体勢になる。
主神は、壁に寄りかかり真剣な表情ユラを見て言いずらそうに言う。
「話す前に、ユラは天界に帰る気は………」
「ないです。」
ユラは、真剣な瞳で不愉快そうに即答する。カリオスは、ユラの空のティーカップに紅茶を入れる。主神は、困ったようにユラを見ている。
「暫くで、良いんだ!それこそ、2日でも……」
「嫌です。」
ユラは、短く答える。そして、カリオスに礼を言い紅茶をゆっくりとした動作で飲む。
「ユラ!少しでも、天界に顔を出さないと期待している神々が…………ユラ、聞いているのか?」
「こっちからすれば、言自分勝手な理想を押し付けないでほしいです。それに、天界に戻れば部屋に監禁されるだけですし。自由を奪うなら、やっている事は帝国と同じだって事にいい加減に気づいて欲しいですね。主神様も、分かっているはずです。」
ユラは、怒った表情で真剣に主神を見る。カリオス達には、何となくユラの気持ちが分かった。カリオス達も、団長だからと身勝手な理想を押し付けられた苦しんだ過去があるからだ。
「……確かに、主神の立場は言わば枷だ。俺だって、常に誰かに見られているしな。でも、他の神々に顔を見せるだけでもしないと。でないと、他の神々が暴走してノアにだって手を出すかもしれない。」
「それは、約束と違います。彼らは、カリオス達が死んで一人になってからの自由を奪うかわりに、僕の身内には死ぬまで手を出さないと………」
ユラは、そこで言葉を止める。カリオス達は、ユラに説明を求める視線を向ける。ユラは、しまったと思ったが主神は怒りを見せている。
「あいつら、俺にはユラが悩んだ末に快く引く受けたと報告してきた。約束とか、そんな話は聞いていない。随分、舐められたもんだな。」
「ユラ、怒らないから説明して…………」
カリオスは、ユラを気づかうように言う。
「ドラゴンに、レレット王国を襲うように仕向けたのは天界の神々だよ。僕が、主神になるのを拒んだから見せしめらしい………。カリオスが、傷付いて王国は大ダメージを受けた。次は、確実に殺すと言われた。だから、僕は仕方なく抵抗を諦めた。」
「嘘…………。君の心を、挫くために1つの国を滅ぼそうとしたって事なの?1つの国の民を、人質に取って………なおかつ、僕らまでも人質にしたと。」
ユラは、無表情で目から光が消え、感情を忘れたかのように有りのままを話す。それを見て、主神はユラの後ろから、ゆっくりを優しく抱きしめる。カリオスは、驚いてユラを見ている。
「ユラ、ごめんな………。」
「僕は、別に構わないよ。カリオス達やノアの死を見送れたら心を殺して人形になるだけだから。」
カリオスは、思わず怒った口調でユラに言う。
「それで、ユラは良いわけ?」
「………勿論、奴らが約束を守るとは思ってない。だけど、一部の神々に真名で誓わせる事が出来た。だから、少しは危険が減ったし後は……何でもない。」
ユラは、口をつぐむ。主神は、嫌な予感がしてユラを見る。ユラは、瞳に光を戻し苦笑する。
「僕は、そう言う事を聞いているんじゃない!」
「なら言うけど、100を越える数の神々相手に立ち向かえると思うの?勝てると思うの?」
カリオスは、思わず言葉に詰まり主神は崩れるように座り込む。沈黙が、部屋を支配した。
「ユラは、俺が憎いか?俺が、お前を作る手助けをしなければ……………もっと、自由を得ることが出来た筈なのに…………。ごめんな、ユラ。ごめん………。」
「別に、謝る必要はないですよ。あの、不器用な竜神様が全力を出しても僕は完成しなかったから。」
ユラは、紅茶を飲んで話は終わりっという表情を浮かべている。皆は、複雑な表情で渋々と頷く。すると、主神は真剣な表情でユラに聞いた。
「1つ聞かせてくれ、ヴァイスはお前を監視するために天界から送られた監視役なのか。」
すると、ユラは苦笑してから考えて濁して言う。すると、ヴァイスが入って来て真剣に言う。
「うーん、彼はどちらかと言うと味方ですよ。」
「ユラ様、別に構いません。答えは、Yesです。」
すると、カリオス達は息を呑む。
「ヴァイス、説明してくれる?」
「はい、カリオス様。私は、ユラ様の監視役を命じられて下界に参りました。ついでに、ユラ様の弱みを握る事を命じられました。そして、魔草であり毒草である、絶望を意味する魔毒草ディスペアーを少しずつ飲ませる事と言われました。勿論、かなり薄めて飲ませました。正直、罪悪感は有りません。」
カリオスは、無意識にヴァイスを殴っていた。ユラは、カリオスを止めようとするが身体が動けない。
「カリオス!主神様、放してください。」
「ユラは、君の事を心から信用していたのに!」
ヴァイスは、苦笑してカリオスに言う。
「神々は、ユラ様の件で私を苦しませないように、罪悪感などの感情を消しました。後ろめたい、暗い感情が無いから白と名付けられました。私は、穢い事を綺麗だと思っていたのです。」
「なるほど、君は綺麗だと思っていたから罪悪感はないと?反省は、するつもりはないと?」
ユラは、カリオスの魔力が膨れ上がるのを見て青ざめる。ヴァイスは、無言で立ち尽くすたけだ。
「ちょっ、落ち着いて!待って、カリオス!」
「いや、待たないよ。そして、許さない………。」
ユラは、再び止めようと声をだそうとしてグラッと視界が揺れる。ユラは、力なくソファーに身を預ける。それを見て、カリオスは驚く。
「ユラ!」
「カリオス、毒草の中毒症状だ。ユラ、しっかりしろ!意識は、朦朧だけどあるな。お前、ユラのティーカップに毒を仕込んだな。ヴァイス!」
シアンは、怒りに怒鳴る!カリオスは、青ざめるとヴァイスの胸ぐらを掴んだ。
「お前の主は、ユラを利用するんじゃなかった?」
「もし、使えない駒なら殺せと命じられました。」
ヴァイスは、苦笑して言う。しかし、ヴァイスは何故か涙を流していた。ヴァイスは、驚く。
「ふーん、感情は消されてなかったみたいだね。」
「わっ………、私は、罪悪感を感じている。何故?」
カリオスは、ヴァイスから手を放した。ユラは、虚ろな瞳で苦し気に息を乱しぐったりしている。
ディスペアー、別名は神殺しの毒ゴッドキラー。名前の通り、罪を犯した神を殺す為の毒である。徐々に蝕むタイプの毒で解毒剤は存在しない。
「ユラを、助ける方法が1つだけある。」
主神は、真剣な表情でユラを見る。
「それは、本当ですか!」
「実は、今のユラの肉体………器は、魂が大き過ぎて不安定だ。だから、1から新しい肉体を作ろうと思って来た。新しい身体に、ユラの魂を移動させれば生きてられる。ただし、暫くユラは無防備になるし深い眠りについてしまう。それこそ、殺された場合は殺された事に気づかず死ぬくらい深く眠る。」
カリオス達は、驚いて固まる。
「主神として、守護天使ヴァイスに命じる。ユラを害する、全ての敵を排除しろ!そして、目覚めるまで主ユラを守護せよ。ユラは、最後までお前を信じてた。ならば、お前はどうすべきか暫くユラを守護しながら考ろ。主神ユニバースが、命じる。」
「はっ、了解致しました。」
ヴァイスは、罪悪感と後悔に苦しみながら答えた。




