国際医療同盟の視察
さて、ついに医療同盟の視察の日になった。先輩達は、慌ただしく研究をしている。ユラは、視察の人がシアンに挨拶をしに来たので紅茶をいれる。
「まさか、ユラが紅茶を入れてくれるとはね。」
ユラは、変装を解除してから苦笑する。すると、視察に来てきた他の人達は驚いている。そして、先輩達も驚いて固まっている。そして、徐々に青ざめて罪悪感と尊敬の眼差しをユラに向ける。
「まぁ、お茶をいれるのは新人の仕事だから。」
「ふーん、それよりも報告書を頂戴。」
青年は、少し不愉快な表情で言う。ユラは、ディスクに向かい鍵つきの引き出しを開ける。そして、個人の評価を私情を混ぜずに書いた書類を取り出す。
もう一度だけ、確認してから頷いて青年に渡す。
「はい、こんな評価になった。」
「そう、これは酷いね………。一言で言えば、国の財産の無駄遣い。よし、クビにしよう。」
青年は、ペラペラと書類を見てからシアンにも渡して見てみるように言う。シアンは、表情をひきつらせ深いため息を吐き出してからユラを見る。
「ユラ、よく生きてられたな。」
「ふふっ、同盟の連中の方がやばかったし平気。」
ユラは、思わず優しい笑顔を向ける。これには、国際医療同盟の全員が驚いて目を丸くしている。
「えっ、ユラって普通に笑えたの?」
青年は、凄く動揺している。ユラは、呆れたようにため息を吐き出し仁王立ちすると氷の笑み。
「落ち着いて、国際医療同盟の盟主がこれくらいで動揺してどうするの。まったく、ティエロはしっかりして。シアンは、幼い頃からの身内なんだよ。」
「うん、ごめんなさい。だから、その笑みやめて?ユラさーん、怖いよ!?本当に、怖いって!?」
ティエロは、堂々としていたが根負けした。シアンは、盟主すら平謝りさせるユラに驚いて笑った。
「やっぱり、ユラは国際医療同盟でも特別な地位を築いていたんだな。相変わらず、知識や技術といった実力や腕前で他人を魅了させてるのな。」
「む?それは、褒めているのかいシアン?」
ユラは、シアンにジト目を向けている。
「黙秘権………(笑)」
「よし、今すぐ表に出ろ!タコ殴りだぁ!」
「うん、降参する。」
「えっ、降参はやい!?まぁ、良いけどさ。」
と言って、シアンとユラは互いに笑う。すると、カリオスが書類を抱えて入って来る。
「シアン、この書類…………あっ………また、後で来るね。そうだ、ユラも取り込み中かな?」
「僕の仕事は、ここで終わりだから構わないよ。」
ユラは、医療の先導者の仮面を外して素で穏やかで優しい笑みを向ける。カリオスは、嬉しそうに笑い書類を渡す。ユラは、内容を流し読みして頷く。
「うん、了解。納品期間が、書いてないけど?」
「それね、今度の会議で決まるんだ。」
「ふーん、そうなんだ。なら、いつでも納品できるように準備しておくね。他の書類は、特に急ぎでもなさそうだし後でゆっくり目を通すよ。」
「うん、そうしてくれるとありがたいかな。」
ユラは、ディスクに向かい鍵のついた引き出しを開けて書類を入れて。しっかりと、鍵を閉める。
「あの、ベガ先輩とヘルズ先輩……」
「ユラ様、もう先輩とか言わなくて良いですよ。」
「そうだ……、そうです。」
二人は、敬語を使って敬う。ユラは、キョトンとしてから暢気に言う。カリオスは、黙っている。
「なら、二人が敬語を止めてくれたらね。さて、休憩に行ってきます。やっと、休憩だぁー。」
「そうだ、僕も今から休憩だからお茶でもどう?」
カリオスは、暢気にユラを誘う。ユラは、悩む。
「ちなみに、クルトとオズとベイルは既に魔法騎士団に集まってるよ。レオとユリスも、忙しいけどそろそろお茶をしに行くだろうし。シアンも、終わったらお茶をするだろうから。どうせ、今日の仕事は既に終わらせているんでしょ?やっぱり。」
「まぁ、終わらせているけど。」
ユラは、苦笑して頷いて言う。理由は、勿論だが家に帰りたいから。つまり、ノアの為である。何気に、親バカであった。カリオスには、そんなユラの親バカっぷりが分かっており誘ったのだ。
「ユラは、元竜神リュー様に負けないくらいの親バカだね。ノア君を、大切なのは分かるけどユラも休む事!いくら、君が眠らなくって良いとしても皆は心配しているんだよ。ちなみに、徹夜何日目?」
「………えっと、32日と5時間15分4秒かな?」
カリオスは、驚いて思わず声を失う。すると、シアンも驚いてユラを見る。盟主も、頭が痛そうだ。
「お馬鹿!明日から、1週間休みな!ヴァイスに、ちゃんと休んだか聞くからちゃんと休むんだぞ!」
「ユラ、1ヶ月が31日として考えると働きすぎだよ………。お願いだから、ちゃんと休んで。」
ユラは、シアンの手元の書類を指差して言う。
「それに、徹夜の理由も書いてるでしょ?」
「なるほど、明日の会議でクビにする人を陛下に報告する。ユラは、3週間に休みを延長する。」
ユラは、驚いて首を傾げる。
「18日は、さすがに多いんじゃない?」
「ユラ、とにかく他の人にも怒られようか。」
カリオスは、素晴らしい笑顔である。すると、ユリスとレオが居る。これは、お説教タイム?
「待って、これは僕は悪くないよね?シアン、報告書をカリオスに見せて。僕は、先輩達に押し付けられた仕事を処理してたって、内容詳細を書き込んでいたよね。新人の振りを、していたから断れなかったとかその他の理由も書いているし。ヘルプ!」
「確かに、書いてある。でも、でもだな……」
シアンは、3人に報告書を見る。無表情になる、カリオスとユリス。不愉快げな、レオ。
「うん、ユラは悪くないね。」
「へぇー、ここまで腐っていたとは。シアンから、団長会議で聞いてはいたけど胸くそ悪いね。」
「………シアン、これは許される範囲では無い。」
シアンも、頭が痛そうに頷いて言う。
「おう、分かってる。」
「さて、同盟の視察を終了します。ユラ、最後のお仕事をお疲れ様でした。たまには、国際医療同盟の案件もラメルみたいに手伝ってね。じゃあ、僕たちはここで失礼するよ。シアン殿も、頑張ってね。」
そう言うと、ティエロ達は帰ってしまった。
「それじゃ、皆で休憩に行こう!」
「ベガとヘルズ、後は任せたからな。」
そう言って、医療班の部屋から出ていくのだった。
ユラは、紅茶を飲む。皆の視線を感じる。
「よっ、お邪魔する。」
「えっ、主神さ……ひゃああっ!?」
主神は、怒っている。なので、怒りに任せて後ろからくすぐる。ユラは、後ろからの為に抵抗は出来ない。ユラは、慌てて空のティーカップを置く。
「ユラ、言う事は有るか?」
「だっ……、駄目っ!ひぅっ!?……あうっ!?」
「今のお前は、不安定なんだぞ!」
手を放され、ユラは息を乱し赤い顔で涙目である。
「竜神には、暫くはなるな。次に、許可なく竜神の姿になったら天界に連れて帰るからな。」
「わっ……、分か……りまし……た………。」
「さて、説教は終わりだ。ヴァイスから、ユラが3週間も休みを貰えると聞いてな。予定はあるか?」
「いいえ………、急に……決まった………ので……。」
すると、主神は真剣な表情でユラを見る。
「ユラに、大切な話がある。勿論、このメンバーが聞いていても構わない。むしろ、聞いて欲しい。」
ユラは、キョトンとして真剣な表情の主神を見た。主神は、ゆっくりと話し出すのだった。




