帝国の影
カリオスの様子が、少しおかしい事に気付いてユラはカリオスを見ている。カリオスは、笑顔である。
ユラは、キョトンとしている。カリオスは、嬉々として子供っぽい仕草をしているので不思議に思う。考えられるのは、カリオスが別人である可能性。それと、何か訳があり馬鹿を演じているか。カリオスは、良く見れば冷や汗を流している。
そして、さっきから強い視線が僕に向けられているのだ。ユラは、魔法で周囲の気配をこっそりと探り息を呑む。18503人の、帝国の戦闘員が待機。ユラは、警笛魔法を用意する。カリオスも、気付いて安堵の息を小さくつく。位置からして、カリオスは動けないからである。ユラは、苦笑している。
「馬鹿な演技をすれば、出てくるとは思ったけど多いなぁ。既に、囲まれたね………。」
「これは、最悪な事態だね。ごめん、カリオス。」
「別に、君のせいでは無いでしょ?」
「うーん、そうなんだけど。僕の、せいでもあるのかも?兎に角、隙をついて警笛を鳴らしてみる。」
すると、陽気な声音の青年が現れる。
「やぁ、魔法騎士団長カリオス殿。それと、医療の先導者ユラ様。ご機嫌は、どうかな。」
カリオスは、ユラを見て小声で質問する。ユラは、真剣な表情で警戒した様子ではっきりと言う。
「ユラ、彼の情報は?帝国は、騎士団の情報が少ない。だから、対応がしにくい。お願いできる。」
「彼は、帝国の影だよ。暗殺とか、暗部の仕事のトップだ。彼は、皇帝の血縁で顔が似ているから影武者の役割もある。名前は、ドルトム。けど、彼が動くって事は間違いない…………帝国は…………」
カリオスは、思わず苦々しく低い声で言う。
「帝国は、レレット王国に戦争をふっかけるつもりなのかな。てっ、事は……帝国が戦争の準備をしているって報告はデマではないと。やれやれ…………。」
ユラは、無言で頷くと悲しげに俯く。
「いやいや、ユラ様が大人しく帝国に帰れば戦争はしないよ。それに、ユラ様の大事な人には手を出さないし。さぁ、帰りましょうユラ様。」
ユラは、得たいの知れない寒気にゾクッとして震える。次の瞬間、ねっとりした嫌な感覚に呻き声をあげて崩れるように地面に座り込む。
「………うぐっ!?………ぐぁっ………」
「ユラっ!?」
カリオスは、思わず驚いてユラに声をかける。
ユラは、ねっとりした感覚に本能的に捕まってはいけないと感じた。気持ちが悪い、頭はグラグラして思考が濁ってくる。これは………、暴走だ。
「さてさて、ユラ様を庇いながらこの人数をさばけるかな?無理だし、大人しく負けてくれない?」
カリオスは、苦虫を潰したような表情をする。そこで、ユラは警笛魔法を空へ放った。
「カリオス、暴れて………大丈夫………だから。」
「ユラ、何がどうしたの?」
ユラは、魔術師を見てカリオスを見る。
「あいつが、原因か…………。うん、分かった。」
カリオスは、素晴らしい笑顔を浮かべる。
「お待たせ、ユラ君は大丈夫なの?」
「それが、会話も出来る状態じゃ………」
ユリスは、軽い感じで来る。ユリスとパゴンは、ユラが座り込み苦し気なのに気づき、目から優しさや慈悲などの感情が全て綺麗に消えた。
簡単に言うと、ぶちギレちゃった☆
クルトとオズは、ユラを庇うように立つ。2人ともだが、心配そうにユラを見てから帝国の戦闘員に冷たい視線がを向ける。レオとベイル?さっきから、無言で殺気を放っているよ。カリオスは、思わずふざけて苦笑しながら周りの状況を見る。
シアンは、ユラの状態を見て貰っている。
そして、ヴァイスは……主が、苦し気にしているのを見て表情から感情が消えて殺気を滲み出す。そしてから、武器をあっさり手に取るとこう言った。今更だが、ヴァイスの種族は天使だった。
「清き神聖なる、我が主を苦しめた罪は………万死………いや、万死でも生ぬるい。よって、私は敬愛する主の為にお前達を殲滅する。死ね………。」
他国の騎士団も、レレット王国の騎士団も囲んでいる。ユラは、無理矢理に暴走を押さえ込んだ反動で気絶してしまったらしい。だけど、形勢逆転………。
カリオスは、杖を抜いてからシアンに言う。
「シアン、ユラをよろしくね。」
「おう、任せろ。目覚めても、戦闘には参加させないんだよな。ちゃんと、休ませるから安心しろ。」
カリオスは、頷いてから敵に向き直りユラには見せたことのない怖い表情を浮かべる。
「さて、僕の友人であるユラを、傷つけた報いを受けてもらおう。勿論だけど、手加減をするつもりはないよ。あと、逃げても無駄だから。」
「わぁおっ、ユラ様を守ろうとする者達がこんなに居るなんて。じゃあ、俺は逃げるから頑張って。」
すると、ユリスは矢をつがえ放ち、転移のマジックアイテムを射抜く。ドルトムは、驚いて苦笑する。
「お前、生きて帰れるとでも?」
ユリスは、殺気を放ち笑顔で言う。
「うわぁ………、勝てる訳がない。降参するよ。なんて、嘘だけどね。あははっ、また戦場で会おう。」
ピカッと、強い光が放たれてドルトムには逃げられてしまった。怒りに、思わず怒鳴るユリス。
シアンは、ユラに浄化の魔法をかける。そして、1時間が過ぎてその場は乱戦となっていた。
「んぅ………。あれ?」
「お?やっと、目を覚ましたな。」
浄化の魔法を止めて、シアンは汗をぬぐい笑顔を見せる。相当な、魔力を使ったのかヘトヘトなのだ。
「何だか、目が回って二日酔いってこんな感じなのかな。竜の性質で、お酒には強いから分かんないけど。それより、カリオスは…………大丈夫なの?」
「大丈夫、団長クラスと魔法騎士と騎士が囲んで戦っている。それより、まだ休んでいろ。」
ユラは、乱戦を見て悲しげに詠唱をする。竜神の姿になり、神力を纏った神々しい姿に、思わず周りの者達は息を呑み魅了されてしまった。
「我、偉大なる主神ユニバースと前竜神リューの子なり。我を守りし汝らに、今一度だけ竜神の加護を与えよう。我が名は、ハイリヒ。神聖を司り、治癒と知識を広める神なり。資格ある者に、祝福をそして敵対者には災いを。我は、光であり闇である。」
ユラは、人の姿になる。そして、シアンに怒られてしまった。勿論、カリオスにも………
「ユラは、休むように言っただろ!」
「ユラ、後でお仕置きね。」
ユラは、苦笑するとため息を吐き出した。
ちなみに、竜神の加護を受け取れたのはいつものメンツだけだった。他は、器が足りなかったらしい。
「これは、合同訓練は中止かな?」
カリオスは、暢気に声をかける。ヴァイスは、黙るユラのかわりに言う。余計な、言葉をそえて。
「でしょうね。でも、ユラ様の神力で守られていたので死者はゼロです。それに、傷もユラ様がこっそりと治しておりましたし。あれ、ユラ様?」
「ヴァイス、何でばらすのさ………。」
ユラは、シアンから絞められてギブギブと言う。
「ユラ、お前なぁ~!」
「わぁー、ギブギブ!シアン、何気に痛いよ!?」
他は、思わず笑ってしまった。こうして、レレット王国も本格的に戦争な準備をする事になった。




