帝国の狙い
さて、物語が大きく動きますぞ( ̄□ ̄;)!!
祝50話、読者の皆様には感謝しかありません。
ヾ(ゝω・`*)ノ
ユラは、ため息を吐き出してソファーに座る。ラメルは、床に正座している。反省の証らしい。
「さて、話を戻そっか………。」
「国際医療同盟、第2位ラメル。一応は、薬学師だし錬金術師なんだよ。そして、戦う武器はナイフだよ。ちなみに、暗殺や毒殺が得意です。」
そして、皆の視線がユラに集まる。当然だろう、カリオス達は5年間のユラを噂でしか知らない。ユラは、キョトンとして首を傾げる。
「ん?僕も、言わないと駄目?」
「うん、出来れば知りたいな。」
カリオスは、真剣にユラを見て言う。
「国際医療同盟、第1位『医療の先導者』ユラ。一応は、薬草師で錬金術師って事になってる。まぁ、そうしないと僕を狙った戦争が起こるし。」
その言葉に、カリオス達は驚いて続きを待つ。
「ユラは、オールキュアスキル持ちなんだよ。だから、死んでなければ全てを治せる。」
「ただし、それなりの対価を払うけどね。」
ラメルの声に、ユラは苦笑している。思わず、カリオス達は言葉を失う。何で、そんなヤバイものを。
オールキュアスキル………
古の時代に、失われた伝説の中でも希少かつ取得不可能と呼ばれる古代神聖医療魔術。そして、今のところ神聖魔法や神聖魔術の元となった魔術だ。
「古の精霊、原初の悪魔と並ぶ有名人。それが、僕に契約を求めて来た。とても、ボロボロで彼女を助ける意味で仮契約をしたら………最悪なんだけど、失われた技術の全ての情報を強制譲渡されてね。しかも、主神様は遠慮なく使えって言ってたし。」
すると、 カリオス達は思わず疲れた表情のユラを慰めた。それくらい、ユラは疲れた表情だった。
「そして、最初に使えるようになったのが………」
「オールキュアスキルなんだね?」
ユラは、頷いて苦々しく笑う。
「そう………。全く、人間は僕を道具の様に使いたがるし。代償が無しに、使える物では無いから、ここの4人と国際医療同盟のトップにしか話してないんだけど。基本は、普通……………より随分と上級者の治療しかしないけどね。うん、多分だけど上級者。」
すると、ジト目で4人はユラを見ている。
「「「「ユラ様、嘘はいけない。」」」」
「ユラの治療って、どんな感じなのかな?」
カリオスの言葉に、4人は真面目に答える。
「そうねぇ………、チート医療治癒術だわぁ。」
「うん、骨折から内蔵破壊の修復………それに、薬草と魔草の薬学スキルとか半端ないよ。」
「ユラ様は、………凄い………多重スキル持ち………。」
「そうですね。医療なら、怪我の重症度合いで似たスキルや技術を使い分けて、的確かつ素早い判断力で患者の負担を最小限にする。ユラ様が、医療の先導者と呼ばれる由縁です。うん、素晴らしい!」
すると、シアンはニコッと笑う。
「さすが、医療の先導者だな。」
「うわぁー、止めて………恥ずかしすぎる。」
ユラは、恥ずかしげに視線を逸らす。
「ユラ、期待してるぜ。まずは、無駄な給料喰らい達を選ぶのがお仕事だけどな。よろしく!」
「ちなみに、ユラが何でここまでスキルや技術を叩き込んだのかと言うと…………ふぎゃっ!」
ユラは、素早くラメルを叩くと美しい微笑み………。
ラメルは、表情を青ざめさせ、姿勢を直しキリッと言う。ユラは、目が笑っていない。
「はい、言いません!あっ、もう1つの理由は?」
「えっ、何か気になるんだけど?」
「帝国が、レレット王国を攻めようとしているからだよ。まぁ、理由は察しの通りだけど。」
すると、全員がユラを見る。ユラは、ため息をついて悲しげで苦しそうな表情をしている。
「帝国は、ユラ様が国際医療同盟から抜けるのを知ったとたんに、ユラを強引に帝国の専属医師にしようとした。けど、ユラ様は抵抗して逃げ出した。」
「俺達も、軟禁状態でさ。ユラは、術式で動きを封じられて。僕らは、人質だったのさ。」
ボレーシュは、怒りに表情を消してラメルは悔やむように声を絞り出す。カリオス達は、驚いている。
「おまけに、ノア君に呪いを植え付けられてしまってねぇ。初めて、ユラ様が恐ろしいと思ったのよねぇー。ユラ様は、生け贄が使われるような禁忌の術に苦しみながら、周りの関係者を殺したわぁ。」
すると、ユラも鮮明に覚えているのか一瞬だけ泣きそうな表情を浮かべる。ユラの表情を見て、3人は話をやめる。最近の事なのだ、ユラには辛く怖い出来事。ここで、パーティー会場でユラが『ふざけないと、やってらんないの!』っと言った理由が分かった気がした。カリオスは、ユラを見る。
「まぁ、目的はユラなんだよね?」
「うん、それは確実にだよ。奴らは、ユラ様の心を折って道具にする為に手段を選ばない。ノア君に、呪いを植え付けるくらいだから。国際医療同盟が、動かなければユラは心が壊れてたかもね。」
ユラの瞳が、僅かに苦し気に揺れる。
「ちなみに、いつ戦争を吹っ掛けると思う?」
カリオスは、ユラの揺らぎに気づいていないふりをして言う。ユラは、目を閉じてソファーに身を預ける。もう、聞きたくないのだろう。
「約1年と4ヶ月後かな。」
「ふーん、ユラを傷付けた落とし前は戦場で丁寧に返してあげないとね。皆も、そう思うでしょ?」
すると、その場の全員が良い笑顔で頷く。
「さて、ユラは屋敷まで送ろうか?」
「大丈夫。何か、厄介事を持ってきてごめんね。」
ユラは、申し訳ない様子で立ち上がる。
「あのさ、シアンさん。」
「ん、どうかしたか?」
すると、ラメルは悪戯っぽく笑って言う。
「ユラ様と一緒に、僕も雇わない?」
すると、3人が凄い勢いで反応する。
「「「狡い!」」」
「まぁ、ラメルだけなら俺の権限でなんとかなるけど。取り敢えず、検討させてくれ。」
「はい。そうだ、ユラの家に泊めて!」
ユラは、キョトンとして首を傾げる。
「え?君達、宿に泊まるんじゃ……」
「ユラ、今度は僕にも護らせて。今の君に、闇落ちされると困る。具体的には、戻って来れなくなる。それだけは、絶対に嫌だから………だから、僕も国際医療同盟を抜けて君に着いていくよ。」
ユラは、驚いて目を丸くしてよろめく。
慌てて、カリオスはユラを受け止める。皆も、驚いてユラを見ている。ユラは、青ざめてから言う。
「何………で………。君は……、どうして…………?」
「君は、神様だ。もし、戻れなくなれば邪竜として滅びと災厄を振り撒くだろう。そうなれば、君を殺すのは主神様になる。だから、僕は全力で阻止すると決めたんだ。君の、仲間として友として……。大切な君が、残酷で悲しい終焉を迎えないために。」
ラメルは、覚悟の表情を見せる。シアンは、この時点でラメルを仲間にくわえる事を決定した。
カリオスと、アイコンタクトで頷き合う。
そして、全騎士団長の同意もあったので確定した。
「さて、ユラの事はいろいろ知れたし帰ろうか。」
ユラは、ハッとして自分で立つ。
「ごめん、そうだね。帰ろう……」
「少し待って、今から帰る準備をするから。」
カリオスは、ニコッと笑うと準備をする。
「へ?」
「よし、俺も準備しよう!」
シアンも、足取り軽く部屋を出ていった。
「ちょっ、まさか………皆で泊まりに来るのっ!?」
「うん、戦争が終わるまではね。」
カリオスは、真剣にユラを見て言う。
「まぁ、その方が良いかも。帝国の生け贄が、使われるような禁忌の術に苦しみながら、3ヶ月も耐えたんだしさ。まだ、ダメージは癒えてないよね?」
「うぅ……、何で分かるのさぁ…………。」
ユラは、呻きながら視線を気まずそうに逸らす。
「ユラなら、ディスペルなんて詠唱なしでも使えた筈だよ。つまり、今のユラは詠唱をしないといけないレベルでダメージを持っている。そうでしょ?」
「はぁ……、ご名答だよ。でも、ノアには秘密だからね。あの子、やっと笑えるようになったんだ。」
ユラは、苦笑してまたため息を吐き出した。




