ユラの事情
パーティー会場に入ると、ルピア陛下がシアンを庇うように立っていた。ユラは、薄く笑みを浮かべてから冷たい眼差しで挨拶をした。
「ごきげんよう、国際医療同盟の者だ。そうだな、医療の先導者って言えば分かる?さぁ、どいた!」
すると、ルピア陛下は驚いてからユラを見る。シアンも、目を丸くしてユラを見ている。
「さてさて、僕は国際医療同盟の者として、嘘つきには罰を与えなければならない。それで、この状況を教えてくれる?あっ、嘘をつくのは駄目だよ?」
ユラは、黄金の瞳になる。竜の瞳、つまりは嘘は直ぐにばれるぞ?っと脅したのだ。
「その男シアンが、ジャエン草を我々の飲み物に混ぜたのだ!それから、数人が倒れ出して。」
「ふーん、それで?」
ユラは、素っ気なく冷たい視線で言う。
「だから、シアン殿が………」
「お前、もう黙れ………。あのさ、知ってる?ジャエン草の別名は、エレメンタルキラー………精霊殺しって言うんだよ。光の精霊と従者の話を知ってる?」
呆れたように、残念そうな雰囲気で問う。
「確か、妖精達が光の精霊に花を送る話だよな。」
シアンが言えば、ユラは振り返り笑顔で頷いてから昔話を短くしたものを語る。
「昔々、それは美しい光の精霊が森に暮らしていました。光の精霊には、7人の妖精が従っていて最年少の妖精はとある花を見つけた。穢れがない、白色の花で夜には蛍のように光る。それを、光の精霊にプレゼントした。すると、美しい白い肌は赤い斑点ができ、直ぐに広がってしまった。暫くして、全身に赤い斑点は広がり光の精霊は死んだ。」
すると、会場はざわめく。
「でも、私は見たんだ!」
「でも、シアンさんが精霊なのは事実だ。そうなると、シアンさんに変装または化けた、何者かの犯行になる。さて、どうしたものかな?ちなみに、シアンさんの無実は確定してるから安心してね。」
そう言うと、カリオスはユラを見て言う。
「えっと、理由を聞いて良い?」
「物語の最後に、それを見た精霊王は無意識にジャエン草を精霊から遠ざけたと書かれてる。のちに、精霊王によって訂正されるんだけどね。精霊王は、精霊達に本能的な回避を覚えさせ、ジャエン草を避けさせた。よって、シアンさんはシロだよ。」
カリオスは、驚いてからユラを思わず見る。
「ごめん、その情報は何処から?」
「精霊王、御本人様から直に聞いたけど。」
すると、会場は直ぐにざわめく。カリオスは、ため息を吐き出してから真剣に言う。
「ユラ、それは真名に誓えるかい?」
すると、シアンが苦笑しながら言う。
「カリオス、嘘じゃない。精霊と医療は、とても相性が良くってさ。精霊と契約しないと、作れない薬すら存在するんだぜ?それに、ユラ様から強い精霊の力を感じる。でも、何で契約できた?」
「あのね、竜は医療の次に精霊と相性が良い。だから、普通に精霊と契約が出来るんだよ。」
ユラは、敬語を使いたいのを我慢して言う。国際医療同盟として、居る以上はシアンより格上とされるので敬語を迂闊に使えないのだ。
「さすが、医療の先導者様だ。うん、詳しいな。」
「シアンさん、取り敢えず自分の傷を治して。」
ユラは、倒れた人に近づくと驚いている。
「カリオス、これは呪いじゃないか。僕は、神聖医学術師……お医者さんだよ?呪いは、専門外なんだけど。て言うか、呪いは魔女の得意分野だし。」
ユラは、カリオスを見てからため息を吐き出す。
「何だって!?なら、助からないの?」
カリオスは、青ざめるとユラに問いかける。
「まぁ、専門外なんだけど………5年前まではね。」
すると、ディスペルの呪文を唱える。驚くカリオスと、便利だと頷くシアンをユラは苦笑して見る。
「ユラは、呪術を使えるの?」
「まぁ、呪いで有名なのは古竜の呪いだし。それにさ、元とも竜神は邪竜が改心した姿だよ。私の本質が、闇と光のどちらも持つのはそれが理由。」
すると、二人は頭を下げる。
「医療の先導者ユラ様、本日はプライベートでレレット王国への滞在中に、お呼び立てして誠に申し訳ありませんでした。ご協力、心より感謝します。」
すると、周りの知り合いも頭を下げる。ユラは、我慢が出来なかったのか、こっそりため息をつく。
「はぁ………。もう、プライベートに戻って良い?」
ユラは、そう言うと冷たい雰囲気を消す。
「ユラは、相変わらずマイペースだね。」
「少しは、空気を読んだらどうだ?」
クルトとオズの言葉に、ユラはにこやかに笑う。
「ユラ様!」
いきなり、ラメルが殴って来るので回避する。
「おわっ!?もう、危ないなぁ………。」
「ユラ様は、僕に何か言うことは無いかな?」
拳を握り、構えるラメルと楽しそうに笑うユラ。
「ん?私が、何かしたのかい?」
「何で、書類を暗号化して提出するの!」
すると、ユラは納得してから悪戯っぽく笑う。
「せっかく、休日を貰えたのに書類ってうるさいから仕返しに。でも、君ならチョロいでしょ?」
「堂々と、もう言っちゃってるよ!」
隠す気の無い、ユラを見て思わず叫ぶ。
「苛々したから、思わずやった反省はしている。だけど、後悔は全くしていない。うん。」
「もう、開き直らないでよ!」
ラメルは、疲れたように言うのだった。
「さて、冗談はさておき………」
「あ、うん………冗談なのね?」
「いや、4分の1は本音だけど?」
「どっちなのっ!?」
ユラは、暢気に笑うと書類を出す。
「はい、今月の研究結果だよ。」
「だから!何で、暗号化しーてーるーのぉー!」
ラメルは、うわぁーんと言いつつ確認する。
「それで、ラメルは何でここに?」
「アンダート王国が、動いたから君に伝えに。」
すると、ユラは警戒する仕草をする。
「カバリスは、絶対にノア君を狙って来るよ。」
ユラは、小さくため息を吐き出してから。
「その時は、心を闇に染めてでも守るよ。」
「………余り、闇落ちした君は見たくないな。」
ラメルは、悲しそうに心配そうにユラを見る。
「大丈夫、それは最終手段だから。」
ユラは、優しく笑うと暢気に言う。
「はぁ……。くれぐれも、無理はしないでよ?君が、闇に落ちれば主神様やリュー様が悲しむんだから。それに君は、次期主神の有望候補なんだしさ。」
すると、カリオス達を含め会場の全員が驚く。
「え?その件は、辞退するって言ったじゃん……。」
「あのね、そんな事を言ってたら天界に連れていかれちゃうよ。そうなれば、僕だって庇えないんだからね?ユラは、もっと自覚してくれるかな。」
ラメルの説教に、ユラはドヨーンとしている。
「ユラは、天界に戻っちゃうの?」
カリオスの声に、ユラは振り向いてから言う。
「僕の知り合いが、地上に誰も居なくなったらね。今は、大丈夫だよ。主神とも、そう言う約束だからね。ただ、神様も1枚板じゃない。」
ユラは、悲しそうに笑っている。
「………賛成派も、2つに別れているんだよね。1つは、主神の意見に賛成派。そして、もう1つはユラに天界に戻ってもらい主神を交代するまで幽閉するって考え。なお、幽閉されればユラは2度と地面に立つことは無い。だから、僕が牽制してるんだ。」
ラメルは、苦々しく笑って言う。
「つまり、ユラもノア君も狙われの身なの?」
「いいや、主神も牽制してるから僕は大丈夫。でもね、ノアは訳ありなんだよね。」
カリオスに、ため息まじりに言う。
「まぁ、深くは聞かないでおくよ。でも、協力はするからいつでも助けを呼んでね。」
「はい、はーい。了解だよ。」
ユラは、軽く返事をすると暢気に笑う。
「ユラ、ノリが軽くなった?」
「ふざけないと、やってらんないの!」
そう言うと、パーティー会場から去るのだった。




