焦る者達
カリオスは、家でゆっくり紅茶を飲んでいた。すると、メイドがお客様が来たと言うので待つとヴァイスだった。息を切らして、疲れているようだ。
「カリオス様、ユラ様を見かけておりませんか?」
その表情は、珍しく焦っており顔色が悪い。
「いや、見てないけどどうしたの?」
「ユラ様が、帰って来られないのです。」
カリオスは、キョトンとした。ユラなら、薬草を取る為に屋敷を空けるのは良くある。それに、神様の仕事なら、誰にも伝えずに動きそうだと思った。
「えっと、神様の仕事じゃないの?」
「それが、主神様も探しておられるようで。」
ヴァイスは、嫌な予感がした。何せ、主従の契約が解除されていて居場所がわからない。その言葉で、カリオスは事の深刻さを感じとる。
つまり、主神の力を持ってしても見つからない。
「ごめん、知らない。でも、王宮に一応は伝えに行くよ。ユラは、昨日から今日まで休みだったし。」
「お願いいたします。」
ヴァイスは、頭を下げると姿を消した。
「ユラ、何処に行ってしまったの?」
カリオスは、心配そうに呟き王城に向かった。
カリオスは、急いで魔法騎士団室に行く。すると、クルトはキョトンとしてから言う。
「あれ、どうしたの?」
「クルト、ユラが行方不明になった。」
しかし、クルトも最初のカリオスのような表情。
「うーん、薬草を摘みにいってるのかも。」
「おそらく、それは無いんじゃないかな。」
すると、ドアが開きラメルが息を切らしている。
「かっ、カリオスさん………ユラを知らない?」
「知らない。ねぇ、君は何か知ってるの?」
すると、ラメルは大きく動揺する。しかし、慌てるように外へ行こうとする。カリオスは、魔法で出口を塞ぐ。そして、冷静な表情で鋭い視線を向ける。
「カリオスさん、邪魔しないで!」
ラメルは、躊躇なく神力を使って壊す。が、カリオスは魔法で新しい壁を作る。
「君の焦りは、ヴァイスの焦りとは何か違う。」
カリオスは、真剣な表情で杖を構える。クルトも、状況を察したのか構える。勿論、他の魔術師も。
「お願い!邪魔しないで!ユラが、……ユラが死んじゃう!だから、早く見つけ出さないと!」
その言葉に、カリオスとクルトは目を丸くする。
「………ラメル、詳しく教えて。」
「だから、時間が無いの!」
ラメルは、泣きそうな表情でカリオスに言う。カリオスは、部下にお茶を出すように言う。
「出来れば、その話を私も聞きたいのだが。」
ルピア陛下と、他の団長と副団長がそこに居た。
「主神様が、少し前に結婚された。それで、子供が出来たらしい。ユラは、2日前に神王の称号を主神様に返した。そして、結晶の使い手が代替わりしたんだよ。結晶を、全て集め終わったから。」
「つまり、ユラを良く思わない神々が?」
ルピア陛下は、真剣な表情でラメルを見ている。
「違う、忘れてない?ユラは、結晶そのものだよ?代替わりした今、ユラは結晶としての力を恐れられ世界の意思に殺される。死ねば、石になるから。」
ラメルの言葉に、カリオス達は青ざめる。
「世界の意思にとって、ユラは道具だったんだ。そして、力が削がれるその時を待っていた。でもね、1つだけ逃れる術があったんだ。それが、爵位を上げて人間として生きる。けど、ユラには全てが苦痛でしかない。元々、ユラは自由人………。なのに、縛ってた僕らがいけないんだけど。疲れたのかも。」
「なるほど、それで協力的だったのか。」
ルピア陛下は、深くため息を吐き出す。
「世界の意思なら、上の爵位なら運命的に殺せないと思ったんだよ。まぁ、確実ではないんだけど。」
苦々しく、ラメルは呟くと悲しそうに笑う。
「分かった、総力を出して私達も探そう。」
「無理だよ。僕ら、神々でも見つからないんだ。」
カリオスは、真剣な表情でラメルを見つめ言う。
「それでも、僕は……僕達は、諦めないよ。」
他のメンバーも、力強く頷いた。
ユラは、樹に背中を預けて苦笑した。
「やぁ、ユラ君。」
「クリュセト、君が殺しに来たの?」
クリュセトを見て、少しだけ困ったように笑う。
「うん、そうだよ。」
クリュセトは、悲しそうに頷くと剣を一振り。その場に、ユラは力なく血を流し倒れた。
「…………。」
クリュセトは、ユラを抱えて何処かへ消えた。




