クルトからのお誘い
ユラは、二人の新人を見ている。
タンタは、性格は荒いけど作業は丁寧だし的確だ。ただし、無駄が少しだけ見られるな。イリニは、作業は勿論だけど丁寧で無駄がなく的確………そして、助手の経験があるみたいだ。
もしや、ノアの助手をしていたのかな。なら、教育上はよろしくない。後で、話してみるかな。タンタは、無駄がある事から初めてかな?
「あれ、ユラじゃん。」
「あ、冬馬。お久しぶりだね。」
すると、冬馬は腰から剣を抜いて言う。
「時に、Sランク冒険者殿。模擬戦しようぜ!」
すると、いつものメンバー以外の全員が驚く。
「嫌だよ。この後、山積みのお仕事が待ってるんだから。無駄な、体力は使いたくないし。」
ユラは、困ったようにため息を吐き出す。冬馬が、ここで引くとは思えない。なので、釘を刺しとくかな。冬馬は、不満気に僕の事を見ている。
「僕は、本職は医師だから。」
ここで、敢えてバトルドクターなのを伏せておく。ちなみに、冬馬は戦闘になると脳筋なのである。
「えー、最近は新人の世話ばかりでつまんない!」
やっぱり、10年過ぎれば忘れているよね。
「それこそ、クルトと戦えば良いんじゃない?」
ユラは、暢気にクルトへ視線を向ける。ちなみに、周りはニヤニヤだったり興味深い感じて見ている。
「やだなぁ、元とはいえ勇者と戦うなんて無謀を僕がするとでも?ここは、神様なんだし頑張って。」
クルトは、驚いたように慌てて言い返す。どうしても、冬馬と戦いたくないらしい。うん、分かる。とっても、良く分かるよ。さて、撤退かなぁ………。
「君ら、戦闘能力は余り差は無いけど。」
すると、冬馬は表情を明るくしてクルトを見る。クルトは、『嘘でしょ!?』と言いたげに僕を見ている。
さて、後は任せたよクルト。君の犠牲は忘れない。
「さて、皆も帰ろうか。」
「ちょっ、ユラ!?」
ユラは、素晴らしい笑顔で言う。
「クルト君、健闘を祈るよ。」
さて、早く戻らないと巻き添えをくらう。ラメル達も、それが分かっているので走り出した。
「絶対に、仕返ししてやるぅ!」
クルトの、声を背中に聞きながら医療班室に戻る。
「いやぁ~、危なかったねユラ。」
「あはは………、凄い後が怖すぎるなあ。」
ユラは、椅子に座って乾いた笑いを溢す。
「あの、何で戦いたくないんですか?」
「それは、ユラが強いからだよ。」
ラメルは、暢気に紅茶を入れながら言う。
「ユラ、よくも巻き添えにしたね。」
「ごめん☆」
クルトは、ユラに不機嫌そうに言う。しかし、本気で怒っている訳ではない。それが、ユラも分かっているので『テヘッ♪』と言いたげに謝る。
「まったく、この借りは高いからね。」
「ははっ、お手柔らかにね。」
ユラは、笑って紅茶を飲む。ラメルは、クルトに紅茶を出して仕事に戻って行った。ユラは、書類を書きながら暢気にクルトと会話を続けている。
「ユラ、来週の休日は空けといて。」
「良いけど、何で?」
ユラは、キョトンとして筆を止める。
「久しぶりに、冒険者ギルドで依頼を受けない?実は、受けたい依頼があってさ。僕とオズが、Aランク冒険者に無事になれた事だし。それに、冒険者ギルドのランク設定が変更されたんだよね。だから、ギルドカードの変更をユラはするべきだと思うよ。だから、予定を空けといて。絶対にだよ。」
「おめでとう!ちなみに、受けたい依頼って?」
クルトの報告に、思わずといった様子で嬉しそうに笑顔を浮かべる。ノリ気な感じで、筆を思い出したように動かしながら依頼の確認をする。
「伝説のダンジョン、三大難関ダンジョンの攻略だよ。実は、Aランクからしか入れないんだよね。」
「それ、ハードルが少しだけ高過ぎない?何より、3人じゃ戦力的にも苦しいと思うけど。」
すると、クルトは『ふふん♪』と得意気に笑う。
「誰も、3人だなんて言ってないでしょ?」
「確かに………。」
ユラは、キョトンとして筆を止めゆっくり頷く。そして、また筆を動かしながら思考を巡らせる。
「実は、冬馬と団長さん?とかいう異世界人も協力してくれるって。それと、ゲテルとパゴンが行く予定だよ。7人も居れば、何とかなるんじゃない?」
「団長さんも、参加するんだね。」
ユラは、少しだけ意外そうに呟く。
「まぁ、ユラが参加するならって条件つきでね。」
「なるほど、何か納得したよ。団長さん、10年以上も会ってないからね。仕方ない、心配をかけてるだろうし。うん……。会いに来ないなら、自分から行くって姿勢は昔と変わらないねぇ。まったく……。」
ユラは、暢気な口調で言うと時計を確認する。
「クルト、仕事に戻らなくても大丈夫?」
「大丈夫じゃない。でも、どのみちお昼だし。」
すると、ユラはクルトの後ろを見てから言う。
「だって、カリオスはどう思う?」
クルトは、苦笑してゆっくり振り返る。
「そうだね、お昼が終わってからの働きに期待するとだけ言っとくね。まぁ、さっきの勝負に甘んじて許すけど。ちなみに、引き分けだったよ。」
カリオスは、腕を組んでいたがため息を吐き出す。そして、少しだけ笑って結果を教えてくれた。
ユラは、納得したように頷いた。
食堂で、ユラは異世界風の唐揚げを食べている。
「クルト、ユラは予定の件は?」
オズは、珍しくわくわくした様子で聞いている。
「大丈夫だって。」
「うん、特に予定は無いし良いよ。」
クルトは、嬉しそうに言う。次の瞬間、オズと冬馬は 嬉しさの余りにガッツポーズ。ゲテルとパゴンははしゃいでハイタッチ。周りは、優しい視線を送っている。ユラは、一応だが肯定しとく。
「まずは、どこのダンジョンを攻略する?」
「うーん、難易度からして精霊樹のダンジョンからかな。三大難関ダンジョンにも、難易度差が有るみたい。だから、少しでも攻略しやすい場所から攻略したいと思う。まぁ、僕の個人的な意見だけど。」
すると、全員が頷く。
「じゃあ、それで行こう!」
そして、お昼解散する。そして、あっという間に当日になってしまう。ユラは、ゆっくり冒険者ギルドの門をくぐり抜けて、受け付けに向かうのだった。




