胃薬が必需品?
ユラは、黙々と仕事をしている。ラメルは、終わった書類をどけて新しい書類を置いている。すると、ユリスさんとレオさんが近づいて来る。
「ユラ、医者を二人借りたい。」
「新人が、少しやらかして。シアン、休みだし。」
ユラは、筆を止めて顔を上げてラメルを見る。
「ラメル、行ける?」
ラメルは、書類をファイルに入れてから頷く。
「任せて♪」
ユラは、頷いてからヘルズに声を掛ける。
「ヘルズ、イリニとタンタを連れて行って。」
「あれ、ユラ様は行かないんですか?」
ユラは、苦笑してから書類の山に視線を向ける。
「あー、了解です。ユラ様、頑張ってください。」
「君達もね。新人は、ベテランの技を見て盗んじゃえば良いよ。僕も、最初はそうしてたから。」
タンタは、少しだけムスッとしたが頷く。
さしずめ、お前の指示は聞きたくないが、仕方ないから従ってやると言った所だろう。
ユラは、やれやれとため息を吐き出す。
そして、イリニはそれを困った表情で見てからどこかを見て顔をひきつらせると頷く。
さて、忘れてないだろうか?
ここに、団長クラスが二人も居る事を………。
「ついでに、タンタには敬意を教えてやろう。」
「あと、礼儀もちゃんと教えないとね。」
二人は、黒い笑みでタンタを見ている。タンタは、青ざめて震えている。ユラは、ギクッとして筆を止めて、慌てたように団長二人に言う。
「あの、手荒な教育は………」
「ユラは、甘過ぎだよ。」
ユリスさんが、ついに君づけをやめている。
「そうだな、だから俺達が厳しくする。」
ユラは、頭が痛そうにため息を吐き出す。周りのベテランは、そんなユラに慰めの視線を向ける。
「ベガ、君が処理できる書類だけでもやっといて。仕方ない、僕も一緒に行くしかないか。」
「ユラが、一緒に来るなら絶対に万が一は無いし安心だね。それと、二人ともその笑み怖いよ?」
カリオスは、嬉しそうに笑ってから団長二人に苦笑を向ける。ユラは、勿論だが遅れて入ってきたカリオスには気付いていた。そして、やれやれと立ち上がる。勿論、カリオスにジト目を向けながら。
「カリオス、止めてくれても良いんじゃない?」
「嫌だよ。君に、仇なす相手を守りたくないし。これでも、僕は怒っているんだからね。」
うわぁ………、カリオスが静かに怒ってる。これは、僕でも太刀が悪いなぁ。駄目だ、とても胃が痛い。
「これは、胃薬が必需品になりそうだね。」
思わず、心の声が漏れてしまう。
「あはは、ユラは苦労性だね。」
「うるさいよ………」
ユラは、少しだけ苛ついたが堪える。
「そうだ、あくまで僕はついて行くだけだよ。新人二人は、今回の行動を見て評価するから。立ち位置として、新人は助手をやってもらう。基礎は、二人とも出来るようだし。ただ、邪魔をすれば許さないから………覚悟して、全力で頑張るように。」
ユラは、真剣な表情で冷たく言い放つ。後ろでは、カリオスが優しく笑う。ユリスさんは、ニヤニヤしている。レオさんは、微笑ましいと言いたげだ。
「はっ、はい………。」
「……………はい。」
ラメルは、鞄を持ってユラに聞く。
「ユラ、組み合わせはどうするの?」
ユラは、少しだけ考えてから真剣な表情で言う。
「ラメルは、イリニをお願い。ヘルズは、タンタをお願いするよ。ちなみに、性格的な相性で選んだ。だから、大丈夫だと思うよ。さて、急ごうか。」
「別に、重傷じゃないし急がなくても良いぞ。」
レオさんは、苦笑しながら言うが………。
「はいはい、早く案内してくれるかな?」
思わず、敬語も忘れて言ってしまう。すると、驚くカリオスに嬉しそうなレオそして…………
「狡い!僕にも、敬語を無くしてよ。」
「……すみません、案内をよろしくお願いします。」
ユラは、しまったと顔をそむけて訂正する。カリオスは、暢気な口調で困ったように言う。
「ユラ、諦めて敬語をやめたら?」
「…………考えとくよ。」
すると、ラメルは暢気にいう。
「ユラは、敬語なんて不要だと思うよ?」
「それ言うなら、君だって僕と近い年齢だよね?」
すると、ラメルはクスクスッと笑ってから言う。
「僕は、爵位は低いし神位もそこまで高くないもんね。ユラは、主神様の次に偉いし侯爵様だしね必要がないと思うよ。もっと、強気で良いと思うよ?」
「あのね、僕は神様の時も本音では素でいたいんだよ。でも、堂々とするように主神様に言われてるから渋々とキャラを作ってるだけで。」
ユラは、少しだけムッとしてラメルに言う。
「主神様、ナイスだよ♪」
「とにかく、今は無理なんだよ。」
すると、団長3人から優しい視線。医療班、ベテラン達から微笑ましい視線。新人達から、少しだけ面白いと言いたげな視線が向けられている。
「さて、いい加減に行きますよ。」
「はいよ、ユラ。」
ユラ達は、訓練所に向かって歩き出した。




