表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/115

イリニ

僕は、母に憧れて医者になった。しかし、母は流行り病で僕が14歳の頃に亡くなった。父親は、幼い僕を、魔物から守って亡くなっている。僕は、母が良く話してくれた師匠ユラ様の話を思い出した。


僕は、貯めていたお金で王都に行き、国の医師試験に自力で合格した。そして、国から王宮医術師としてスカウトされる。指導は、ヘルズさんです。


でも、副団長の班に入れるなんてラッキーだよね。


まぁ、僕と同じ新人から不満は有るみたいだけど。と言うのも、現在は副団長は訳あって不在。


「イリニ、ユラ様が戻って来るらしいぞ。」


「え?」


ユラ様!?えっ、母から聞いた感じ種族は人間だったよね。だから、同姓同名の別人なはずだよね。


と言うか、副団長が戻って来る………。


いったい、どんな人なのかな?ヘルズさん達、ベテランの人達は嬉しそうに笑って掃除を始めてる。


まさか、潔癖症とかなんだろうか?


「ほら、お前達も手伝え。」


「嫌です!何で、10年も不在にした奴なんかの為に、掃除をしなければならないんですか!」


すると、ベガさんが少し考えてから言う。


「あのさ、資料庫のデータの9割が副団長の研究の成果なんだよね。それと、彼………ユラ様は退職届けを出していた。けど、それを拒否したのは僕達なんだよ。シアン団長も、苦労はしてたけどそれよりユラ様の帰りを待っていた。だから、自業自得さ。」


「まぁ、悪さをしなければ良い。」


ヘルズさんは、手を止めずに笑いながら言う。


「だって、良い仲間達だよなユラ。」


シアン団長の声に、全員が勢い良く振り向いた。隣には、黒髪で色白い美青年が疲れた表情である。


「あー、取り敢えず掃除は止めて良いよ。」


あれが、副団長のユラ様か………。


ユラ様は、自分の席に着くと書類を引き出しに入れた。すると、ヘルズさんとベガさんが机に向かう。


「「ユラ様、お久しぶりです。」」


「お久しぶり、二人には迷惑をかけてごめんね。」


ユラ様は、申し訳ない様子で2人に言っている。


「いいえ、気にしないでください。」


すると、新人がユラ様に近づく。


「何で、10年も留守にしたんですか!」


「おい、やめろタンタ!」


ユラ様は、真剣にヘルズさんを手で止めると言う。


「僕も、留守にはしたくなかった。でも、僕の立場がそれを許してくれなかった。皆には、とても迷惑をかけたと思う。それは、本当に申し訳ない。」


「立場って、侯爵のって事ですか?」


すると、シアン団長が机を拳で殴り言う。


「それは、詮索なんじゃないか?」


「でも、10年ですよ!」


タンタは、怒りを押さえられない様子で言う。


「だからどうした?」


「えっ…………」


「だから、どうしたって言ってるんだ?」


「団長が、どんなに苦労したか。」


すると、シアンは鼻で笑った。


「お前に、俺の何が分かるんだ?俺は、1度も苦労したと思った事は無いが。そもそも、自業自得で仕事が増えたのにユラに怒るのはお門違いだ。」


ユラ様は、ベガさんから資料を貰い筆を動かす。


「…………でも、納得できないです!」


「僕の種族は、神様なんだよ。しかも、高位の神で竜神だからさ。どうしても、何かあれば神様のお仕事や問題に巻き込まれてしまうんだよね。」


ユラ様は、筆を止めることもしないで言う。タンタは、シアン団長を見ているが頷かれるだけだ。


とにかく、お茶を入れて持っていこう。


「あっ、あの………」


「ん?」


うわぁ~、近くで見るとかなりのイケメンだ。


「その、お茶を入れて来ました。」


「ありがとう。」


そして、ユラ様は書類や資料をなおす。


「それにしても、会えるとは思わなかったよ。」


「へっ?」


すると、シアン団長もキョトンとしている。


「ノアは、元気にしているかな?」


まさか、さっき神様だって言ってたし………。


シアン団長が、動揺して僕を見ている。シアン団長は、名前は出してないけど、母が死んでいるのは言ってあった。ユラ様は、察したのだろう。


「そう、亡くなったのか………。」


少し、悲し気な表情で呟く。


「あの、母の師匠……ユラ様ですか。」


僕は、緊張した声で言う。


「そうだよ。君の、お爺ちゃんでもあるけど。」


すると、その場の人達がざわめく。


「どういう?」 


「僕が、捨て子だったノアを養子にしたんだよ。でも、平民に恋をしてさ。自由に、生きて欲しくて養子から外したんだ。でも、僕からしたら縁は切れても大切な娘だよ。そして、娘の子供だから孫。」


ユラ様は、とても嬉しそうに優しい笑みを向ける。


「……………。」


戸惑いに、言葉が出てこない。聞きたい事が、沢山あった気がするけど何も思い浮かばない。


思わず、言葉に出来ない思いが涙になって溢れてくる。やっと、見つけた……たった一人の家族。


「おやおや。シアン、少しだけ席を外すよ。」


「そうだな、泣かしたんだしどうにかしろ。」


シアンは、優しく笑って頷く。


「えっ!?これって、僕が泣かしたの!?」


ユラ様は、僕の肩を押して休憩室に入った。


「何か、申し訳ありません………。」


「良いよ、気にしないで。」


そう言って、ユラ様はハンカチを渡してくれた。


「あの、ユラ様………。」


「ん?」


「今年から、医療班に入りました。その、よろしくお願いいたします。私も、頑張ります。」


「はぁ……、硬いよ。そうだ、君の父親は?」


ユラ様は、ため息を吐き出し話題を変える。


「僕が、幼い頃に死にました。」


「そう、今までどう生活してたの?」


「少しも、遺産があったので。」


何か、心配させてしまったみたいだ。


「そう、何かあれば相談にのるからね。」


たぶん、何かあっても僕はこの人を頼らない。いいや、頼れない。何か、そんな気がするなぁ。


「はい、ありがとうございます。」


ちなみに、ユラは直感的にそれを感じていた。それは、別の話で触れるのでスルー。


「じゃあ、イリニ仕事に戻ろうか。」


僕は、笑ってユラ様を追いかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ