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間違えて運に極振りしちゃったけど召喚士なら何とかなりますか? ~召喚で出てくる魔物が異常個体ばかりなんですけど!~  作者: やおよろずの
第四章 六大ギルドになっちゃおう!

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092 天界の試練

コナツさんの声が訓練場に響くと同時に、冒険者たちの空気が一変する。

さっきまで私 (というかモーリー) の伝言を聞いて困惑していたはずの六人が、今は全員、武器を構えてこちらを見ている。

完全に戦闘態勢だ……。


戦うのはモーリーたちだけど、向こうの勝利条件は、私への一撃。

つまり、あの人たちは全員、私を狙ってくるはず。


……こ、怖い……。

私は思わず、一歩後ずさる。

流石は上位の冒険者というべきか、纏っている雰囲気──殺気のようなものが全然違う。

マギド・ゼブラスのときも思ったけど、魔物相手と人間相手は、やっぱり全然違う……。


冒険者たちもこっちの様子を窺っているみたいで、すぐには動かなかった。


当然だけど、私も何もできないので、ただ突っ立っているのみ。

アルテミスも私を守るために横へ控えたまま。


そして肝心のモーリーも、ぴくりとも動かない。

像はポーズを決めたまま微動だにしないし、門も反応がない。

……まあ、像と門が動かないのは、本来なら当たり前なんだけど。


そんな妙に張りつめた沈黙の中で、向こうの冒険者の一人が、低い声で言った。


「──さっさと終わらせる」


声の主は、後ろの方にいた大柄な男の人──ディガルさんだった。


「当てりゃ勝ちなんだろ。だったら当てりゃいい」


そう言うなり、ディガルさんは銃のような武器を私に向けると、照準器を覗き込んだ。


……えっ、まずくない……?

あんなでっかい銃で撃たれたら、普通に死にますよ人間は。


そう思ってコナツさんを見るけど、知らん顔。

いやいやいや、死人が出ますよ死人が!?


ディガルさんの指が、引き金らしき場所にかかる。


「──ひ、ひいいぃっっ!」


ヤギのような悲鳴とともに、反射的に目を瞑る。

銃を向けられるのなんて人生初だよっ!?

アルテミス、何とかしてっ!!


その直後。


──ひゅっ、どががっ。


銃声の代わりに聞こえてきたのは、空気を裂くような軽い音と、何かがぶつかったような衝撃音。


「……え?」


おそるおそる目を開けてみると、さっきまで私を狙っていたディガルさんの姿はそこにはなかった。

そして、そのずっと後ろの方で、ディガルさんがうつ伏せに倒れていた。


「ディガル!?」


レグさんの叫び声が訓練場に響く。


そして、ディガルさんがさっきまで立っていた場所には、いつの間にかモーリー像の姿があった。

勇ましく拳を振り抜いたような、躍動感のあるポーズで、ぴたりと静止している。


「……な、何が起きたの?」


私は状況が飲み込めず、アルテミスとモーリー門を交互に見る。


アルテミスはいつも通り、私の隣で静かに立っているだけ。

つまり、今のはアルテミスが何かしたわけじゃなさそう。


となると、やっぱりモーリー……?

そう思ったところで、モーリー門に文字が浮かび上がった。


『何が起きたかを端的に言うと──あの冒険者が彼から目を離したんだ。だから彼は少し注意しに行ったんだ。拳でね。ハハ、かなりクールな一撃だったと思わない?:)』

「……え、どういうこと?」

『つまり──おっと。その前に、次の挑戦者がまた彼に注意されそうだね:|』

「……?」


私はモーリー門から、冒険者たちの方へ視線を戻す。


「ディガル!!」


アッシェさんが倒れたディガルさんの方へ駆け寄ろうとしていた。

けれど、その前にソノイチさんの鋭い声が。


「像から目を離すな!」


その声に、私までびくっと肩を跳ねさせる。


「え?」

「逸らすなッ!!!」


再び、ソノイチさんの怒号のような声が響いた。


──その直後、モーリー像がとんでもないスピードで走ると、アッシェさんをぶん殴ろうとした……!!!


「な、なにあれ!?」


理想的な走るフォームの彫刻を、何枚か連続で見せられたみたいだった。

ポーズからポーズへ、コマ送りで進んでいるように見えるほど速い。

というか残像すら見えてる気がする……。


そして、アッシェさんを殴る直前──拳を振りかぶり、今にも殴り掛かりそうな姿勢のまま、モーリー像は再びぴたりと静止した。


「ど、どういうこと、モーリー!?」

『サキに読み上げてもらった宣告を覚えているかな? かなり荘厳で、少しだけ長かったやつさ:)』

「あの意味わからない文章でしょ……? あんまり覚えてないかも……」

『ハハ、手厳しいね。実のところ、あれは単なる雰囲気づくりのセリフじゃなくて、天界の試練(オラトリオ)の宣告なんだ。正直、僕としてはけっこう親切に説明したつもりだったよ:|』

天界の試練(オラトリオ)? 宣告?」

天界の試練(オラトリオ)は、僕が挑戦者へ課すとてもクールな試練だよ。宣告を受けた者たちは、定められたルールの中で僕に挑むことになる。つまり──天界の試練(オラトリオ)は僕の究極奥義(ウルト)みたいなものさ:)』

「……じゃああれは、必殺技を発動する条件だったんだ……。だったら先に言ってくれても……」

『サキだけにね?』

「……アルテミス、やっちゃって」

「はい、マスター」


その瞬間、アルテミスから溢れんばかりの殺気が──


「アルテミス待った待った!!!」

『おっと、アルテミス。今のは冗談だよ。君が本気になると、試練より先に訓練場が終わってしまうからね:|』

「……はあ。それで、その 天界の試練(オラトリオ)はどういう効果なの?」

『簡単さ。挑戦者の誰かが彼から目を離すと、ペナルティを受ける。時の流れが遅くなるんだ:)』

「時の流れ……?」

『つまり──挑戦者たちの世界が、少しスローリィになる。そこへ彼が、天罰を下すんだ。拳でね:)』

「……像から目を逸らしたら、時間の流れがゆっくりになって、その隙にモーリー像が殴り掛かってくる、ってこと?」

『そういうこと。そのかわり、彼も挑戦者全員に見られている間は、彫刻らしくじっとしているんだ。もっとも単純で、もっとも礼儀正しい天界の試練(オラトリオ)──彼を見よ(ヴィデ・イルム)だよ。複数人を相手にサキを守るには、かなり向いている試練だと思わない?:)』

「……確かに! ちゃんと考えてくれてたんだ!」


私がモーリー門から説明を受けている間に、冒険者たちもルールを把握し始めたみたい。


「……見続けろ。目を逸らした者が狙われる」

「おいおい……なんだよそれ。後衛も前衛も関係ねえじゃねえか」

「ディガル……」

「大丈夫なはずだ。私の覚えが正しければ、この会場の壁内には衝撃吸収の術式が埋まっている。ディガルは殴られた衝撃で意識を飛ばされているだけのはずだ」


そうなんだ、良かった……。

じゃあディガルさんも無事ではあるんだね。

かなり痛そうではあるけど……。


「……像を見たまま戦え、ということか」

「そのようだ」

「簡単に言わないで!? そ、そんなのムリよ……!」


それはそう。私も同意だよ……!

そんな私の心の声に反応したわけではないだろうけど、カイルさんが軽く肩をすくめて言った。


「いや、そうか? 割といけるんじゃないか?」

「じゃあやってみろ。そして死ね」

「…………。要するにさ。像から目を離さなければ何もしてこないんだろ?」

「待て、カイル……!」

「後手に回り続ける方がまずい、だろ? アイツは見とけば何もしてこない。だったら、見たまま詰める」


その瞬間、カイルさんの姿が消えた──ように見えた。

でも実際は消えたんじゃなくて、目にも留まらぬ速さでこっちに向かって来ていた……!


しかも、モーリー像から目を離さないようにしながら。

すごい身体能力……流石、第五天位の冒険者……!


……って、感心してる場合じゃない!


「モーリー! 凄い能力だけど見られてたら意味ないじゃん!!!」

『ハハ、大丈夫さ。──さて、そろそろ僕も奏者として働くことにするよ:)』


そのとき、誰かの声が響いた。


「カイル、右に跳べ!」


エリーゼさんの声だった。

カイルさんは理由も聞かず、咄嗟に声の通り身体を動かした。


直後、カイルさんが踏み込もうとしていた地面が明るく光る。

そして。


──トーン。


澄んだ音とともに、天から光の柱が落ちてきた……!


「ええっ!? なにこれ!?」

『光の柱さ。彼に全て任せていてもいいけど、実のところ、僕もヒマだからね:)』

「ど、どういうこと……?」

『ハハ、見ていればわかるよ:)』


訓練場の地面に、また光が浮かび上がる。


今度は一つじゃない。

カイルさんの周囲の地面がいくつも光った。

そして、その光を追いかけるように、澄んだ音が連なっていく。


──トーン。

──トン。

──トーン。


音が鳴るたびに、天から光の柱が落ちる。


「左!!!」

「ぐおっ、あぶねッッ!」

「右!!!」

「ひい、間一髪ッ!」


カイルさんはエリーゼさんの指示通りに動いて、何とか光の柱を避けていく。

……何だか、光の柱が落ちる音も相まって、音ゲーみたい……。


「後ろ!!」

「……後ろってどっちだ? 俺から見て?」

「馬鹿野郎!!!」


──トーン。


次の瞬間、光の柱がカイルさんを直撃した。


「カイルさん!!」

『大丈夫さ。殺傷能力のない力を使ったからね。挑戦者を、少しばかり舞台の端まで運ぶための光だよ。衝撃は……まあ、かなり凄いと思うよ:)』


モーリーの言う通り、カイルさんの身体は焼けたり、傷ついたりしたようには見えなかった。

ただ、ものすごい勢いで吹き飛んだ。


「──えっ……え?」


ものすごい勢い──のはずだけど、カイルさんの身体は、まるでスロー再生のようにゆっくり吹き飛んでいる。


……そうか。

カイルさんがモーリー像から目を離したから、カイルさんたちの時間の流れが遅くなった、ってことか。

なにこれ、強すぎない……?


モーリー像はゆっくり吹きとばされているカイルさんの方を向くと、また信じられない速さで駆けていく。

気付いたときには、もうカイルさんのすぐそばにいた。

そのまま、空中のカイルさんに向けて、白亜の拳を振り下ろす。


鈍い音が響く。

カイルさんの身体が、地面へ叩き落とされた。


「……カイル」


エリーゼさんが、かすれた声で名前を呼ぶ。

けれど、カイルさんはぴくりとも動かない。


「えっ!? 生きてるよね!?!?」

『……多分:|』


多分じゃダメだよモーリー!!!


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― 新着の感想 ―
なるほど、つまり、“神速”と言っていたのは、時間停止をして、レグたちから物事が早く見えている状態で、モーリー像が240km(確か)ぐらいで走っていることを表していたのか。なろほど(何もわかってない)
そうか、宣告されたタイミングで、 もう立場は入れ替わっていたんだね(笑)
ナニかあっても試練だから不慮の結果になっても仕方ないという擁護をしとこう・・・・
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