089 ついに、第四天位の昇格試験!
翌日──ついに第四天位の昇格試験。
昨日のクランクさんは少し体調が悪そうだったけれど、倒れるようなことはなく、
黄歯車団のみんなの作業も順調に進んだらしい。
昨日の時点では「この調子ですと予定通り明後日には終わりそうですな!」とのことだった。
今日はザラたちにギルドルームにいてもらうことになってるし、おかげで私も気兼ねなく昇格試験へ向かうことができる。
ベッドから起き上がり、身支度を済ませて一階へ降りる。
パンさんとペールルージュさんは、昨日から続いている評議会絡みの用事で、今日も早朝から出かけているらしく不在だった。
そんな、いつもよりちょっと静かなギルドルーム。
……主にパンさんがいないからだけど。
……なんだか、少し緊張してきた。
モーリーもアルテミスもいるから大丈夫だと思ってるけど、やっぱり試験って慣れないよ……。
第三天位の昇格試験のときも、ガルムたちがこっちに向かってきた瞬間は本気で怖かったし。
だって狼みたいな魔物が向かってくるんだから、一般社会人なら怖くて当たり前だよ……。
とりあえず、私の緊張をほぐす意味でも、魔力の面でも、朝ごはんに聖脈果を食べよう。
そんなわけで裏庭へ向かうと、またまたモーリー像がリュバンス樹に水をやっていた。
「おはよう、モーリー! 今日も水やりありがとう!」
もう像が水やりしている光景に何も思わなくなった私は、モーリー像に話しかける。
するとモーリー像は、まるで最初から分かっていたように高枝切りばさみを使って聖脈果を一つ取ると、そっと私に渡してくれた。
「ありがとう、ちょうどお願いしようと思ってたんだよね。これ食べ終わったら、昨日話した通り昇格試験を受けにギルド集会所に行こうと思ってるから、よろしくね!」
私がそう言うと、モーリー像はゆっくりと頷き、再び水やりに戻った。
……絵になるなぁ。
そんなモーリー像は置いといてギルドルームに戻り、聖脈果を軽く洗って食べやすい大きさに切り分けると、お皿に並べて朝食を始める。
──うん、美味美味!
朝からこんな果物を食べられるなんて、ちょっと贅沢だよね。
しかも魔力の最大値まで上がるおまけ付き……じゃなかった、そっちが目的だよね、うんうん。
──そうだ、昇格試験で何かあったときに備えて、今のうちにステータスも確認しておこうかな。
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人間 召喚士 Lv. 18
【体 力】 23
【魔 力】 10(44)
【持久力】 23
【攻撃力】 1
【防御力】 1
【 運 】 999
【速 度】 1
【知 力】 1
【精神力】 1
【スキル】
亜人召喚Ⅰ 亜人召喚Ⅱ 亜人召喚Ⅲ
低魔召喚Ⅰ 低魔召喚Ⅱ 低魔召喚Ⅲ
中魔召喚Ⅰ 植物召喚Ⅰ 植物召喚Ⅱ
植物召喚Ⅲ 植物召喚Ⅳ
時短召喚術 召喚権限委任
魔力回復量増加Ⅰ 帳尻合わせⅠ
獲得経験値増Ⅰ
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おー、やっぱり聖脈果の効果で、また魔力の最大値が上がってる……!
それにマナエーテルのおかげで魔力も回復してるし、これならいざというときにもゴブリンズを召喚できそう!
基本はモーリーに戦ってもらうつもりだけど、相手はゴーレム三体だから、人数を合わせる意味でも一体は召喚するかも?
戦いは数、って言うしね。
そんなことを考えながら聖脈果をぺろっと食べちゃうと、ささっと準備を済ませて表へ出た。
すると、表にはすでにアルテミスとザラ、それからジョンソンとブルースが、モーリー門の前で待っていた。
「ザラ、ジョンソン、ブルース! 今日は留守番させてごめんだけど、頑張ってくる!」
「いえいえ~! マスターとお姉さまなら楽勝すぎると思いますけど、気を付けて行ってきてくださいね~!」
ザラがいつもの明るい調子で手を振る。
ジョンソンとブルースも、いつも通り無言で頷いてくれた。
そんないつも通りのみんなを見てると、少し緊張がほどけるよ。
「ありがとう! 第四天位になってくるよ! アルテミスもよろしくね!」
「お任せください。マスターには指一本触れさせませんので」
「うん、今日はモーリーメインで戦ってもらうけど、私の守りはアルテミスに任せた!」
「はい、マスター」
アルテミスはいつもよりピシッと背を伸ばすと、私の横にピッタリと立った。
というか、なんならもう身体を擦り付けてるレベルで横にピッタリと立ってる。
まあ決意の表れということで、気にしないことにした。
ちょうどそのとき、ギルドルームの中から寝間着の上に薄手のガウンを羽織ったリンドールさんが出てきた。
「おはようございます。お見送りに来ましたわ……ふあぁ」
「リンドールさん! 朝早いからお見送りは大丈夫って言ってたのに、ありがとうございます!!」
リンドールさんは口元に手を当てながら、何度もあくびをしている。
かなり眠たそう……。
「黄歯車団の皆さんの対応はわたくしの方でやっておきますので。サキさんは試験を頑張ってきてくださいな」
「はい、頑張ってきます! ね、モーリー!」
そう言って門を見ると、文字がぶわっと浮かび上がる。
『やあ、おはようサキ。今日は本物のゴーレムと会えると聞いて、正直かなりワクワクしているよ。僕が偽物というわけではないんだけどね。まあ、僕と彼に任せて:)』
──いつの間にか、門にもたれかかるようなポーズで、モーリー像が立っていた。
いつも神出鬼没なんだよね……。
「よし、じゃあそろそろ行こっか。……それで、モーリー。どうやってギルド集会所まで行く?」
『心配はいらないよ。彼は僕を運ぶことができるからね:)』
その文字が浮かんだ直後、モーリー像が白亜の門に手をかけた。
そして、ひょいっと持ち上げる。
「そっか、持ち運べるんだったね……」
しかも、重そうな様子はまったくない。
どれだけ力持ちなの……?
「……目立つよね、これ」
『正直、かなり目立つだろうね。僕と彼は、この世界の街並みに馴染むようには造られていない。残念だけど、異形の存在に見えるのは仕方ないことさ:(』
でも、こうするしかないよね……。
というわけで、私たちはギルド集会所へ向かうことになった。
ギルドルームを出て、街の大通りを進む。
先頭を歩くのは、モーリー。
私とアルテミスはその少し後ろをついていく形だ。
……うん。
目立たないわけがない。
「……なにあれ」
「しっ、見ちゃだめ」
「昨日本屋で見た」
道行く人たちの視線が、これでもかというくらい集まってくる。
ザラやゴブリンズと歩いたときもかなり注目されたけど、これは──
「……白ギルドの儀式?」
「ありがたや……」
違います。
これは宗教行事ではありません。
昇格試験に向かっているだけなんです。
一人一人にそう説明したかったけど、私は黙って歩くことにした。
そうして、拝まれたり、遠巻きに見物されたりしながらも、ギルド集会所に到着。
幸い、ギルド集会所の入口はかなり大きくて、門を抱えたモーリー像も中に入ることができた。
まあギルド集会所って、色んなものが出入りするから大きく作ってるんだね……良かった。
私はそのまま、いつもの受付嬢さんのいる受付へ向かった。
「おはようございます。昨日話した昇格試験を受けに来たんですけど……」
「あっ、サキさん!……と、像?」
「あ、この子はモーリーって言って……まあ、召喚獣です」
「しょ、召喚獣!?」
門を抱えるモーリー像をまじまじと見つめる受付嬢さん。
驚くのも無理はないよね……。
「……まあ、サキさんですし今さら驚きません!……転移の魔法陣への扉、通れるかな……」
それはそう……。
──結局、モーリー像が門を横向きに抱え直すことで、何とか通ることができた。
そうして、私とアルテミス、それからモーリーは転移用の魔法陣の上に乗る。
いつも通り視界が切り替わり、気付けばそこは、前にも来た中くらいの闘技場のような場所──模擬戦闘用訓練場だった。
転移にはもうすっかり慣れた……つもりだったけど、
試験会場の冷たい空気を受けた瞬間、気が引き締まる。
……やっぱり、緊張してきたかも。
やっぱりサキ視点は馴染む……。
サキ視点はサックリ進みます!




