表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
間違えて運に極振りしちゃったけど召喚士なら何とかなりますか? ~召喚で出てくる魔物が異常個体ばかりなんですけど!~  作者: やおよろずの
第四章 六大ギルドになっちゃおう!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
88/100

088 冒険者たち

ディガル、カイル、アッシェ、そして、ソノイチが倒れた。

残るは、レグとエリーゼだけ。


──そう見えたが、アッシェはまだ、意識を失っていなかった。


光の柱に吹き飛ばされた先に、偶然にも、倒れたディガルの巨体があり、衝撃が分散したのだ。

さらに、事前に重ねていた自己強化魔法も効果を発揮していた。


そのどちらか一つでも欠けていれば、アッシェは既に戦闘不能となっていたはずだった。


「……っ、は……」


アッシェは何とか息を吐き、震える手を胸元へ当て、小さく詠唱した。


白い光が彼女の掌から滲む。

神聖の系統の回復魔法──彼女が唯一使える回復手段だった。


ただし、それは完全に回復するほどの強い効果ではない。

何とか、立ち上がれる程度だった。


「……まだ、やれる!」

「……アッシェ!?」


白亜の像を視界に収めたまま、レグはその声に反応し、驚きの声を上げた。


「な、何てタフなんだ……」

「流石だな──なんて感心してる場合じゃない。来るぞ!」


──トトン。

──トン。

──トトン、トーン。


光の律動は、さらに激しくなっていた。

地面の光は、線を描くように、列を作るように、時には塗りつぶすように広がっていく。


エリーゼは魔力感知で、レグは刀身の反射を利用して、どうにか光を避けていた。


「……アッシェは?」


エリーゼのように魔力感知に長けているわけでも、ソノイチのような離れ業も、レグのような奇策もないはずのアッシェは、今、どうやってこの光を避けているのか。


「レグ、剣を上げてくれ」


白亜の像を睨みつけたまま、エリーゼが言った。


「剣を?」

「少し右だ。刀身を寝かせてくれ。光の柱は私が伝える」

「分かった」


レグは意味を理解するよりも早く、言われた通りに剣を向けた。


幅広の刀身が、訓練場の光を受けて鈍く輝く。

エリーゼは白亜の像から目を離さず、視界の端で、刀身に映り込んだアッシェの姿を捉えた


そこには、離れた位置で盾を構えるアッシェの姿が映っていた。

大盾を構え、白亜の像を睨みつけたまま、辛うじてその場に踏みとどまっている。


その姿を見て安堵しかけたところで、エリーゼはすぐに別の違和感へ気付いた。


「……どういうことだ?」


不思議なことに、アッシェの足元には光が灯らない。

偶然なのか、それとも、攻撃の条件に何か穴があるのか。

考えを詰める余裕はないが、これならアッシェも戦力になるかもしれない。


そして同時に、エリーゼの中に一つの策が浮かんだ。


「レグ、剣の角度を変えてくれ」

「今度は何だ!?」

「門を映せ」

「門……?」


レグには意味が分からなかった。

だが、エリーゼの声にも迷いがなかった。


「いいからやってくれ。角度は私が言う」


レグは頷くと、光の柱を避けながらエリーゼの言う通りに剣の角度を変える。

刀身に、白亜の門が映った。


それを確認し、エリーゼは素早く何かを唱え始める。


「──ここだな」


直後、白亜の門の周囲で轟音が響いた。

地面が割れ、土が隆起する。

門だけを囲うように、四方から土壁がせり上がっていった。


「何を──」


レグが言いかけるより早く、土壁は白亜の門を完全に覆い隠した。

その瞬間。


エリーゼは、あえて白亜の像から視線を外し、そして、サキの方へ向き直った。


「エリーゼ!?」


──これまで通りであれば、その瞬間に白亜の像が動くはずだった。

だが、白亜の像は、動かなかった。

拳を振り抜いた姿勢のまま、ただ静止している。


「……当たり、か」


エリーゼの唇が、わずかに動いた。


「どういうことなんだ!?」

「思い出してみてくれ。召喚士の少女が読み上げた、あの"伝言"──我は門であり、番人であり、天界を守る古き奏者なり。……あれがただの飾り文句でないのなら、"我"は像ではなく門ということになる。つまり、本体は門だ」

「なっ……!」

「考えてもみろ。ソノイチが門前へ迫ったとき、アッシェは先に像から視線を外していた。それでも、あの像はソノイチを優先した。像が完全な自動反応で動いているなら、そんな選択はおかしいはずだ」

「……!!」


レグは、これまでの流れを思い返す。


ディガルが狙撃しようとした瞬間。

カイルが光の柱の衝撃で視線を外した瞬間。

そして、アッシェとソノイチの両者が視線を外した瞬間。


像は、彼らを見ていなかった。


では、誰が像から目を逸らしたかどうか、判断していたのか。

──門だ。


門が戦場を見て、判断している。

像はただその判断に従って動いているだけ。


そんな馬鹿げた推測だったが、レグの中で何かが一本に繋がった気がした。


であるならば、門からこちらが見えなくなれば、白亜の像は「誰が像から目を離したか」を正しく判断できなくなる。


少なくとも、今この瞬間は。


「レグ!」

「分かってる!」


レグは、すでにサキへ向かって走り出していた。


白亜の像は動かない。

地面に浮かぶ光も、一瞬だけ乱れたように見えた。


──サキ本人に一撃でも入れば勝ち。


白亜の門と像という、最大の障壁が止まった今なら、届く。


エリーゼの両手の前にも、魔力が収束していく。


疾風衝──圧縮した風を、超高速で撃ち出す魔法。

殺傷能力は低いが、軽装の相手を大きく吹き飛ばすには十分すぎる威力がある。


アッシェも状況を察したのか、盾を引きずるようにして、エリーゼを守る位置へ歩み寄ろうとしていた。


初めて、冒険者側が、あの召喚士の仕掛けを上回った。

そのように見えた。


──だが。


土壁の内側から、重低音が鳴った。


「……!?」


エリーゼの表情が、わずかに強張る。


次の瞬間、土の壁に亀裂が走った。


ひび割れの隙間から、淡い金色の光が漏れる。

それは、天から落ちる光ではない。

門の内側から、土壁を押し広げるように溢れ出す光だった。


「まずい、伏せ──」


エリーゼが言い切るより早く、土壁が内側から砕けた。


──トォン。


低く長い音とともに、白亜の門から、地面と水平に光の波が放たれた。


これまでのように天から落ちる光の柱ではない。

全てを薙ぎ払う、金色の波動。


砕けた土壁の破片を巻き込みながら、光が訓練場を一閃する。


「ぐっ──!」


レグの身体が吹き飛ばされ、剣を握ったまま、床を転がった。


アッシェも盾ごと弾き飛ばされた。


そして、魔法を放とうとしていたエリーゼも、真正面からその波を受けた。


「かは……っ!」


胸の奥から空気を押し出され、エリーゼの身体が後方へ浮き上がった。

皆の視線が、白亜の像から外れた。


「──ッッ!!」


気付いたときには、もう遅かった。


白亜の像は、既にエリーゼの傍らにいた。

拳を振りかぶった姿勢で。


──激しい殴打の音とともに、白亜の拳が、エリーゼの身体を容赦なく地面へ叩き伏せた。


「エリーゼ!!」


レグの叫びが訓練場に反響する。


エリーゼは動かない。


エリーゼの作戦は、確かに一瞬だけ成功した。

だが、それは。


「ルール違反、だってのかよ……!」


門の視界を塞がれれば、塞いだものごと吹き飛ばす。

白亜の門には、最初からそのための手段まで備わっていたのだ。


「……くそ……」


レグは白亜の像を睨みつける。


まだ視界が揺れ、耳鳴りがする。

それでも、何とか立ち上がった。


白亜の像の足元には、エリーゼが倒れていた。

少し離れた場所には、アッシェも倒れている。

二人とも、もう立ち上がれるようには見えない。


ディガル。

カイル。

ソノイチ。

アッシェ。

そして、エリーゼ。


全員が倒れた。

残っているのは、レグだけだった。


「……俺だけ、か」


喉の奥が熱くなるのを、レグは感じた。


焦り、恐怖、はたまた怒り。

どんな感情を今抱いているのか、レグ自身も分からなかった。


ただ、このまま終わるわけにはいかない、終わりたくない、という思いだけが、足を動かした。


レグは自身の剣を握り直す。


毎日手入れを欠かさず、数えきれない戦場をともに越えてきた剣。

それは、冒険者としてのレグの誇りであり、これまでの歩みそのものだった。

この剣と自分の腕があれば、第六天位にだって届くはずだ。

──そう信じて、レグはここまで来た。


「……この、化物」


例え、このまま像を斬りつけたとして、勝てるわけでもない。

だが、このまま何もできずに倒れることだけは、レグには耐えられなかった。


レグは床を蹴り、白亜の像に迫る。

白亜の像は、無機質な姿勢でただ黙ったままだ。


足元の光は、もう避けることは考えない。

落ちるなら落ちろ。


「おおおおおおッ!!」


狙うは喉。

レグは白亜の像の首元へ向けて、ヴァルドライトの剣を振り抜いた。


だが、手応えはもちろん肉を斬ったようなものではなかった。

ごぉん、と、まるで巨大な鐘を剣で叩いたような衝撃が、レグの腕を貫く。


「──ッ!」


手首、肘、そして肩まで、一瞬で痺れが伝わる。

そして、バキリと音がした。


それは、レグの刀身が折れた音だった。


「……あぁ」


レグの口から、間の抜けた声が漏れる。


折れた。

自分を支えてきた剣が。


心の奥で、同時に何かがひび割れる音がした。


「……こんな、もんか」


レグの手元には、折れた剣の柄だけが残っていた。


だが、折れた先の刀身は、弾き飛ばされていなかった。

白亜の像の喉元で、斜めに止まっている。


そして、その磨き上げられた刀身には、

像の向こう側にいる、サキの姿が映っていた。


「──」


その反射を、見ている者がいた。


倒れていたはずのディガルだった。


アッシェは、自身に回復を施した直後、倒れたディガルへもわずかに神聖系統の魔力を流していた。

それは、ディガルを立ち上がらせることはもちろん、まともに動けるようにするほどではなかった。


それでも、完全に沈んでいた意識を、辛うじて引き戻すだけの力はあった。


ディガルは、地面に頬を押しつけたまま、薄く目を開いていた。


身体は動かない。

起き上がることなどできない。

指先一つ動かそうとするだけで、全身に鈍い痛みが走る。


だが、それでも身体に染み付いたいつもの動作だけは、流れるように行うことができた。


「……」


ディガルは魔導銃(まどうじゅう)を構え、白亜の像に向けて照準器を覗く。


白亜の像の喉元。

そこに残った、折れたヴァルドライトの刀身。

そしてその刀身に映る、サキの姿。


ディガルは狙いを定めると、震える指で、引き金を引く。


──”照準を合わせて撃てば、相手が回避しても追尾する”


そんな特注の魔弾を撃ち出したのだった。


次回は久しぶりのサキ視点です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
反射した鏡面を見て相手を狙うとかメデューサ狩りみたい笑
召喚してさっさと終わらせて楽にしてやれ
アッシェーー像に抱き付くんだーー!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ