表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
間違えて運に極振りしちゃったけど召喚士なら何とかなりますか? ~召喚で出てくる魔物が異常個体ばかりなんですけど!~  作者: やおよろずの
第四章 六大ギルドになっちゃおう!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
87/99

087 天界の護人③

アッシェが使用する魔法は、エリーゼのように魔力を外へ放つものではない。


魔力を身体へ巡らせ、自身に作用させる自己強化の魔法。


火炎、氷結、雷電、風空、地砕──五大元素と呼ばれる分類は、魔力を外へ放つ魔法だけを指すものではない。

身体の内側へ巡らせれば、それは術者自身に作用する強化の系統にもなる。


氷結──痛覚の鈍化。

地砕──身体の硬化。


今この瞬間に使えるものを、アッシェは迷わず全て重ね掛けた。


アッシェは大盾を正面に構え、まるで巨大な竜のブレスを受け止めるかのように、腰を落とす。

もっとも、アッシェに竜と対峙した経験などなかったが。


その直後。


──トーン。


光の柱が、アッシェを直撃した。


「ぐっ……あああああっ!!」


殺傷の気配はない。やはりカイルと同様、身が焼かれることも、貫かれることもない。

だが、その衝撃は想像を絶していた。


アッシェの身体が、盾ごと後方へ吹き飛ばされる。

床を削るように滑り、途中で足が浮き、体勢が大きく崩れた。


その瞬間、白亜の像から視線が外れる。


──白亜の像が消えた。


「アッシェ!」


レグが叫んだときには、もう遅かった。


白亜の像は、吹き飛ばされたアッシェの眼前にいた。

拳を振りかぶった姿勢で。


「──ッ!」


アッシェは咄嗟に盾を引き寄せる。

前衛として積み上げてきた経験が、身体を動かしたのだ。

間に合ったのは、さすがと言うべきだった。


白亜の拳と、自分の身体の間に、大盾を差し込む。

その直後、拳が振り下ろされた。


白亜の拳が、盾越しにアッシェを殴打する。


鈍く、重い音が響いた。

盾越しに衝撃を受けたアッシェの身体が、地面に叩きつけられた。


「がはッ……!」


背中を打ち、肺の中の空気が一気に押し出される。

視界が白く弾けた。


それでも、アッシェは意識を手放さなかった。


事前に巡らせておいた氷結の痛覚鈍化と地砕の硬化、そして、第五天位の意地が、砕けそうになる身体をぎりぎりで繋ぎとめていた。


「……この、やろう……ッ!」


血の混じった息を吐き、アッシェは倒れたまま白亜の像を睨みつける。

盾は手放していない。

視線も、外していない。


だが、その背後で、再び地面が光った。


「アッシェ、そこから離れろ!」


エリーゼが叫ぶ。


だが、無理だった。


アッシェは倒れたまま、白亜の像を睨みつけるだけで精いっぱいだった。

身体は、光の柱の衝撃と、白亜の像の殴打で、もうピクリとも動かない。

盾を構えているだけで奇跡とも呼べるほどだ。


だが、次に光の柱を受け、さらに像の追撃を受ければ、今度こそ耐えられない。


レグは助けに動こうとした。

だが、その行く手を遮るように光が灯ったのが、レグの目の端に映ると、思わず動けなくなる。


エリーゼも同じだった。

叫ぶことはできても、アッシェを助けるには距離があり過ぎた。


「(……間に合わない!)」


──トーン。


アッシェに光の柱が落ちる。

その衝撃でアッシェの身体が再び大きく吹きとばされた。


その瞬間。


ソノイチが動いた。


「賭ける」


短くそう言うと、ソノイチの身体が低く沈む。

次の瞬間には、もうその姿はそこになかった。


ソノイチもまた、自己強化魔法を発動させる。

ただし、アッシェのように身体の内へ巡らせるものではない。

魔力を薄く纏う、更に次の段階の強化魔法。


「ソノイチ……!」


レグの声が届いたかどうかも分からない。

それほどの速度で、ソノイチの姿が遠ざかっていく。


向かった先は、倒れたアッシェではなかった。

白亜の門だ。


その意味を、レグはすぐに悟った。


「(像に、選ばせる気か……!)」


このままでは一人ずつ崩され、いずれ全員が倒れる。

ならば、どこかで流れを壊さなければならない。


アッシェとソノイチ──二人が同時に、像から目線を外しているとどうなるのか。


白亜の像が同時に二か所へ動けないのなら、

先に目をそらしたアッシェを狙うのか、

それとも、門へ迫るソノイチを止めるのか。


先に目をそらしたアッシェを狙っている間に、ソノイチが門前へ辿り着くことができれば……。

あの宣告の通りなら、何かが起こる。


無謀ではある。

だが、このまま押し潰されるよりは、まだ勝ち筋がある。


「速い……!」


ソノイチは、落ちてくる光の柱の合間を縫うように駆け抜ける。

光る地面を避けつつも、しかし速度は落とさない。

最短距離を選びながら、必要な分だけ身体をずらし、次の一歩を進んでいく。


レグですら、その動きを追うのは難しかった。


しかし。


──トン。

──トトン。

──トン、トーン。


律動が変わった。


それは、曲が一段高く跳ね上がったようだった。

地面に灯る鍵盤の数が、一気に増える。

線のように、面のように、ソノイチの進む先を光が埋めていく。


それでも、ソノイチは止まらない。


右へ左へと滑りこみ、身体をねじって進み続ける。


光の柱が、彼の服の端を掠めた。

その衝撃に身体を揺らされても、ソノイチは倒れない。

速度も、ほとんど落とさない。


門まで、あとわずか。

白亜の門は、ソノイチの接近すら意に介さないように、ただ荘厳に佇んでいた。


「届く……!」


レグは、思わずそう叫んだ。


ソノイチなら届く。

あの速度なら。

あの技量なら。


だが、あと一歩というところで、ソノイチの背後に気配がした。


「──ッ」


ソノイチが反応する。

反応はしていた。

だが、間に合わない。


白亜の拳が、ソノイチの背中を捉えた。


「ぐっ……!」


鈍い音とともに、ソノイチの身体が前方へ吹き飛ぶ。

一見すれば、門へ近づいたようにも見えた。


このままなら、門前へ転がり込めるかもしれない。

だが、そうはならなかった。


ソノイチの前方。

白亜の門のすぐ手前に、ひときわ大きな鍵盤の光が浮かび上がる。

まるで、そこから先へ進むことを拒む壁のように。


次の瞬間。


──トーン。


天から落ちた巨大な光の柱が、ソノイチを打った。


今度は後方へ──白亜の像のいる方へと、ソノイチの身体が弾き飛ばされる。

体勢が完全に崩れた。

呼吸も、視線も、何もかもが乱れる。


その先で待ち構える白亜の像は、すでに拳を振りかぶっていた。


「ソノイチ!!」


レグの叫びと、白亜の拳が振り抜かれるのは、ほとんど同時だった。


短い呻き──そして、重い衝突音だけが響き、

ソノイチの身体が地面に叩きつけられる。


しばらく、誰も動けなかった。


白亜の像は、拳を振り抜いた姿勢のまま静止している。

まるで初めから、そういう彫刻だったかのように。


「……ソノイチ」


レグは奥歯を噛みしめた。


ソノイチは動かない。

立ち上がってくる気配は微塵もない。


「だ、大丈夫ですか!?!?」


沈黙を破ったのは、あの召喚士の少女の、不安そうな声だった。

まるで、本当にソノイチを心配しているかのようだった。


「(くそっ! アイツが元凶だってのに……!!)」


心配するなら止めてくれ。

レグ、そしてエリーゼも、そう叫びたい気持ちを堪えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
第五天位のタンクがワンパンされなかったか。。火力はチートレイドボスってほどでもないようだね。第六?だったかゴブリンとサシでタイマン張ったのがいたし、エルフは黒塔のトップを圧倒してたから、火力はゴブリン…
もし敵襲があったとしたら門だけじゃなくて他の戦力も出てくると思うと、門だけの防衛力としては満点になるのかな
お大事にー 初見殺しの塊なギミック戦も兼ねてるような戦いではベテラン揃いでも形無しになっちゃって どうしょうもないなー
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ