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088 過去編6 聖オルレリウス歴354X年四ノ月


 現在、謁見の間には宝具が現れた時に中庭にいた者達が集められていた。

 それは王都の教会で、宝具は神々が勇者に送ったギフトで、勇者の加護が現れる者の近くに落としたと信託があったからだ。

 ちなみに俺は王族席に腰掛けながら、勇者適性があるらしいメンバーを眺めていたのだが、思わず首を傾げてしまった。


「どうしてバロン兄様や大人も加わっているんだ?十才で明日加護が得られる者達だけでよくないか?」


 俺がそんな事を独り言の様に言っていると、隣りに座っていた母であるフィリア第二王妃が俺の疑問に答えてきた。


「それは後からでも稀に加護が現れるからよ」


「はっ?そうなんですか?そんなの本にも書いてませんでしたよ……」


「それは、ごく稀にしか現れないからよ。私が知ってる限りでも五年前に一件あったぐらいだし」


「そんなに現れる頻度が少ないんですか……。もしかしたら増えてても黙ってるだけじゃないですかね?場合によっては隠し手として使えそうですし」


「そんなの考えつくのはあなたぐらいでしょう……。それに普通は大々的に報じて自分が有望だとアピールするわよ」


「確かに、俺が王子じゃなくて貧乏金無しならするかも……。いや、やはり隠し手として上手く使えばもっと稼げるんじゃ……」


「本当、我が息子は捻くれてるわね……」


「母上譲りですよ。それよりも誰が勇者になると思います?」


「あら、キールは私と勝負する気?」


「なになに?二人共、面白いことやってるわね。私も混ぜなさいよ」


 俺と母上の会話を聞いていたのか、母上の隣りに座っていたレイア第一王妃も微笑みを浮かべながら仲間に入ってきた。


「良いですよ。では、レイア様からどうぞ」


「私はラルニアじゃないかと思ってるわ。だって、あの子の父親はこの国でも稀な聖騎士の加護を持ってるしね」


 俺と母上は金髪に碧色の目をし、耳が尖っていないハーフエルフの子供を見る。


「なるほど、確かにラルニアならあり得るかもな。あいつアレスの次に剣の腕もあるし」


「あら、じゃあ我が息子キールはどれくらいの腕前なのかしら?」


「下から数えた方が早いですよ……」


「ふふ、キールは稽古をサボってますからね。戦闘系の加護が付いたら真面目にやりなさいよ。それとレイア、あなたてっきりバロン王子を選ぶと思ったのだけれど違ったのね」


「あら、勝負だから真面目にやってるのよ」


「そうですよ母上、それにバロン兄様が勇者になったら魔物を倒しに色々なところにたらい回しにされますよ。そんなことになったら俺が楽をできなくなるでしょう」


「ほほほ、キール王子は正直ね。でも、私としてはキール王子が国王をやってもらっても良いと思ってるのよ。あなたは誰よりも頭が回りますからね」


「俺はそんな器はないですよ。それに人望もあるバロン兄様以外、ここの国王はできないでしょう。まあ、父上はそうそう王座は譲らないと思いますけどね」


 俺は玉座に座っている残り半世紀は元気に生きてそうな国王である人族の父を見る。


「ほほほ、確かにあの人はそんな感じよねえ。まあ、私達はこの国が平和なら良いのよ。ね、フィリア」


「ええ、そうねレイア」


 二人は顔を見合わせ微笑みあっている。

 うちの家族は本当に仲が良い。

 噂では他国は王家の間で血みどろの殺し合いをしてるらしいので、俺は心底、この国に生まれて良かったと思っている。


「いやあ、二人の母上達が仲が良いことで何よりです」


「ふふ、平和が一番よ。では、次は私が予想するわね。ここはやはり騎士団長の息子アレスでしょう。ちなみに被るのはなしよ、キール」


 母上は俺を見て笑みを浮かべる。

 だが、その笑みに俺はいたずらが成功したような表情で返した。


「母上、それはあまりにも普通過ぎて面白くないですね」


 俺がそう言うとレイア様も母上も驚いた顔で俺を見てくる。

 どうせ、俺がアレスを選ぶと思っていたのだろう。

 それをわかってて母上はわざと先にアレスの名前を言って俺が悔しがる顔を見たかったのかもしれない。


「じゃあ、キールはどうだって言うのよ……」


「俺はこの集められた者達以外から勇者が現れると思いますね」


「えっ?どういうことなの?」


「なぜ、中庭に限定するんです?信託をもう一度思い出して下さいよ」


 俺の言葉に母上は理解できなかったみたいだが、レイア様はわかったような表情に変わりニヤッと笑った。


「なるほど、じゃあ、城の中も入るということね」


「あ、そういうことね!」


「ええ、近くとは言いましたが中庭とは言ってません。あの中庭の広さなら城も俺は入ってるんじゃないかと思いますよ」


「そうなるとキールも入るじゃないの!」


「まあ、そうなりますけど俺はないでしょう。なんせ嫌だと祈りますからね」


 俺はそう言って不敵な笑みを浮かべる。


「ああ、キールは祈るのね。ちなみに何の加護が欲しいのかしら?」


「魔法系の加護ですね。それが駄目なら攻撃にも使えそうな生産系の加護ですよ」


「横着ねえ……」


「でも、キール王子らしいわ。よし、では私はラルニアで、フィリアはアレス、そしてキール王子は城にいる者達ね。当たった者が勇者の加護を持つ者と最初にティータイムをする権利よ」


「良いわよ」


「それ、全然嬉しくないんですが……」


 俺はがっかりしながら言うが、二人は無視して盛り上がってしまう為、俺は溜息を吐くしかなかったのだった。


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