087 過去編5 聖オルレリウス歴354X年四ノ月
あれからライラ姉様とアリシアを見送った後、俺は書庫に行き加護についての情報を調べていた。
それは明日の零時に俺やアレスにオルフェリア王国で十才になった子供達が加護を得るからである。
俺は今まで戦闘系以外の加護で国の役に立つものが手に入れば良いと思い、生産系の加護ばかり調べでいたのだが、ここ最近の魔物の動きを見て戦闘系のものも読んでおこうと思ったのだ。
俺は早速、戦闘系の加護という本を取り出して読み始める。
ふむ、一つの武器に特化する加護か。
稲刈りの時期に便利そうな鎌術士なんてあったら良さそうだが……。
なんだ、剣、槍、弓、斧術士しか今のところないのか。
これなら、無難にスピードと武器の扱いが上手くなる剣士の加護で良いじゃんか。
でも、身体能力面が上がる戦士系の加護も捨てがたい……。
いや、そもそも身体を動かすのは面倒だし俺向きじゃないな。
ここはやはり魔法系か……。
俺は今度は魔法系の加護の書物を取り出し、読もうとしたら中庭が急に騒がしくなった。
その為、中庭が見える窓に近づき覗いてみると、バロン兄様とアレスを含む何名かが剣の稽古を初めたところだった。
……午後の稽古が始まったか。
まあ、俺は大事な勉強があるので不参加という事で……。
俺はそっと窓から離れ、勉強の為に泣く泣く魔法系の加護を読んでいたのだが、しばらくすると眠気に襲われてしまった。
なので、目を覚ましがてら加護以外で面白い本がないか探すことにしたのだが、ある題名に目がいき、つい手に取ってしまった。
勇者の加護についてか……。
結局、加護の本を選んでしまったが、まあ、良いか……。
いや、正直のところ気になるのもあったんだけど……。
俺は胸の高まりを少しだけ感じながら本を開いて読んでいく。
勇者の加護についての内容だが神々の御告げを聞いた者達の話を纏めたものになっていた。
それでも興味深い事が結構書いてあり俺の眠気を十分に取ることができた。
勇者の加護は複数の神々が共同で作った加護なのか。
それは、強力な加護になるよな……。
しかし、人数制限五人って場合によっては争いの火種になるぞ。
なんせ、特別な加護だから、各国は喉から手が出るほど欲しがるに決まっている。
最悪、他の国に勇者が五人いた場合、自分の国で勇者を誕生させる為に、現在いる勇者を殺そうとする国が現れる可能性だってあるのだ。
強力な力を持つ加護持ちなんて国が独占したいわけだし……。
俺は絶対に勇者にはなりたくないなあ……。
俺はそう思いながら持っていた本を目に触れない位置にさっさとしまう。
その後、少し集中して疲れたのもあり椅子を二つ並べて本を枕にして横になった。
すると徐々に夢の世界に落ちていく感じがあったので、それに身を任せようとしたのだが突然、書庫内が光りに包まれたのだ。
「な、なんだ⁉︎」
俺は慌てて飛び起き周りを見渡すも、書庫内が眩し過ぎて何が起きてるのかわからなかった。
しかし、すぐに光りも消え、書庫内がいつもと変わらない様子だとわかると、俺はほっとして胸を撫でおろした。
……今のは何だったんだ?
ま、まさか、寝過ぎてもう明日になって加護が付与されたとか⁉︎
俺は時計を慌てて見るも、日付は変わっておらず、時間も横になってから三十分ほどしか進んでいなかった。
なんだ、違うじゃんか。
じゃあ、あの光りは何だったんだろう?
その時、静かになっていた中庭が急に騒がしくなったので外を覗いて見ると、沢山の人が集まって騒いでいるようだった。
どうやら、あの光りは中庭が原因っぽいな。
バロン兄様達が何かいたずらでもしたのだろうか?
それなら、俺も混ぜて欲しかったんだけどなあ。
そう思いながら俺も中庭の方に行ってみると、何故か父上や偉い人達までいて、かなり真剣な表情で話し合っていたのだ。
これ、やばい事をしてしまったんじゃないか?
俺まで仲間にされたら困るな……。
よし、ここは退散しよう。
俺はそう思いすぐに引き返そうとしたが、誰かに腕を掴まれてまった。
その為、恐る恐る振り向くとそこにいたのは悪友アレスであった。
「……アレス、この手を離してもらえないか?」
「君はあれを見に行かないの?まだ見てないなら連れて行ってあげるよ」
「ふ、お前達のいたずらに俺を巻き込んで罪を分散しようなんて思わないで欲しいな」
「君は何か勘違いしているね……。そもそも、そんな子供じみた事するのはキール第二王子しかしないでしょ」
「おいおい、俺達立派な子供だと思うんだが……」
「はいはい、そうでした。それよりあれ凄いから見てよ」
俺はアレスに手を引っ張られながら、人の波をかき分けて中心に向かっていくと、目の前にほのかに光り輝く何かが見えてきた。
何だあれは?
俺はそれが全部見えるところまでいくと、何となくそれが何なのかわかった。
「これは鎧じゃないか?」
「多分、そうだよね……」
アレスは俺の質問に自信なさそうに答える。
それもそのはずで、その鎧の様なものはほのかに輝きながら浮いていたからだ。
俺は好奇心が湧いてしまい目の前に浮かぶ鎧のようなものをもっと見ようと近づいていく。
しかし、あっという間に誰かに襟首を掴まれ引き戻されてしまった。
「キール、危ないからあまり近づくな」
「バロン兄様……」
「こいつはまだ何だかまだわからないんだ。もしかしたら新手の魔物かもしれない。皆んなも離れていろ!」
バロン兄様の言葉に皆んな一斉に離れていく。
「父上、すぐに鑑定できる魔導具で魔物かどうか調べてもらいましょう」
バロン兄様はそう言うと父上は頷き周りに指示を出しはじめた。
そんな光景を見て俺は思わず呟く。
「おお、脳筋王子ではなく次期王様っぽい……」
「聞こえてるぞ」
俺はバロン兄様に軽く拳骨を落とされる。
「それより、キール。これは何だと思う?お前本の虫だからこういうのを見たことないか?」
「いえ、こんなの見たことないですが……まあ、鎧に見えますね。ちなみにバロン兄様はなんだと思います?」
「俺も鎧に見えるが、魔物だったらリビングアーマーってのだと思う」
「これが魔物……?」
俺は改めて目の前の宙を浮いている鎧を見てみる。
先程より輝きは薄れており、よく見ると細かい装飾がされた絵物語に聖騎士が着ていそうな鎧に見える。
それにあの頭の部分に柄のようなものが見えるが、鎧のように見えて実をいうと打撃系の武器なんじゃないか?
しかし、いくら考えてもわからる事はなかった。
その後、鑑定できる魔導具を持った兵士が現れ、鎧のようなものを鑑定すると魔物じゃなく、勇者のみが装備できる宝具だということがわかった。
また、同時刻に王都の教会で、勇者の加護を持つ者がこの王都オルフェリアに現れると信託も降りたのだった。
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