089 過去編7 聖オルレリウス歴354X年四ノ月
あれから、中庭と城の中にいた者達は城の客間に泊まり、日が変わったと同時に加護を調べる事になった。
ちなみに中庭に落ちた宝具は謁見の間に移動してあるのだが、今は輝きは失い玉座の後ろにある台座の上を浮き続けていた。
俺は既に自分の部屋に戻っていてベッドの上で溜め息を吐いていた。
まったく、なんで途中で起きなきゃいけないんだ……。
別に明日でも良いだろう……。
まあ、どうせ俺は祈って魔法系か生産系の加護になるだろうから起きなくていいか。
俺はそう思って早速祈りを捧げた後、布団をかぶって寝るのだった。
◇◇◇◇
ドゴゴーーーーオオオォン‼︎
「な、なんだ⁉︎」
突然、もの凄い音が響きわたり俺は一気に目覚めて飛び起きた。
今の音はなんだ?
……まさか⁉︎
俺は時計を焦って見ると日が変わるまでまだ一時間もあった。
もしかして、加護が現れる時に起きる音なのかと思ったが違うか……。
俺がほっとしているとまたもの凄い音が聞こえてきた。
ドドドオオォーーーン‼︎
「ま、また⁉︎何だこの音は?」
俺は窓を覗きこみ外を見て驚く。
それは王都中が火の海になっていたからだった。
おいおい、どうなってるんだよ⁉︎
俺は焦りながらも服を着替えて部屋を出ると、騎士の一人が焦った表情で俺のところまで駆け寄ってきた。
「キール第二王子、敵襲です!」
「敵襲⁉︎ど、どこの国が攻めてきたんだ⁉︎」
「い、いえ!もの凄い数の魔物です‼︎」
「はっ⁉︎魔物?魔物ってせいぜい群れても十匹程度だろ?」
「いえ、魔物が軍隊の様に来ていると……」
「そんな馬鹿な……」
「今、国王の指揮下で対処に当たっておりますので、キール第二王子はいったん広間に避難して下さい」
「わ、わかった……」
俺は騎士と広間に向かう為に廊下を走っていると突然、先の方の壁が吹き飛んだ。
ドーーーン‼︎
「うわっ‼︎」
「キール第二王子!大丈夫ですか⁉︎」
「あ、ああ……。しかし、何で急に壁が……」
俺達が驚いて破壊された壁を見ていると、そこから太い腕が現れ、のっそりと鎧を着た巨体が現れた。
だが、俺はその巨体よりその顔の方に驚いてしまう。
「ハイ・オーク……」
猪の顔がそのまま巨体の首の上に乗った魔物が、身体に付いた埃を振り払うとゆっくり俺達の方に向き直り歯を見せて笑ったのだ。
その笑みに俺の身体は恐怖で固まってしまったが、騎士が俺を庇うように立ってくれた事で何とかまた身体を動かす事ができた。
「どうやら、城にまで侵入されてしまったようです……」
騎士は剣を抜くと俺だけに聞こえるように話しかけてきた。
「そんな……」
「大丈夫です。うちの騎士団は西側でも最強を自負しています。キール第二王子、私があれの相手をしている間に行って下さい」
「……わ、わかった」
ここにいても役に立たない俺は騎士の邪魔をしないようにするしかない。
俺が騎士から距離を取るとすぐに騎士はハイ・オークに向かっていった。
「オルフェリア王国に来たことを後悔させてやる!」
騎士はそう叫び、ハイ・オークに斬りかかり、そのまま激しい斬り合いが始まった。
おかげでハイ・オークは騎士に集中し始めたので、俺はその間に横を走り抜け広間に向かったのだが、途中で騎士とオークの乱戦に遭遇してしまったのだ。
くそっ、これじゃあ先に進めない。
俺はどうにかして広間に行く方法を考えていると書庫が目に入った。
とりあえずここは危険だな……。
俺はそう思い書庫に逃げ込むと壁に寄りかかって息を整えながら、どうやって広間に行くかを考えることにした。
広間はさっきの乱戦が起きてる通路の先にある階段を降りなきゃいけない。
しかし、あの戦いの中を通り抜けるのは絶対無理である。
……どうする?
俺は周りを見渡し、中庭が見える窓を見て閃く。
あそこから出て、壁を伝っていけば下に降りれるよな。
俺は壁の構造を思い出し、いけると判断すると、早速、窓を開き辺りを確認した。
よし、中庭に魔物の姿は見えないな。
俺は窓から出て壁伝いに下に降り、無事広間のテラスに到着する。
しかし、広間内を見て愕然としてしまった。
そこには沢山の文官や侍女達が血だらけで倒れており、その近くには血を滴らせた斧を持つオークが立っていたからだ。
あいつ、戦う事が出来ない連中にも手をだしたのかよ!
俺は怒りでオークの前に飛び出しそうになるのを必死に我慢する。
なんせ、武器もない状態で飛び込むのは自殺行為だからだ。
その為、何か武器になるものがないか探してみるとオークの近くに小剣が落ちているのを発見した。
あの場所は無理だな……。
それにあれがあっても俺一人じゃオークには勝てないよな……。
そんなことを思っていると、血だらけの文官の一人が生きていたらしく、よろよろと立ち上がると広間の出口に向かって走り出したのだ。
しかし、すぐに文官はフラついて倒れてしまう。
「ブホッ」
それをオークが逃がすわけもなく倒れた文官の方にゆっくりと近づいていく。
あいつやる気かよ……。
くそっ、やるしかないか……。
俺は覚悟を決めてオークにバレないよう後ろから近づき、小剣を掴むと飛び上がりながらオークの首付近を斬りつけた。
「グオオォーーーー!」
今のは手応えがあったな。
俺は着地した後、振り向いてオークを見る。
しかし、オークは首から吹き出る血を片手で押さえてはいるが倒れる様子は見られなかった。
しかも相当怒っているのか鼻息荒く怒りの表情で俺を睨みつけてきた。
くそっ!
あれぐらいじゃ死なないのかよ!
俺は小剣を構えながら、オークとの距離をとるが、オークは逃すかとばかりに斧を振り回してくる。
その巨体からくる攻撃は迫力が凄く、俺は怯みそうになるのを必死に抑えながら避け続ける。
しかし、遂に逃げ場がない壁際まで追い込まれてしまった。
こうなったら、相打ち覚悟でやるしかないか……。
俺は覚悟を決めるとオークに突っ込んで行く。
「うおおおぉーー‼︎」
オークも俺にとどめをさそうと斧を振り上げながら叫んだ。
「ブホオオッーー‼︎」
そして俺達がお互いの武器を振り下ろそうとしたその瞬間、突然、オークは力が抜けたように膝をつき倒れ込んでしまったのだ。
俺はその状況に驚いたが、すぐに倒れたオークの後ろを見て納得した。
何故ならそこにはアレスが立っていたからだった。
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