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少年少女の人型機甲戦闘機戦記 - Strong Armys of GigAntes  作者: ニコライ
第1部

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第48話「神雷」前編

 



『スサノオ着艦準備良し。ハッチ解放』

「ガイドビーコン受信率100%、相対速度同期良し。5%高速を継続」

『侵入コース確認、速度角度共に良し。減速を開始』

「了解、減速開始」


 皇女派主力艦隊の後ろ、大和まで戻ってきたスサノオ達特別任務中隊の面々。短くない戦闘を行なってきたため、パイロット達は多少疲れた顔で着艦に臨む。

 大和への着艦は蒼龍と大きく違う……というか蒼龍が特殊だっただけだが、感覚の差は大きい。とはいえ訓練は何度も行なっているため、今では慣れたものだ。

 スサノオは大和後部で解放された着艦ハッチへ侵入すると、サブスラスターを調整して床に立つ。同様に着艦したベルフェゴールとウリエルがスサノオの後ろに立っており、減速失敗時用のカーボンネットは使用されなかった。すごすごと、そのまま壁の中へ戻っていく。


『スサノオ、ベルフェゴール、ウリエル、着艦完了を確認。ハッチ閉鎖、ガントリー稼動』

「了解。武装ロック、全スラスター停止。ジェネレーターをアイドルへ」

「OSは戦闘モードから待機モードに。エネルギー供給量の減少を確認、っと」


 そして3機のSAGA(サーガ)はガントリーに固定され、何枚かの隔壁を潜って格納庫へ搬入された。他の着艦ハッチから入った面々も同様のプロセスを通り、格納庫へ入ってくる。

 装甲に多少の被弾痕のある機体もいるが、内部は無傷で戦闘に支障は無い。ミサイルとブリューナク、および潤滑油や冷却材の補給を行えばすぐに発艦できる状態だ。

 格納庫内に何機かいる中破状態のコクロウと比べれば、何も無いに等しい。


「全機、点検と補給は任せて、今は休んでおけ。すぐに出るぞ」

『了解だ』

『……分かった』

『はい、分かりました』

『マユちゃん、行こ』

『うん』

「緊急招集がかかったら集まれよ」

『分かってるって』

『そうそう』

「まったく」

「仕方ないよ。みんな大変だったもん」

「それは俺達もだけど……まあいいか。メイ、降りるぞ」

「はーい」


 そして2人はコックピットから出て、ガントリー下へ向かう。

 スサノオの足下にいる整備士と打ち合わせをするために。


「親爺さん、駿」

「おう凛斗、どうだった?」

「補給とか修理とか、要望は?」

「一通りのチェックと補給、それに壊されたブリューナクの再装備を頼む」

「スラスターはどうですか?結構使ったんですけど」

「メインスラスターもプラズマスラスターも問題無ぇな。サブスラスターが何基か過剰出力で壊れちまったみてぇだが、交換はすぐにできるぞ」

「ついでに言えば、関節の損耗は予想通り。まだ交換の必要は無さそうだよ」

「交換するとしたら?」

「全部なら3時間、腕だけなら1時間かな」

「補給が終わるまでは?」

「他の機体も合わせて1時間くらいだね。腕だけ交換する?」

「頼む」

「了解」


 駆動部の接合部分、いわゆる関節は摩耗するため、定期的な交換が必要だ。といっても外して填めて微調整するだけなので、補給作業と同じくガントリー任せで問題無い。

 であれば、交換できる所はした方が良い。特に腕部はクルセイダーを振り回すため、他よりも負荷が高い。まだ安全域だとしても、不測の事態に備える意味で、凛斗は交換することに決めた。

 それと、パイロットは休むのも仕事の内。作業は整備士の面々任せ、凛斗とメイは格納庫から出る。


「さて、1時間後か」

「凛斗、シャワー浴びてね」

「いや、時間が……」

「私が気にするの。分かった?」

「はぁ……分かった」


 更衣室には小さなシャワールームが併設されており、パイロットスーツから着替えるついでにシャワーを浴びるのは普通だ。

 とはいえ、今は戦闘中。そういう理由で省略しようとした凛斗だったが、その前にメイに釘を刺された。

 やはり嫌らしい。


「あ、メイちゃん」

「来たんだ」


 そんなわけで凛斗と分かれたメイがシャワールームに入ると、先客の繭とクリスに迎えられた。

 ベルフェゴールとウリエルはガントリーが女子更衣室に近いため、早かったらしい。


「ごめんね、2人とも。邪魔しちゃって」

「ううん、良いよ。まだあるから」

「そっか、ありがと。でも、ずっと2人でいない?」

「だって仲良しもん。ね、マユちゃん」

「やっぱり……大きい」

「マユちゃん?」

「どうし……」

「メイったら、これでリントを誑し込んだんだからね」

「ひゃう⁉︎」


 と、いつの間にか入ってきていたシアに後ろからやられ、悲鳴を上げるメイ。

 なおドッキリレベルだが、嫌なものは嫌だ。それを許せるのは1人だけなのだから。


「シア!」

「んー、いいよね、これ。リントって……」

「聞かないんだったら……!」

「え、ちょ、待っ⁉︎」

「その、自業自得?」

「そうそう」

「あ、みんな来たんだ」


 簡易のシャワールームなので狭いが、絞め技をかけるには問題無い。チョークスリーパー直前の状態を維持しつつ、メイは他の3人にも声をかける。

 やはりというか、女性陣7人全員が集まっていた。


「来るよ、もちろん」

「汗かいちゃったら流さないと」

「う、うん……私も」

「そうだよね」

「でもリント、省略しようとしてたんだよ」

「え、本当?」

「うん」

「怒ったよね?」

「もちろん」


 戦士である以前に彼女達は乙女だ。当然、そういうことも気になる。

 そういうわけで、メイも他の面々と共にシャワーを浴びていた。シアを捕まえつつ。


「その……メイ、さん?」

「なーに?」

「この手はどういうことでしょうか?」

「締めてほしい?」

「……ごめんなさい」


 この手のイタズラへの反応としては、今までよりもかなりアグレッシブな反撃をしたメイだが、本当に締める気はさらさらない。

 シアが謝った段階で拘束を解き、離れた。


「怖かったぁ……でも、背中に」

「シア?」

「ごめんなさい」


 戦場の荒波をどうにか乗り越えてきた成果か、それとも凛斗のおかげか、メイは変わってきた。学生時より外圧等に強く、ある意味では少しばかり腹黒くなっている。

 まあ……笑顔で相手に恐怖を与えるのが良いのかは分からないが。当人達の間で問題が無ければ良いのだろう。多分。


「メイ、やっぱり変わったね」

「え、そうかな?」

「うん、心配しなくていいもん」

「そっか、ありがと」


 しかし残念ながら今は戦闘中、普段のように長々とシャワーを浴びることはできない。

 メイは5分程度で出ると軍服に着替え、居住区側で待っていた凛斗に合流する。


「お待たせ、凛斗」

「時間通りだな。行くか」

「うん」


 そこへ行くことは着艦前から決めていた。

 あんなことを言われれば、誰でも聞きたくなる。


「ねえ、リント」

「どうした?」

「今、どうなのかな?」

「要塞との砲撃戦に入るところみたいだ。SAGA(サーガ)はその前で敵防衛線と戦闘中、まだ一進一退だな。ほら」

「本当だね。次はここ?」

「同じことは無理だな。やるとしたらまた違う……っと?」

「あ」


 そういうわけで通路を歩き、食堂の前を通りかかった時、2人は足を止めた。


「姉御」

「イカヅチさん」

「よ、凛斗にメイちゃん。食べてく?」

「いただきます」

「っと、どれが……」

「ツナマヨにエビマヨ、昆布や明太子、こっちは沢庵、しば漬け、ラッキョウ、野沢菜、色々揃えたからね。好きなの取りな」

「じゃあ、これとこれで。メイは?」

「私はこっち」


 姉御を始めとした面々が用意していたのは、半合ほどの大きさのおにぎりだ。

 他にも様々な具を挟んだサンドイッチ、水筒に入ったスープが用意されており、この後各所へ配りに行くのだろう。


「凛斗、大丈夫かい?」

「この程度ならまだまだ余裕だ。むしろメイの方が心配だな」

「え、私?」

「お前、さっきまでどうなってた?」

「うっ……」

「まあ、治ったから良いけどな。じゃあ姉御、俺達はもう行くぞ」

「気をつけなよ。あたしの厄介になる程度でね」

「雑談に行く程度ならな」


 医官でもある姉御の厄介になる、イコール負傷する、ということだ。死ななければ厄介になることも多いだろう。

 しかし凛斗の望みは、無傷で戻ってきて再会すること。自分だけでなくメイにも負傷させる気はさらさらない。

 そんな約束をした凛斗はメイを伴い、戦闘指揮所へ足を踏み入れた。


「帝国本土防衛要塞No.6、アメジストへの攻撃は継続中。戦力損耗は予想範囲内」

「エリアD2A5E4に師団規模(216機)の敵が出現。ヨーロッパ連合軍が迎撃に向かいます」

「第3艦群艦載機隊が第1ラインを突破。第2ラインへ肉薄します」

「そのまま押し切るよう伝えろ。コクロウ隊と第2艦群はその支援を」

「了解」

「エリアA1C2D5の敵部隊が後退を開始。前線より追撃許可申請が来ています」

「不可だ。このタイミング、罠の可能性が高い。半包囲へ移行させろ」

「皇女派帝国軍およびアメリカ軍も第1ラインの突破に成功」


 そこでは最前線を含めた日本国防軍派遣艦隊全ての指揮が行われており、非常に忙しい。戦況などを聞ける状態ではない。

 なので、凛斗とメイは戦闘指揮所の中で1番暇な人物へ声をかけた。


「おいマイリア、何で帰還命令なんて出したんだ?」

「まだ押し込めたのに」

「今後を考えれば当然の考えですよ」

「なら、教えてくれ。」

「もちろん。そろそろですね」

「え、何が?」

「これを見てください」


 もちろん、彼女にも理由がある。

 マイリアは手元のコンソールを操作すると、ある映像を立体投影した。


『我々は決起した。傍若無人な皇太子、コーネスによる暴政を許してはいけない。ラグランジュ2の各コロニーはマイリア皇女殿下に従い、逆徒たるコーネスに従う者共を討つ!』


 そこに映ったのは40代ほどの男性で、背広姿ではあるが、拳銃やナイフで武装している。

 さらに、彼の周囲にはアサルトライフルやバトルライフルを構えた面々が何人も映っており、物々しい感じだ。


「これは?」

「ラグランジュ2で蜂起した者達が現在行なっている会見の映像ですね。コロニー内部は制圧できたようです」

「こんな準備もしてたんだ……」

「ラグランジュ2は地球から最も遠いコロニーですから、蜂起するのも簡単ではありません。しかし、この決戦の最中なら可能。彼らにはそう伝えていました」

『我々はラグランジュ2コロニー群の平和と発展のために立ち上がった者達だ。帝国の傀儡ではなく、元の民主的な政府を再建するために動く。圧政や弾圧などは決して行わない』

「なるほど。というより、このタイミングは最高だな。大規模戦闘の最中に、敵は後ろを気にする必要が出る」

「ええ、それだけでも十分すぎる戦果です」


 これが、マイリアが行っていた仕込みの1つ。決戦の最中という重大な局面で背面を脅かし、戦力を分散させる。

 それがどこまで有効になるかは分からなかったが、あまり心配はしていなかった。ラグランジュ2コロニー群も相応の戦力を持っているのだから。


「それよりメイ、大丈夫ですか?」

「何のこと?」

「なるほど、リントが上手くやったようですね」

「うん」


 マイリアはメイと幼馴染のような関係。当然、色々なことを理解している。

 だからデータリンクで見た戦闘結果に心配していたのだが、凛斗の方が一枚上手だった。


「それでマイリア、俺達はどうすれば良い?」

「間接的に彼らの援護をしてほしいですね。貴方達には後方の防衛要塞へ向かう迂回軌道を……」

『それを今、ここで我々は誓……』


 しかし、そこで会話は止められる。

 会見映像の画面が一瞬白くなった後、唐突に切れたためだ。


「ん?」

「どうした?」

「電波妨害か?対抗電子戦は」

「いえ、妨害電波は確認できていません。通信波が無くなったようで……」

「お、伯父貴!これを!」


 直後、とあるオペレーターによって中央に投影されたのは、ラグランジュ2に存在する通信用人工衛星に付属する外部カメラから得られた映像。

 そこには……巨大な光の柱によって次々とコロニーが破壊されていく様子が映っていた。


「なっ……」

「そんな!」

「ウソ、だろ……」

「こんな、ことが……」

「兄上……!」


 その衝撃的な光景に、誰もが言葉を失う。


「ラグランジュ2、被害甚大!最低でも半数以上のコロニーが破壊されました!」

「駐留していたクーデター派艦隊にも甚大な被害が出ています!戦力としてはとても……」

「どこからの攻撃だ!解析は!」

「きょ、巨大なレーザー砲です!戦略兵器クラスが月の裏側に出現!」

「何だと!」

「戦略兵器だって⁉︎」


 レーザーは文字通り光速、亜光速までしか加速できないビームより若干速い。しかし同じコストであればビームよりも威力が低い上、ガスやチリに弱く、最近ではミサイル迎撃にすら使われなくなった。

 とはいえ、使い方によっては脅威だ。レーザーはビームよりも集積による大口径化と長時間照射が容易で、あれだけ巨大になれば威力は計り知れない。

 戦略兵器、原子力爆弾と同等の兵器と推察しても何ら問題は無い。


「この戦略レーザー砲は月の裏側から出現、砲撃後は衛星軌道へ乗せられた模様」

「その軌道は?出せるか?」

「はい、これです」

「これって……伯父貴」

「ああ、ここを狙える軌道だ。しかも、地球が射線に入る」


 もちろん、民間人への被害も同様だ。


「リント、アレが地球に行ったらどうなるの?」

「かなりマズい。あの規模のレーザー砲なら熱量だけで……戦略核弾頭よりヤバイことになるよな、多分」

「それは間違いないはずだ。コロニーでも問題だが、地球の場合は天候変化も加わり……1000万単位で被害が出る。いや、億単位だろう」

「そんな……」

「旧世紀の遺物は使えないからって……!」


 なおこの時代、戦略兵器というものはほとんど存在しない。特に核弾道搭載弾道弾や質量弾の軌道爆撃の類いは過去の遺物と化している。

 ジェネレーターによるレーダー妨害が無ければこの時代の対空迎撃能力は圧倒的で、仮にそれらの兵器にジェネレーターが搭載されていても大型になるため、戦艦などの大型レーダーなら探知は容易い。迎撃精度も抜群だ。結果、高く見積もってもコストの数百分の一の戦果しか挙げられなくなった。

 なので、あり得るのは今回のような巨大レーザー砲、もしくはビーム砲だ。しかしそれらは巨体故に発見が容易く、平時から対策を考えることができる。実際に12年前の開戦当初、帝国軍とアメリカ軍が保有していた戦略兵器は全て初撃で破壊されている。

 今回のように、直前まで見つけられない方が異常なのだ。


「殿下、皇女派の方はどうでしょうか」

「フィダール大将が部隊を動かすようですね」

「本当だ。主力の2割を向けるけど、ストームとミッドナイトの別動部隊も向かってるね」

「そいつらの移動にかかる時間は?」

「最低でも、2時間といったところでしょう」

「それだと遅い。すぐに防衛線が敷かれるぞ」


 そして、この1手によって戦況は最悪の状態に変わった。


「ダメ。リント、これ見て」

「ん?……ちっ」

「どうしましたか?」

「正面だけど防衛線があるよ。もうこんなに……」

「最初からこういう予定だったのか、それとも……」


 あれの2射目が放たれれば、連合軍はほぼ確実に壊滅する。その回避には敵防衛線を突破しレーザー砲を破壊するしかないが、主戦線から引き抜ける戦力には限界がある。

 戦略レーザー砲防衛線にはかなりの戦力が回されたようで、光学カメラには無数の光点が写っていた。側面などにも相応の戦力が配置されていると考えられる以上、突破するのは容易ではないだろう。


「本来であれば……」


 そんな重い雰囲気の中、マイリアが呟いた。


「本来であれば、(わたくし)達をもっと引きつけてから撃つつもりだったのでしょう。その方が効率的ですから。しかしラグランジュ2が蜂起し、後背を突かれたために……」

「そっか……」

「マイリア、アレの性能は?」

「いえ、分かりません。しかし、資金源の予想だけはできますね」

「資金源?」

「兄の周りの予算の動きを探っていた際、不明瞭な流れを見つけました。巧妙に隠され、どこへ流れていたのかは分かりませんでしたが……ここ10年で、我が国の軍事予算1年分に相当します」

「1年分⁉︎」

「それが、あれに?」

「そこまでは分かりません。ですが、最低でも半分以上は注ぎ込まれているでしょう。あの威力、以前保有していたものとは比べ物になりませんから」


 せっかくチェックメイトへ向かわせていたチェス盤をひっくり返されたような状況。

 そこから勝ちの目を持ってくるには、再度ひっくり返すしかない。


「そうか……分かった。伯父貴」

「行くのか?」

「ああ。ブースターは?」

「もう無い。が、ここからなら1時間で到着する」


 この時間の違いには機体のスラスター出力差やリニアカタパルトの出力差もあるが、現在位置も関係している。

 戦力を前線に集中させている以上、そこから抽出し後方へ迂回させるのは簡単ではない。それに対し、大和がいるのは戦線の後方、迂回軌道を取りやすい。


「マイリア、ストームとミッドナイトの部隊を下がらせろ。俺達だけでやる。背後から襲撃したい」

「よろしいのですか?」

「この防衛線だ、あの程度の部隊なら簡単に全滅するぞ。それくらいなら他の部隊で波状攻撃をかけた方がまだ可能性がある」

「そうですね……レーザー砲攻撃部隊の作戦中止を通達、彼らがやると伝えなさい。それと囮として、正面攻勢を強めるようにとも」

「頼む。伯父貴、軌道変更は?」

「可能だ。殿下」

「要塞軌道も考慮しなさい。できますね?」

「「「は!」」」

「助かる。メイ、行くぞ!」

「うん!」


 そんな簡単な作戦会議を終わらせた後、メイと共に戦闘指揮所から飛び出しつつ、凛斗は格納庫へ無線を繋ぐ。


「親爺さん」

『どうした?』

「緊急事態だ。早く出たい。補給作業、できるだけ急いでくれ」

『制限はあるか?』

「あと10分……は無理か。20分以内は?」

『15分で終わらせてやらぁ』

「ありがとう、親爺さん」


 本来の半分以下に短縮する、というのはかなり無茶だ。

 しかし、凛斗の声音から戦況の変化を悟った親爺さんは本気でそれを達成する気でいた。


「行ける?」

「ああ。15分らしい」

「わ、早い」

「何か差し入れも持って行くか」


 続いて、剛毅達パイロットへも通達した。彼らは不満タラタラだったものの、戦況が変わったのだから仕方ないと一喝。戦闘準備をさせる。

 その後、2人は食堂で姉御が作ったおにぎりやサンドイッチの他に、戦闘用ゼリー飲料やブロック状高カロリー食品などをかき集めた。時間がないパイロット達用の食事と、慌ただしくなる整備士達への差し入れだ。

 流石に、この戦況で悠長に食事をする時間は無い。味が良いだけマシだろう。


「駿」

「や、凛斗。あと5分ってところだよ」

「親爺さんが言ってたのより早いな」

「今要らない所は全部省いたからね。あ、性能は保証するよ」

「そこは心配してない。乗って良いか?」

「もちろん。君の機体なんだから」

「そういう意味じゃないぞ」


 格納庫に着いた2人は挨拶もそこそこに、食堂でかき集めてきたものを目立つ場所に置くと、スサノオへ乗り込む。


「武装ロック解除、全システムチェック開始。メイ、補給が終わったらジェネレーターを戦闘出力に上げろ」

「うん。OSは?」

「システムチェックの後に俺がやる。それと……」


 そして各種システムの立ち上げを行なっていると、通信が入った。マイリアからだ。


『メイ、リント』

「どうしたの?」

「何だ?」

『こちらの工作員があの戦略レーザー砲、ケラウノスの概略図を手に入れました。送信しますね』

「やった」

「ありがたい、けど……その人との通信は?」

『データを受信した直後に途絶……いえ、途中ですね。あちらのハード側から、通信が強制的に遮断されたようです』

「そうか……成功させないとな。その人の犠牲を無駄にしないためにも」

「うん」


 ケラウノス、神の雷という名を当たれられた兵器。確かに、その威力は名に負けていない。

 なお、この説明をマイリアが行っているのは……1番暇だからだろう。


「それで、破壊方法は?」

『照射前のエネルギーが集束されている段階でエネルギー制御盤と中央レーザー集束ミラーを破壊する。それが比較的簡単な方法だと考えられています。成功すればケラウノスは自壊しますから』


 コックピットの中で立体投影されたケラウノスのモデル図。その中で強調された弱点部位はレーザーの照射方向、少し中に入った部分にある。

 シミュレーション図では弱点部位の破壊後、ケラウノスは内部に溜められたエネルギーが暴走、内側から爆散した。

 このシミュレーション通りになるのであれば、確かに簡単だろう。


「比較的、か……」

『ええ、簡単なことではありません。まず、弱点部位の正面以外は非常に厚い装甲で覆われています。しかも、SAGA(サーガ)の火器では弱点部位の薄い装甲を破ることすら難しく、その箇所が弱点となるのは照射直前の数秒のみ』

「そっか……」

『しかも、レーザー射線の正面ですよ。失敗すれば真っ先に犠牲となります』

「場所が違っても失敗したら同じだろ。それで、猶予は?」

『猶予は……』


 この作戦において、最も重要な猶予時間。


『短ければ1時間半、長くても2時間といったところでしょう』


 それは、あまりにも短すぎた。しかし軌道等から計算した結果であり、間違っている可能性は低い。

 その上移動に1時間はかかるため、30分から1時間以内に敵戦線を突破し、ケラウノスを破壊しなければならなかった。


「でも、やらないとダメ。だよね?」

『はい。だから2人とも』

「任せろ。こういうのは得意だ」

「大丈夫、ちゃんとやってくるから」

『ありがとうございます……!』


 友を死地になるかもしれない場所へ送る。それは誰しも辛い。

 しかし、彼女は覚悟を決めていた。自分には送り出すことしかできないから、無事と成功を願い信じる。

 この戦いで、その想いを強くした。


「お前ら、状況は知ってるな?これから敵戦略レーザー砲、ケラウノスの破壊作戦を開始する」

『了解。ま、あんなのほっとけねぇよな』

『失敗したら負けて死ぬ。分かりやすくていい』

『え、良い?死にたくないんだけど』

『だったら成功させるしかないよ』

『そうそう。ま、慣れてるけどね』

『クリス、大丈夫?』

『うん、大丈夫。行けるよ』

『凛斗が1番大変なところを引き受けたんだ。俺らも出来ることをやるぞ』

『はい!』

『あれ以上の被害を出すわけにはいきませんから』

『……つまり、やるだけだ』

『う、うん』

「まったく、変わらないな」

「でも、その方が良いよ」

「確かに。戦闘指揮所、こちらスサノオ。発艦準備完了」


 もちろん、そう思っているのは1人だけではない。

 数千、数万の人の願いを背負っている。


「剣崎凛斗」

「メイルディーア・ハイシェルト」

「「スサノオ」」

「出撃する!」

「行きます!」


 そして自分達の望みのため、彼らは戦場へ向かった。












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