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少年少女の人型機甲戦闘機戦記 - Strong Armys of GigAntes  作者: ニコライ
第1部

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第41話「再会」後編

 



「じゃあメイ、俺はしばらく作業があるから、先に降りろ」

「良いけど、待ってなくていいの?」

「ああ。むしろ、先に良い店を見つけてくれ」

「お昼だね、了解」


 そんなやり取りの後、大和から降りたメイ。

 だが、彼女は少し戸惑っていた。


「……どうしよう?」


 メイは初めて立ち寄った場所で良い店を探せるような人間ではない。それが得意なのは凛斗だ。

 とはいえ、ここで諦めるという選択肢は無い。任せきりにしたくないという彼女の想いもあり、どうにかしようと考えている。

 そんなこんなで迷っているうちに……


「どうしよっかな……誰かここにいたっけ?でも、みんなと連絡取ってないし……」

「ん?……ハイシェルト?ハイシェルトか!」

「え?」


 偶然にも、知り合いと遭遇した。


「あ、フーバー教官?」

「元気だったか。武装法務隊に行ったって聞いたから、どうなることかと思っていたが」

「逃げた、というか助けられたんです。その……」


 そこにいたのはハワイ高等士官学校で凛斗やメイ達の教官を務めていたアルフォン・フーバー大尉。

 あの後、ラグランジュ1コロニーの港湾管理職員になったことはメイも知っていたが、まさかここで再会するとは思っておらず、偶然の再会に驚いている。

 すると、そこへさらにクリスがやってきた。繭と一緒に出かけようとしていたところで、彼女も完全に偶然だ。


「あれ?教官?」

「ハイディスタン⁉︎無事だったのか!落とされたと聞いたぞ」

「クリスは捕虜になっただけなんです。明けの明星の」

「明けの……?」

「えっと……」

「ハワイを攻撃してきたのが明けの明星だよ、教官。今は皇女派の仲間……って、これって機密なんだっけ?」

「機密じゃないけど、あんまり広まってない話だったはずだよ。日本国防軍になったんだし」

「あ、そうだね」


 こんなことを言いつつも、フーバー元教官には心配事もある。手に入った知識が半年前で止まっているのだから、ある意味当然のことだ。

 それが当人にとっては見当違いも甚だしいことであっても。


「そうか。まあ、あの時は立場が違ったが……だがハイシェルト、お前は良いのか?その、明けの明星はケンザキの……」

「あ、えっと、それなんですけど……」


 しかし、認識の違いは問題にもなる。そのため、あれから半年間に起こったことを説明しようとするメイ。

 しかし、それは少し遅かった。


「おーい。メイ、どこだー?」

「こっちだよ!リント!」

「……は?」


 端末に何も入っていないことから、近くにいると考えた凛斗が探しにきたためだ。

 その行動は正解だったが、状況が状況だ。声を聞いた約1名が固まるほどに。


「ああ、そこに……え?」

「凛斗?」


 そして凛斗も気付き、同じように固まる。予想外だった故に。


「えっと、その……お久しぶりです、フーバー教官」


 どうにか再起動を果たした凛斗だが、まだ少しぎこちなかった。
















「つまり、お前はスパイだったということか?」

「はい、その通りです。ご迷惑をおかけしました」

「ふむ……」

「でも教官、今は仲間です。リントにだって理由が……」

「いや、それは分かっている。そして、俺には追及する予定も権限も無い」

「ありがとうございます、教官」


 港で立ち話をするのもアレだったため、港近くにあるフーバー元教官オススメの喫茶店に入り、食事をとりつつ色々と説明した凛斗とメイ。

 それを聞いたフーバー元教官は理解を示し、思うところはありつつも許した。というより、他に気になる点があったためだ。

 ちなみに、クリスは自身と共に繭も参加させている。繭自身はこの件に何の関係も無いのだが、言葉を発する前に問答無用で連れてこられていた。


「それにしても、大佐と少佐か。2人とも早くなるとは思ったが、半年もしないで抜かれるとは……」

「えっと、私は、なんというか……」

「俺は元からパルチザンの指揮官候補だったので、驚くことではありません」

「そうなのか?」

「はい。今、パルチザンの時も指揮下には200機近くいますから。宇宙に上げた機体だけでも直接が60機以上、メイ達も含めれば約100機います。直接の指揮下ではないですけど、宇宙派遣艦隊艦載機部隊長としてはそれ以上です。将官教育は受けてないので、准将にはまだ成れませんが」

「将官には?」

「実は内定しています。いつ実施するか、という問題です。それは状況次第ですけど、年単位になる可能性もあります」

「そうか。早く昇進できるといいな」

「いえ、俺は急いでません。まだ18なので焦る必要は無いですし、それに大佐ってカッコイイですから」

「なるほど」


 2人とも気付いた時には追い抜かしていたため、階級について何か言うことはできなかったりする。フーバー大尉は知らないが、なんとなく察していた。

 なお、大佐に関するアレコレは完全にアニメの影響だ。少佐もそれに類する。

 ただ、当人としてはあまり気の良いことではない。


「ハイシェルトは……家の都合だな?」

「はい……ごめんなさい」

「最初は、だろ。マイリアだって認めてたんだから、今は問題無い。気にするな」

「そうだけど……」

「まったく」

「この2人は……ケンザキ、武装法務隊にいたハイシェルトを連れてきたのもお前か?」

「はい。月に引きこもってたので引っ張り出しました。半分駆け落ちみたいなものです」

「駆け落ち?」

「はい。もう婚約者ですから、俺とメイは」

「ちょ、ちょっと、リント」

「隠す必要なんて無いだろ?指輪もしてるし」

「う、うん。そう、だけど……恥ずかしいよ」

「気にするな」

「もう……!」


 それさえ塗り潰すほど、互いの親愛は深いが。


「変わった……いや、変わらないか?」

「変わってないよ、教官。リント君もメイちゃんも。ちょっとイチャイチャし過ぎだけど」

「「イチャイチャしてない」」

「してるよ!」

「うん、してる」

「ぐっ……」

「うっ……」


 そして、無意識ながらも様式美で行なった発言を、クリスどころか会話に参加してなかった繭にも否定されてしまう。

 そのせいで、凛斗とメイはしばらく言葉を発することができなかった。


「相変わらず仲が良いな、お前達は」

「教官、そんなこと言わないでください。何を含ませてるんですか」

「そうか?お似合いだと思うが」

「くっ……」

「さて、この話はここまでにしよう。ケンザキ、1つ良いか?」

「はい、何ですか?」

「カイドウ教官がルシファーの格納庫にいたはずだ。戦死、正確にはMIAとなっているが、何か知らないか?」

「あいつですか?俺が殺しました」

「は?」

「あいつは日本国防軍の裏切り者です。帝国軍、というか武装法務隊に通じて、8年前の東京での虐殺を誘導しました。元情報部の人達が血みどろになってでも探した奴の1人です。教官、あいつが大佐待遇だったことに疑問を持ったことはありませんか?」

「確かに、疑問はあったが……」

「そういうことです。俺もそれ知ったのは直前でしたけど、8年前にあいつが街にいたことも思い出しました。無意識でもあいつが嫌いだった理由です」


 当時、これを機密通信で聞かされた凛斗は驚き、恨み、そして1人でしか抱え込むことができなかった。

 しかし、そんな情報も今は話せる。もう嘘を語らなくて良いことが、凛斗は何よりも嬉しかった。


「そうか……仕方ないか」

「はい。それに俺が処分しなくても、あいつは皇太子派に入るでしょう。冷遇されるとしても、それしか選択肢がありませんから。まあ、その前に暗殺していた可能性もあります」

「なるほど」

「そうでしたか。あの方は少し不審だと思っていましたが、そのようなことがあったのですね。ご苦労様でした、リント」

「いや、俺はそんなに……は?」

「「え?」」


 そこで、話に割り込んできた声。凛斗やメイが反応して振り向いた先にいたのは、予想外の人物だった。

 まあ、性格的にはいたとしてとおかしくないが……


「おい……マイリア、お前、こんな所にいて良いのか?」

「大丈夫ですよ。」

「そういう意味じゃないって。危険だよ?」

「それについても問題ありませんね。ここには優秀な護衛が4人もいますから」

「俺を含むな。そしてメイを盗るな」


 皇女が、それも一軍の大将が場末の喫茶店にいるというのは、流石にマズい気しかしない。しかも、護衛が少ない状態でだ。

 その護衛の中に皇女直属兵団のレグルト、メイ、クリスはともかく、一応別の指揮系統にいる凛斗まで含んだのは級友という意味だろうか。繭を含まなかったのも、そういう理由からかもしれない。


「ふふ、冗談ですよ」

「説明するとこの店、僕達側の情報職員のセーフハウスなんだよ」

「なんだと?」

「え、そうなの?」

「今店内にいるのは?」

「リントが考えてる通り、情報職員だよ。マイリアが来たいって言ったから調整したんだ。ここで会ったのは偶然だけどね」

「そうなんだ」

「ですから、気にする必要はありませんよ。(わたくし)も私用で来ただけですから」

「なるほど……ん?悪い、電話だ」


 と、そこで端末通信が入ったため、凛斗は通話モードに変える。


「伯父貴、どうした?」

『マイリア殿下を見つけたら連絡を入れろ』

「は?」

『予定時間を過ぎても姿が見えん。側近も知らないようだ。探せ』

「はぁ……分かった連れて行く」

『は?』

「ここにいるんだよ。目の前に」

『それは……そうか、分かった。場所は分かるか?』

「中央の行政府だろ?場所は同じだから分かってる。ごめんな、伯父貴」

『気にするな』


 そして、理解した凛斗は通話を切ると、笑みを浮かべている2人へ怒気を放った。


「マイリア、レグルト」

「あら、早いですね」

「分かってるなら行くぞ。早くしろ」

「構うことはないでしょう?リントもメイも、出席するのですから」

「俺達は2時間後だ。なのに今から……誰のせいだと思ってる」

「リント?」

「こいつら、誰にも知らせずに勝手に来たらしい。連れてくぞ」

「うん、分かった。けどマイリア?」

「分かりました。今度埋め合わせの何かを用意しましょう」


 マイリア達が乗ってきた車へ凛斗とメイも同乗すると、そのまま行政府へ向かう。

 とはいえ、このコロニーは港から行政府までが近いため、厳重警戒がなされた門まですぐに到着した。


『止まれ。IDを提出しろ』

「日本国防軍宇宙派遣艦隊艦載機部隊隊長、剣崎凛斗大佐だ」

「マイリア皇女殿下直属兵団副団長、メイルディーア・ハイシェルト少佐です。IDはここにあります」

『大佐殿と少佐殿でしたか。こちらには何用で?』

「マイリア皇女殿下をお連れした。護衛のワーグナー中佐も同乗している。通してもらえるか?」

『殿下が⁉︎』

「そうです。良いですか?」

『あ、えと……その、一応認証を行っても?』

「確かに必要だな。少し待て」

『お手数をおかけします』


 なので警備兵へ凛斗とメイのIDを提示し、目的を告げ、マイリアとレグルトのIDの認証も行う。

 そして門を通り抜けた車は行政府前の正面に止まり、まずは凛斗だけが降りる。


「ケンザキ大佐か?」

「はい、閣下。日本国防軍宇宙派遣艦隊艦載機部隊隊長、剣崎凛斗です」

「皇女派ムーゼリア帝国軍宇宙艦隊総司令官兼皇女殿下護衛艦隊司令長官のラルク・フィダール大将だ。殿下はそちらにいらっしゃるな。貴官、名前は?」

「メイルディーア・ハイシェルト少佐です、閣下。皇女殿下直属兵団副団長を拝命しています」

「2人を責めないでいただけませんか?(わたくし)の我儘を対応しただけですから」

「殿下、我儘を否定するわけではありません。しかし、何かあってからでは遅いのです。何かするのであれば、せめて我々へ連絡をしていただけませんか?」

「ええ、分かりました。それではレグルト、参りましょうか」

「はい、殿下」

「両名とも、ご苦労だった。後の軍議にも参加するのだったな。控室を使え」

「「は!」」


 マイリアとレグルトはフィダール大将の後ろに続き、行政府の上層階へ向かった。ラグランジュ1 コロニーが皇女派帝国軍に加わるためのセレモニーを行うためだ。

 それを見送った凛斗とメイは1階にある部屋に移動し、ソファへ隣同士に座って休む。時間よりかなり前なため、部屋の中には他に誰もいない。


「はぁ……」

「マイリアったら……」

「まあ、息抜きしたい気持ちも分かるけどな。あんな立場だと」

「うん。私達より大変だもんね。手伝う?」

「あいつがちゃんと連絡したら、だぞ。流石に今日みたいなのは困る」

「大丈夫、やらせるから」

「意外と強気だな」

「だってリントとの時間を減らすんだよ?それくらいやるのが当然でしょ。じゃないと……私、何するか分からないから」


 そう言うメイの目からはハイライトが消えかけており、視界には凛斗しか映っていない。いわゆるアレな状態だ。

 しかし、視線を向けられている当人は気にしなかった。


「あまり無理させるなよ。疲れてるはずだからな、多分」

「分かってるよ。でも、私だって文句言いたいもん」

「それでも、だ。旗頭なんだぞ」

「はーい」

「それよりメイ」

「なに?」

「勝手にどこか行ったら、最低でも倍は償ってもらうぞ?」


 というか、額がくっつくほどの距離でそう告げる。

 にこやかに笑っているのが逆に怖いが……メイには関係無い。


「はっ、ふぁっ……!」

「相変わらず弱いな、メイは」

「だって……その顔、反則だよ……」

「好きだろ?」

「うん、好き。大好き」

「まったく、メイは……っと、悪い」

「むぅ……」


 そんな2人のやり取りも、空気を読まない着信音によって遮られた。

 それは大和の戦闘指揮所からの通信で、誰がかけているのかは分からない。しかし応答しないという選択肢は無く、凛斗は端末を通話モードに変える。


「もしもし」

『や、凛斗』

「え、姉御?何で戦闘指揮所に?」

『とりあえず、業務連絡ついでにね。メイちゃんはいるでしょ?』

「隣にいるけど……姉御が?」

『スピーカーに変えて。2人に話があるからね』

「いや、イヤホンがあるからそっちで」


 そう言われたため、凛斗は無線形式のイヤホンを端末に接続し、片方をメイに渡す。


「何ですか?イカヅチさん」

『メイちゃんに関係することだからね。ちょっとした朗報があるよ』

「はい?」

『まずは健康診断の結果だけど、ちゃんと凛斗の子どもを妊娠できるから安心しなさい』

「はいっ⁉︎」

「ちょっ⁉︎」

『必要よね?婚約者だったら……』

「今はいらないだろ!」

「まだ、その、えっと……」

『ハハ、冗談冗談。本題はこっち。変な疾患や怪我はないよ。あたいは心配してなかったけど』

「そっちなんだ……」

『凛斗が気にしてた薬物依存、遺伝子操作、洗脳とかも杞憂だったよ。ま、心配しすぎね?』

「そうか、良かった」

「リント、そんなこと願いしてたの?」

「一応、な。万が一メイに変なことをされてたら、俺が許せない」

「えへへ」

『まあ、あの耐G能力が天然っていうのも驚きだけど……凛斗も同類だって考えるとアレな感じになるね』

「は?姉御?」

『お似合いってだけよ。他に何かいる?』

「お似合い……ありがとうございます」

「メイ、さっき言っただろ?」

「あ、うん……」

『はいはい。他は端末にデータ送っといたから好きに見な』

「だったらそれだけで良いだろ。さっきのは何だよ」

『メイちゃんの顔を見たいってのは?』

「メイは俺のだ」

「もう、リントったら」


 姉御との通話はすぐに切れたものの、凛斗とメイはこんな感じで時間まで過ごしていた。












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