第41話「再会」前編
『リント、できた?』
「ああ、終わった。メイは……」
『じゃあ手伝って』
「少しくらい悪びれろ」
『だって私の方が多いんだもん。仕方ないでしょ?』
「私物だろ。俺に責任は無い」
『でも……』
「分かった分かった。今から行く」
『ありがと。あ、下着とかはもう終わってから』
「むしろやってなかったら怒るところだからな?」
『はーい。あ、扉開いてるよ』
「いつもだろ」
大和艦内の自室にて、自分の準備を終えた凛斗はメイの部屋へ向かった。なお隣なので、1分もかからない。
凛斗はメイの部屋に入ると周囲を見回し、手がついてないエリアに足を進める。
「こっちの小物か?」
「うん、お願い。あとはそっち」
「分かった。ん?メイ、これそっちだろ」
「ありがと。無いって思ってたけど、そっちにあったんだ。あ、そうだリント」
「どうした?」
「忘れてた下着が出てきても盗んじゃダメだよ?」
「おい」
「だって、リントも男の子だもん。そういうの、欲しいんだよね?」
「人の服を嗅ぐ変態が言うことか?それ」
「だって……」
「だって?」
「……ごめんなさい」
ちなみに、疑念を持った凛斗に追及され、メイのあれこれがバレたため、頭が上がらない状態が発生したりしていた。
ただ、凛斗もからかう程度でしか使わないため問題無い。2人は作業を進めつつ、今後の予定も話し合う。
「えっと、30分前にはコックピットで待機だよね?」
「ああ。10時打ち上げだから、9時半までにだ。一応、緊急出撃準備も終わらせてな」
「うん、分かってるよ。でもラグランジュ1、どうなるかな?」
「攻防戦になるだろ、多分。ラグランジュ1にいる軍はこっちより少ないから、降伏する可能性はあるけど……」
「マイリア、何も言ってないもんね」
「ああ。何か策略でもあるのか、逆に無いのか……」
「教えてくれても良いのに」
「流石に何かあるんだろ、多分」
今やっている作業は当日の朝にやるしかなかった部分だ。やれることは昨日のうちに終わらせてある。
なので、作業終了は早い。凛斗とメイだけでなく、他の全員も同じだろう。
「終わった!」
「こっちも終わりだ。時間は……8時か」
「まだ大丈夫だね。どうするの?」
「どうするって言われても、やることないからな……格納庫でチェックするくらいか?」
「うーん、残ってるかな?」
「無いだろ。けど、変な所にいるくらいならコックピットで待機してた方が良い」
「あ、そっか」
「それに……」
「それに?」
「あそこなら2人きりだろ?」
「あぅ……」
そんなわけで2人そろって格納庫へ向かうと……予想に反して静かだった。
それに驚いていたところ、駿に見つかる。
「あれ、凛斗?」
「駿?準備は良いのか?」
「ここのは昨日のうちに終わってるからさ。あとはシステムをチェックしながら、時間になるまで待つだけなんだよ」
「なるほど」
「で、凛斗は?彼女まで連れて」
「部屋の準備が終わったから来ただけだ。暇なのは同じだな」
「そっかそっか。コックピットなら2人っきりだし?」
「口閉じてろ」
そんな言葉を聞きつつ、周囲を見渡してみる凛斗。どうやら誰1人としていないわけではなく、最終調整をしている面々が様々な場所にいた。駿の言う通り、どうやらシステムチェック中らしい。
それで疑問は解決したため、凛斗とメイはパイロットスーツに着替え、スサノオに搭乗する。
「えっと、専用のシステムはこっちで……」
「あってるぞ。そうだメイ、こっちのプログラムも動かしてくれ」
「分かった。でもこれって何?」
「新しい脳波診断プログラムだ。昨日できたらしい。待ってる間暇だろ?」
「あ、そっか。ありがと」
「俺も使えって言われたやつだから……っと、メインディスプレイを戦闘指揮所と同期させる。良いか?」
「うん、大丈夫」
大和の戦闘指揮所に映る周辺映像。それと同期させたスサノオのメインディスプレイには多数の艦艇が映っていた。
周囲にいるのはセクター級飛行輸送艦、およびこのために特別に地上へ下されていたタイラント級宇宙戦艦。また、三笠型飛行戦艦も20隻ほど集結し、松型飛行護衛艦と共に時を待っている。
ここにいる艦はどれも同じ目的で使用される。しかし、それらの中に見慣れない艦艇もあった。
「ん?……メイ、あの艦は?知ってるか?」
「ううん。聞く?」
「頼む」
なのでメイはプライベート通信を使い、知っているであろう人物へ話を聞く。
『どうしましたか?』
「ごめんね、マイリア。今大丈夫?」
『ええ、問題ありませんよ』
「あそこの艦、見たことないんだけど何?」
『アレですか。説明するのはレグルトが良いでしょうね』
『はいはい。メイが聞いてきたってことは、リントも気になってるよね?』
「ああ。6隻とも同じ役目か?」
『そうだよ。あれはアラエル級宇宙戦艦、護衛艦隊の中枢に配置予定の艦だね。ヤマトと同じようにプラズマ収束砲を搭載してて、対空防御能力も高いよ』
「へぇ」
アラエル級宇宙戦艦は大和と同じグループが開発したということもあり、違うのは艦のサイズだけと言って良いほど使用技術が似通っている。大気圏内で航行可能なのも同じだ。
そして皇女派帝国軍では、アラエル級を次期主力宇宙戦艦とすることに決めている。気が早いかもしれないが、性能が良くコストも低めなので当然だった。
「そんなのも作ってたんだ」
『一応試作艦6隻を全部持ってきたから、皇太子派には無いはずだよ。ただ……』
「ただ?」
『いや、これは言わない方が良いかな』
「え?」
『不確定情報なんだよ。信憑性が薄くてね……』
「分かった。今はそれで良い。ただ、分かったら教えてくれるか?」
『え、本当に?』
「当たり前だろ。メイも良いよな?」
「うん」
その後も色々と進めつつ、話をする2人。時々通信に他の面々が混ざり、時間は過ぎる。
そのうちに、艦が載せる台座ごと移動し始めた。どうやら全体の準備が終わったらしい。
「マスドライバー、無傷で確保できたんだ」
「ハクゲイは全部ここに投入したし、歩兵の特殊部隊も大量に参加したらしいからな。どうにか、数日で直せる程度にできたらしい」
「凄いね」
「ここを壊されたらマイリアとの約束を果たせないだろ?徹底的に検証とシミュレーションを繰り返したらしい」
「でも、それなら何で誰も来てないの?」
「戦力配置、覚えてないか?」
「え?」
「ここには駐屯してた皇太子派が東京に戦力を抽出した後、パルチザンの水中戦用SAGAを主体に奇襲を仕掛けた。俺達の中で投入できるとしたら香織のリヴィアタンくらいだけど、横須賀の方が激戦区だ」
「そういえばそうだっけ」
「それに、俺達はエースとして派手に戦わないといけなかったからな。隠密作戦に近いマスドライバー奪還作戦は不適格なんだ、それには」
「あ、そっか」
エースというのは士気を保つのにも役立つ。日本国防軍という形を作る上で、凛斗をはじめとしたエースは必要だった。若いことなど宣伝次第でどうにでもなる。
それは皇女派としても同様で、最新鋭機を駆るエースの噂はかなり広まっている。現段階ではマスコミに露出していないのが救いだ。戦後の扱いは未定とはいえ、恐らく彼らが想定するような役割になるだろう。
「今行ってるのは先遣隊かな?」
「ああ。本隊は確か9:00からのはずだ」
「動いてるけど?」
「連続でやった方が効率良いだろ?」
「そうだね」
そして現在彼らがいる場所、銚子にはマスドライバーが東の海上へ向けて100km以上伸びており、4本のレールが並行に存在する。同時に動かすことはできないが、ローテーションを行うことでかなりの頻度で打ち上げが可能だ。
今回の予定では、まず100隻程度の先遣隊が打ち上げられ、その後に本隊の打ち上げが開始される。いくらマスドライバーでも数が多いため時間がかかり、大和の番が回ってきたのは少し後だった。
『船体の射出船台への固定完了。および、ボーディングブリッジの離脱を確認。第一安全装置解除完了』
『船体、移動開始。レール接続まで60秒』
『マスドライバー併設大型ジェネレーター1号から3号、出力安定。変電施設にも異常無し』
『気象情報報告。打ち上げコース上は快晴、雲量は1。南東よりの風、2.6m/s。電離層にも異常無し』
『電圧、規定値へ上昇。加速レールへの電力供給開始』
『全ハッチ閉鎖再確認。乗員の配置は全て問題無し』
なお、マスドライバーを使える艦艇にはイナーシャルキャンセラーが何ヶ所かに搭載されているため、体感加速度の面では問題無い。
というか、イナーシャルキャンセラーが無ければ潰れてしまう可能性がある。そのため乗員は戦闘指揮所、機関室、専用待機室などに集まり、パイロットは全員コックピットで待機している。パイロット以外も宇宙用の船外服を着た状態だ。
『全超電導電磁石へ規定量以上の電力供給を確認。動作チェック完了、問題無し』
『全エネルギーセルへのエネルギー貯蓄率は80%を維持。マスドライバー各種システム、通常通り動作中』
『レールへの接続完了。システムオートチェック、異常は認められず』
『大和艦内システムチェック完了、射出対応システムオールグリーン。第二安全装置解除』
『メインスラスター全基準備完了。加速開始と同時に点火予定』
『カウントダウン開始。10、9、8……』
マスドライバーを使用する際は必ず行うチェックが終わり、カウントダウンが始まる。
敵襲などは無く、緊急停止も無い、予定通りの静かな発進だ。もっとも、盛大に衝撃波をまき散らすこととなるが。
『2、1、0。全ホールドアーム解放、最終安全装置解除。大和、電磁加速スタート』
その瞬間、大和の乗員全員に重圧がかかった。
イナーシャルキャンセラーによって減衰しているとはいえ、数Gもの慣性はかなりキツい。
「リント、大丈夫?」
「ああ。この前、ハワイから上がったばかりだからな」
「あ、そっか。ありがと、リント」
「気にするな」
涼しい顔をしているのは凛斗とメイくらいだ。
『くぅ……順調に、加速中』
『現在速度、4km/s』
『メインスラスター出力調整、問題無し』
マスドライバーは先になるほど徐々に角度が上向きとなり、終点ではかなりの上昇角度となっている。
そして数十秒の加速時間で第1宇宙速度に達した艦は、衝撃波を撒き散らしながら飛び出した。
『加速終了まで、3、2、1、今!』
『レールからのリリースを確認!』
『投入軌道計算……誤差0.0001%以下』
『爆砕ボルト点火、射出船台分離確認』
『メインスラスター、全基最大出力』
『上がれぇぇぇぇ!!』
マスドライバーで加速しただけでは空気抵抗で減速する可能性がある。それ上回るパワーをメインスラスターは出力し、宙へと上がっていく。
現在の速度は第1宇宙速度を超える約8km/s。対流圏や成層圏など簡単に飛び越え、宇宙からの影響が強くなる。
『高度60km到達!』
『装甲表面温度は想定の範囲内。冷却材投与量10%減少』
『電離層への接触まで間も無く。各種電子機器、対宇宙線防御再チェック』
『D層突破、E層到達』
『宇宙線量の増大を観測。しかし艦内線量は増加無し』
スサノオはメインディスプレイを戦闘指揮所同期させているため、交わされる会話も聞こえてくる。
というわけで、騒々しく緊張感のある会話が伝わっていた。
「大丈夫、だよね?」
「多分……けど、新型だからな」
「初期不良、あったら嫌だけど……」
「こればっかりは選べないだろ。ルシファーもそうだったから、引きは良いと思いたい」
「うん」
その後、熱圏に入ってからは空気抵抗や空力加熱も弱くなり、異常無く予定通りのコースを飛んでいることから、戦闘指揮所にはホッとした空気が生まれた。
初めての大気圏離脱という者が多かったため、仕方がないだろう。これについては伯父貴も大目に見ている。
『現在高度8000km、地球周回軌道への投入コースを維持。軌道突入完了まで120秒』
『索敵圏内に敵影無し』
『先遣隊および先行本隊を光学で確認。ランデブーは予定通り300秒後』
『周囲のデブリを精査、軌道計算始め』
『後続艦からの異常報告は無し。軌道変更シークエンスは予定通りの実施が可能』
『ランデブーが完了次第、配置を変更しろ。第2種警戒配置だ』
『はい、了解』
もちろん、彼らは真剣だ。安堵していても仕事で手は抜かず、いくつかある問題も乗り越える。
そういった様々な苦労が報われ、大和は目的の地球周回軌道に乗り、ランデブーに成功した。
『先行本隊とのランデブー完了。艦隊陣形構成中。全艦、大気圏離脱配置から第2種警戒配置へ移行』
「よし、全パイロットに通達。スクランブル機以外はコックピット待機を解除。哨戒ローテーションは予定通りだから忘れるな」
同時に、艦内の配置変更が通達される。
それを聞いた凛斗はSAGA全機へ通信を繋ぎ、必要事項を伝える。
「よっと」
そして彼はコックピットから飛び出すと、腕の力で進路変更、格納庫の床へ着地した。同時にパイロットスーツの足裏部分に内蔵される電磁石を稼動させ、床に磁力でくっつく。
無重力だからできることだが、3日間宇宙にいただけの凛斗はまだ慣れていない。隣に着地したメイほど、柔らかくはできなかった。
「上手になったね、リント」
「嫌味か?それ」
「ううん。だって私、たくさん練習したもん」
「10歳前後と18歳を比べるな。今はメイの方が上手いんだから意味無いだろ、それは」
「えー?私は違うと思うよ。ほら」
「まったく」
そう言いつつ、メイはドアの方向へほぼ水平に跳んでいった。磁力靴の吸着と水平方向ベクトルを上手く調整した結果だ。
そんな器用なことができない凛斗は一度跳び上がると体勢を変え、ガントリーを両足で蹴って強引に進行方向を変える。
「そうだ。メイ、俺の部屋で何か食うか?」
「え、それ良いの?」
「ああ。私物だからな」
「そっか。でも……あっ」
「は?がっ⁉︎」
しかし、流されてきたコンテナに頭が直撃した。メイといちゃつき、注意を怠っていたせいでもある。
が、文句を言いたいものは言いたい。
「っ……おい駿!気を付けろ!というか早い!」
「気づかない凛斗が悪くない?それと、こっちは予定通りだし」
「ちっ」
「ちょっと、リント」
「まあ……そうだな。駿、悪い」
「ま、損害は無かったからさ。にしても簡単に怒ってたけど、デートを邪魔されたから?」
「よし1回泣かす」
「リント!」
ちなみに、剛毅達デーモンシリーズパイロットの面々は初めてor2回目の無重力にはしゃいでいたりする。レックス達は違うが、それに付き合っている。
だがそちらへ視線を向けることなく、凛斗とメイは2人の会話を続ける。
「もう。私の相手してよ」
「あ、ごめんな」
「うん、良いよ」
「はぁ……勝手にやってれば?」
「「もちろん」」
「うぇ……」
最初に関わったとはいえ、そこへ勝手に割り込んだ駿は勝手に撃退された。
そんなことに構わず、凛斗とメイは居住区へのドアを潜ると……
「っと」
「わっ」
発生した急激なベクトル変化に驚き、少し体勢を崩した。
2人とも上手く着地したが、変化に対する違和感は拭えない。
「ここから重力があるんだったな」
「何か、変な感じだね」
「メイならそうか」
「うん。リントは違うの?」
「宇宙に出た時間の問題だろ。俺はずっと地上にいたから、違和感なら無重力の方が強い」
「ふーん、そうなんだ」
「ああ」
それは逆パターンでも同じだ。
居住区から出る際、慣れているメイはスムーズに体勢を変えたが、凛斗はまた姿勢を崩す。
「また、無重力、かっ」
「居住区の外だもん。その方が良いんだよ、きっと」
「あ、そういえばそうだったな。正直、忘れてた」
「ダメだよ、忘れちゃ。大事なことなんだから」
「ごめんごめん」
そんなことをしつつも、移動は続ける。2人は壁に取り付けられたベルトコンベアを使って通路を進みつつ、大和の中にいくつかある展望台の1つにやってきた。
ここは船体装甲の外にあるため、安全とは言い難いが……
「おー……」
「綺麗……」
満天の星空と言うのも生温い、そのままの宇宙の姿。角度の問題で地球は見えないが、星々だけでも非常に素晴らしい光景だ。
前回は味わう余裕が無かった凛斗も、愛する人と初めて共に見ることができたメイも、どちらもしばらく言葉を失っていた。
「「なぁ、メイ」」
「なに?」
「ははっ」
そして全く同じタイミングで再起動し、同じように言葉を紡ぐ。
どうやら同じようだ。
「何で同じタイミングなんだ?」
「分からないけど、良いでしょ。リントは何が言いたかったの?」
「俺は後で良い。メイは?」
「私は簡単だよ。ありがとう、それだけ」
「確かに簡単だな」
「でしょ。リントは?」
「俺も簡単だ。メイ、元気か?」
「うん……え?」
しかし凛斗の言葉はメイにとって想定外であり、思考が止まった。回答も考えて出したものではない。
「まだ大丈夫か?」
「え?」
「いや、分からないならそれでも良い。けど、俺はいつまでも待ってる」
「え……リント、どうしたの?」
「今は気にするな」
「あ、うん……」
凛斗の言葉の意味は分からないが、メイはそう答えた。
その意味に気付く日が来るかは分からない。しかし、凛斗はそれも織り込み済みだ。
「右舷より接近中の艦隊はアメリカ駐留皇女派帝国軍艦隊およびアメリカ海空軍合同派遣艦隊と判明。警戒体制解除、艦隊全艦へ通達」
「ヨーロッパ連合軍派遣艦隊、左舷から目視で確認。艦隊陣形は事前の通達通り」
「皇女派帝国軍およびオセアニア系パルチザン連合艦隊とのランデブーは予定通り20分後から変わらず」
「現在高度約30万km。艦隊集結時間も含め、ラグランジュ1まで約12時間。全艦第2種戦闘配置を維持」
数日後、大和の戦闘指揮所は再び忙しくなっていた。1日前に皇女派帝国軍宇宙艦隊本隊と合流したのだが、今度はアメリカ・オセアニア・ヨーロッパからの艦隊と合流しなければならない。さらに、ラグランジュ1 に対する警戒も行わなければならないためだ。
ちなみに、皇女派帝国軍にとっての旗艦も大和だが、実際の艦隊指揮はアリエル級宇宙戦艦1番艦のアリエルが執っている。そちらは艦数が多いため、大和以上に忙しいようだ。
しかし、問題は忙しいことではない。というか、伯父貴としてはそちらの解決がしたかった。
「殿下、本当にこのままでよろしいのですか?」
「ええ、構いませんよ」
「しかし、コロニーの駐留艦隊を叩かねば前哨基地とすることもできません」
「しかし、それではコロニー内で戦闘になる可能性が高いでしょう?」
「それは分かっています。ですが……」
「大丈夫ですよ」
だがマイリアはこう言うばかりで、問題の解決には使えない。もしかしたらという考えを伯父貴も持っているが、それはメガネが集めた情報によって否定されている。
すると、マイリアが持つ端末が鳴る。それは彼女へ直通のプライベート暗号通信で、これを使える人物は少ない。
『おいマイリア、どうしてだ』
『何で止めてるの?早く出なきゃ……』
「必要が無いからです」
『は?』
『え?』
「殿下?それはどういった……」
「前方に艦艇を発見!」
そんな会話の最中に入った報告。それは戦闘指揮所の雰囲気を一変させた。
凛斗もSAGA隊隊長として、意識を切り替える。
「総員第1種戦闘配置、識別を急げ」
「了解。全艦戦闘準備、第1種戦闘配置!」
「艦種識別、開始します」
「戦闘配置は必要ありませんよ」
「はい?」
「艦種識別終了。帝国軍タイラント級宇宙戦艦、1隻のみ」
「前方のタイラント級より高指向性光信号です。英文モールスの模様」
「1隻?読み上げろ」
「は!」
しかし結果から言えば、それは無意味だった。
「友軍、の、来援、に、感謝、す……マイリア、皇女、殿下、に、勝利、と、栄光、あれ……ラグランジュ、1、駐留軍、一同」
情報とは異なる現象に呆然とする面々。
そこへ数人だけ無事だった面々のうち、代表者が言葉をかける。
「そういうことです。では、参りましょうか」
マイリアが用意していた最重要機密の1つ。それが今、表に現れた。
・アラエル級宇宙戦艦
全長328m、全幅82m、全高60m
皇女派帝国軍が大和の護衛用に6隻建造した新型宇宙戦艦。艦名は「アラエル」「サマエル」「ハニエル」「カシエル」「レリエル」「タミエル」。
プラズマ収束砲を搭載しているが、大量の迎撃兵器を搭載しており、対空戦闘能力が非常に高い。大和と同様に大気圏内でも戦闘可能、マスドライバーでの打ち上げも可能で、単独大気圏突入も可能。
また、皇女直属兵団に所属するエウロスが1〜2ヶ小隊ずつ搭載されている。
武装
___180cm25口径連装プラズマ収束砲×6
___80cm20口径連装ビーム砲×4
___30cm15口径連装ビーム砲×4
___ミサイル発射管×16
___小型ミサイル発射管×32
___連装対空ビーム砲×16
___迎撃用ビームボーゲン×48
SAGA用装置
__発艦用リニアカタパルト×4
__着艦ハッチ×4




