第40話「共同戦線」前編
「リーント、起きてる?」
扉が開く。
その音に反応し、凛斗は扉の方を向いた。
「おはよう、メイ」
「あ、おはよう。起きてたんだ……起こしたかったのに」
「だからって5時半に来るか?普通」
「リントの寝顔が見たかったんだもん」
「それなら、一緒に寝れば良いだろ」
「それは……何か違うかな」
そんな風に文句を言いつつ、メイも部屋の中に入ってくる。
昨日大和艦内に部屋を貰い、流れでそのまま泊まることになった凛斗とメイ。服などは何故か全て移されており、生活に支障は無い。
ちなみに、2人の部屋は隣同士に決められた。ただし、これはダブルベッドを部屋の中に設置できなかったための処置だ。もし運び込むことができたなら、問答無用で相部屋にされていた可能性が高い。伯父貴が止める可能性もあるが。
「でも、リントはなんでこんな時間に……走ってくるの?」
「ああ。毎日やってるからな」
「そうなんだ。私も一緒に良い?」
「寒いぞ?」
「大丈夫。着替えてくるね」
凛斗の作業服装姿を見て目的を判断したメイはそう言うと、自分の部屋へ戻った。
そして着替えてきたメイは作業服装の下に防寒性抜群の物を着ており、本人が言う通り大丈夫そうだ。凛斗は見たことがなかったため、どうやらマイリアから渡されたものらしい。
「ねえ、どうかな?」
「スポーツウェアに色気を求めるか?普通」
「色気?そんなのじゃないもん」
「悪い、冗談だ。色合いが似合ってるし、その髪型も良いな。可愛い」
「ありがと、リント」
まだ朝早いため日は昇っていないが、外は少しずつ明るくなってくる時間だ。大和の入り口で警備をしている面々は眠そうにしているが、気は抜いていない。
大和の警備は日本国防軍と皇女派帝国軍が合同で行なっている。明けの明星は構成員が少ないため、また皇女という最重要人物がいるため、両者から多くの人員が割かれていた。
そして、凛斗に声をかけてきたのは元日本解放軍の構成員だ。
「おや?大佐、お出かけですか?」
「走ってくるだけです。1時間くらいですかね」
「彼女も連れて?羨ましいですね」
「まあ、そうですけど。忌避感とかは……」
「自分は仲間を皇女派の方に助けていただきました。同じ人間ということが理解できたため、忌避感はありません。他の者もそうでしょう。単純すぎるかもしれませんが」
「そう言ってくれる人が多いと助かります。俺はこういう関係なので」
「惚気るには早いと思いますが、走るには良い時間だと思います」
「暗くて寒いですけど、朝日が見れたら良いですね。雲はどんな感じですか?」
「ご覧の通り、少ないですよ。海の方は快晴のようです」
「ありがとうございます。では、行ってきます」
「お気をつけて」
なお、メイは皇女派帝国軍人の女性と話していて、少し惚気話もしたようだ。顔が赤い。
だが凛斗は気にしてないような顔をしながら、メイを見る。
「行くか」
「うん」
そして、2人は並んで走り始めた。
白み始めただけの低い気温、冷たい海風。そのどちらもが今は心地良い。
「うー、寒いね」
「冬だからな。まあ、慣れれば大丈夫だ」
「そうだね。動いてればあったかいし」
「その服もだろ?」
「うん。マイリアがくれたんだ」
「やっぱりか」
まだ起床ラッパも鳴っていないこの時間、起きているのは警備や哨戒の面々くらいだ。時々同じように走っている者に会うため、挨拶を交わしながら走り続ける。
なおこの2人、起床ラッパ後に行うアレコレは既に終わらせているため、適当に走っていても問題ない。上陸記録があり、書き置き的なものも残してある。
そういうわけで気ままに走っている最中、メイは気になるものを発見した。
「あれ?」
「どうした?」
「あれって日本の機体だよね?なんで帝国軍の飛行輸送艦に載ってるの?」
「足りないからだ」
「足りない?」
「日本の飛行戦艦は大和以外に20隻くらいしかないからな。それで500機を連れてっても、戦力としては足りなさすぎる」
「だから、残りを帝国軍が運ぶの?」
「ああ。あの艦はマスドライバーで打ち上げられるし、宇宙でも使えるだろ?」
「あ、そっか。そのまま母艦にすれば良いんだ」
「前線には回せないけどな。まあ、余ってる宇宙戦艦があったらそれに載せても良い」
日本にいる宇宙でも行動可能な艦艇は、そのほとんどが銚子にあるマスドライバーから打ち上げられる予定だ。
しかし、その数は多くない。簡易化のためハリケーン級飛行戦艦やジャガー級飛行護衛艦からは宇宙空間戦闘能力をオミットされており、宇宙でも戦闘可能な三笠型飛行戦艦や松型飛行護衛艦は数が少ない。
皇女派帝国軍宇宙艦隊はかなりの陣容を誇っているため、宇宙でも航行可能なセクター級飛行輸送艦でSAGAを輸送し載せ換える、といった方針が決まっていた。足りなければ輸送艦をそのまま母艦とすることも。
「だいぶ明るくなってきたね」
「そろそろか?」
「そうみたい。ほら」
30分も走ると、東の空がだいぶ明るくなってきた。
「綺麗だね……」
「ああ」
そして2人は日の出を見つつ帰り道を走り、7時前に大和へ戻ってくる。
「シャワー浴びれば……ちょうど朝食の時間か」
「そうだね。一緒に入る?」
「顔赤くしながら言っても可愛いだけだからな?」
「うっ……だって、恥ずかしいんだもん」
「顔が赤くならなくなったらな。ただ……噂になったらまずくないか?」
「あ、そっか……」
「じゃあ、後でな」
「うん、後で」
シャワー室は共有だが、男女で方向が逆だ。この時間なら一緒に入ることも可能かもしれないが、凛斗は止める。
それは鈍感という意味ではない。着替えを取るために部屋に入ってから……
「あの顔は反則だろ……」
しばらく考え込む程度には、ダメージを受けていた。今までも反撃の半分は照れ隠しだったため、それを続けるだけだが……当人は耐え切れるか心配になっていたりする。
だが格好つけるため、メイにバレるような真似はしない。シャワーを浴びた後に合流し、食堂へ向かった。
「今日は何かな?」
「確か焼鮭だったはずだ。大丈夫か?」
「うん、好きだよ。美味しいもん」
「姉御達、料理上手いからな」
朝食が載ったトレイを受け取った2人は隣合って席に座る。
「いただきます」
「いただきます」
地上に泊まっており、生鮮食品が普通に揃っているためレーションではない。レーションの味が劣るわけではないが、やはりこちらの方が喜ばれる。
もっとも、この2人にはあまり関係ないだろうが。
「メイ、使えるか?」
「大丈夫だよ。あ、リント」
「醤油か?ほら」
「ありがと。あとこれあげる」
「おい、さりげなく梅干しをこっちに載せるな」
「だって苦手なんだもんっ、っー⁉︎」
「油断するのが悪い。食べないのもな。嬉しいか?」
「ん、んっ……これは嬉しくない!」
「そうか、悪かった。これは食べるよな?」
「うん。あーん」
醤油を渡したり、不意を突いてメイの口に梅干しを突っ込んだり、口直しに豆腐を食べさせたり。これまで通り……とは言い難い行動を行なっているものの、当人達自覚は無い。
そのためだろう。ある視線が気になり、凛斗はそちらへ声をかけた。
「ん?聡、どうした?」
「な、何でもないです……あの、凛斗さんってこんな感じだったんですか?」
「ここまで甘くは無かったぞ」
「進展しちまってんな、おい。メイも恥ずかしがってねぇ」
「これを毎日見せられるんだろ?凛斗のやつ、良くやるな」
だが、そんな言葉などどこ吹く風。聞こえてはいるが内容は全て無視し、凛斗とメイは食べ続ける。
またその頃、繭とクリスも食堂へやってきた。少し遅れ気味だが、許容範囲内だ。2人はトレイを取り、凛斗とメイの正面に座る。
「おっはよー。メイちゃん、リント君」
「おはよう、繭、クリス」
「おはよ、クリス、マユちゃん」
「お、おはよう、凛斗……メイ、さん」
しかし何故か繭は顔が赤く、俯いたままだ。そのため、ここで声をかけないという選択肢は無かった。
原因が昨日のこと、ひいては自分のせいだからこそ、凛斗は放置しない。良いか悪いかの判断は難しいが。
「繭、何かあったのか?」
「何もない、けど……凛斗、その、昨日の……」
「分かってる。俺も悪いよな、多分」
「ううん、凛斗が悪いんじゃ……ごめん、わたし……」
「香織に謝るなって言われたし、俺も明確には気付いてなかったからどう謝ればいいか分からない。けど、関係を壊したくはない。今まで通りでも大丈夫か?」
「うん、大丈夫。その……わたしの問題だから」
「分かった」
しかし、繭の返答は彼の予想とは違った。これは自分のことだからと、凛斗には関わらせない。当たり前だ。
一方、メイとクリスの方はもっと踏み込んだ話をしていた。落ち込んでいる繭が思わず介入するほどに。
「ねえクリス、あの後に何かあったの?」
「うん。あのね、マユちゃんが走っていった後、自分の部屋に入ったから、ボクもそのままマユちゃんの部屋に行ったんだ」
「クリス、ちょっと……」
「そしたらベッドで泣いちゃってて、ボクが近づいたら捕まっちゃったんだよね」
「クリス!」
「だからベッドで慰めて、ボクは抱き枕になって、一緒に寝てたんだ。朝チュンってこれのこと?」
羞恥心から茹で蛸になった繭と、深くは理解せずに全て言ったクリス。
そして状況を把握した凛斗は立ち上がり、ある人物を探す。
「ニーネ」
「なに?」
「ちょっとシアを海に捨ててきてくれ。繭とクリスの教育に悪い」
「了解。じゃあ、甲板から捨ててくるね」
「私も手伝うよ。アレは確かに繭には良くないし」
「ありがとう」
「ちょ、ちょっと⁉︎」
ニーネと香織に腕を固定され、そのまま引っ張られていくシア。3人とも食事は終えていたため、支障は一切無い。
もちろん本当に捨てるわけではないが、おはなしするには十分だ。
「ありがと、リント」
「俺も同じ考えだからな。食べるか?」
「うん。リントも、あーん」
「ああ」
「美味しい?」
「もちろん。メイは?」
「欲しい」
それを見送ったメイは凛斗をねぎらい、またイチャイチャし始める。
で、そんな2人の様子を対面から見た繭とクリスはというと……
「なんか、凄いね……」
「これは、無理……うん、諦めれる」
「マユちゃん?早いね」
「だって、わたしにはあんなことできないから……ありがとう、クリス」
「どういたしまして」
結果オーライ、だったのかもしれない。
「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした。ありがとうございます、イカヅチさん」
「お粗末さま。ちゃんとお礼も言えるなんて偉いね、メイちゃんは」
「姉御、俺は無視か」
「生意気なクソガキに言葉なんて要らないよ」
「うわ、姑かよ」
「何だって?」
「メイは俺のものだ」
「ちょ、ちょっと」
そんな視線を気にすることなく、というより姉御との口論になってムキになり、凛斗はメイを抱き寄せたまま食堂を出た。
そして見せつけるように歩いていく。独占欲が出たらしい。しかし、そのままは流石に恥ずかしいのか、メイは嫌がった。
「リント、リント!」
「あ、ごめん。大丈夫か?」
「大丈夫だよ。リントのヤキモチは面白かったけど」
「まったく」
どっちもどっちではあるが。
「今日は外に出る用事も無いから、慌てる必要は無いか」
「じゃあ、この後はどうするの?」
「まずは格納庫だな。オーバーホールの前に駿と打ち合わせしておきたい」
「あ、そっか」
そんなやり取りをしつつ移動し、格納庫の扉を開けると……
「この新型、整備マニュアルとかはどこに?」
「整備はこっちの整備兵がやるから、そっちは気にしなくても良いよ。一応、データはここのファイルに入れてあるよ。帝国軍共通規格だから、交換パーツも大丈夫」
「それならこっちの部品庫にパーツを入れて……なるほど、こんな感じならこっちからも応援を送れそう」
「簡単に言いすぎてない?これも色々チューンしてるんだけど」
「ルシファーやスサノオのチューニングの方がもっと厳しかったからね」
「なるほど、リントなら確かに」
見たことがない機体を前にして、駿とレグルトが話していた。何かを搬入したということは聞いていたが、凛斗とメイが見るのはこれが初めてだ。
自分達の仕事もあるものの、やはり気になり、2人は声をかけた。
「おはよう、駿、レグルト。何かあったか?」
「おはよう。あれ?レグルトだけ?」
「おはよ、凛斗。昨日運び込まれたばっかりだから、これの話を聞いてたんだよね」
「マイリアならもう会見に行ってるよ。今日、僕の護衛は休みなんだ」
「休み?珍しいな」
「というより、これの搬入と調整が僕の仕事なんだよね」
「これ、試作機だよね?でも、何か……11世代?」
「正解。EXSG73-T02Aウェンティ、宇宙戦用の第11世代可変機で、僕の愛機だ」
「愛機?宇宙戦用だろ?」
「大気圏内ならエアロが要るけど、戦えなくはないからね。もう10回は使ってるよ」
「なるほど」
「載せるのってこれだけ?他に聞いてないけど」
「ヤマトにはね。護衛艦隊には同じ11世代のエウロスを1ヶ大隊載せてるから、直属兵団の戦力は十分あるよ」
「そっか、良かった」
「けどさ凛斗、これ割と変態機だよ。ルシファーよりマシでもさ……」
「変態機って」
「ルシファーを悪く言うな」
「それはごめん。で、こいつの可変機構見る?アレだけど」
「アレ?ああ……」
レグルトの駆る新型機エウロス。第11世代と凛斗達からすればランクは下がるが、世界的に見ればトップクラスの戦闘能力を持つ機体だ。
特に様々な武装が取り付けられたスラスターから放たれる攻撃は非常に強力で、上手く使えばデーモンシリーズにも負けないだろう。
しかし、駿が持つ端末に映されている動作シミュレーションは少しアレだった。変形すると四肢が全て機首に集まるという、宇宙でしか使えない可変機構をしている。
日本系の可変機に慣れている凛斗にとって、少し受け入れがたい形だ。
「というかこの可変機構、整備性も悪いだろ。可動部分はいくつあるんだ?」
「やっぱりそこ聞く?そのせいで開発そのものも遅れたんだよね……性能は良いのに」
「あ、やっぱり」
「まあ、そんなものだろ。コクロウやハクゲイの年間生産数、聞くか?」
「はい?」
「えっと、凄く少ないのは聞いてるけど……」
「明けの明星での運用分しか確保できなかったからな。生産工程より材料の問題だったか?駿、任せる」
「はいはい。完成機だけ作っても年間100機が限界で、補充パーツを考えると80機運用がギリギリのライン。材料があれば500機運用もいけたかもしれないね。でも、搬入ルートが限られすぎてるからそんなのは無理。パルチザンの辛いところだよ」
「え……そんなのよく採用できたね」
「あの性能ならそれくらい目を瞑るだろ。劣勢だったんだからな。まあ、俺は知らないけど」
「何で?」
「ハワイにいたからな。俺が1年の時だ」
「そうなんだ」
「そんなに数が少ないなら、製造ラインを増やしたら良いよね?」
「1番の問題は製造設備が少し特殊で、新しい製造ラインを作るのが難しいことだからさ。少ない材料で可能な限り作ろうとした弊害らしいね。それで、今はそこを改良して製造ラインを日本中に広めようとしてるところ」
第10.5世代機という高性能機の開発に成功しながら、パルチザン全ての主力を担うことができなかった理由がこれだ。
劣悪とまでいえる量産性。それは性能の劣る第10世代とはいえ、既に数百機が量産されたアラワシ、量産予定のシラサギやオニグモとは決定的に異なっていた。
しかしそれさえ改善できれば、性能と将来性はコクロウおよびハクゲイが圧倒している。元明けの明星の面々は全力で取り組んでおり、既に理論的な解決方法は完成間近だった。
「それと、その辺りを改良した機体が次期主力機として内定してるってさ。もしかしたら、11世代にアップグレードされるかもしれないよ」
「まあ、そうだろうな。ちなみに機密は?」
「それは剣崎大佐の責任でよろしく」
「おい、他人任せにするな。俺も怒られるだろ。けど、メイとレグルトならどうにかなるか」
「どうにかって」
「良いの?リント」
「大丈夫だ」
既に凛斗主導で身内にする計画が立てられているメイと、マイリアの側近中の側近であるレグルト。概略を伝える程度から支障は無い。
というか、メイの方は機密で囲い込んで逃げられなくすることも考えていたりする。
「そういえば、ルシファーとかのパーツってどうしてたの?形違うのもあるよね?」
「そういえば……」
「デーモンシリーズの専用パーツには試作機用工作具を回してたよ?他に影響は少なかったけど、ちょっと面倒くさかったね」
「おい、それ初耳だぞ」
「え、マジで?権限の問題かな?」
「というより、他にやることが多かったからな……」
そういった情報はパルチザンが活動する上で重要なものだが、他にもやることが多かったため優先度が低い。実働部隊の幹部であった凛斗には概略しか伝わっていなかった。
それで十分だったとも言う。
「そうだ。レグルト、話を変えても良いか?」
「え?まあ、良いけど」
しかし、今それでは足りない。忙しいのは同じでも、あの時とは立場が違う。知らなければならない立場にある。
それに、個人的にも確認しておきたい話だ。
「他のエリアはどうなってる?」
「なるほど。リントがそう聞くってことは、日本以外だね?」
「ああ。特にアメリカとオセアニアだな。上の体制が整いきってないから、俺まで話が降りてきてない。それと、ヨーロッパ連合とどういう話があるかも気になる」
「あ、私も聞いて良い?」
「もちろん。まず北アメリカは順調そのもの、数日中に全土を解放できるはずだね。南アメリカは……あまり良くないかな」
「良くない?」
「何で?」
「どうにも、手綱を握れてないみたいだよ。いくつかの組織が乱立してるらしくて……その上ほとんどテロリストみたいな組織が山ほどいて、内乱が始まりそうだとか」
「なるほど。オセアニアは?」
「オセアニアも順調……というか皇太子派が少ないから、もうゲリラを注意するだけの段階らしいよ。オセアニアの戦力が少ないせいで援軍は無いけど……代わりにヨーロッパ連合とは同盟を結べて、援軍の約束も貰ってるよ。宙で合流できるんじゃないかな」
「ユーラシアと中華は?」
「ユーラシア共同体はシベリアの、中華アジア連盟は朝鮮半島、満州、東南アジアの皇太子派に大攻勢をかけてる最中みたいだね。最前線は熾烈な消耗戦らしいから、日本の防衛に必要な戦力は少なくて済みそうだよ。けど、ゲリラ対策は大丈夫だよね?」
「ああ。保安隊を中心に哨戒網を作ってる。というか、ゲリラが使う場所は全部パルチザンが抑えてるからな」
「後方はバッチリ、と」
「ユーラシアと中華の対策もやってるぞ。北海道と沖縄をメインに、対馬や佐渡にも部隊を集めてる。そっちも部隊を出してるよな?」
「宙に行かない部隊のことだね。ハリケーン級やアトラス級も出してたから、防衛力は十分かな?」
「ああ、助かってる。ありがとな」
共有してる情報と、まだ共有してない情報。共有予定の情報と、機密として隠す情報。
利害関係から始まった同盟であるが故にそれらの判断は重要で、友人同士であっても手は抜かない。
もちろん、それだけではないが。
「そういう約束だからね。そうそう、僕も話を変えるけど……2人とも、シミュレーター使ってみない?」
「シミュレーター?」
「俺達と模擬戦する気か?」
「その通りだけど、レックス達も誘えたら良いかな」
「分かった。呼ぶね」
「それなら、剛毅達も呼んだ方が良いな。場所はどうする?」
「この機体もそうだけど、これからのことを考えると宇宙が良いよね?」
「そうだな。駿、オーバーホールに問題は?」
「今日中に終わるなら問題無し。だから延ばさないでよ」
「分かってる。やるか。メイ」
「はーい」
そういうことで連絡した後、凛斗達はパイロットスーツへ着替えに行った。
・ウェンティ
EXSG73-T02A
全高12.4m。第11世代SAGAの試作機で、宇宙戦用可変機。設計段階からエネルギーシールドを搭載する予定で、機体とエネルギーシールドが同時に開発されていた。
エウロスと同時期に開発が開始されたが、可変機構が上手くできず、エネルギーシールドは完成したものの、完成度50%程度で計画ごと凍結された。その後皇女派が技術者ごと奪った時、エウロスよりも基本性能が高いため、デーモンシリーズ・エンジェルシリーズの技術を取り入れさせたうえで、1機だけ製造して皇女直属兵団団長レグルト・ワーグナー中佐の専用機とする。
変形機構は、大気圏中では使えない空力的に不合理な形をしている。しかし宇宙においては高性能で、武装スラスターにより非常に高い機動力と火力を持っている。
武装
___高出力ビームライフル×2
___エネルギーシールド発生器×4
___ビーム砲×7
___固定式ビームソード×6
___武装スラスター×2
___小型武装スラスター×1
___高出力ビーム砲×2
___4連装小型ミサイル発射管×7
___プラズマ収束砲×2
___迎撃ビームバルカン×2
・エウロス
XSG72-T01A
全高11.4m、第11世代SAGAの試作型。エンジェル・デーモンシリーズとは違い、最初から量産機として試験・設計された。ウェンティの対抗機として開発が開始された。
ウェポンシールドにより同時投射可能火力が高く、大気圏内飛行戦闘も可能。プラズマ兵器を最初に搭載したのもこの機体だが、実用レベルにしたのはルシファーとミカエルが初。それを逆輸入し、エウロスも完成品のプラズマ兵器を搭載している。
エンジェル・デーモンシリーズの少し前に開発がスタートしていたが、ルシファーとミカエルの開発が順調だったため予算が段々減り、試作機を2機作っただけでほぼ予算が尽きた。次期主力機からは外れたとみなされたが、性能は十分だったため皇女派帝国軍が技術者ごと試作機を奪い、少数ながら量産する。
そのエウロス36機が皇女直属兵団の戦力として運用されており、大和の護衛艦隊に分乗している。
武装
___ビームライフル×1
___ウェポンシールド×1
___手持ち式ビームソード×2
___固定式ビームソード×2
___ショルダーウェポンシールド×2
___ビーム砲×2
___ビームマシンガン×4
___6連装小型ミサイル発射管×6
___プラズマ拡散砲×1
___プラズマ収束砲×2
___迎撃ビームバルカン×2




