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少年少女の人型機甲戦闘機戦記 - Strong Armys of GigAntes  作者: ニコライ
第1部

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第39話「想いと願い」前編

最終話まで書けたので、本日から1日2回投稿します(前編が7時、後編が17時)

どうぞお楽しみください

 



「諸君。本日を持って、日本国の主権は日本国民の手に戻った。パルチザンは解散し、日本国防軍として再編成される」


 日本国防軍。帝国軍に占領された時に解散した組織がこの日、復活した。


「しかし、貴官らはこれで満足か。我々の目的は国を取り戻すだけか。過去を理由に、受けた恩すら返せぬ者か」


 だが、この式典の目的はこれだけではない。日本解放軍のリーダーであった近藤大将の問いかけに対し、否定の声が大きくあがる。

 感情で忌避感を持っても、理性的に考えられない者はいない。


「然り。例え数が少なかろうと、例え功績が無かろうと、受けた恩を返すことが武人の道理であら。よって、日本国防軍は宇宙派遣艦隊を編成し、元凶を討つ」


 これの正式発表が式典を開いた理由だ。


「秋山努少将」

「は!」

「貴官を中将に昇進させ、宇宙派遣艦隊司令長官に任ずる。今までの功労を評するとともに、これからの健闘を期待する」

「了解しました」


 他4つのパルチザンおよび保安隊にいた大将と中将が組織を再編し、実働部隊の長には伯父貴が就く。元から決まっていたことであり、式典自体は形式的なものでしかない。

 また、ここには凛斗も同席していた。


「剣崎凛斗大佐相当士官」

「はい!」

「貴官の功績を評価し、正式に日本国防軍大佐に任ずる」

「ありがとうございます、閣下」

「貴官は宇宙派遣艦隊艦載機部隊の隊長、つまりパイロットのまま前線指揮官となる。大変な仕事だろうが、これからも励め」

「は!」


 伯父貴と同じ日本国防軍の第1種礼装に身を包み、大佐の階級章を授与された凛斗。彼についても異論は無かった。

 危険な潜入任務を達成し、エースとして相応しい戦果を打ち立て、指揮官としても十分な戦績がある。そして偶然ではあるが、皇女派帝国軍との強い繋がりもある。

 現在18歳、日本国防軍最年少の大佐の誕生だ。
















「ふぅ、終わった」

「そんなんになるなら出なきゃ良いじゃねぇか」

「お疲れ様、凛斗」

「ありがとな、繭。トラン、そういうわけにもいかないだろ。俺は若きトップエース、日本解放の立役者って肩書きなんだからな?マスコミに露出しない分マシだけど」

「……自分で言って恥ずかしくないか?」

「正直言って恥ずかしい。これなら魔王の方がマシだ」

「カッコいいですよ、凛斗さん」

「無理に言うな、聡。顔で分かる」

「うぅ……」

「まあ、慣れるしかないか」

「……だろうな」

「で、どうすんだ凛斗。お前の嫁は」

「まだ嫁じゃない」


 現在の凛斗の服、日本国防軍の第1種礼装は紺色を基調とした軍服で、その襟には授与されたばかりの階級章が輝いている。肩と袖の階級章は布製なので輝かないが、真新しい姿を見せていた。

 また、左胸には勲章もいくつか付けられている。パルチザン時代の功績と、数日前の東京決戦での功績によるものだ。

 そして、その姿にとある人間……メイは見惚れていた。


「リント」

「ん?」

「カッコいい」

「そうか?軍服って制服と似たようなもの……」

「ううん、それの方が似合ってるよ」

「そうか。まあ、メイもそれの方が似合ってるし」

「えへ。ありがと、リント」

「けど、これでしばらく礼装は着なくて良いな」

「えー?」

「メイも式典だから着ただけだろ」


 そういう意図を持って作られた礼装ではないが、2人が並ぶと様になっている。当人達にやる気は無いものの、広告塔にもできるだろう。

 そして凛斗の言う通り、礼装の出番は終わった。今後着るとすれば普段着的な常用冬服・常用夏服かパイロットスーツになる。恐らくは。


「凛斗さん、まだですか?」

「時間まで待機だ。聞いてるだろ」

「えー?」

「でも、暇だよ?」

「それでも、だ。向こうの準備が終わって無いんだぞ?大人しく待ってろ」

「了解であります、剣崎大佐殿」

「待機を続けます、ケンザキ大佐殿」

「やめろ」


 ちなみに、他の12人の階級にも色々と変更があった。まずそれぞれの副隊長的な扱いで、香織とアクトが大尉となっている。

 続いて、剛毅、潤人、レックス、シアの4人が中尉。小隊長的な扱いだ。残りの6人は少尉となっている。

 そして、全員が将来の幹部候補だ。段階を踏む必要はあるが、最低でも大隊長は確定していた。剛毅達は経験と技量を兼ね備えたエース、レックス達はマイリアの側仕えも想定されているエリートであり、そのための佐官教育も決まっている。

 だが、現在の話の種はそれではない。机の上の端末から流れてくるのは、記者会見の生中継だ。


「色々聞かれてるんですね」

「てか、記者会見って何だよ。伯父貴達はよくやるよな」

「でも必要なんだよね、リント」

「ああ。俺達の正統性とかを示すには必要らしい。でも、俺は出たくない」

「じゃあ、私がやる?」

「マイリアに任せれば良いだろ」

「そうだね」


 ちなみに、最年少の大佐となった凛斗だが、前線指揮官だからという名目でマスコミの追及からは逃れている。式典の時に少し映った程度だ。

 メイも18歳で少佐だが、レグルトが中佐として上官にいるため、凛斗ほど目立ってはいない。家名により、別の意味で目立っていたりするが……皇女の親友という点がかき消していた。

 とはいえ、既にトップガンカップルとして存在は広く知られていたりもする。2人とも、戦後は覚悟していた。


「しかし面倒なことでも、武装法務隊が行ってきた非道について、改めて説明されるのは良いことです」

「まだやらないぞ」

「はい?」

「テロリストの主要メンバーが全員捕まってないからな。暴走されたら困るから、発表はその後だ。それに改めてじゃない。日本のマスコミは皇太子派に抑えられてたせいで、反乱を起こしたのがマイリアってことすら知らない。ネットで回ってるのも少ないな」

「いつまでかかるんですか?」

「メガネさんが主導してて、あと数日で捕まえられるらしい」

「なら良いか」

「でも、何でボク達は聞いてないの?」

「俺は佐官だからな」


 凛斗が言う通り、同じ佐官であるメイもこのことは知っていた。欠点があるとすれば、凛斗以外の面々が知らないことに気付かなかった点か。それを理解し、今はアタフタとしている。

 そんな風に少年少女達は時間を潰すが、この後は予定が存在している。そして、その時間が迫っていた。


「あ。凛斗、時計」

「ん?もうこんな時間か」

「本当だ。もう少しだね」

「あ、もう」

「はぁ、仕方ないなぁ」

「話しながらでもいいから行くぞ」


 なので次の予定に向けて、彼らは行動を始める。

 ただし……


「これでやっと礼装を脱げるな」

「えー?」

「もしかして、また見たいのか?」

「うん」

「分かった分かった」


 こういった所で甘いのが凛斗だ。
















「予想より弾幕が凄いな」

「リント、どうするの?」

「そうだな……近づいて切り刻むか」

「やっぱり」

「それしか無いだろ?とりあえず」


 コックピットに乗り込み、シミュレーターを起動した凛斗とメイ。

 2人のスサノオにデーモンシリーズとエンジェルシリーズを合わせた計13機は大和の防空訓練に参加していた。


『簡単に言うなよ、凛斗』

「それでもやるしかないだろ。ミサイルは?」

『全弾発射済み、効いてないぞ』

『……対SAGA(サーガ)用、だからな』

『それに、半分は落とされたんじゃない?』

『そんなものでしょ』

「流石は最新鋭艦だな」

「それでもだよ、リント」

「そうだ、な!」


 しかし、未だに有効打は与えられていない。大和の対空能力の高さ故だ。

 特に迎撃用ビームボーゲンは射撃精度が高い上に射撃プログラムが嫌らしく、射撃地点に留まることはほぼ不可能。そのせいでレーダーをはじめとしたセンサーを狙えない。

 なので、他の手札を使うことにした。凛斗とメイはOSを少し改造し、メインOSとサブOSの区分を当初とは異なるものに変えている。それを活かし、メイが体勢を整えたところで、凛斗がプラズマ収束砲を放つ……も、それは主砲塔に弾かれた。


「ちっ」

「やっぱり弾かれるんだ」


 プラズマ収束砲は大和の主兵装であり、対応防御も考えられている。分厚い装甲と、その上で施された特殊表面加工により、大和は自身の主砲にもある程度耐えられる。

 しかし、エネルギー密度はSAGA(サーガ)のプラズマ収束砲の方が上なので、やりようはある。


「脆弱部を狙うしかないか……まあ、バトラーやシルフィードでハリケーン級を沈めるよりはマシだな」

「狙える所はあるもんね」

「ああ。それに、ライフルは高出力タイプだ」

「最初に艦橋を潰す?」

「任せる」

「了解」

「智子とアクトはミサイル発射管を狙え。誘爆させるだけで良い」

『う、うん』

『……了解だ』

「他は回避運動を継続、可能なら対空砲を潰せ」


 大和の基礎情報は持っているが、実戦データは無い。どの武器が効いてどれが効かないのか、どこが強固でどこが脆いか、そういうことすら凛斗達はほとんど分からない。

 そして有効な攻め方は伯父貴達運用人員すら知らない。その評価のためのシミュレーションでもあるためだ。


「行くよ、リント」

「行け!」


 スサノオはビームボーゲンを掻い潜り、避けられないものはエネルギーシールドで防ぎ、大和に足を叩きつける。その反動で跳ね上がり、艦橋にビームライフルを突きつける。


「メイ!」

「っ⁉︎」


 だが読まれていたのか、艦橋周囲の対空砲が向けられたため、慌てて避ける。


「難しい……」

「よし、覚えた」

「リント?」

「任せろ、メイ」

「う、うん。ユーハブ」

「アイハブ」


 凛斗にメインを変わると、スサノオは再びビームボーゲンを避けながら接近していく。

 だがメイが操縦していた場合とは違い、ビームに狙われる前に回避するか防御していた。


「え、何で?」

「アルゴリズムの癖を半分くらい覚えたからな。全部は無理だけど、だいぶ楽になった」

「わ、凄い」

「メイもできる。俺は自分で使ってるから慣れてるだけだ」


 さらにビームボーゲンを撃って対空砲や迎撃用ビームボーゲンを何基か破壊し、近くにあったセンサーにもダメージを与える。


「ハァァ!」


 そして、大和のメインスラスターを1つ、大太刀型クルセイダーで斬り裂いた。


「やった!」

『おお!』

『凄い!』

「お前らも慣れればできるだろ。それより、分かったか?」

「うん、何となく」

「なら任せる。ユーハブ」

「アイハブ。行くね!」


 メイが操るも弾幕を潜り抜けると、右舷の第2カタパルトにプラズマ収束砲を叩き込み、格納庫の一部へダメージを与える。

 さらにそこで離脱せず、プラズマスラスターを最大出力にする。


「次に……」

「は?まさか、メイ……」

「行っけぇぇ!」


 そのまま大太刀型クルセイダーを振るい、大和の上部左舷の真ん中にある200cm30口径3連装プラズマ収束砲の砲塔を叩き斬った。

 最大の装甲厚を誇る主砲塔を。


『マジかよ……』

『うわぉ』

「アレを斬れるのか」

「うん。それに……」

「ああ」


 さらにスサノオは砲塔があった場所、そこに空いた穴へプラズマ収束砲を叩き込む。


「退避!」

「了解!」


 それによって起きた大爆発から逃げつつ、煙が晴れるまで様子を見る。

 この攻撃で大和上部左舷の200cm30口径3連装プラズマ収束砲が全滅した他、左舷の格納庫が全て壊滅、周囲の対空兵器が全損した上、装甲に大きな破口ができている。


『おお!』

『やった!』

『ナイス!』

「破口に波状攻撃!迎撃に当たるなよ!」

『『『了解!』』』


 そして凛斗の命令通り、12機のSAGA(サーガ)が破口周囲へ波状攻撃を仕掛けた。

 装甲の無くなった破口部分は攻撃を喰らう度に爆発し、艦内部が破壊されていく。そのため、対空砲や迎撃用ビームボーゲンは完全に左舷へ集中している。


「メイ、反対側に行くぞ」

「え?良いの?」

「俺達は囮だ。あいつらもだけどな」


 それを見つつ、スサノオは大和の右舷側に回り、対空砲やミサイル発射口を潰す。

 ついでに少し無防備なように見せかけ、発砲しようとした120cm20口径連装ビーム砲の銃口へビームライフルの高出力ビームを叩き込み、誘爆させる。


「メイ、他にどこがある?」

「後ろだよね」

「ああ。スラスターからジェネレーターを潰す」

「うん、やれるよ」


 もちろんスサノオだけでなく、他の12機も暴れていた。

 最初こそ、ビームボーゲンによる対空砲火が初体験だったため上手くいかなかったが、慣れれば対処できる面々だ。対空砲だけよりも面倒、という評価に落ち着く。

 一般パイロットでは近づくことすらできないような対空砲火でも、東京決戦をはじめとした日本解放作戦でエースとなった面々にはそう感じた。コクロウのパイロット達も沈めることこそできなかったが、対空砲火に関しては同じだ。


「香織、アクト、そっちは?」

『……順調だ』

『残ってる対空砲が面倒だけど、悪くない感じ。けど、ちょっとまだかかりそう』

「誰かトドメを刺せるか?」

『凛斗さん、僕が行きます』

「私も。ここから行くね」

「よし、やれ!」

「うん!」

『はい!』


 その合図とともに、戦闘指揮所がマモンの小口径プラズマ収束砲により破壊される。

 同時にスサノオが大和のメインスラスターへ放ったプラズマ収束砲が艦内へ貫通、メインジェネレーターを破壊し、爆沈させる。


『訓練終了。デブリーフィングを開始してください』

「ふぅ……お疲れ、メイ」

「お疲れ様、リント」


 時間はかかったが勝利を得た凛斗とメイ。その2人はスサノオのコックピットから出て、ガントリーを使って下に降りる。


「結構大変だったね」

「ああ。けど多分、目的も達成できたな」

「データは十分あるみたいだよ」

「は、何で……マイリアか?」

「うん」


 シミュレーション訓練を行なっていた戦闘指揮所にはマイリアとレグルトもおり、訓練を見学していた。

 なので彼女から情報を得るのはおかしくないが……早すぎやしないだろうか。聞いても答えは出ないだろうが。


「メイ、ちょっと来て」

「あ、うん。今行くね」

「まったく。まあ、報告は俺だけでも……ん?」

「や、凛斗。久しぶり」


 そんなことを考えていると、他の面々も機体から降りていた。

 そしてシアに呼ばれてメイが向かうのと同時に、凛斗の後ろから人がやってくる。


「駿?お前も来たのか」

「スサノオの整備員になったからね。挨拶ついでにデブリーフィングの事情聴取も担当することになったんだよ。で、あの子が噂の?」

「何の噂だ」

「聞く?」

「いや、いい」


 どんな噂なのか。だいたい凛斗には予想できたが、聞かないことにした。

 こういう噂を当人が聞いた場合の反応は2パターンに分かれるが、悪い方だった場合に困るためだ。


「まあ、まずは仕事が先かな。感想は?」

「対空砲火は厄介だった。慣れた後も攻撃できる回数が対空砲だけより少なかったな。護衛艦と直掩機ありだと、落とせないかもしれない」

「ふむふむ、なるほど」

「ただし、弱点は他と同じだ。今回の突破口はメイが作ったけど、多分あいつらも慣れればできる」

「確かにそんな感じだったね。過信は禁物、と」

「他には……いや、それだけだな。良い艦だと思う」

「伝えておくよ」


 そういうわけで脱線せず、凛斗は質問に答えていく。

 そしてしばらくすると、メイが疑問符を浮かべながら戻ってきた。


「リント、誰?」

「藤堂駿。俺と同じく明けの明星に保護されて、整備士の方に進んだやつだ。加えて、スサノオ開発者の1人だな。階級は?」

「少尉だよ。凛斗はいきなり大佐なんてズルいね」

「メイ、教えてやれ」

「うん。私はメイルディーア・ハイシェルト少佐です。凄い機体を作ってくれてありがと」

「……凛斗」

「どうした?」

「どうやって捕まえたか後で教えてくれない?」

「なら今すぐ皇太子派に潜入してこい」

「無理、ムリ。冗談だって」


 だが、凛斗がやったことは言った通りだ。メイの側からしたらもっと分からないかもしれない。

 そして、凛斗の眼に嫌な予感がした駿は、話題を本筋に変える。


「ちょ、僕の仕事を進めないとダメなんだけど」

「誰のせいだ、誰の」

「僕だね、はい。えっと、ハイ……」

「メイルディーアの方で呼んでやれ」

「ちょっと凛斗、目が怖いから」

「そうか?」

「そうそう。というか、過保護だよそれ……メイルディーア少佐、大和と戦った感想は?」

「リントと同じだよ。ね?」

「砲塔を斬ったのはメイだろ」

「最初に斬ったのはリントだもん」

「それで思い出した。スラスター周りの対空砲はアルゴリズムが雑だったな」

「あ、そうだ。リント、よく見てたよね」

「メイが上手く掻い潜ったからな」

「リントだよ、最初は」

「はいはい、ごちそうさま」


 だがそんな会話になり、駿は対応を等閑(なおざり)にする。正直言って、彼からすればどうでも良い会話だからだ。

 その反応には扱いが雑だと凛斗もメイも思ったが、追及はしない。それがブーメランになるということは理解している。


「じゃ、僕は向こうの話も聞いてくるよ。ありがとう」

「こっちこそ、全部任せて悪い」

「いいよいいよ。今はこれくらいしかやれないんだから。あ、そうそう、スサノオに不満とかある?」

「いや、無い。あるのはパイロットの問題だな。メイはどうだ?」

「私も無いよ。私と凛斗の問題だけだから」

「あー、大工さんを呼んでこようかな」

「は?」

「ここに教会を建てたくなったから」

「おい」

「え?」

「はは、じゃあね」


 そう言って逃げるように立ち去る駿。彼の言葉を理解できなかったメイは疑問符を浮かべているが、凛斗はそうでもない。

 後で行う制裁をリストアップしつつ、仕事についても思い出す。しかし、それは無用だった。


「まったく。さて、今日の残りは、ん?……ああ、もう終わりか」

「うん、そうだよ。ねえ、リントの部屋に行っても良い?」

「いつでも来れば良いって言っただろ?」

「親しき仲にも礼儀あり、でしょ?」

「よく知ってるな」

「勉強してるもん」


 そう語り合うと、2人は艦の外に向かって歩いていく。まだ大和艦内は元明けの明星メンバーによる解析・訓練・調整の最中であり、乗員となることが確定していても部屋は貰えていないためだ。

 なので、凛斗は隣の蒼龍で、メイはマイリアと同じアトラス級航空母艦で寝泊りしていた。

 メイにとって辛い点はリントの近くにいられる時間が減ることと……頻繁に外に出なければならないことだ。


「うぅ、寒い」

「ハワイとは違うからな。温暖化は終わったから、四季がちゃんとある」

「夏は暑かったのに……」

「日本はそういう気候なんだよ」

「慣れるかな?」

「慣れる。だから安心しろ」


 1月末の日本、特に港付近は海風の影響で寒く、ハワイと日本の夏しか知らないメイ達には辛かった。

 今も帝国軍正規品のコートを羽織っているが、隙間から入る空気に凍えていた。


「そうだ。なあ、メイ」

「なに?」

「明後日、デートするか」

「けほっ」


 ただ、それには熱くなったらしく、メイの顔が真っ赤になる。

 それを凛斗が可愛いと思った瞬間、彼女の口が弾けるように動いた。


「デ、デデデ、デート⁉︎」

「何回もしただろ?」

「あ、うん、だけど……」

「それとも嫌か?」

「い、行くよ、もちろん!」

「顔赤いけど……」

「だ、大丈夫……それで、どこに行くの?」

「俺が案内して良いか?」

「良い所?」

「ああ」

「分かった。じゃあ、お願い」

「任せろ」


 そんな風に、2人は言葉を交わした。

 陰から聞いている者がいるとも知らずに。












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