第38話「邂逅」後編
「皇女殿下がジープで移動っていうのはどうなんだ?まあ、こいつの装甲なら狙撃の心配は無いけどな」
「だからですよ。一般的な車両であれば襲撃の可能性を抑えられます。それに豪華な装甲車など、簡単に用意できるものではありませんから」
「そうなんだ」
「護衛は大変だな、レグルト」
「そうなんだよ。なのにマイリアは色んな所に……」
「レグルト?」
「はいはい」
3人を乗せたジープの運転をしながら、レグルトはそんな風に話す。実際、護衛は大変な業務だ。護衛要員が多いからこそ、その配分を行う隊長の職務は難しいところがある。
そのため、何の説明をしなくても護衛に使える凛斗やメイは彼にとってありがたい存在だった。
「ふむ、このエリアも随分と片付いたのですね。予想以上です」
「だって頑張ったもん」
「俺とメイは昨日ずっと撤去作業をしてたからな。ここの近く、D3B2エリアの作業指揮もしてたおかけで、随分と状況も掴めた」
「D3B2エリアって1番瓦礫が多かった所じゃ……あそこの指揮を2人だけで?」
「ううん、リントだけだよ」
「500機に作業を割り振るだけだったからな。その程度なら簡単だ」
「えぇ……」
「なるほど」
大半が廃墟となった東京湾港湾基地だが、SAGAも大量動員した整地作業により、瓦礫の撤去だけなら8割以上が終わっている。作業用重機としても有能なSAGAを有効活用した結果だ。
凛斗とメイに残っている仕事は別の分野なので、車で視察する必要性は無い。そのため、メイは今のうちに気になっていることについて聞くことにした。
「ねえマイリア、その新型艦から援護してくれたんだよね?」
「ええ。上手くできて良かったです。もっとも、人員がいないため一度限りとなってしまいましたが」
「いや、あれで十分助かった。ありがとな」
「そうですか。では……おや、そろそろですね。このアトラス級を越えれば見えますよ」
「そうなの?」
「さて、どんな感じの……」
マイリアの言葉に期待を強める2人。
その直後にバギーがアトラス級航空母艦の陰から抜けると、それが姿を見せた。
「うっそだろ……」
「おっきい……」
そして凛斗もメイも、口を開けたまま動かなくなる。
「メイ、リント」
「あ、ああ……」
「あ、うん……」
非常に巨大な艦がそこにはあった。非常に長大な艦体に、ここから見えるだけでも巨大な3連装砲が4基も存在する。カタパルトらしき場所も3ヶ所あり、反対側も含めると倍以上だろう。
特にサイズは圧巻だ。隣にはハリケーン級飛行戦艦が止まっているが、新型艦はそれを圧倒的な大きさをしていた。というより……新型艦の手前に泊まっている蒼龍よりも大きい。
そのせいで、2人は呑まれていた。マイリアに声をかけられても反応が蔑ろになるほどに。
「はは、リントもそうなるんだね」
「アレを見れば誰でもそうなるだろ」
「そうですね。私もそうでした」
「マイリアもなんだ。それだと、みんなもかな」
「多分な」
事実、後ろのトラックに乗る面々も似た状態だった。
前例が無くはないとはいえ、量産艦としては用いられたことがないサイズの艦だ。しかしハリボテのような弱々しい感じは全く無く、闘牛のような荒々しさすら感じる。それでいて、デザイン性も優れていた。無骨な戦艦にも関わらず、優美さすら見せている。
近くで見ると、それがより強く感じられた。
「ここから見るともっと凄いな」
「うん。でも……何かに似てない?」
「ん?確かに……」
「そう感じるでしょうね。これはエンジェルシリーズとデーモンシリーズで得られた技術も投入した艦ですので」
「そうなの?」
「殿下がおっしゃられた通りこの新型艦、形式番号XSB73-701ADはエンジェルシリーズとデーモンシリーズから得られた技術を元に、宇宙戦艦として新規技術を多数盛り込んだ艦になります」
「貴方は?」
「彼が現在のこの艦の責任者ですよ。ネック少佐、こちらの2人がミカエルとルシファーの元パイロットです」
「そうでしたか。自分は帝国技術省技術開発部新世代型宇宙戦艦開発室室長兼艤装員長代理のアーノルド・ネック技術少佐です」
「明けの明星SAGA部隊長、剣崎凛斗大佐相当士官です。ルシファーの元パイロットです」
「皇女直属兵団副団長、メイルディーア・ハイシェルト少佐です。ミカエルに乗っていました。よろしくお願いします」
「ケンザキ大佐、シミュレーターでのビームボーゲン運用データは開発の際に大変参考になりました。お礼を申し上げたい」
「役に立ってなによりです。まあ、俺はそのまま奪い取ったわけですけど……」
「リントは悪くないよ。だって、あんな風になってるなんて私も知らなかったから……」
「そうです。ルシファーのデータが得られなかったのは残念ですが、ミカエルのデータだけでもかなりのものでした。フィードバックに戦闘データは必要不可欠ですから」
「え……流石、技術屋ですね……」
「はい」
ネック大尉の返答に凛斗は引いたものの、こういう人物もいると思い出した。あの主任と同様、マッド系技術者なのだろう。
なお、凛斗とメイ以外の12人は別の所で説明されていた。面倒なことは佐官の2人に任せるということらしい。
そうして自己紹介をしていると、すぐ近くに別のジープが止まった。それから降りてきたのは……
「む、凛斗の方が先だったか?」
「遅かったな、伯父貴」
「むしろお前が早すぎるだけだろう」
「どこかの誰かさんが直接呼びに来たからな。しかも早めに」
「あら、何のことでしょうか」
「本当のことだよね?」
「ふふ、そうですね」
伯父貴はこのような光景を何回か見ているが、流石に不自然としか見えなかった。マイリアのことを皇女としか認識していないため、仕方ないが。
だが呆れつつも、伯父貴は自分の役目をしっかり果たす。
「はぁ……皇女殿下、こちらの新型艦を我々に恩賜していただけるとは本当でしょうか」
「その通りです。それについてはリントにも話しました。しかしこれはリントに対する報酬でもありますが、恩賜ではありません。贈呈です」
「それは……」
「同盟者でしょう?私達は」
「その通りです、殿下」
これの確認は絶対だ。約束を違える相手とは思っていないが、部下の独断などでは問題がある。トップ同士でやり取りをすることも重要だ。
そしてそのやり取りで理解したのか、ネック少佐も近づいてきた。
「殿下、こちらの方でしょうか」
「ええ。アキヤマ殿、こちらはこの艦を建造したネック少佐です」
「帝国技術省技術開発部新世代型宇宙戦艦開発室室長兼艤装員長代理のアーノルド・ネック技術少佐です。よろしくお願いします」
「明けの明星リーダー兼潜水母艦蒼龍艦長の秋山努少将だ」
「ソウリュウというと、隣の?」
「そうだ。しかし、蒼龍より巨大な艦がいるとは思わなかったが」
「私も聞いた時は驚きましたから。ではネック少佐、説明して差し上げて」
「はい、殿下。この艦、XSB73-701ADは宇宙戦艦ですが、強力な反重力装置により大気圏内での飛行および戦闘が可能です。もちろんそれだけではなく、全ての分野において新世代型宇宙戦艦の名に恥じぬ性能を持っています」
そして、彼は新型艦に関する説明を始める。
「主砲には200cm30口径3連装プラズマ収束砲を12基使用しており、最大射程が既存艦砲の倍以上となっています。威力も既存艦砲以上で、分厚い装甲と特殊表面加工も合わさり、砲撃戦においては圧倒的な戦闘能力を示すでしょう。非常に巨大な砲塔ですが、高性能モーターを使用しているため旋回速度は既存艦砲とあまり変わりません。しかし、プラズマ収束砲は連射速度が遅いため、120cm20口径ビーム砲を副砲として搭載しています。副砲とはいえこの口径です。並みの艦艇は一撃でしょう。また、多くはありませんがミサイルも搭載しています」
3連装砲が12基、合計36門ものプラズマ収束砲だ。これほどの大口径となると、戦艦すら一撃で沈められる可能性もある。
また、一昨日の援護射撃でもそうだったが、スサノオやベルゼブブに搭載されているプラズマ収束砲よりも射程がかなり長い。対艦戦闘能力は高いだろう。
そして、自身の攻撃にある程度耐えられるほど装甲は厚い。艦隊戦で沈めるのは難しいだろう。SAGAを使えば脆弱部を突くこともできるが、その場合は防空火器が火を吹く。
「対空兵器としてはビームボーゲンを採用しており、コンピューター管制により使用者の才能に頼らない防空弾幕を展開可能です。ビームボーゲンは射程が短いため、通常の対空砲も搭載していますが、小型ミサイルは搭載していません。小型ミサイルが無くとも、直掩機および僚艦との連携で十分な防空戦闘が可能です」
その最たるものがビームボーゲンだ。既存の対空砲とは異なる軌道で集中射撃がされれば、SAGAは簡単に落ちる。
凛斗やメイからすれば機械的な迎撃は避けやすいのだが、パイロット全員が同じというわけでは無い。
「リニアカタパルトは計8基あり、同時発艦が可能です。格納庫は広いため、60機以上の搭載が可能になっています。カタパルトハッチは大きく、大型の連絡艇も使用可能です」
また、艦載機の運用能力は高い。格納庫の容量は言うに及ばず、リニアカタパルトの数とサイクル、着艦ハッチの数もなかなかの物だ。
また、カタパルトハッチはスサノオでも楽々運用可能な大きさとなっている。リニアカタパルトとの接続についてはスサノオの側で対処可能だ。蒼龍では大変だったが、この艦での運用に問題は無いだろう。
「また最大の特徴として、戦闘指揮所および居住区画などには小型化した新型重力発生装置を使用しており、宇宙においても1G空間を保つことが可能になります。格納庫および兵装区画は運搬などの観点から無重力が保たれます」
これは朗報だ。無重力環境に長時間滞在する悪影響については知られている通りで、薬やトレーニングで対応可能ではあるものの、直接的な解決は今までできていなかった。
それを実現した新型艦を贈呈されるということがどういうことか、分からない者はほとんどいない。
「そしてこれだけ巨大な艦ですが、メインスラスターの出力が大幅に向上したため、既存艦艇以上の速度と機動性を発揮することが可能です」
最後に機動力。これが示すのは新型艦がただ大きくしただけの鈍重な艦ではなく、新世代艦と言うのにふさわしい性能を持つということだ。
そして、それほどの物を贈呈されるという意味も。
「ふむ……殿下、これほどの艦を本当にいただいてもよろしいのですか?」
「疑う気持ちは分かりますが、もちろんです」
「日本国防軍を再興し、宇宙派遣艦隊を編成することも決まっております。その旗艦として用いても?」
「構いません。むしろそれを望んでおります。私も乗りますから」
「はい?」
「は?」
「マイリア?」
「人質のようなものですよ。それに、生存能力はこの艦が最も高いでしょう。護衛艦隊は編成しますが、こちらから乗り込む人員は50人にも満たないのでご安心ください」
「は、はぁ……」
「マイリア、本音は?」
「日本のレーションは美味しいですから」
「おいこら」
「ちょっとマイリア」
「貴方達もその方が良いでしょう?」
「「良くない!」」
「それは、悲しいですね……」
「ああ、いや、そういう意味じゃ……」
「ご、ごめん、マイリア」
「メイをリントと一緒に乗せる口実ですよ、これは。複座とはいえ、こういったものは必要でしょう。否定はしてほしくありませんね」
「え、あー……」
「あ……ありがと」
「はは。大変だね、リント」
「誰のせいだと思ってる」
だが気付くと、そんなどうでも良いようで意外と重要な流れになっていた。
なお、伯父貴は繰り返されたその光景に呆れつつ、指揮官として必要な質問を行う。どうせこの後、何回も見ることになると理解して。
「はぁ……ネック少佐、質問しても?」
「大丈夫です、アキヤマ閣下」
「艦載機の整備能力はどうなっている?」
「そちらも既存艦艇以上です。整備装置の種類と配置にも寄りますが、最低でも同時に20機の重整備を行うことが可能です。全ての要素を組み込んだ結果、これほどの巨艦になりましたが……全て高いレベルで実現してあります。器用貧乏ではありません」
「主砲の口径が大きいのは?小さくすれば連射速度は速くならないか?」
「いえ、口径を小さくしても連射速度はあまり変わりません。それ以上に射程距離の減少がかなり大きくなります。威力、射程距離、連射速度のバランスを取った結果がこの口径と砲身長です。もっとも、今後の技術革新で変わる可能性もありますが」
「なるほど……良い艦だな」
「恐縮です。閣下に譲り渡した後も小官と部下が運用補佐のために乗艦します。途中で降りるか、乗ったまま戦うことになるかは分かりませんが」
「そうか、分かった。よろしく頼む」
「よろしくお願いします」
運用補佐という役割は必要だ。この艦はすぐに必要になる。猛訓練を行ったとしても、運用人員に十分な技量が付くかは分からない。慣れた者もいた方が良い。
そういうわけで、伯父貴とネック少佐は長い付き合いになりそうだと理解する。さらに、握手も交わした。
また、そんな会話が終わったことを確認したマイリアは、再度伯父貴へ声をかける。
「ではアキヤマ殿、艦名を付けてあげませんか?」
「はい?殿下、おっしゃられていることの意味が……」
「この艦、まだ名前が無いのです。贈呈するため、勝手に名前を付けることは憚られましたので」
「ふむ、そうですか……凛斗、お前が付けろ」
「俺が?」
「そうだ。お前の功績であれば誰も文句は言わないだろう。それに自慢ではないが、俺のネーミングセンスは良くない」
「分かった。それなら……大和、大和ならどうだ?」
伯父貴に問われ、凛斗はそう提案した。
「どれから取った?それは」
「メインは宇宙戦艦、他にも色々と。それに、マイリアから貰った艦に日本の別名を付けるんだ。これからも考えると、その方が縁起が良い。扶桑や敷島でも良かったけど、宇宙戦艦ならこっちだな」
「そうか。確かに、良い名前だ」
「だろ?」
その提案を採用し、伯父貴は改めて宣言する。
「ではこの艦は大和と命名し、後日編成される日本国防軍宇宙派遣艦隊の旗艦とする。異議のあるものは」
シャンパンも薬玉も無いが、これをもって命名式が終了した。
そして、艦内見学会も行われる。パルチザン連絡会、数日後には日本国防軍最高司令部となる面々への報告は後でも良いだろう。
「広いんだね」
「通路だけじゃなく、部屋も広いな」
「はい。居住区画は広く、1人につき1部屋が用意されています。娯楽施設とできる部屋も複数確保してあります」
「そのために艦体が巨大化したのではないか?これほどの居住区であれば、多少小さくしても問題は無いと思うが」
「いえ、艦の巨大化は武装システムとスラスターが主な原因です。その2つと格納庫およびジェネレーターの組み合わせがどうしても小型化できませんでした。居住区画は緩衝区画としての意味を持たせ、それらの隙間にあるため、問題ありません。そのせいで一纏になっておらず、少し複雑な構造となっていますが」
「なるほど」
蒼龍とほぼ同じ理由で、大和の居住区画も広いようだ。居住区の利便性は蒼龍の方が上だろうが、広さでは大和の方が上、どちらにも長所がある。
そして、一向は艦内各所を案内されながら進み……
「そして、こちらが戦闘指揮所です」
「へえ」
「これか」
艦の頭脳、戦闘指揮所にたどり着いた。
「広いな」
「それに、コンソールも多い。伯父貴、艦隊指揮も全部できるよな?」
「単艦でも200隻はできるだろう。他は腕次第だろうな」
「それなら十分か」
「ああ」
「いえ、それだけではありません」
戦闘指揮所は他の艦と同じく円形の部屋だ。壁面には円形ディスプレイがあり、40以上のコンソールが室内に置かれている。各コンソールからは立体投影映像を出力することも可能。これだけでも十分な戦闘指揮ができるはずだ。
しかし、どうやら本命は違うらしい。ネック少佐は卓上に置かれている黒い箱を指差した。ちなみに、同じものが他にも多数存在している。
「この機器をご覧ください。これはVRと網膜投影の複合機器で、戦闘指揮所の内部にいる人間の目へ直接情報を送り、外部の光景を映します。コンソールはそのままですが、壁面、天井、床は全て投影空間とすることが可能です。壁面の円形ディスプレイは万が一使えなくなった場合の保険です」
「へえ」
「それは……」
「信じがたいのも当然でしょう。殿下、実演しても構いませんか?」
「ええ」
「では、起動します」
すると壁と天井が消え、大和の周囲にある光景が映し出された。床にも海が映されているが、格子状の線が入っているため床だと分かる。
この状態でもコンソールは独立して見えており、運用には問題無さそうだ。他の人も普通に見える。
「おお」
「これって……」
「凄いな」
「この状態を我々は空間モニターと呼んでいます。空間モニターには敵味方および艦の状況が常時表示されており、これまで以上に素早い状況認識が可能になります。コンソールから共有したい情報を空間モニターへ載せることもできます」
そして、利便性は圧倒的に向上している。外からは分からなかったが、こういった面でもデーモンシリーズやエンジェルシリーズの技術が流用されていた。
慣れるまでは大変だろうが、蒼龍という巨大潜水母艦を使いこなす面々だ。すぐに使いこなせるだろうと伯父貴は考えている。
「殿下、このような素晴らしい艦を贈呈していただき感謝します」
「よろこんでいただけて幸いです。これが友好の架け橋となれば良いですね」
「そうなるよう努力します。ネック少佐にも、改めて礼を言わせてもらう。素晴らしい艦を作ってくれた。感謝する」
「自分は作れるから作っただけです。感謝されるほどのことではありません」
「それでもだ」
そして、まだ利害関係でしか繋がっていなくとも、いつか絆を紡げる日が来ると考えることができた。
「わー、綺麗!」
「本当、綺麗ですね」
その後、メイとマイリアは誰もいない艦橋にやってきた。戦闘指揮所で全ての操作が行えるこの時代、戦闘艦の艦橋は重要性が低下し、有視界での見張り所という意味しか持たなくなっている。
しかしだからこそ、こういった時に役立つ。装甲型アクリルが埋め込まれた窓は西にもあるため、ちょうど夕日が見えていた。
「ねえマイリア、覚えてる?」
「いつか綺麗な夕日が見たい、絵本を読んだ時でしたか」
「うん。ハワイでも夕日は見たけど……やっと見れたね」
「ええ」
ちなみに、2人に気を利かせ、凛斗とレグルトは話が聞こえない場所で待機している。
ここにいるのはメイとマイリアの2人だけだ。
「良かった」
「どうしましたか?」
「マイリア、元気そうだもん。こんなことになって……反乱なんて、マイリアらしくないって思ったから」
「私らしくない……そうかもしれませんね」
「じゃあ、何で?」
「おそらく、リントの影響なのでしょう。彼がいたからこそ、彼と話したからこそ、私も動く覚悟ができました。しかし……この計画を告げることが遅れてしまったのは、私の責任です」
「ううん、違うよ。リントが私に話してくれれば……そう思ってくれなかったのは、私の責任だから」
「そうですか?」
「うん。私達のことは、全部私達がやったことだもん。それに、リントに本気で怒って……私も、自分の想いが理解できたから」
「ふふ、リントもそう言っていました」
「そうなの?」
「ええ。やはり、理解し合っているのですね」
「理解、じゃないかな。同じなんだ。リントと私は。でも違う。同じことを考えても、口に出すのは違う言葉……だから、私はリントが好きなんだ。多分、ずっと」
「そうですか?」
「うん。だから、私がリントを守るんだ。それで、リントに私を守ってもらう。ずっと支えて、ずっと守る……そうしたいから」
「それで、なるほど……」
今のメイは正直だ。まだ言えていないことはあるものの、本音を隠したりはしていない。
と、マイリアは思うところがあるのか、ふと呟いた。あり得ないことを。
「メイ、貴女は良い女ですね」
「急にどうしたの?」
「ふと思っただけですよ。しかし……私が男でしたら、掴み続けて離さなかったかもしれません」
「え、じゃあ私マイリアと結婚するの?全然思い浮かばないかな。でも、マイリアとずっと一緒なら、私は……」
「いえ、それは無理です」
しかし、言った当人がそれを否定した。確信があるために。
「メイ、貴女とリントは惹き合う運命だったのでしょう。私では貴女を理解しきれませんでした。それができたのはリントだけ……貴女達2人だからこそ、この結果を得られたのです」
「マイリア?」
「変なことを言う、そう思いましたね?」
「うん」
「それも当然でしょう。私、リントに嫉妬していますから」
「え、リントに?」
「ええ」
この半月で理解したことがあるから。
「メイの隣にいる資格は私には無い。そう、告げられてしまったのです。言葉ではなく、行動で」
「マイリア……」
「メイのことが女として好きだった、そう勘違いしてしまいそうなほどに、強い嫉妬が渦巻いています……醜い女ですね、私は」
「ううん、違うよ」
「メイ?」
だが、メイの想いは異なる。
彼女は凛斗が好きだ。だからこそ、こう思う。
「ありがと、マイリア。リントの力になってくれて。私を助けようとしてくれて」
「ふふ、本当……本当に良い女ですね、メイは。惚れますよ?」
「そ、それはダメ」
「ええ、分かっていますよ。メイはリントが大好きですからね」
「うん、大好き。私、やっぱりリントじゃないとダメみたい」
「そうですか。先ほども思いましたが、随分と素直になりましたね、メイ」
「だってお見合いなんてさせられたんだよ!変な人ばっかり、何回も……」
「それはリントには教えられませんね。怒ってしまいますから」
「うん。でも、ドレスの写真は見せようかな。綺麗だったし」
「それは良い考えです。メイ、これからもそのようにしなさい。リントの手を離してはいけませんよ」
「うん。でも大丈夫、私しか見させないから!」
「……」
しかし、メイが完全に無自覚で言った言葉。それにマイリアは引いた。
付き合いの長さ故、無自覚な部分でどんな想定をしているか、正確に分かったために。
「……ヤンデレは流石に守備範囲外ですから、リントに押し付けて正解なのでしょう」
「マイリア?」
「もう行きましょうか。押し付けるのであれば、早い方が良いですから」
「え?」
それについてメイが気付いていないのは良かったのか、それとも悪かったのか、誰にも分からない。
・大和
全長435m、全幅144m、全高91m
皇女派から明けの明星に贈られた最新鋭宇宙戦艦。というか単独での大気圏突入、マスドライバーを使用した大気圏離脱も大気圏内飛行能力も持つ万能戦艦。まず使うことはないが、浅い場所なら潜水も可能。
小型化に成功した重力発生装置が載せられており、宇宙であろうと戦闘指揮所と居住区画は常に1G重力となっている。格納庫や各兵装区画などは運搬等の観点から、宇宙では無重力のまま。
武装
___200cm30口径3連装プラズマ収束砲×12
___120cm20口径連装ビーム砲×12
___30cm15口径連装ビーム砲×16
___ミサイル発射管×40
___迎撃用ビームボーゲン×80
___連装対空ビーム砲×32
SAGA用装置
__発艦用リニアカタパルト×8
__着艦ハッチ×6




