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少年少女の人型機甲戦闘機戦記 - Strong Armys of GigAntes  作者: ニコライ
第1部

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第38話「邂逅」前編

 



「ねえ、リント。大丈夫かな?」

「大丈夫、だと思いたい……」


 東京決戦の終結から2日後。後始末がひと段落した凛斗とメイは東京港湾基地の中を歩いていた。

 この基地は半分以上が廃墟になったが、軍を駐留させる場所としては未だに価値がある。特に大軍であれば尚更だ。

 もちろん、その間には色々と問題があったが、それに対処するのは将官の仕事だ。凛斗とメイを悩ませているのは別のことだった。


「まさか先にやってるなんて……」

「想定外というか、予定外だろ。これ」

「クリスがいるから、かな?」

「かもしれない。けど、俺に一言あってもいいだろ……」

「事後報告だったもんね……」


 デーモンシリーズパイロットとエンジェルシリーズパイロット。その全員の顔合わせが今行われていた。

 会場のテントには食べ物から娯楽系まで一通り揃えられているらしいが、それで安心などできない。万が一のことが起こっている可能性すらある。

 というか、顔合わせは2人が主導して行う予定だったのだが……昨日、大佐相当士官と少佐のコンビとして忙しくしていた間に姉御達が段取りを決めてしまい、今朝始まったらしい。凛斗とメイがそれを知ったのはついさっき、昼前だ。

 繭とクリスという前例がいるため、大丈夫かもしれないと思い込むことにし、テントの中に入ると……


「ここで待ってても仕方ない。入る……」

「よっしゃそこだ、やっちまえ!」

「はい!」

「やらせるか!トラン!」

「おうよ!」

「……ここで会ったが100年目、だったか?……勝たせてもらう」

「いえ、僕も負けませんよ」

「ボク、似合ってる?」

「きゃー!可愛いー!」

「化粧っ気が無かったから逆に良い!繭、ほらまだあるから!」

「う、ううん、次はこれ……!」

「ねえ、これ描いていい?というか描くよ、描くから絶対」

「あ、りんと……」

「えぇー……」


 凛斗とメイを迎えたのは、6人揃ってゲームに興じる男性陣、繭とクリスをオモチャにする女性陣。繭が眼で訴えかける悲痛さが、その場のカオスをよく表している。

 なお、姉御達はこうなることが分かっていて、そう仕向けた。確信犯だ。


「ん?おうリント、遅かったじゃねぇか」

「あ、ああ……何だこれ」

「え、どうしたんですか?」

「それはこっちのセリフだ。お前ら、何やってる」

「「「「「「ゲーム」」」」」」

「そういう意味じゃない……!」


 だからこそ、これは凛斗が意図したものではなく、状況を飲み込めているわけではない。

 メイの方も同様だ。


「えっと……シア?ニーネ?」

「え?ああ、メイ、どうだった?」

「またリントと一緒にいたんでしょ。てか、一緒に来たんだ」

「そうじゃなくて……」

「あ、メイちゃん!これどう?」

「クリス、えっと……何やってるの?」

「お化粧!凄いんだよ!」

「可愛いね、この子。色々似合うし、着せ替えが凄い楽しいし。智子、繭は?」

「う、うん、ほら」

「……タスケテ……」


 というか、月面で少し会っただけの少女、繭の顔から生気が失われているのを見て、メイは若干引いていた。


「と、とりあえず繭、こっちに来い」

「うん……」

「もう大丈夫だ」

「凛斗……うん……!」


 余程扱いがアレだったのか、繭は凛斗へ縋り付く。

 クリスのようにノリノリになれるなら良かっただろうが、繭の性格はそれに合っていなかった。


「ねえ、リント?」

「分かった分かった」


 そんな繭の様子にメイも同情している。しかし、気持ちの良いことではないらしい。メイは凛斗の手を取ると、笑った。

 話を始めようとしたところだったが、凛斗もそれを許した。断じて笑顔が怖かったからではない。


「で、説明してもらっても良いか?」

「ああ、もちろんだ。だが……」

「凛斗、相手がいるのに私達が何もしないわけないでしょ」

「オレらも3日間暇だったんだぜ?」

「色々と教えてもらって、仲良くなりました」

「あ、そっか……」

「確かにそうだな……」


 その言葉で事情を察した凛斗。しばらくの間メイのことしか考えてなかった彼では、教えられるまでそういう発想に至らなかった。

 つまり、心配すること自体が無意味だったのだ。しかし凛斗はそこまで発想が及ばず、先に別の重要事項を対処する。


「で、繭がオモチャになってたのはどういう理由だ?嫌がってるだろ」

「え、えっと……」

「何だか面白くなってきて、つい」

「へぇ?」

「り、凛斗……?」

「今すぐ止めろ。良いな?」

「はーい」

「う、うん……」

「代わりにクリスがいるぞ」

「リント君⁉︎」

「ノリノリだっただろ?」


 誰かを助けるためには、代わりの生贄が必須だろう。しかし、流石に繭と同じ状況に追いやる気は無いため、程々の所で追及を止める。

 繭もそれで落ち着いたのか、クリスと並んで話し始めた。机の上に広げられた日本国防軍愛用のレーションを食べつつ、シアやニーネとも話し始めた。

 凛斗がその様子を笑顔で見届けていると、トランとアクトが近づいてくる。


「おい、リント」

「トラン、聞いたか?」

「……聞いた。しかし」

「分かってる」


 そのやり取りの後、彼らは凛斗を1回ずつ殴った。


「リント⁉︎トラン!アクト!」

「メイ!繭も落ち着け」


 それを見たメイが叫ぶが、凛斗は制止する。同じく反応しそうになった繭にも言葉をかける。

 そして、トランとアクトへ頭を下げた。


「謝って許してもらえるとは思わない。けど、すまなかった」

「……これで許そう」

「オレらの怒りはこんなもんじゃねぇぞ?けどよ、メイが許したんだったらオレらも許してやらねぇとな」

「……ありがとう」


 互いに思うことはある。だが友人同士だ。時間をかければ解決できると信じ、今は急がない。時間に余裕ができたから。

 ちなみに……


「ところでトラン」

「あ?何だよ?」

「お前、メイにセクハラしたらしいな」

「ま、待て、リント。あれはワザとじゃねぇ……っておい、何で捕まってんだよオレは!」


 そう言い、笑顔で詰め寄る凛斗。

 トランは恐怖を感じたが、レックスとアクトが片腕ずつ拘束したため、逃げ出すことはできなかった。


「逃げるなよ」

「……罪を認めろ」

「そういうことだ。大人しく殴られろ」

「や、やめっ、助けっ、ぶべらっ⁉︎」


 そして綺麗に殴り飛ばされ、テントの布に受け止められた。

 他の物には被害が及ばないよう、凛斗が調整した結果だ。


「ふぅ、スッキリした」

「リント、ありがと」

「気にするな。そうだ。メイ、まだ無いよな?」

「大丈夫。別のは2つ来てるけど、そっちは後で良いよね?」

「ああ。それなら、ここで過ごしても大丈夫か。何か食べるだろ?」

「うん、食べる。何が良いかな……」

「メイなら……これは?」

「あ、ありがと。リントはこっち?」

「ありがとな」

「そういえば……メイ、アレは?」

「アレ?終わったんじゃないの?」

「いや、中断だ。確か残り20%」

「あ、そっか。じゃあ、私がやるよ」

「任せる。他の2つは俺だな」

「うん」


 そんな会話をしつつ、2人はレーションに手をつける。残っている仕事の打ち合わせも並行して、だ。

 しかし、それを見た女性陣は……


「うわ、凄いツーカーコンビ」

「あたしは慣れたかな。この2人、ずっとこんな感じだし」

「え、えと、それ、本当?」

「本当本当。これからも見れるけどね」


 こんな反応だった。初めて凛斗のこんな姿を見た香織と智子については、どうしても違和感が拭えないらしい。なお、心傷を癒している繭とそれに付き合うクリスは見ていない。

 ちなみに、男性陣はまたゲームに熱中している。乱闘中だ。しかし、次の来訪者が来たため中断せざるを得なかった。


「ふふ、騒がしいですね」

「仕方ないよ。リントがいるんだから」

「おい、俺が全部の責任みたいに言うな」

「あれ、マイリア?」

「ここに来て大丈夫?」

「少し落ち着きましたからね。だからシア、ニーネ、焦らなくても大丈夫ですよ」


 こんな風に言いながら、マイリアとレグルトがテントの中に入ってきた。ごく自然に、他に護衛を付けず。

 護衛以前に、皇女殿下がいて良い場所ではないかもしれないが……今さらだろう。


「そうなんだ」

「なら良いか」

「ねえ凛斗、その……」

「あ、う……」

「ん?俺が宇宙(うえ)にいる間に話したりとかしなかったのか?」

「話せるわけないでしょ……」

「そうですね。なので初めまして。(わたくし)もリントの友人の1人です。マイリアで構いませんよ」

「は、初めまして……」

「よ、よろしく」

「ええ。ですがその前に……メイ」

「ひゃっ⁉︎」

「どうしたのですか?(わたくし)が来たのに何も話さないとは」

「え、その……リント?」

「メイ、後悔するな」

「う、うん……」


 マイリアに追及され、隠れようとしたメイだったが……逆に凛斗から背中を押され、マイリアの前へ出た。

 なので覚悟を決め、メイは言葉を告げようとする。


「その、マイリア……ご、ごめ、ふぇ?」


 だがその前に、マイリアに抱きしめられた。


「よく、帰ってきてくれました」

「マイリア……」

「貴女が強くないことは知っていました。ですから、(わたくし)がフォローすべきだったのです。そうすれば、あんなことにはならなかったかもしれません」

「ううん、私が……」

「しかし、(わたくし)が自分をここまで不甲斐ないと思ったことは初めてですね。やはり、リントに任せるしかありませんでしたから」

「でも……」

「大丈夫ですよ、メイ。貴女にはリントがいるでしょう?」

「うん……ありがと」


 その行動に、その言葉に安心し、メイは表情を緩める。マイリアはそれを見て微笑み、凛斗も笑みを浮かべた。

 ただし、そんな顔を見ていると……イタズラしてみたくなる。


「ふふ、やはり可愛いですね、メイ。キスしても良いですか?」

「ダメだよ⁉︎」

「冗談ですよ。やはり、初めてはリントが良いですか?」

「え、あ、それは……」

「ん?……もしかして、もうしました?」

「ひぅ!」


 その言葉を聞き、一瞬で茹でダコになるメイ。その反応だけで全員が全て察する。

 その結果、凛斗は男性陣に囲まれタコ殴りに遭った。剛毅、レックス、トランの勢いに他3人が乗った形だ。

 流石に6人に(たか)られては、凛斗でもどうしようもない。とはいえこれはお遊びであり、すぐに解放されたため、怪我などは一切無かった。

 その後、ここは食事会的な場所に変わる。


「あら、美味しいですね」

「だろ?」

「本当だ。リントの誇張って思ってたのに……」

「レーションとは、もっと味気ないものだと思っておりましたが」

「日本の物は特別製なんだよ。こだわり過ぎた結果、ともいうけど」

「ふふ、そうですか。素晴らしいですね。あ、話は変わりますが……メイ、よろしいですか?」

「うん、良いよ」

「月にあったメイの私物は全て処分されたそうです。部屋の中にあったものは全て」

「そっか……でも、端末は持ってこれたから良いかな」

「その際、赤のキャリーバックの中身は確認されなかったそうですよ。良かったですね」

「え、あ……」

「メイ?」

「これについて、リントは邪魔ですね。メイ、向こうに行きますか」

「う、うん……」

「おい、ちょっと待て」

「女の話です」


 日本のレーションは皇女殿下も満足できる味だったようだ。凛斗の追求をかわしたメイとマイリアの食事会はしばらく終わりそうにない。

 そして離れたメイの代わりに、凛斗の所へ剛毅と香織がやってきた。


「まったく……ん?」

「ねえ凛斗、アレで良いの?」

「あいつ、兄貴の仇なんだろ?お前、あんなに怒ってたろ」

「分かってる」


 2人から追及されなくても、リントは理解している。

 そこまで分かった上で、悩み抜いた上で、彼はこれを選択したのだから。


「けど俺にとって、メイが1番なんだ。あんな風に戦ったのも、俺が間違えたからで、メイが悪いわけじゃない。兄貴には悪いけど……」


 兄貴達が守りたい相手だったことに変わりはない。その気持ちは誰よりも強かった。

 しかし、それを上回る相手がいただけの話だ。


「それに、仇討ちなんて兄貴は望んでない。違うか?」

「ま、そうだな」

「そうね」


 憎しみで戦争を続けることの虚しさは一番最初に教えられた。それは誰も忘れていない。

 そう言った凛斗だったが……


「けど、入れ込みすぎじゃない?」

「う゛っ……」

「お?」

「へえ?」


 その質問には咄嗟に言葉が出なかった。

 そして同時に、2人の目は獲物を見つけた捕食者のものに変わっている。なので、凛斗は早めに降参することにした。


「あー……惚れた弱みってやつだよ、これは」

「それで面構えが変わったってか」

「ふーん。やっぱり男の子なんだ、凛斗も」

「良いだろ、これくらい!」


 そう叫ぶ凛斗と笑う2人。

 ここはいつも通りの光景だが、他が違う。


「というか、お前らは良いのか?メイだけじゃなくて、レックス達も……」

「今さらだろ?」

「アレ見てよ」


 剛毅と香織の2人が指差したのは繭の隣にクリスが座り、談笑している光景。 そこにメイとマイリアが加わって笑い、少し思うところがある繭もつられて笑う。

 少し前までは考えることすらなかった景色だ。


「あんな風にできるなら、敵対する気持ちなんて無くなるよ。毒気が抜けたって、ああいうのなんだろうね」

「話せば分かる連中だしな。3ヶ月もあれば頭も冷えるだろ」

「まあ、確かにな。俺も人のこと言えないし」

「それより……」

「凛斗、話せ」

「は……まだ聞くのか?」

「「当然」」


 その後も追及されたため、凛斗はぼかしつつ答えていく。

 だが、しばらくして剛毅がゲームの続きに参加し、香織だけになると、さらに深く追及してきた。


「で、詳しくはどう思ってるわけ?」

「え?」

「好きとか嫌いとか、それだけじゃないでしょ?」

「それは……」

「教えてよ。減るものじゃないし」

「はぁ……同じだからな、俺とあいつは。頼る相手はいたけど、甘える相手がいなかった。まあ、俺は自分から遮断してただけなんだけどな、そういうのを。無意味なのに」


 凛斗はそう言うが、実際は甘えるという行為そのものが彼の思考の中から消去されていたというのが正解だ。

 自分を守るため、役割の中に押し込めようとした。それが今の凛斗を形作っているもので……


「けど、メイは違う。違う経験をして、でも同じ感性で……だから理解し合える。好きになれた。いつまでも隣にいて欲しい……そんな感じだ」


 メイを好きになった理由だ。


「うん……ごちそうさま」

「お前な……」

「向こうの恋バナは……まだ無理か。残念」

「おい、香織」

「大丈夫、邪魔しないよ」


 まだ話せそうにないため、メイとの恋バナはしばらく諦めることにした香織。まあ、そのうち捕食するだろうが。シアと違い、比喩に収まることが救いと言える。

 約1名にとっては、救いでも何でも無いのだが。


「あーあ。でもこれなら、私も競争に参加してれば良かったかも」

「香織?」

「知らない?人気だったんだけどな、凛斗って。強いし優しいし、意外と大人っぽいし、モテないわけなかったんだけど」

「ちょっと待て、何で今それを教える」

「何となく?ま、私は自分から身を引いたんだけどね。脈の有る無しなんてレベルじゃなかったしさ。けど……失恋も共有すれば良かったかも」

「……」


 言いたいことを理解してしまい、口が開けなくなる凛斗。

 メイが好きとはいえ、凛斗は盲目でも朴念仁でもない。いつか答えを出さなければならないと分かっていたことだ。


「分かってるんでしょ、凛斗」

「俺は……」

「けど、まだ時間かかるかな。準備ができるまで待ってあげてよ?」

「ああ……分かった」


 そう約束し、話を切り上げる2人。

 この後、凛斗はメイと共にマイリアやレグルトとも話しつつ、時々ゲーム大会に参加しつつ、久しぶりの平和を楽しんだ。

 そして1時間と少し経った頃、おもむろにマイリアが立ち上がる。


「さて……それでは皆さん、そろそろ参りましょうか」

「マイリア?」

「どうしたの?」

「新型艦のお披露目です。というよりも、リント」

「何だ?」

「その新型艦は貴方達明けの明星へ贈呈します。そのためにここまで持ってきたのですから、来ないという選択肢はありませんね」

「なるほど。けど、まだ他にも仕事が……」

「アレの正体ですよ」

「分かった、行こう」

「うん、行く」


 そう言いつつテントから出ると、そこには日本国防軍でも使っていた保安隊所有4人乗り4輪駆動軽装甲車両、通称ジープが止まっていた。凛斗とメイはマイリアに促される通りにそちらへ乗った。運転手はレグルト、助手席に座るのが凛斗だ。

 また、ジープの後ろにはトラックがあり、残りはそっちに乗るのだろう。というか運転手に促され、12人が順次乗っていた。


「ねえマイリア、どこに行くの?私、知らないけど」

「確かに。新型艦なんて聞いてないぞ」

「極秘でしたし、正式に入港したのは先ほどですからね。しかし、説明は現地の方が良いでしょう。行きますよ、レグルト」

「了解」


 レグルトの運転により、車両は進んでいく。












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