第35話「舞い降りた天女」後編
「あと30分ですね」
「彼らは来るでしょうか。何度も戦火を交えた相手に……」
「信じましょう。未来のため、戦友になれると信じて」
「了解しました」
「殿下、ガブリエルおよびゼラキエルと通信が取れました。5分後に本艦へ着艦予定です」
「では着艦後、新しい礼装に着替えるように伝えてください。会談の護衛に就いてもらいますので」
「了解しました」
西太平洋のど真ん中にたたずむアトラス級航空母艦。その艦橋にマイリアとレグルトの姿があった。どちらも礼装軍服、特にマイリアは皇族専用礼装に身を包んでおり、会談に臨む準備は十分だ。
また、本来であれば戦闘指揮所にいる艦隊司令と艦長もマイリアへの対応で艦橋にいる。しかし、戦闘指揮所とは通信とデータリンクが繋がっているため、指揮に問題は無い。
さらに、ガブリエルとゼラキエルが着艦した約15分後、艦橋へレックスとニーネがやってきた。他の軍人とは異なる、白を基調とした礼装に身を包んで。
「久しぶりですね、ニーネ、レックス」
「久しぶり、マイリア……いえ、皇女殿下」
「以前と同じで構いませんよ。同級生ではありませんか」
「そうそう。だから僕もこんな感じでいるんだけど」
「レグルト、貴方には罰則が必要ですか?」
「ご、ごめん」
「はぁ、ま、そっちの方が良いか。だがマイリア、呼び出すのが遅いぞ」
「申し訳ありません。ですが、早期に呼び出しては計画に支障が出てしまいますので」
「それなら仕方ないな。と、ニーネ」
「えっとマイリア、会談の前に伝えたいことが……」
色々と説明しなければならないことがある。そうレックスとニーネは思い、会談前に艦橋へ通してもらった。
しかしそれは、戦闘指揮所から届いた言葉に遮られる。
『ん?何だ、これは……』
「どうした?報告しろ」
『ソナーにノイズが入っています。見たことない波形……先輩、これは?』
『ん?何だこれ。解析をかけるぞ』
『はい。メインコンピューターに繋ぎます』
「ノイズ?海流の影響か?」
『分かりません。現在解析中です』
『もう間も無く解析は終わります。この反応……なっ、まさか⁉︎』
『潜水艦⁉︎真下、深度80m!急速浮上中!』
「何だと⁉︎」
「緊急警報!艦載機発艦!護衛艦は何をしていた!」
「いえ、必要ありません」
「え?ですが、殿下?」
「彼らが来たのです」
マイリアが見つめた先。そこの海面を割って現れたのは、アトラス級を上回るサイズの超巨大潜水艦だ。
「なんという……」
「シャーク級どころかホエール級より……」
「では、参りましょうか」
「「は!」」
これから行われる会談が未来を決める。それは全ての人が分かっていた。
「伯父貴、やっぱり蒼龍で急速浮上なんてやりすぎだったんじゃないか?」
「こういう時は最初が肝心だ。派手な方が何かと役に立つ」
「派手な方が面白いんだよね、リント君」
「そういう問題か?」
「その通りだ」
「伯父貴……」
深度500mから急速浮上を行い、アトラス級海上空母の真横に飛び出した蒼龍。そこから飛び立った小型連絡機はアトラス級の飛行甲板に降り立った。さらに周囲にはデーモンシリーズの6機が並んでおり、威圧効果も十分かもしれない。
そんな状況で連絡機に乗っているのはパイロットを除けば伯父貴、凛斗、クリスの3人。着艦後もしばらく機内で待機し、相手方の準備が整うまで待った。
5分もすると慌ただしかった飛行甲板の様子が一変し、綺麗に整列した兵士達が見えるようになった。また、艦橋の近くにはマイリアの姿も確認できる。出迎えの準備はできたようだ。
「そろそろか。出るぞ、2人とも」
「「了解」」
伯父貴の服装は日本国防軍の第1種礼装、皇女との会談で使っても何の問題も無い。流石にマイリアの専用礼装とは比べ物にならないが。
しかし、凛斗はパイロットスーツを着ており、ヘルメットもスモークを下ろしている。またクリスも繭の予備のパイロットスーツを着ていて、ほぼ同じ格好だ。礼儀的に少し問題はあるが、作戦では必要だ。
クリスは何故そんなことをするのか疑問に思ったものの、凛斗はマイリア達に対するドッキリということで説得した。そもそも、凛斗とクリスの分の礼装が無いのだが。
「お招きいただき光栄です、皇女殿下。自分は秋山努少将、日本系パルチザン明けの明星のリーダーを務めております」
「ムーゼリア帝国第1皇女、マイリア・レーシア-ムーゼリアです。会談の求めに応じてくださり感謝します」
「いえ、求めに応じるのは当然のことです。ですが自分は一介の軍人に過ぎません。儀礼に疎いこと、お許しください」
「構いません。この場は宮廷ではないのですから。では、レグルト」
「はい、殿下。あちらに会談の用意をしてありますので、ご案内いたします。護衛の方もご同席を」
「は、失礼します」
「では、参りましょう」
会談の会場は艦橋近くの飛行甲板で、装飾が施された長机と椅子が置かれている。ここなら蒼龍からも様子が確認できるため、明けの明星としても都合は悪くない。
とはいえ、マイリアの側も無防備ではない。凛斗が見たところ、SAGAからは見えないように偽装したスナイパーが最低6人以上おり、飛行甲板に降りた時から狙われていた。
しかし、伯父貴と凛斗はそれを気にすることなく会場まで向かい、伯父貴はマイリアと対面する位置に座った。伯父貴の右後ろに凛斗とクリスが立ち、マイリアの後ろにはレグルトが、その左右にレックスとニーネが立っている。
「繰り返しになりますが、会談に応じてくださり感謝します」
「いえ、民のために立たれた皇女殿下の役に立ちたいと思うのは当然のことです。こちらに利があるならばなおさらでしょう」
「そう言っていただけると幸いです。私達の目的にも合いますので」
「利害関係の一致、ということでよろしいですか?」
「ええ。そちらの方がよろしいでしょう?」
「自分もそう思います」
この会談は両者が協力関係を構築できるか否かの分水嶺、机の下で足を蹴り合うような外交戦は不適格だ。まだ利害関係を一致させることでしか共同戦線を築けないとはいえ、互いに信頼するには正面から意見を伝えることが必要だ。
もっとも、ここにいるのは初めての外交に臨む皇女と本職の軍人であり、複雑な外交戦はそもそも実施不可能なのだが。
「先に条件を送りましたが、何か異なる点はお持ちですか?」
「基本的な事項はあれで構いません。しかし問題は、共同戦線を張ることができるか、でしょう。帝国人に対する不審は大きなものがあります」
「それはこちらも同じことですから。パルチザンとの戦いで戦友が戦死し、感情では快く思っていない方もいます。それ故に、まずは利害関係を結ぶべきでしょう。詳細に、双方の利益が大きくなるように」
「同感です」
とはいえ、それが永久にできないというわけでは無いだろう。
良い意味でも、悪い意味でも。
「しかし幸いと言えることは、部隊単位で友好関係を結んでいる帝国人と日本人の方々がいることですね。今は利害関係が主ですが、将来的にはこの友好関係を両国に広げたいものです」
「それが殿下の願いですか?」
「ええ。ですからアキヤマ殿、その面についても協力してくださりませんか?友好関係を構築してほしいとは言いませんが、不本意な対立から再度戦争となることは避けたいのです」
「構いませんよ。戦争を嫌うのはこちらも同じです」
そして、2人は未来のことも考えながら条件を話し合っていく。
「日本を返還していただける、その支援も行うということですが、具体的にどこまで予定されているのでしょうか?」
「全てです。残念ながら、兄である皇太子側に付いている部隊は日本をはじめ地球各所におります。政治的には貴方方パルチザンが主力になりますが、数的主力には私の軍を用いる必要があるでしょう。私達としても、ここで兄の戦力を減らすことができれば最良ですから」
「なるほど」
「もちろん、本土への反攻作戦が開始されるまでは駐屯を続けることになりますし、その後もある程度の防衛戦力として残す必要があるかと思いますが、これまでとは異なる形とします。主力以外はそちらの指揮下に置きましょう」
「では、武装法務隊については?」
「当然ですが、公表します。アレが行った蛮行の証拠を見せた結果、こちらに付いた方々もおりますから。また、民達の心理を方向付けていたのも彼らであると報告を受けています」
「それは我々にとっても好都合です」
どちらも利害関係を優先している。同時に、過剰な要求も譲歩も行わない。必要以上の要求、必要以上の譲歩、どちらも将来的に破綻が目に見えている。
それらは過去の戦争が証明してきたこと。それを学んできたからこそ、この会談はスムーズに進んでいた。
「しかし、私達ばかり持ち出すのはよろしくありませんね。そちらにも譲歩していただかなければ、こちらの反感を抑えられませんから」
「道理です。では、殿下は何をお求めで?」
「最も大きなものですと、本土への反攻作戦において日本系パルチザンからも戦力を供出してほしいですね。もちろん、日本の防衛に支障が無い限り、兵站線を構築できる限りで構いません」
「後顧の憂いでもありますので、構いません。対価としては妥当なものでしょう。しかしこちらには輸送艦がほぼありません。兵站線の構築にはそちらも協力していただかなければならないかと」
「そちらの協力も行いましょう。十全な戦力のためには兵站も必須ですからね。それでは他に……」
「情報関連の協力をも可能です。諜報においては我々にも長けた点があります」
「確かに……私達の手の者では難しい場所もありますから、十分な対価になりそうですね。日本国防軍の諜報能力の高さは私も存じておりますよ」
譲れる部分、譲れない部分、それらを分けながら話し合っていく。
そしていくつもの合意を経て、この会談の目的である日本系パルチザンと皇女派帝国軍の基礎合意を締結することができた。
「概ね、このようなところでしょうか。これ以上の詳細は軍団単位となりそうですね」
「地方ごとに作戦会議の必要があるでしょう。しかし、共同作戦の基本骨子はできました。あとは現場の仕事です」
「そうですね。未来のため、この協力体制を築けたことを神に感謝いたします」
そして、話が区切れたことでようやく出番がやって来た。
「自分も感謝します。しかし、最後まで隠し事というのは悪いことです。皇女殿下、こちらのエースを紹介してもよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろん。そちらの方ですね?」
「はい。彼が明けの明星のエースであり、SAGA部隊隊長でもある……」
伯父貴の合図を受け、凛斗はヘルメットを取って顔を見せる。
「剣崎凛斗大佐相当士官です」
「えぇ⁉︎」
「あー……」
「遅かったな……」
そんな風に驚くレグルト、準備に手間取り話ができなかったことを後悔するレックスとニーネ。
そして、マイリアは何も言わずに立ち上がった。
「マ、マイリア?」
彼女はレグルトの言葉に反応せず、凛斗の前に立つ。
そして何も言わない凛斗の頬に手を当て、抓った。
「本物、ですね。特殊メイクではなく……」
それも何度も。さらに自分の頬も抓る。
「痛い……ということは、夢ではありませんね。では何故……」
さらに頬を揉み、オモチャのように弄ぶ。想定外すぎてマイリアの思考回路がおかしくなったようだ。
しかし、いつまでもこんな状況に甘んじる凛斗ではない。
「しょろそろひゃめろ、はなしぇない」
「あっ……し、失礼しました」
その言葉で自分がやっていることに気付いたのか、マイリアは離れた。若干頬が赤くなっていることは凛斗にしか分からなかったのが幸いか。
そして、マイリアは正面から凛斗へ問いかける。もっとも、追求すべき相手もいるのだが。
「改めて聞きます。貴方は本物の凛斗ですか?」
「ああ、マイリアも良く知ってる男だ」
「何故そこにいるかという疑問には答えてくれるのですね」
「もちろん。ただ、そっちの2人も知ってるぞ。おい、何で伝えてない」
「無茶を言うな。俺達もさっき来たばかりだぞ」
「ずっとハワイで待たされて、説明する前にそっちの潜水艦が来たんだよね」
「なるほど……」
そんな言葉を聞き、追求は止めた。凛斗に関係ない理由とはいえ、流石にこれは仕方ないだろう。
とはいえ、凛斗が正体を明かすタイミングを最後まで逃していたことも事実だ。伯父貴にそのタイミングを任せていただけでなく、伯父貴とマイリアが予想以上にスムーズに話し続けてしまったため、言葉をかける隙が無かったというのも理由の1つだった。
なので、その分の時間はきっちり貰う。
「伯父貴、時間を貰っても良いよな?」
「ああ。殿下に説明しなければ、協力体制は築けないだろう。好きなだけやれ」
「了解。っとその前に、もう良いぞ」
「はーい」
ただしその前にもう1人、隣にいたクリスもヘルメットを取った。
「え、あ……」
「久しぶり、マイリアちゃん」
「クリス、ですか……?」
「うん。元気だった?」
「えぇ、えぇ……!」
それを見たマイリアはまたアレな状態になったのか、フラフラとクリスの方へ歩き、抱きしめた。
さらに感極まり涙腺が決壊したようで、大量の涙も流している。
「良かった、良かったですね……」
「うん、ボクは大丈夫だから」
「良かった、本当に……」
流石にこれに介入する蛮勇はないため、凛斗はレグルトに近寄り話しかけた。
「おい、アレ大丈夫なのか?」
「あー……マイリアって、時々涙脆いから。映画とか観るとこんな感じなんだよ。特に、リントが無事だって目で見て確認したから」
「俺のせいか?」
「当然だよ?僕達もリントが生きてるかもしれない、って思ってたけど、クリスと一緒に捕まってるって考えてたんだから。色々と驚きすぎて、皇女の仮面が完全に壊れた感じかな、アレは。でも、どうしてここにいるのか、説明してくれるよね?」
「もちろん、説明はする。ただ……」
「ただ?」
「意外と面倒な性格してるな、マイリアって」
「それは僕も思うよ」
「俺と話してた時のも演技なのか?」
「そうじゃなくて、これを見られるのを恥ずかしがってるから。映画だって1人だけか、メイとしか観ないんだからね?」
「お前は?」
「少し趣味が合わなくて」
マイリアが反面教師のような形になったためか、レグルトは意外と冷静だった。というか、いつの間にか同窓会か何かのようになっている。
また、それに加えて会談が終わったこともあり、スナイパーも気が抜けたようだ。殺意が完全に消失していた。
そして約5分後。ようやくマイリアの発作が収まり、彼女は席に戻る。
「失礼しました。見苦しい姿を……」
「いえ、構いません。年相応の姿も見られて安心しました」
「伯父貴、変なこと言って会談を破綻させるなよ」
「そういうお前はどうなる?」
「俺は友人だからな」
もっとも、皇女派というのは半分程度マイリアのファンクラブとも言えるため、このような姿を晒しても問題は無い。むしろ忠誠心が上がる面々もいるほどだ。
それはマイリアも理解しており、ある程度利用している。不意に醜態を晒しても後で取り繕える程度には。
「ではリント、聞かせてもらえますか?」
「ああ」
場が整えられたため、凛斗は自分の経緯を語った。
「そうですか。スパイでしたか……」
「ああ。こんなことになるなら、マイリアについて調べておいた方が良かったな」
「いえ、むしろ私の方が伝えるべきでした。スパイとは知りませんでしたが、春の段階で伝えていればよりスムーズにできたかもしれません」
「けど今さらだ。過ぎたことを悔やんでも仕方ない」
「ええ、分かっています」
凛斗が言う通り、全ては過ぎたことだ。後悔は役に立つが、それに囚われては無意味になる。適度なバランスを考えれば、これが最も良い対応だった。
そして凛斗がいるのであればと、会談の間は悩んでいた依頼についてマイリアは語る。
「アキヤマ殿。先ほどの締結内容とは関係無く、1つ依頼したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「伺いましょう。まずはそれからです」
「そうですね。私は帝都にいる仲間を、そして同志になってくださるであろう方々を救いたいのです。その中には級友もおります。本来であれば我々がすべきことであり、お頼みすることではありませんが、私達の戦力ではとても……」
「そうですか。ですがそうなると即答は……」
伯父貴にとって、これは熟慮しなければならないことだ。皇女派では実行できないとなると、非常に難しい依頼である可能性が高いのだから。
だが、もう1人にとっては違う。
「俺が行く」
「っ⁉︎」
「リント、やはり行ってくれるのですか?」
「ああ、俺が行かないと始まらないだろ?俺のためにも、あいつのためにも」
「凛斗、お前……」
「ごめん、伯父貴。でも俺は……もう二度と、大切なものを失いたくないんだ」
その言葉で全てを理解した伯父貴は、認めることにした。凛斗はこうなると頑ななことを知っているから。
「……分かった。お前が好きなようにやれ」
「ありがとう。けどやっぱり、伯父貴もメガネさんから聞いてた?」
「その通りだ。昨日だがな。しかし機体はどうする?コクロウでは力不足だぞ?」
「いや、別の機体を使う。ちょうど乗ってるやつがあるだろ?」
「……まさか」
「そのまさかだ」
「危険すぎる。まだ完成していないだろう?」
「いいや。もう完成してる」
「だが……繭か?」
「向こうで回収すれば良い」
「は?」
流石に、このセリフは予想外だったようだが。
「何をおっしゃっているのか分かりませんが……リント、貴方は……」
「無理をしてでも連れ帰る。当然だろ?」
「貴方達にとってはそうかもしれませんが……いえ、それが良いのでしょうね」
「はぁ……それも許可しよう。満星にも話を通しておく」
「ありがと、伯父貴」
「だが無理はするな。ここでお前を喪うのは、軍事的にも感情的にも痛い」
「当然。こんなところで死ぬつもりなんてない」
もちろん、凛斗の覚悟は本物だ。死ぬ可能性が高いことすら考慮し、成功確率を高めるためなら何でもするつもりでいる。
そしてそれを聞いて、隣にいる人間も立候補した。
「じゃあ、ボクもついてくね」
「クリス、良いのか?」
「うん。帝都に行くなら案内が必要だけど……それ以上に友達を助けるなんてこと、やらないわけにはいかないじゃん」
「そうだな」
さらに、ヘルメットに付いているスピーカーからも声が響いた。どうやら、指向性マイクで音を拾っていたらしい。
『なら、わたしも行く』
「繭?」
「え、マユちゃん?」
『友達だけ死地に送るなんて卑怯なこと、わたしにはできないから。それに……ううん、何でもない』
『それは俺らも同じだな』
『行けるなら全員で行きたいね。リントには後で説明してもらうけど』
『理由については詳しく聞きたいですね』
「お前らな……」
大切に思っているのは自分だけではないということを、凛斗は再び思い出す。仲間が、戦友が、共にいるということを。
そんな彼らの会話を聞き、流石の伯父貴も諦める。
「はぁ……殿下、宇宙へは何機まで送ることができますか?」
「そうですね……リントの機体の大きさはどれくらいなのですか?」
「だいたい17mだな」
「大きいのですね。それならば、残りは小型の機体が1機といったところでしょうか。隠すためにもコンテナを使いますので」
「それだとマモンだな」
「聡、頼めるか?」
『は、はい!やります!!』
こうして、4人で作戦を行うことが決まった。実行まで多少の猶予はあるが、死ぬ可能性が下がるわけではない。
それも全員覚悟の上だ。
「さて、自分は艦に戻りますが、凛斗を残します。凛斗、お前は作戦を詳細まで詰めろ」
「了解。繭と聡も呼んで良いか?」
「当然だ。少人数作戦なら全員に周知しておけ」
「分かってる。聞こえてるな、2人とも。降りてこっちに来い」
『了解』
『はい、分かりました』
そう言い、伯父貴は連絡機を使って蒼龍へ戻っていった。代わりに、繭と聡が機体から降りる。
だがその2人が来る前に、少し言葉が交わされた。
「リント、改めて謝罪させてください。伝えることが遅くなってしまい申し訳ありません。私はしなくて良い戦いをいくつもさせてしまったでしょう。それにメイとも……」
「いや、多分……これで良かったと思う」
「は?」
「リント?何言って……」
「俺達は今まで全力で喧嘩したことが無かったんだ。だから、メイの本音を知れたのは良かったと思う。俺も、久しぶりに本音を自覚できたからな……できれば、戦場じゃない方が良かったけど」
「そうですか……」
「複雑だよな、俺達は」
「そのようですね」
もっとも、それも今さらなことだろう。凛斗とメイが単純であれば、こんなことにはなっていない。
「ところでリント?」
「どうした?」
「もしメイに断られたらどうしますか?」
「え、あー、その時は……簀巻きにして持ち帰ってくるか」
「いやいや、それは……」
レグルトが苦言を呈しても、凛斗の意見は変わらない。
「俺はダメな男だ。あいつの幸せを願う資格なんて無いかもしれない。だけど、メイがあんなところにいて良いわけがない。それだけは分かる」
「だから、無理矢理にでも連れてくると?」
「ああ。何があろうと、どう思われようと、俺はメイが好きなんだ。あいつを幸せにしたい気持ちは変わらない。死ぬまでな」
「ふふ、リントらしいですね」
「リント、お前は……」
「殴るか?レックス。俺だって、あんなことしてタダで許されるなんて思ってない」
覚悟も、想いも、何も変わらない。変わりようがない。
それを聞き、理解し、レックスは選択した。許すことを。
「いや、やめておく」
「そうなのか?どうした?」
「負けてるからだ。男として」
その後、繭と聡を加えて作戦会議を行い、行程まで決める。
「任せますよ、リント」
「ああ、任せとけ」
成功するか失敗するか、今の彼らには分からない。
だが、失敗する気はさらさらない。それが全員の共通事項だった。
・ホエール級大型潜水艦
全長165m、全幅20.3m、全高18.7m
帝国軍の主力大型潜水艦で、SAGAを数機搭載することも可能。
武装
___魚雷発射管×8
___球形メーザー砲塔×8
___小型魚雷発射管×24
SAGA用装置
__発艦ハッチ×1
・シャーク級小型潜水艦
全長87m、全幅9.8m、全高11.2m
帝国軍の主力小型潜水艦。
武装
___魚雷発射管×4
___小型魚雷発射管×16




