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少年少女の人型機甲戦闘機戦記 - Strong Armys of GigAntes  作者: ニコライ
第1部

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第33話「デスティニー」後編

 



「美味しかった!」

「それは良かった」


 メイと同様に日本製レーションの洗礼を受けたクリスは、笑顔でそう言った。

 時間切れでレーションを貰ってくることしかできなかった凛斗だが、結果オーライだったと、1人ほくそ笑んでいた。


「リント君、何でこんなに美味しいの?」

「日本人の食へのこだわりは世界一だからな。ついでに魔改造も」

SAGA(サーガ)も凄いよね。デーモンシリーズ、オリジナルの設計図より性能高いんだもん。何で?」

「俺が聞く側だろ。というか、それは機密だ」

「あ、やっぱり?」

「当然」


 この食事に満足してくれるなら、ストレスはある程度軽減されそうだ。

 クリスの捕虜生活がどれだけ続くか、凛斗には分からないため、彼女の健康にはある程度気をつけるつもりだった。檻から出すことも伯父貴と相談する必要があるだろう。

 そんなことを考えつつも、凛斗は容器を片付けてから尋問に戻る。


「次の質問は、そうだな……エンジェルシリーズの建造、遅かったよな。何があった?」

「何がって?」

「帝国軍なら6機全部作るなんて簡単だろ?何で俺達と同じペースだったんだ?」

「少しは知ってるけど……リント君、分かってて言ってるよね?」

「予想だけならな。やっぱりルシファーを奪ったからか?」

「多分。メイちゃんや艦長から聞いただけだけど、合ってると思うよ。作ってくれたのが1ヶ所だけだったもん」


 建造場所こそ機密だが、建造スピードについては逆算が簡単なため機密指定されていない。理由も予想はしやすく、バレているならなおさらだ。

 なのでクリスは隠さず話した。機密の範囲だけは隠しつつ。


「それについて誰か何か言ってたか?トランとか、文句言いそうだろ?」

「うーん、ボクは聞いてないかな。トラン君は最初に貰ってたし、無いと思うよ」

「最後は……アクトとニーネか?」

「うん」

「あの2人なら文句は言わなさそうだな」


 そんなわけでこれの重要度は低く、次の話題に移る。


「次、ウリエルの整備で気をつけることは?」

「え、機密だよ?」

「鹵獲したんだから機密も何も無いだろ。どうせバレるんだから時間の問題だ」

「でも、機密だもん。それにボクは整備しないから、細かいところは知らないし……」

「あー、確かに。お前らはそうだったな」

「リント君は違うの?」

「知識ならある程度はある。経験は少ないけど、昔は雑用に駆り出されたりしたな。ただ、今はそんなに無い」

「そうなんだ。凄いね」

「基礎だけなら意外と簡単だぞ。勉強してみたらどうだ?」

「うん」


 経験は少ないというものの、的確な応急処置ができたからこそ、無人島から離脱することができたのだ。もし出来なければ凛斗の方が捕虜に……いや、数日で処刑されていただろう。

 しかし……


「ただ、その……いつになるかな?」

「どうだろうな……とりあえず、年単位になりそうだったらどこかのセーフハウスか何かに移すよう交渉する。そっちの方が良いなら言ってくれ」


 問題はこれだ。正規軍同士の戦闘なら捕虜交換はまだしやすいが、今は正規軍対パルチザン。外交ルートすら無い状態だ。

 今後どうなるか、凛斗でも分からない。そもそも、庇い続けられる保証すら無い。

 だが、可能な限り守り続けるつもりだ。命だけでなく、健康や精神面においても。それができる立場になったのだから。


「リント君は?」

「俺は戦闘員、というかSAGA(サーガ)部隊の隊長だ。移れるわけないだろ」

「そっか。でも隊長なんて凄いね。階級は?」

「一応、大佐相当だな。蒼龍の中だと3番目に偉い」

「わ、凄い!」

「凄いだろ。もっと褒めろ」


 そしてこんな風に、くだらない話で笑い合える関係が、どうでもいい話を交わせる相手がどれだけ貴重なのか。それを今回のことで思い知ったから。


「さて、冗談はこれくらいにして」

「何かある?」

「特に無いな。だいたい聞いたし」

「じゃあ、リント君。ボクからも聞いていい?」

「ん?まあ、良いぞ」

「リント君って何で戦うの?」

「何で……って?」

「だって普通、スパイなんてやらないよ。特にリント君は危険だったし……戦う理由、あるんだよね?」

「もちろん、理由ならあるけど……いや、クリスになら話してもいいか」


 信頼でき、理解してもらえる相手だ。話すことへの支障は無い。

 なので少しだけ覚悟を決め、凛斗は口を開く。


「俺の家族が全員殺された、ってことは聞いたか?」

「うん。メイちゃんに言ったんだよね?」

「ああ。流れ弾、ってことなんだろうな。けど、あいつらはワザとやったんだ。武装法務隊、帝国軍と通じていた奴ら……そんな連中に、親も友達も弟も妹も、全員殺された」

「リント君……」

「だから、俺は守るために戦ってきた。死なせないために、殺させないために戦った。どんな相手でも、帝国人でも日本人でも、敵は全員殺してきた」


 そのため、凛斗は区別無く、容赦無く、徹底的に殺し尽くしてきた。自己陶酔するわけでなく、壊れるわけでもなく、ひたすら現実と向き合い、殺し続けた。

 命乞いを無視したことなど数えきれず、絶望に染めた相手は無数に存在する。積もった恨みは相当なものだろう。


「数えたこと無いけど、多分1万人以上殺したと思う。虐殺者だよな、俺は。行く先なんて地獄しかない、そんな……」


 そんな殺戮者だからこそ、ぬるま湯に浸かるような3年間が楽しかった。失ってしまった平穏に、仮初でも加われたことが嬉しかった。そして、自分から壊してしまうことが辛かった。

 凛斗はそういう男で、特にメイについては強く想っている。だからその流れで、凛斗は悩んでいたことを告げた。


「なあ、クリス……敵って、何なんだろうな」

「え?」


 そんなセリフを聞き、クリスは言葉に詰まる。予想していないことを言われたので当然だ。

 しかしそれに構わず、凛斗は話し続けた。


「俺はずっと、守りたい誰かのために戦ってきた。言った通りだし、それで良いってずっと思ってた」


 それは永遠に変わらないと考えてきたこと。半年前もそれは同じで、違えることはないと思っていた。

 しかし、この数ヶ月で全ては変わってしまった。


「けど今は、メイのことを敵って……何なんだよ、何でだよ。俺は……!」

「リント君……」

「俺は、守りたいだけなのに、失いたくないだけなのに……どうしてこんな……」

「じゃあさ、リント君が好きな感じでやれば良いんじゃないかな?」

「……俺の?」


 だがクリスのそんな返答を聞き、今度は凛斗が言葉に詰まる。


「うん。敵だとか、戦わなきゃいけないとか、そんなの考えなくていいんだよ。リント君がやりたいようにやれば良い、思うようにすれば良い。だよね?」

「クリス、お前……」

「だってボク、リント君と会えて良かったもん。それに、戦いたくないもん。ボクが負けちゃう、ってだけじゃないよ」


 それはクリスの紛れもない本心で、心の底から想う願い。彼女としても、凛斗と戦うのは心苦しかった。

 返答が無かったため、クリスはさらに続ける。


「リント君とお喋りするのは面白いし、色々教えてくれるし、笑ってくれるから。だから3年間、ずっと楽しかったもん。ボクにとってリント君は大切な人だよ」

「そうか、そうだよな……」

「だから、ね」

「ありがとう、クリス。おかげで助かった」

「良いよ。だって友達だもん」

「ああ。俺にとっても、クリスは大切な友達だ」


 そしてそれを、凛斗も受け入れた。事実だからだ。

 しかしそう言われると、凛斗の中で罪悪感が増してくる。


「ただ……ごめんな、クリス」

「リント君?」

「帝国軍の方だと多分、死んだことになってると思う。家族の人とか……」

「家族?いないよ?」

「え?」

「だってボク、孤児院育ちだもん」


 だが、クリスはあっけらかんと言った。


「孤児院?」

「うん。それも酷い所。補助金は先生達が自分のために使っちゃうし、ご飯は少ないし……名前もくじ引きで決めちゃう適当な所だったんだ」

「酷いな」

「だからかな。入ってた子達もね、荒れてたんだ。小さい子はイジメられて、死んじゃった子もいたんだ」


 それが普通かのように……いや、実際彼女にはそれが普通だった。

 そして、それを克服できたからこそ、彼女はここにいられるのだ。


「クリスもか?」

「ううん。ボクは勉強ができたから、扱いはマシな方だったよ。ボクが孤児院で怪我して、不正が見つかるのが嫌だったからかもしれないけど。でも代わりに、1人ぼっちになっちゃって、寂しくて……」

「辛かったか?」

「うん。飛び級したのも、早くあそこから離れたかったからなんだ。寮に入れば、もう関わらなくていいから。地球に来たのも、月が嫌だったからだし……逃げてきたんだ、ボクは」

「そうか……」

「でもね」


 だからクリスは告げる。感謝を。


「メイちゃんとリント君に助けられたんだよ。ありがとう」

「え?」

「ボク、悪いことしか考えてなかったんだ。嫌だ、逃げ出したい、そんなことしか頭になくて、それに縛られてて……ずっと、苦しかった」

「クリス……」

「そんなボクに、みんなが居場所をくれたんだもん。今度はボクが助けたい、って思うのは当然でしょ?」

「ああ、そうだな」


 しかし、これでは凛斗の負債の方が大きそうだ。自然と解決した悩みと、考え続けても答えが出ない悩みでは相談相手への負荷が違いすぎると、そう思っているから。

 もちろん、そんなことは(おくび)にも出さないが。


「じゃあ最初に、尋問に協力してくれるか?」

「それとこれとは話が別だよ」

「分かってる」


 そしてクリスも、戯れには付き合わないが。


「でも、良かったのか?俺にそんなこと話して」

「うん、大丈夫。だってリント君が最後だもん」

「え、そうなのか?」

「うん。ボクが孤児院出身だってことはもう言ったもん」

「あいつらに話してない可能性の方が低いから、確かに」

「でも、詳しく言ったのはリント君が初めてだよ。嬉しい?」

「ちょっ……」


 そんなセリフを曇りのない笑顔と共に向けられ、凛斗は言葉に詰まった。


「はぁ……メイがいなかったらクリスに惚れてそうだな、これ」

「あれ?どうする?好きになっちゃった?」

「メイがいなかったら、って言っただろ。話を聞け」

「ボクは好きだよ」

「はっ……?」

「友達としてね」

「お前な……」


 しかし、心移りはしない。凛斗はそういう男だ。

 クリスもそれを分かっているため、こうやって遊ぶ。はっちゃけ過ぎとも思うが。


「ねえ、意識した?ねえ」

「無い。絶対に無い」


 とはいえ、相談どころかクリスの過去まで聞いてしまった凛斗だが、数ヶ月前と変わらないクリスの笑顔に安心し、また雑談に戻る。

 そしてしばらくしてから部屋を出て、呟いた。


「俺の好きに、か……」


 そう決めた彼の心の中は、まだ誰も知らない。
















「どうだ、直せそうか?」

「無理だなぁ、もう。ここまで壊れたら直せねぇ」

「だが、あいつの機体はこれしかないだろう。これからどうする?」

「新型を作る、ってのはどうだ?」

「確かにその方が良いだろう。しかし、あいつが満足できるような新型機を作る余力は……」

「そこで例の試験機よ。アレなら凛斗の奴でも満足するはずだぞ」

「なるほど……都合が良さそうだな。許可しよう」


 ボロボロになったルシファーの前で伯父貴と親爺さんが話し合っていた。

 そして、ちょうどそこへ凛斗が歩いてくる。


「伯父貴、親爺さん」

「凛斗か、ちょうど良いな」

「尋問はどうだ?」

「普通の質問なら問題なく答えてくれる。彼女は日本人を嫌ってるわけじゃないから、話しやすいよ。まあ、流石に機密は話さないだろうけど」

「そうか。分かった」

「それで親爺さん、ルシファーは?直せそう?」

「無理だな、こいつは。完全にぶっ壊れてらぁ」

「やっぱり……」


 その言葉を聞き、落ち込む凛斗。元からダメだろうと思っていたためダメージは少ないが、それでも愛機に乗れなくなることは辛い。

 しかし、いやだからこそ、最期の様子を聞きたかった。


「ちなみに、具体的には?」

「腹部への傷でジェネレーターの制御装置にダメージが入っちまってたみてえだな。そこへエネルギーが逆流したもんで、ジェネレーターが完全にイカれた。よく小爆発で済んだもんだ。中身も全てボロボロになっちまったから、もう解体するしかねぇぞ」

「そうか……分かった。じゃあ親爺さん、時間がある時に解体はお願い。工廠に着いてからになるか?」

「だろうなぁ」

「分かった。で……俺は機体をどうするか……」

「凛斗、ウリエルはどうだ?」

「ウリエルを?」


 この伯父貴の提案が唐突すぎて一瞬理解できなかったものの、凛斗はすぐに返答する。

 そして、自分達にとって都合の良いように答えを変えた。


「あー、機体が違いすぎるせいで操縦感覚が違いそうだからちょっと……けど、使えるか。親爺さん、ウリエルの修理も頼めるか?プログラムはそのままで良いから」

「変えねぇのか?」

「最近帝国式のやつばっかりに乗ってるから、そっちの方が楽なんだよ。まあ、少し練習すれば戻せるけど」

「OSの問題ねぇ……新型にはどっちも載せちまうか」

「新型?ああ、前に言ってたやつか。でもそんなすぐに?」


 ただし、この新型という言葉には上手く答えることができなかった。

 こちらについては全く心当たりが無いため、仕方ないが。


「アレは新型ジェネレーターと新型フレームの技術試験機なんでな。その2つならもう出来てんだよ。あとは装甲とスラスターと武装を載せるだけだ」

「いや、そっちも重要だろ。で、どれくらいかかる?」

「1ヶ月か2ヶ月ってとこだな。その後の習熟訓練は入れてねぇぞ」

「分かってる。でも、出来てから1ヶ月以内に慣れないと……」


 悠長にしていられる時間は彼らには無い。代わりの機体があるとしても、本調子でなければ戦力としての意味が薄くなる。

 そのため、一刻も早い戦力化が望まれていた。


「だろうなぁ。それより凛斗、武装の要望があるなら書いとけ。ある程度なら叶えれるぞ」

「良いのか?」

「当然じゃねぇか。凛斗、お前のための機体なんだぞ」

「じゃあ、駆動部やOSについては?」

「そっちも希望は受け付けるぞ。ただし、仕様書は読んどけよ」

「もちろん。伯父貴、良いか?」

「ああ、お前が好きなようにやれ。遠慮しなくていい」

「了解」


 そしてだからこそ、パイロットに合わせた建造が行われる。技術試験機の流用とはいえ、事実上の専用機だ。興奮しないわけがない。

 他にも色々と考えなければならない凛斗には負担だが、それでもやる気だった。しかし……


「それと凛斗」

「ん?伯父貴?」

「無理はするな。彼女の身の安全は保証する」

「あ……やっぱり気付いた?」

「当然だ。お前は1人ではない」

「だな。ありがと、伯父貴」


 この言葉のおかげで、凛斗の肩の荷は一気に軽くなった。そこに感謝しつつ……少し悪い顔をする。


「好きにやっていいんだよな。だったら……」


 離れていく伯父貴を見送りながらそう呟いた凛斗は、部屋に戻る間も色々と考えていた。
















「あ、リント君……じゃない?」


 一方その頃、クリスの方には来客があった。もちろん凛斗ではない。繭だ。

 繭には檻へのアクセス権は無いものの、この部屋へ入ることはできる。そして、今の彼女にはそれで十分だった。


「ねえキミ、どうしたの?あ、もしかして服……えっ?」


 その問いに答えることなく、繭はクリスへ拳銃を突きつける。


「えっと……ボク、何かしちゃったかな?」

「ううん、何も」

「じゃあ、どうして?」

「誰か1人が悪いなんて思ってない……だけど、敵を許すことだってできないから」

「あ、うん、リント君から聞いてたけど、こんな感じなんだ……」


 繭の気持ちは真っ直ぐで、だからこそ理性では抑えきれないもの。クリスも話は聞いており、頭では理解できた。

 拳銃を突きつけられており、下手に動けないという状況では、理解したところでどうしようもない。そうとも思ったが。


「けど、ボクのことを分かろうってしてくれないの?ボクは……」

「笑って殺す人達の気持ちなんて分かりたくもない!」

「ボクだって分からないよ。そんなことしたことないし、ボクは生きるために軍に入っただけの弱者だから……」

「関係ない!」


 そんな考えのクリスとは裏腹に、繭は1人でヒートアップした。というよりも、無抵抗の人間に銃を向けた経験がなく、感情ばかりが先行した結果だ。

 彼女は感情の(たかぶ)りを制御できず、泣きながら叫ぶ。


「パパとママを殺したのに!何も悪いことなんてしてなかったのに!なのに、殺して、笑って……だから!」


 涙を流し、何度も叫ぶ繭。彼女はその感情に耐えきれず、構えていた拳銃を下ろしてしまう。

 そんな相手に、クリスはしばらく何も言えなかった。


「だから、わたしは……だから……」

「そんなに泣かないで……強がらなくて良いんだよ。泣いたって、良いんだよ。大丈夫だから」


 しかし、見捨てることはできない。

 同じだからだ。繭は、クリス自身と。


「でも、わたしは……凛斗みたいに強くない、から……強がらないと、凛斗と一緒にいれないから……!」

「ううん、リント君は強くないよ」

「……え?」


 だから、捕らえている枷を1つ外す。今苦しくても、繭が次を歩むために。

 それはクリスが歩いてきた道だから。


「だって、ずっと1つのことに囚われちゃってるんだもん。隠してるだけで、本当は弱いんだよ」

「それって……」

「キミも、多分気づいてるよね?」

「それは……うん」


 強がり、痩せ我慢、それは繭を縛り付ける鎖。

 どんな苦労をしていたかなど、クリスは知らない。しかし、それに縋り続けるのがダメなことは知っている。

 だからクリスはそれを外す。彼女のために。


「リント君でもそうなんだもん。だから、キミが泣いたって良いんだよ」

「あ、あ……!」


 その結果、繭は泣いた。8年前と同じかそれ以上に泣いた。敵と言ったクリスに縋り付き、泣き叫んだ。

 クリスはそれを否定することなく、檻から手を伸ばし、頭を撫でる。そして少し時間が経ち、繭が落ち着いた頃、クリスはもう一度話しかけた。


「リント君、他にもこんな良い友達がいたんだね……そうだ。ねぇ、ボクと友達になってよ」

「え……?」

「良いでしょ?ボクだって暇なんだもん」

「何で帝国人なんかと……!」

「じゃあ、リント君はどうなるの?」

「え、あ、それは……」

「だから、良いでしょ?もう1人くらい」

「それも……そう、かな。うん……じゃあ、よろしく」

「うん、よろしく。聞いてたと思うけど、ボクはクリスティーナ・ハイディスタン。クリスって呼んでね」

「わたしは……富江繭」

「じゃあトミちゃんだ」

「なんでそっち⁉︎富江は苗字!」

「じゃあ、マユちゃん?」

「まあ、そうかな……」

「そっか。あ、もしかしてSAGA(サーガ)に乗ってたりする?」

「うん。ベルフェゴールに……」

「あれマユちゃんだったの⁉︎凄いね!」

「そんなに凄くなんて……それにクリスだって同じような年じゃないの?」

「ボク?15歳だよ」

「あ、わたしも」

「そうなんだ!」


 多少の(わだかま)りは繭の中に残っている。それは彼女が8年間で溜め込んだものであり、簡単に消えたりはしない。

 しかし、それは些細なことだ。クリスのおかげで、繭も未来を見れるようになった。今はそれで十分だ。


「ねえ、繭ちゃん」

「なに?」

「リント君の話、聞きたくない?3年分」

「今すぐ教えて」


 なお、繭が買収されるのは非常に早かった。












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