第32話「決戦」前編
『ハァァァ!』
「やぁぁぁ!」
白と黒。2つの機影が高速で移動し、ビームが飛び交い、交差しては閃光が弾ける。
「こんのぉぉ!」
『くたばれ!』
クルセイダーはいつものように受け流され、反撃のビームサーベルやビームボーゲンは避けられる。
しかし、普段とは大きく異なる部分もある。
「こんなのっ!」
『甘い!』
ミカエルはビームボーゲンをショルダーシールドで防ぎ、クルセイダーで斬り裂き、ビームガトリングで撃ち撃ち返す。ルシファーはそれを避け、避けられないコースにあるものはそれを抜けるものは手持ち式ビームソードで斬り払った。
普通ならやれないような高等技能を披露している2人だが、今の2人の頭にそんなことは入っていない。
あるのは、相手を討ち果たそうとする戦意のみ。
『はっ!その程度で俺に勝つつもりか?』
「リントこそ、いつもと同じで勝てるって思ったの?」
『黙ってろ!』
大刀型クルセイダーを左手の手持ち式ビームソードで逸らした後、ルシファーは右手の手持ち式ビームソードで斬りかかる。
ミカエルはクルセイダーを操り、盾代わりにすることで防いだ。鍔迫り合いをするような形だ。
『俺はな、未来が欲しいだけだ。邪魔をするなら……!』
「でも、効かないよ!」
ルシファーは左手の手持ち式ビームソードも鍔迫り合いに加えてまで押しきろうとした。
しかし、プラズマスラスターのあるミカエルの方がパワーは高い。出力差で徐々に押し切られようとしていた。
『ぐっ……』
「ヤァァァ!」
そのため、ルシファーはビームソードを弾く形でクルセイダーから逃れ、ビームボーゲンを放つ。だがミカエルは意に介していないかのように容易く避けると、攻撃を継続する。
ルシファーはもう一度振るわれたクルセイダーを盾で受け流したが、クルセイダーがある分ミカエルの方が有利だった。
『ちっ、やっぱりこの距離は不利だな……それにまだ遅い……!』
「逃がさない!」
そう凛斗が言うと、ルシファーはメインスラスターを使って一気に後退する。
しかし、それは逃走を意味しない。逆だ。
『誰が逃げるか!』
「えっ、正面から⁉︎」
プラズマスラスターも使って追撃するミカエル。
ルシファーはそれに正対すると、今度は加速を逆向き、それも最大出力に変えた。
『チキンレースでもやるか?メイ!』
「もちろん!」
そして互いに高速で接近する中、ミカエルはクルセイダーを上段に構え、正面から振り下ろす。
それに対抗し、ルシファーは右手の手持ち式ビームソードを横に振り抜いた。
「ヤァァァア!」
『斬り裂けぇ!』
クルセイダーとビームソードが正面から衝突し……
「そんな⁉︎」
『ちっ!』
クルセイダーは鍔のあたりで切断され、刃の部分はルシファーの左肩に突き刺さる。
『腕は……ダメか』
「斬られるなんて……」
『上手くいったって思ったんだけどな』
「やっぱり強いね、リント」
ルシファーは右腕の手持ち式ビームソードを一時収納すると、突き刺さったクルセイダーの刃を引き抜く。
同時に、ミカエルは柄だけになったクルセイダーを捨てた。
「左腕、使えなくなったんだね。まだやるの?」
『はっ、ちょうど良いハンデだ。クルセイダー無しで、お前はどこまでやれる?』
「言うね、リント」
『当然だろ』
ルシファーの左腕はメインクラスのエネルギーケーブルが損傷したようで、ビームソード、ビームボーゲン、サブスラスターは完全に停止した。駆動系はまだ生きているため軽く動かすくらいはできるが、戦闘には使えないだろう。
しかし、右腕は無事だ。戦闘に問題は無い。ビームソードを2つ構えるミカエル相手であろうと、止める理由は無い。
『だからなぁ!』
「あうっ⁉︎」
確かに、ルシファーは高速射撃戦向けの機体だ。それは間違いない。
しかし、各種改造の結果、建造当初を大幅に上回る格闘戦能力を獲得していた。そして、凛斗の格闘戦能力は並みのエースより高い。
例え片腕を失っても、負ける道理は無かった。
『本気で落とすぞ、メイ。死にたくなかった全力で抗え』
「こ、の……!」
再度正面から突っ込んできたルシファーに対し、ミカエルは両手のビームソードを交差させて斬撃を防ぐ。
そしてルシファーはメインスラスターや重力などを全て活用し、ミカエルとの互角の鍔迫り合いに持ち込んだ。
『なあ、そのままで良いのか?』
「あ、しまっ⁉︎」
さらにルシファーは目の前にいるミカエルへ向け、胸部からビームボーゲンを発射する。
ミカエルは咄嗟に行った急制動で大半を避けるも、1発が左膝に当たり、関節の動きが悪くなった。
「リント!」
『はっ!その程度か!』
「そんなの、って、きゃあ⁉︎」
『ほらほら、逃げろ逃げろ!』
鍔迫り合いが始まった瞬間、凛斗はビームボーゲンの補正設定を変え、大雑把な面制圧を行うように変更していた。
その結果、精密射撃はできなくなったが、回避も難しくなった。狙いがピンポイントで無い分、小さなフェイント程度では惑わせず、ミカエルの回避行動は大きなものとなる。
「このっ!」
『だから甘い!』
「ああっ⁉︎」
そして、それは隙だ。
ミカエルが回避した瞬間に突撃したルシファーの一閃。それはどうにか防いだミカエルだが、返す刀により左肩のショルダーシールドが斬り飛ばされた。
『どうした?その程度か?』
「ぅぅ……何か遅いし……でも、私だって!」
だが、ミカエルも負けてはいない。ビームボーゲンをビームソードで斬り払うとプラズマスラスター全開で急速接近、斬撃を放つ。
左腕の一閃は盾に防がれたが、本命は右。そしてこちらの盾は動かないためルシファーは避ける選択肢しかなく、掠めたビームソードが胸部のビームボーゲンを3基破壊した。
さらに至近距離から放たれたビームガトリングは何発か当たり、右肩付近のビームボーゲンとサブスラスターを破壊する。
『ちっ』
「どう?」
『だから甘いって……言ってるだろ!』
しかし、ルシファーがその程度で怯む道理は無い。ビームボーゲンを牽制で放った後、プラズマ収束砲で薙ぎ払った。
ミカエルの回避先まで読んで放たれたその攻撃は足を中心にサブスラスターを複数壊し、さらに右腰に提げられていたビームライフルも破壊する。さらにビームライフルの爆発により、右腰周辺のサブスラスターにも損傷を与えた。
「この、リント……!」
『ちっ、それだけか』
短くも激しい戦闘。今までにない、本気で殺気を込めた戦い。
実力が互角に近づいたこともあり、撃墜よりも損耗を増やすことが重要になっていた。
「いつまでやるの?リント」
『決まってるだろ?お前を落とすまでだ』
「そんなこと言って、できてないじゃん」
『はっ、状況分かってるのか?』
「うん。リントが諦めればいいでしょ」
『誰がそんなことを!』
「だからだよ!」
そう言って、2人はビームソードを交える。袈裟斬りが両者の中間で交差し、力場が拮抗した。
次の瞬間にはミカエルの左腕のビームソードが振るわれるが、ルシファーはスウェーバックで避け、左足の固定式ビームソードを振るった。
それを右のショルダーシールドで防いだミカエルは膝蹴りを入れ、少しだけ距離を取る。
『ちっ』
「このっ!」
そしてビームボーゲンとビームガトリングが飛び交い、剣戟が閃光を放った。
ビームは避けるかビームソードで斬り払い、斬撃を放ち合い、装甲を削り合う。
「リントォォォ!!」
『メイィィィィ!!』
ミカエルはプラズマスラスターを適時使いつつ、両手のビームソードを連続して振るった。
ルシファーはそれを避けつつ、右腕を振りかぶった。そして手持ち式ビームソードで斬りかかるとみせかけ、ルシファーは固定式ビームソードを発振、ミカエルの左肩部装甲に傷を付け、サブスラスターを潰す。
しかし、ミカエルは一瞬だけプラズマスラスターを全力点火しながらビームソードを振るい、ルシファーの太腿にあるビームボーゲンを複数破壊した。
「この、落ちて!」
『それはこっちのセリフだ!』
「だからって、私の邪魔しないで!」
『だったら……』
「斬り裂けぇ!」
『さっさと落ちろぉぉ!』
最大出力でプラズマスラスターを稼動させ、ミカエルは突きを放つ。
それは避けられた結果、ルシファーの右頬を掠めたに過ぎなかったが、続いて放たれたビームガトリングはルシファーの胸部装甲に多数の傷を生んだ。咄嗟に回避していなければコックピットを破壊されていたかもしれない。
『ハァ!』
「このっ!」
『だから甘い!』
しかし、それで終わるような簡単な相手ではなかった。
ルシファーは固定式ビームソードを発振しつつ右足を蹴り上げ、ミカエルの胸部装甲に大きな傷を刻む。さらにビームボーゲンを10発ほど放ち、ミカエルの翼にいくつか穴を開けた。
「メインスラスターが……!」
『どうした?その程度か?』
「まだまだ!」
翼をやられたことで、メインスラスター出力が下がったミカエル。
だが胴体部分のメインスラスターにその損傷は関係無く、プラズマスラスターは偶然にも無傷だ。
「ヤァァ!」
『はぁぁ!』
そして、プラズマスラスターが無事ならばどうとでもできる。
メインスラスターがやられた結果、機動性より速度を重視することにしたミカエルの動き。単調になりかける部分は、手足を振った重心移動で切り替える。
「これで、どう!」
『くっ、こいつ!』
「まだまだぁ!」
足を振り、サブスラスターで方向転換した後に放たれた一閃は鋭く、ルシファーは正面から受け止めるしかなかった。
そうして鍔迫り合いへ移行した瞬間にプラズマスラスターも使われ、下向きの大きなベクトルが生まれる。
このスピードで海面に叩きつけられればダメージは免れない。そう判断したルシファーは膝蹴りを使って振り解き、ビームボーゲンで牽制した。
『そう来るか。だったら!』
「リント……けど、私も!」
しかし、距離が離れたのを幸いに、ミカエルもルシファーも加速を始め、最高速度で正面から突撃する。
そしてビームソードを振りかぶった。
「死ねぇ!」
『落ちろぉ!』
互いにスラスターを全開にした斬撃。
関節部にダメージを溜めつつ、ルシファーの袈裟斬りとミカエルの横薙ぎの一閃が交わる。
「これでぇ!」
『チィィ!』
ビームソードの力場同士が反発し、それが弾けた瞬間、ミカエルからプラズマ収束砲が放たれた。避けられないと判断した凛斗は、咄嗟に左腕を犠牲にすることで他の部分へのダメージを防ぐ。
それは動かなくなっていたものを失っただけであり、デッドウェイトを減らしたにすぎない。重量バランスの変化はシステムにより補正されたため、ルシファーの戦闘能力は変わっていない。
『はぁ、はぁ……重心計算、システム補正開始』
「どう?リント。やるでしょ」
『はっ、片方だけで勝ったつもりか?』
「片腕でどうするつもり?」
『エースを舐めるなよ』
ミカエルはクルセイダー、ビームライフル1丁、左のショルダーシールドを失い、サブスラスターを何基も喪失した。ルシファーは左腕を失い、ビームボーゲンをいくつも失った。
だが、それだけだ。どちらも戦闘能力を残しており、止める意味は無い。
「何で、こんなに……!」
『オラオラ!』
ビームボーゲンは損傷により減っているが、まだ7割ほど残っている。その弾幕は単機と思えないほど厚く、油断できない。
さらにビームソードによる斬り込みもある。それも手持ち式ビームソードと固定式ビームソードを切り替えた斬撃は、メイでも完全には防ぎ切れなかった。
ルシファーは装甲の傷を増やしつつも、ミカエルのサブスラスターを何基も破壊していく。
「何で、こんなに強いのに……どうして!」
『まだまだだ!俺が戦ってきた場所はこんな程度じゃない!』
「でも!」
『これは戦争だ!』
だが、それはミカエルも同じだ。サブスラスターは6割程に減り、メインスラスターの出力は下がっているが、まだまだ戦える。
ビームガトリングをばら撒き、ビームソードを振るう。凛斗だろうと全てを捌くことはできず、ビームボーゲンが何機も壊される。
『それが分からないなら……落ちろぉぉ!!』
ルシファーの斬撃は苛烈だ。
左足の固定式ビームソードによりミカエルの右のショルダーシールドに傷が刻まれ、右手の手持ち式ビームソードによりミカエルの頭部にある平面アンテナが1基消滅する。
「でも……私はぁぁ!!」
ミカエルも負けてはいない。
ビームソードの二閃により、ルシファーの右肩の装甲を半分欠けさせ、左頬も破損させる。
「私は!戦う!だって!」
『その程度で?ふざけるな!』
「ふざけてなんかない!私は、絶対に!」
『それが!』
「あっ、ライフルが⁉︎」
『甘いんだよ、メイ』
「この、リントぉ……!」
フェイントと本命を分けた攻撃。その方式で放たれたビームボーゲンがミカエルの左腰に残っていたビームライフルを掠め、機関部を破壊する。
しかし、今回は爆発する前に切り離したため、周囲にあるサブスラスターへのダメージは少ない。
『それとも何だ?悲劇のヒロイン気取りか?はっ、そんなの見飽きた!』
「リントだってヒーロー気取りだよ!未来のため?ただのカッコづけ!」
『違う!俺は……俺はただ守りたいだけだ!』
そして2機は接近し、近接戦に移行した。
ミカエルの右手のビームソードとルシファーの右足の固定式ビームソードが干渉し合い、続いて振るわれた左手のビームソードと右手の手持ち式ビームソードも鍔迫り合いに変わる。
『何もなければ俺達は平和だった。何もなければ幸せだった。それを無理矢理壊された!』
「だからって……だったら奪ってもいいの⁉︎他の人から!」
『そんなわけないだろ。だから、あとは地獄に落ちるだけだ!』
「このバカ!」
鍔迫り合い中、ルシファーは力加減を少しずつ変えることで、プラズマスラスターのフルスペックを発揮させない。
ビームガトリングとビームボーゲンは微妙に射線が通らず、鍔迫り合いは続けられた。
「私の気持ちくらい分かってよ、バカリント!」
『バカって何だ!お前、何を分かっ……』
「うるさいうるさい!そんなこと言って、本当は分かりたくないだけでしょ!この分からず屋!」
『うるさい黙れ!』
「きゃあ⁉︎」
しかし、スラスターも使って勢いを付けた膝蹴りが当たり、ミカエルは吹き飛ばされる。
そして体勢を崩したところで、ルシファーの左足の固定式ビームソードがミカエルの左膝に叩き込まれ、そのまま両断した。
関節部にダメージがあったとはいえ、サブスラスターは多くが無事だった。重心補正はできるが、機動性はさらに悪化してしまった。
『俺の何が分かる!何を知ってる!言ってみろ!』
「でも、あんなのは……!」
『知るか!俺は目の前で家族を全員殺されたんだ!』
「でも、そんなの!」
『黙れ!』
「黙らない!」
だが、まだ戦える。ビームガトリングを乱射してルシファーの動きを制限すると、ミカエルな両手のビームソードを同時に振るった。
ルシファーはそれを右手の盾と固定式ビームソードで防いだが、スラスター出力の差でじりじりと押し負けていた。
「だったら!リントは私の何を知ってるの!」
『ぐっ⁉︎』
「知らないでしょ!私は、私は……!」
『メイ……!』
「私は、みんなと一緒に居たいだけなのに……」
さらに蹴りが入り、ルシファーは姿勢を崩す。防御が崩れなかったのは流石だが、そのまま押し切られてしまい、島に着陸した。
木々をなぎ倒しながら減速し、止まる。
「何で邪魔するの!何で!」
『邪魔なのはお前だ!その程度で!』
「うるさい!バカリント!」
『黙ってろ!このバカ!』
そして、ミカエルとルシファーの力比べが始まった。
単純な駆動系の出力はどちらもほぼ同じ。片足のミカエルと片腕のルシファーでは比較が難しいものの、どちらもサブスラスターを上手く使って均衡を保っている。
パイロット同士の口喧嘩も同様だ。
「黙らない!言いたいのはリントだけじゃないもん!私だって!」
『言葉だけは多いな、お前は!それ以外に何も無いくせに!』
「無くない!私は私!リントだってそうでしょ!」
『思考を止めるバカに付き合っていられるか!』
「リントこそ!私を見てよ!」
『全部自分で押し込めて……外面だけよく見せようとする奴は嫌いなんだよ!』
「話を聞かない自分勝手な男なんて大嫌い!」
『はっ!それが本音か?お嬢様顔して自己中なんだな!』
「リントこそ!身勝手な男は嫌われるよ!」
『身勝手でも良い!俺は戦うだけだ!未来のためにな!』
「自己満足だよ、それ!私のこと、知ろうともしてないのに!そんなので未来?ふざけないで!」
『あ゛?』
ミカエルは1本足を上手く使い、ルシファーとの鍔迫り合いを外す。
そしてメイの怒りと共に左手のビームソードを振り下ろした。
『黙ってろって……言ってるだろ!』
「きゃあ⁉︎」
ルシファーはその一閃を避けると左肩でショルダータックルをし、その反動も使って空へ舞い上がる。
「危なっ⁉︎」
『ちっ』
同時にプラズマ収束砲を放つが、その時にはミカエルも空にいた。同時に始まったビームガトリングとビームボーゲンの撃ち合いは互いに掠めることなく、両機は再び接近する。
そして、ミカエルが右手のビームソードで放った横薙ぎの一閃はルシファーの胸部装甲に傷を付けただけで終わったが、ルシファーが右足の固定式ビームソードを使った反撃もミカエルの左肩の装甲を欠けさせたに過ぎなかった。
「この……」
『なっ⁉︎』
「私だって!」
『くそっ!』
しかし、メイも成長している。ミカエルはプラズマスラスターを使って急旋回するとルシファーの左側面に回り、ビームガトリングを連射した。
ルシファーもすぐに気付いて回避行動をとったものの……そのうちの1発が左腰に提げられていた高出力ビームライフルを掠め、脱落させる。他にも何ヶ所か当たり、ビームボーゲンやサブスラスターを破壊した。
「けほっ、けほっ……」
『ちっ、そこまでやれるか』
だが、対価もそこそこ大きい。今まで以上に大きなGがメイを襲い、肺にダメージを与えていた。
凛斗が警戒して手を出さなかったため無事だったが、攻撃を受けていたら防御できたかすら分からない。
『諸刃の剣か?』
「だったらどうするの?」
『さあな。俺は敵を討つだけだ』
「……そっか」
ミカエルもルシファーも、損傷がかなり増えている。火力、機動性、防御の全てに影響が出ており、戦闘開始直後とはスペックが大きく変わってしまった。
しかし、戦闘は次第に激しさを増し、投じられる攻撃の密度は増えている。第3者が介入したとしても、何もできずに撃墜されそうなほどに。
「じゃあ私は、リントを倒す」
『やってみろ!』
2機の再びの突撃。ビームソードが交わり、弾け、ビームガトリングとビームボーゲンが間の空間を埋める。
射撃戦では埒が明かず、格闘戦でも決定打は生まれない。時間の浪費、と言っても間違いではないかもしれない。
しかし、それでも2人は戦い続けた。
「死ねぇぇぇ!!」
『落ちろぉぉぉ!!』
何度目かの剣戟を交えるミカエルとルシファー。ビームソードは反発を繰り返し、シールドはビームを弾く。
ルシファーが左足の固定式ビームソードを振るうも、ミカエルは左のショルダーシールドで防ぐ。ミカエルの回し蹴りとルシファーの膝蹴りが衝突し、反動で2機は離れる。
そして距離ができた瞬間、2機は同時にプラズマ収束砲を放った。
「落ちて!きゃっ⁉︎」
『死ね!ぐっ⁉︎』
その2つのプラズマ塊は衝突することなくすれ違い、ミカエルの左翼とルシファーの右翼をもぎ取る。
直後に発生した爆発に2機は吹き飛ばされ、落ちていく。そして、海面スレスレでようやく姿勢を整えた。
『クソ、しくじった』
「スラスター半減……でもまだ」
『メイ、まだやる気か?』
「リントこそ、もう逃げた方が良いんじゃない?」
『お前は……』
「ん?」
そんな状況でも、2人は戦い続けるつもりだ。
相手を打ち負かすまで。いつまでも、どこまでも。
『お前は、何で戦う。何で俺の前にいる』
「リント?」
『メイ、お前はどうしたいんだ。俺は……』
「……私は負けないよ。絶対に」
『俺が殺したからか?』
「うん」
『やっぱり……けどなメイ、お前もだ』
「分かってる。私も、リントと同じだね」
『ああ、そうだ。だから……』
感情的に、理性的に、衝動的に戦い続ける。それが2人の中に存在する戦う訳だ。
戦う目的など、理由など、既に消え去ったというのに。
『だから、俺は蹴散らすだけだ』
「私は負けないよ、リント」
『勝ち負けじゃない。やるだけだ!』
「この……!」
再びぶつかり合うミカエルとルシファー。ビームソードを振るい、ビームガトリングとビームボーゲンを撃ち合い、拳や脚を叩きつける。
雄々しく、激しく、激情を乗せて。
『メイィィィ!!』
「リントォォォ!!」
2人の戦いはまだまだ続く。どこまでも続く。
そして、戦いの終わりを決めるのも2人しかいない。それをまだ、2人は知らない。




