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少年少女の人型機甲戦闘機戦記 - Strong Armys of GigAntes  作者: ニコライ
第1部

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第29話「鳥籠」後編

 



「クソ!」


 敵編隊の中央でルシファーは暴れ回り、何十機の敵機を落としている。他の味方も次々と戦果を挙げ、キルレシオは非常に高い。


「数が多すぎる……」


 だが、不利な状況に変わりはない。

 セクター級飛行輸送艦からはSAGA(サーガ)が次々と飛び立っており、上空からも絶えずSAGA(サーガ)が降りてきている。何百機の敵に囲まれたままだ。

 いくら対多戦闘用のデーモンシリーズと言っても、限度がある。ベルゼブブとアスモデウスも退避できず、近接戦闘に巻き込まれていた。


「落ちろ!」


 ルシファーはメインスラスターブロックにプラズマ収束砲と高出力ビームライフルを叩き込む。さらに艦橋へ10条を越えるビームボーゲンを放って内部まで破壊し、セクター級飛行輸送艦を1隻撃破した。

 しかし、既に荷物(SAGA)を放出し終えた後のようで、慌てて飛び出てくる機体は無い。破損したパーツと脱出ポッドだけだ。

 どうやら、母艦ごと潰すという凛斗の目論見は外れたらしい。


「兄貴!このままだと全滅だ!」

『けどな、後ろを見せればそのまま全滅だ。今は隙を(うかが)うしかない』

「それも分かってる。けど!」


 それで気を落とすことなく、ルシファーはハリケーン級飛行戦艦の対空ビーム砲群へビームボーゲンを放ち、ジャガー級飛行護衛艦の艦中心部を破壊するようにプラズマ収束砲を叩き込む。もちろん、SAGA(サーガ)を撃破することも忘れない。

 デーモンシリーズ、コクロウ各機も射撃武器とビームソードを使い分け、敵機を落とし、敵艦へ損害を与えていく。

 だが、次第に被弾する機体が増え、戦力は低下する。


「このままだと……!」

『凛斗!上!』

「なっ、ぐぅ!」


 しかも、何か対策しようとしたタイミングで、クルセイダーを構えたミカエルが上空から突撃してきた。

 ルシファーは柄に盾を当てることでどうにか防いだが、高度によりミカエルが得たスピードは殺せない。このままでは海面に叩きつけられてしまうだろう。


「この……!」

『凛斗!』


 しかしその前に、横合からのビーム弾に助けられた。


『凛斗、大丈夫?』

「ああ、大丈夫だ。助かった」


 それはベルフェゴールのビームサブマシンガンで、いつの間にかベルフェゴールが隣にきていた。

 凛斗の意図ではないが、2対1となった。しかし、ミカエルに諦めた様子はない。このままルシファーとミカエルだけ超音速戦闘を行うことは確定だろう。

 外野がルシファーを狙ったとしても、だ。


「それより、繭は残りの相手を頼む。厳しくなりそうだけど……」

『うん、わたしも大丈夫。頑張って』


 それに、他のエンジェルシリーズも降りてきている。

 エンジェルシリーズの性能と技量、そして外野の乱入のせいで、デーモンシリーズは拘束されることとなってしまった。


「ちっ、動けないな。周りの連中も……!」


 ミカエルが正面からビームソードで斬りかかってきたため、ルシファーも固定式ビームソードを発振して鍔迫り合いに応じる。

 そして予想通り、レーザー通信が入った。ミカエル、メイからのものだ。


『リント、降伏して。お願い……!』

「メイ!見ただろお前も!アレが本性だ!連中の!」

『見たよ……それでも、私は!』

「くっ……この、分からず屋が!」


 ルシファーは右足の固定式ビームソードで斬りかかるが、ミカエルのショルダーシールドに受け止められる。

 そしてミカエルは少し無理をしつつクルセイダーで突きを放つも、それはルシファーの盾で防がれた。

 またその間も、ルシファーは近寄ってきた敵機への攻撃を繰り返し、コックピットかジェネレーターを貫いて破壊していく。


『リント!こんなことしたって……!』

「だから認めろと⁉︎アレを⁉︎ふざけるな!」

『でも、無意味だよ!こんなところで戦ったって!』

「意味は俺達が決める!勝手なことを言うな!」


 凛斗とメイの会話……というより口喧嘩は途切れない。双方共に相手を捉え続けているためだ。

 そして同じように、ルシファーとミカエルの戦いも続く。

 ルシファーは高出力ビームライフルが触れないよう、クルセイダーを左手の固定式ビームソードでそらす。直後に来た斬り返しの逆袈裟はスウェーバックで避け、そのままサマーソルトを繰り出した。

 ミカエルはそれを下がって避け、ビームガトリングを連射する。ルシファーは回避運動をとりながら盾も使って防ぐと、プラズマ収束砲を発射。ミカエルも同時に発射し、2機の中間で接触、爆発と閃光が辺りを覆う。


「ちぃ!」

『このっ!』


 ミカエルはクルセイダーを上段から振り下ろすが、それはルシファーが左の盾を使ってそらした。ミカエルは左手をクルセイダーから離し、ビームソードを引き抜いて斬りかかる。

 ルシファーはそれを右の盾で受け止めると、左手の高出力ビームライフルを向け、間髪入れずに射撃した。

 頭を傾けてそのビームを回避した後、ミカエルはビームガトリングを撃つ準備に入る。

 だが、ビームガトリングの射撃前にルシファーは機体を下降させ、ビームボーゲンを一斉射。残念ながら躱されたが、距離を作ることには成功した。


「メイ!お前は!」

『リントが来るからだよ!私だって戦いたくなんて……』

「ここにいる時点で無意味だ、それは!戦いたくないならさっさと降り……ちっ、邪魔だ!」


 後ろから迫る4機のバトラーに対し、ルシファーは翼のハイビームボーゲンを放って対処する。

 前から来るミカエルにもビームボーゲンを放つが、それは呆気なく避けられ、ビームガトリングからばら撒かれた銃弾を凌ぐためにスラスター出力を上げた。


『こんなことじゃ誰も認めないよ!なのに……何で戦うの!』

「戦う以外に無いんだよ!無視されてる俺達が道を示すにはな!」

『だからって!』

「それでもだ!」


 ルシファーへ左右から迫るシルフィードはビームソードを持っていたが、凛斗は格闘戦に応じない。高出力ビームライフルを向け、双方とも吹き飛ばす。

 しかし、その隙にミカエルが斬りかかり……


「くっ!」

『惜しい!』


 右肩の装甲に切れ目が入った。下がったことで致命傷は防いだが、防ぎきれず傷を付けられたことに変わりはない。

 というより、致命傷にならないことを理解してギリギリで避けた傷こそあったが、避けきれなかったのはルシファーに乗ってから初めてだ。


「メイが上手くなったのと……こっちも足りないか。はっ!」


 ルシファーは反撃として両足の固定式ビームソードを発振しつつ蹴りを放つも、防がれる。

 だが、そこで攻撃は終わらない。フェイントを加えて惑わしつつ、盾の裏側に刃を当てることで、左のショルダーシールドを半分ほどに断ち切ったた。

 ただし、どうやらビームガトリングは壊れていないらしい。未だに動いており、狙う準備は出来ているらしい。


「はぁぁぁぁ!」

『やぁぁぁぁ!』


 その後、ミカエルは断ち切られた左のショルダーシールドを前に出してタックルを仕掛けるも、ルシファーはサマーソルトで避けつつ、左手の固定式ビームソードを発振。右のショルダーシールドをスラスター全開で斬りつけ、ミカエルの体勢を崩す。

 ミカエルは崩れた体勢のままクルセイダーを振るったが、勢いが無いため盾で受け止められた。直後に放ったルシファーの右膝蹴りはクルセイダーの柄で防がれたがそれは囮、左回し蹴りが綺麗に決まり、ミカエルとの距離が広がる。

 さらにルシファーは突撃し、ビームガトリングを盾で防ぎながら体当たりをするも、ミカエルがタイミング良くプラズマスラスターを合わせたため、双方とも弾き飛ばされた。


「はぁ、はぁ……なあ、メイ」

『はぁ、ふぅ……なに?』

「止めたかったら止めてみせろ」

『もちろん。行くよ、リント!』

「来い、メイ!」


 少年と少女の戦いはまだまだ続く。

 それがいつ終わり、何を残すか知らぬまま。






「この!」

『繭、熱くなったら……』

「分かってる!」


 繭の乗るベルフェゴールは両手にビームソードを持ち、ウリエルと斬り結んでいた。その剣戟は激しく、誰も近づくことができない。というか、迂闊に近づいたシルフィードが一瞬で真っ二つにされていた。剣だけならルシファーとミカエル以上の激しさだ。

 聡のマモンが援護しているが、ラグエルとも撃ち合う必要があり、専念はできない。また、ルシファー程では無いが、この2機も周囲の敵機から狙われている。マモンの役割にはそちらへの対処も含まれていた。

 そして、外野が関わりづらいことを良いことに、2人の少女は彼女達だけの世界にのめり込んでいた。


「援護するなら援護して。厳しいんだから」

『けど僕も難しいから、うわっ!』

「余所見しないで!ハァァァ!」


 ベルフェゴールが左のビームソードで斬りかかると、ウリエルは右のビームソードで防ぎ、受け流した勢いで斬撃を放つ。

 それを読んでいたベルフェゴールは右肩を下げて避けると、そのまま右のビームソードで突きを放つ。

 突きはショルダーシールドに防がれるが、ほぼ同時に放った前蹴りは腹部に当たり、ウリエルは弾き飛ばされる。

 それを好機とメインスラスターの出力を急上昇させたベルフェゴールだが、ウリエルは素早く体勢を整え、左手の固定式ビームソードを発振し、振るう。それをベルフェゴールは先に降下することで避け、急上昇しながら斬りかかった。

 ウリエルはビームソードで受け止め、鍔迫り合いとなる。


「前より上手になって……!」

『繭、動き過ぎたら……』

「だから分かってる!」


 動き過ぎると味方から離れ過ぎ、援護が出来なくなる。囲まれている今は尚更だ。相互の連携ができなくなれば、すぐに殲滅されてしまう。

 もちろん、動きまくっているルシファーとミカエルは例外だ。近づけるとはいえ恐ろしく速く、さらに対処も速いため、率先して接近する者はいなくなっていた。

 人外じみているところはあるものの、参考にするべき戦闘と言える。


「わっ⁉︎」

『危な、っ!』


 時々、そのルシファーとミカエルからの流れ弾が飛んでくることだけが玉に(きず)だが。狙って撃ったものでは無いとはいえ、すぐ近くを掠めれば驚きもする。隙を見せたりはしないが。

 というか、ルシファーはミカエルとの戦闘中でも、他の敵機を狙っていたりする。遠巻きになったとはいえ撃たれるので、その反撃だが……真似できる人間は多くないだろう。

 その流れ弾に乗じてウリエルがビームサブマシンガンを手に取り、射撃へ移行することもある。だが、ベルフェゴールはビーム砲を放ちつつ接近、再び剣戟を振るった。


「ふっ、はっ、やぁ!」

『撃つよ、回避して!』

「ありがと!」


 マモンの小口径プラズマ収束砲と高出力ビーム砲による援護を受けつつ、ベルフェゴールはウリエルとの剣戟を優勢へ傾ける。

 ラグエルのビームロケットアンカーやビームブーメランに追い立てられながらだが、マモンは正確な射撃でウリエルの膝関節部を稼動不能にしていた。

 破壊までは至らなかったが、それは十分な援護だ。


「ヤァァァ!」


 ビームスローイングダガーを避けつつ、ベルフェゴールはビームソードを振るい、ウリエルの右腕を肩から斬り飛ばす。


「やった!」

『ならこっちも助けて!』

「はいはーい」

『早く!』


 状況が状況なため、トドメを刺すことに拘泥したりはしない。そんな隙は見せない。

 代わりに、繭と聡は戦況が変わるための手伝いとして、敵軍の中で大暴れを始める。






「ちっ、厄介すぎんだろ」

『そういう相手だってことは分かってたでしょ。強いんだから、こいつら』

『すみません、役に立てずに』

『ご、ごめんなさい……』

「謝るなよ。ここまで詰められたこっちに問題があるんだぞ?」

『そうそう。こっちの役目なんだから』


 一方、剛毅と香織は非常に神経を使う戦闘となっていた。

 現在、サタンとリヴィアタンはベルゼブブとアスモデウスの周囲に展開し、敵機を抑え込む役割を担っている。

 だが、それは難しいことだ。ガブリエルにラファエル、ゼラキエルという強敵と、多数の帝国軍SAGA(サーガ)に囲まれており、絶えず攻撃に晒されている。


「おい、潤人、智子、問題無いよな?」

『まだまだ大丈夫です。数は多いですけれど』

『わ、私は、ひっ!』

「あー、そいつはマズい。香織頼む!」

『りょーかいりょーかい。あーもう、あっちもこっちも集まりすぎでしょ!』


 ベルゼブブはまだ良い。接近された時用の武装をいくつか所持しており、その火力は健在。2つずつ存在するビームガトリングとビームマシンガンで弾幕を張り、3連装高出力ビーム砲で狙いを定めれば、近づける敵機はそう多くない。重砲型ブリューナクもあるため、危険は少ないだろう。

 問題はアスモデウスだ。右肩に背負う大型多銃身狙撃砲は強力だが、近距離ではほとんど役に立たない。今はビームソードを右手に持ち、両腕に固定されたビームサブマシンガンを連射し、どうにか牽制できていた。

 もっとも、これだけ敵味方が入り乱れていては狙撃などできず、対抗機たるレミエルも狙撃銃を構えているだけなのだが。


『左2機と下3機です』

『剛毅、左はお願いね』

「任せとけ。で、凛斗を援護するか?」

『無茶言わないでよ。あんなのにどうやって割り込むつもり?こっちも余裕無いのに』

「だよなぁ」

『何であんなこと出来るんだか……兄貴に並んでない?アレ』


 サタンはガブリエルの長剣型クルセイダーの勢いをビームソードで落とし、盾でそらす。そのままシールドタックルを食らわせるとビームソードを振り上げるが、側面から迫るバトラーへの対処を優先しそちらへ向かう。ちなみに、ブリューナクは戦闘開始直後に潰し合った結果、今はサタンの砲型ブリューナク2基しか残っていない。そちらは他の敵機の牽制に回しているため、ここには1基も無かった。

 リヴィアタンは各所にあるビーム砲で周辺の敵機を牽制しつつ、ビームライフルで丁寧に落としていく。ラファエルが斧槍型クルセイダーを振りかざしたりもするが、柄を叩けば簡単に対処できた。先端での威力が高くとも、刃の無い部分が長い斧槍型クルセイダーの弱点を上手く突いた方法だ。

 2機を突破しようとしても、ベルゼブブとアスモデウスが作った弾幕に捕らえられ、もしくは足止めされ、サタンかリヴィアタンに撃墜されていく。

 もっとも、数で押されては厳しいため、色々と調整しながらではあるが。


「そういや、兄貴は?」

『えーと……あ、ちょうど1人で大隊1個《36機》潰し終えたところ』

「は?流石にそれは無理じゃ……」

『正確には小隊相手の繰り返しだけど』

「……流石は兄貴」

『だよね』


 また、デーモンシリーズだけでなく、コクロウ隊も善戦中だ。

 数的不利故に1対2や1対3だが上手く戦い、攻撃を捌きつつ敵機に損傷を与えている。そのまま敵機を撃ち落としている者も多い。

 なお、兄貴をはじめとした何人かは1対4(小隊相手)だというのに敵を僅かな時間で殲滅し、次の敵機群をまとめて撃墜していたりする。

 そして2人とも、それには思わず唖然とした。サタンやリヴィアタンを使えば同じことは可能だが、同じペースでやるのは難しい。それをコクロウでやれるとすれば、彼らの中では凛斗くらいだと考えた。

 その当人はミカエルと戦いながら、50機以上の敵機を撃ち落としているのだが。


「おい、来たぞ。ってか、次は俺か?」

『任せて良いよね?』

「おうよ」


 そんな、不利ながらもある程度安定した状況の中で、最大の問題はゼラキエルと言えた。

 サタンとリヴィアタンはガブリエルとラファエルの相手で忙しく、エンジェルシリーズをもう1機抱えるのは中々厳しい。

 しかし、ベルゼブブは相性がルシファーとミカエル以上に悪く、正面からは戦えない。当然、アスモデウスも無理だ。

 コクロウ隊の任せては数的不利が加速するだけなため、剛毅と香織は多少の無理をしてでもゼラキエルを抑えていた。


「来いよ、オラァ!」


 ガブリエルとゼラキエルからの攻撃を、サタンは上手く捌いていく。

 クルセイダーをラックに納めたガブリエルがビームソードで斬りかかってくるが、ビームソードを合わせて鍔迫り合いに移行させた。

 そして、サタンはゼラキエルからの射撃は盾で防ぎつつ、可能な限りガブリエルが間に入るように動く。

 その後、シールドバッシュでサタンを弾き、接近してきたゼラキエルへはプラズマ拡散砲を放って盾のアンチビームコーティングを削っておく。

 突進は止まらなかったものの、プラズマ拡散砲でサタンを見失わせたことにより、ゼラキエルの斬撃は簡単に避けられた。

 そのまま蹴りを放ち、海面方向へ落としておく。


「で、次は……」


 ちなみにこの2機の中で、1番の脅威はガブリエルの長剣型クルセイダーだ。プラズマスラスターが無いとはいえ、盾ごと両断できるそれが脅威でないわけがない。

 しかし、対応には慣れている。凛斗から受けさせられたミカエルとのシミュレーション戦闘の経験がここで生きた。


「甘いんだよ、なぁ!」


 居合切りのように振り下ろされたクルセイダーの勢いを盾で殺しつつ、盾の下に隠したビームソードで柄を両断することにより、長剣型クルセイダーを無力化する。

 そして……


「撃てるよな、香織」

『避けてね』

「おい!」


 リヴィアタンからの援護射撃によりガブリエルとゼラキエルは回避運動を余儀なくされ、サタンから離れた。

 また、リヴィアタンが相手をしていたラファエルは斧槍型クルセイダーを失い、なおかつ右足を斬り落とされていた。どうやらクルセイダーを蹴り飛ばし、その隙に足を奪ったらしい。

 ガブリエルもクルセイダーを失ったためか、一度退くようだ。バトラーやシルフィードは相変わらず群がってきているが、前よりは楽になった。


「はっ、ザコどもが!」

『この、落ちろ!』


 そして、集まってくる敵機は小隊(4機)エレメント(2機)が多い。どうやら、この辺りでは大隊単位や中隊単位の指揮能力はほとんど破壊されたらしい。

 なので、単機単位での連携戦闘も得意とする明けの明星には楽な相手となった。サタンとリヴィアタンは攻撃と防御を交互に担当し、指揮系統を混乱させながら敵機を落としていく。


『今だ、いけるぞ』

『潤人、撃って』

「やっちまえ!」

『はい、撃ちます!』


 また、ベルゼブブとアスモデウスが受けた損傷はかすり傷程度で、戦闘能力は高いままだ。

 近くにいるコクロウ隊と連携して敵群を集め、ベルゼブブの火力で殲滅するなど、他の戦域よりも高い効率で戦うことが出来ている。

 アスモデウスも少しずつ狙撃を再開し、飛行艦の艦橋を狙い撃ったりしていた。


『このままやるよ!』

「おうよ!」

『分かりました』

『う、うん』


 不利な戦場とはいえ、諦めたりはしない。

 少年少女達の戦歴はそれを証明しており、今もそれを実践している。






「はぁぁぁぁぁ!!」

『やぁぁぁぁぁ!!』


 激戦は続いていた。

 ルシファーが左足の固定式ビームソードで斬りかかると、ミカエルはクルセイダーで防ぎつつ、勢いのまま斬りかかる。

 それをルシファーは右半身を下げて避け、至近距離からビームボーゲンを放つ。急制動と回避運動をとったミカエルには避けられたが、本命は高出力ビームライフルの方だ。

 ミカエルは回避運動で体勢を崩していたため、有利にできると凛斗は思っていた。だがビームをショルダーシールドで防いだミカエルは、その反動を使って体勢を整え、吶喊(とっかん)する。

 その反応に驚きつつも、凛斗は反撃体勢を整えさせ、クルセイダーの柄とルシファーの盾が衝突し、双方とも弾かれた。


「まだやるか?メイ」

『もちろん。だってまだ戦ってるよ?』

「俺としては、そろそろ見逃して欲しいんだけどな」

『ダメ。そんなことしたら他の人に向かうもん』

「立場的にそうなるか」


 ルシファーは右肩の他に左肘と右太腿、顎をクルセイダーが掠め、傷が残っている。両翼にも傷が複数ヶ所あり、ハイビームボーゲンが1基潰れていた。他の損失は盾のアンチビームコーティングが薄くなった程度だが、かなりギリギリの戦いだったことがよく分かる。

 ミカエルは左のショルダーシールド以外だと、腰の左右に架けていたビームライフルを喪失していた。また、何ヶ所かのサブスラスターが潰れている上、右翼が大きく刈り取られており、プラズマスラスターを2基失っている。しかし、まだ戦闘能力を失っておらず、やる気もあるようだ。


『だから……』

「ああ……」

『行くよ!』

「こっちもだ!」


 ミカエルはプラズマ全開で突撃し、クルセイダーを袈裟懸けに振り下ろす。それをルシファーはスウェーバックで避け、右手の固定式ビームソードで斬りかかる。

 それに対し、ミカエルは半分に切断された左のショルダーシールドを使って上手く受け止め、そのままタックルを行う。

 しかし、ルシファーは機体を半回転させて避けると、無防備なミカエルの背中へ向けてビームを連射した。ミカエルは全力で回避するしかなく、距離を離されてしまう。


「まだまだ直線的だな。簡単に避けれる。メイ、お前の覚悟はその程度か?」

『この……』


 またクルセイダーが来る、そう思って対応しようとしたルシファーだが……ミカエルが選んだのは飛び蹴りだった。


『私だって!』

「なっ⁉︎」


 しかも、プラズマスラスター全開で非常に勢いがあり、ルシファーは吹き飛ばされる。

 吹き飛ばされたルシファーはスラスターを制御しつつ、ミカエルへ向けてビームボーゲンを放ち、近寄らせない。


「やるな……ん?クソ!」


 そして、止まったところを好機と思ったのだろう。バトラーやシルフィードがルシファーへ群がっていった。

 当然、今まで介入できなかった相手からの雑な攻撃がルシファーに届く訳がない。ビームボーゲンで小隊ごと蜂の巣にし、高出力ビームライフルで2,3機まとめて撃ち抜く。そんな荒技を繰り返し、数を減らしていく。

 だが、隙にはなる。


『いま!』

「ちぃ!」


 その隙に、クルセイダーを構えたミカエルが突進してきた。

 高出力ビームライフルを向けようとするが、間に合わない。そう判断し、ルシファーは2つともミカエルへ投げつける。


「もどかしいな、てぇ!」


 さらに、それへ向けてビームボーゲンを発射。破壊された高出力ビームライフルは充填されたままのエネルギーを放出、大爆発を起こす。

 これでミカエルを落とすことはできないが、爆炎がサブスラスターをいくつか損傷させ、何より視界を塞いだ。


「はぁぁぁ!」


 そして、ルシファーは仕返しとばかりにミカエルの腹部へ飛び蹴りを食らわせ、吹き飛ばした。

 ついでにビームボーゲンを放ち、周囲の敵機をさらに撃ち落とす。


「はぁ、はぁ」

『凛斗、無事か?』

「何とか。ちっ、落ちろ!」


 兄貴のコクロウと合流したルシファーだが、安心はできない。ミカエルとの戦闘が中断されたせいで、むしろ集まってくる敵機が増えているようだ。

 そのため、ルシファーはバトラーやシルフィードからの攻撃を避けつつ、ビームボーゲンで落としていく。

 兄貴のコクロウも高出力ビーム砲で遠方の敵機を撃破し、ビームマシンガンで蜂の巣にし、ビームソードで斬り刻んだ。


「兄貴、流石にもうマズいよな?」

『敵陣はグチャグチャ、これなら退けそうか』

「悠長に待ってる時間なんて無いだろ。これ以上は……」


 このまま戦っても、状況が好転することはない。悪化するだけだということは、凛斗も兄貴も分かっていた。

 そして、撤退するには犠牲が必要だということも分かってしまった。


『そう、だな……』


 だからこそ、兄貴は決断した。

 だからこそ、凛斗は出遅れた。


『凛斗、逃げろ』

「分かった。なら殿(しんがり)は俺が……」

『いや、逃げろ。あとは任せる』

「は……?」


 そしてその言葉を、凛斗は理解できなかった。

 いや、理解したくなかったのだろう。それほどまでに衝撃的だった。


「兄、貴……何言って……」

『殿はこっちでやる。デーモンシリーズの火力で包囲網を突破、蒼龍まで逃げろ。伯父貴ならどうにかしてくれるぞ』

「ちょっと待って、何で……」

『殿は……俺含めて4機だな。直率部隊……すまんな、ここで死んでくれ』

『はっ、何言ってんだよ原田!』

『むしろ、気が乗ってきたところなんでね』

『そうですよ。こんなカッコイイ役目、子どもに任せたくなんてないです』

「けど、兄貴!みんなも!」

『頼む、凛斗』

「何でだ!何で兄貴が……俺だって!」

『頼む』


 しかし、それが最良の選択肢ということは分かっていた。

 対案は凛斗のルシファーを殿とすることだが、旗機となりえる機体を見捨てるということはできない。そもそも、弟妹や子どものように可愛がっている未成年組を見捨てられる者はいない。

 問題は心情だけだが……凛斗は心を押し殺すことにも慣れていた。慣れてしまっていた。


「くそっ……撤退するぞ。後ろの一群を蹴散らして、蒼龍まで逃げる」

『ですが!』

『そんな、見捨てるなんて……』

『今ならまだ……』

「撤退する!命令だ!」

『でも……』

「俺だって嫌だ。けどな……これは命令だ!」

『くそが……』

『こんなのっ……』


 明けの明星編隊は兄貴と直属の3機を残して全機反転、ルシファーを先頭に包囲の薄い後方へ突撃を仕掛けた。

 このタイミングで撤退を始めることは想定外だったのか、帝国軍機体は面白いように撃破されていく。


「急げ急げ!早くしろ!」

『邪魔すんな!』

『どけぇ!』

『前が、凛斗!』

「俺が蹴散らす!兄貴は?」

『まだまだ大丈夫っぽい』


 一方、ミカエルの前には兄貴のコクロウが立ち塞がり、ルシファーと同じようにビームソードでクルセイダーをそらす。さらに反撃し、サブスラスターを3つ同時に破壊した。

 明けの明星最強のエース。他称から始まったとはいえ、その呼び名は伊達ではない。多数の敵機の目を引き付け、囮としての役割を十分以上に果たしていた。

 しかし……


『避けて!』

『えっ、きゃあ⁉︎』

『そんな⁉︎』

『クソが!!』

『嘘……朱音さん!』

「くっ……!」


 囮がいるとはいえ、強引な撤退。それで被害が出ないことの方が珍しい。

 覚悟はしていたが、ジェネレーターを撃ち抜かれて爆散する機体まで出てしまった。


『こ、このっ、せめてっ!』

「待て!今は撃つな!回避しろ!」

『きゃあ⁉︎』


 せめて援護をして兄貴達の生還率を高める、もしくは被害を減らそうと思ったのだろう。逃走しても狙撃に狙われないよう、レミエルを狙ったのもそれに合致する。

 だが集中力を欠いた今、狙撃は良くない。その一撃はレミエルの狙撃銃を破壊したが、同時にアスモデウスの狙撃砲も破壊された。


「大丈夫か?」

『う、うん……』

「なら真ん中にいろ。クソ、あと少しなのに……!」


 その後も損傷機が多発し、さらに何機か落とされたものの、あと少しで包囲網の外縁を突破する所までやってきた。

 希望が見えた瞬間だった……どちらにとっても。


『なあ、凛斗』

「兄貴!もう少しだ!抜ければ援護できる!」

『これからのこと、頼むな。良い国だってこと、凛斗も知ってるだろ?』


 最初から撤退できないことを覚悟していた兄貴にとって、今の状況は90点を超えている。このまま凛斗達が離脱すれば、作戦目標は達せられる。

 だがそれは、凛斗にとって赤点だ。そのため、まだ諦めようとしなかった。諦めたくなかったが……現実は非情だ。


「何でそんなこと……まだ!」

『分かってるだろ、凛斗』


 ルシファーとミカエルは第12世代機、コクロウは第10.5世代機。世代の差には意味がある。

 ビームボーゲンやクルセイダーだけではない。ありとあらゆる性能が違う。違いすぎる


「けど……!」

『泣くなよ。お前、男だろ?』


 確かに、兄貴の腕ならミカエルの相手もできる。

 だがルシファーと違い、フレーム強度が足りない。

 行う度に、フレームにヒビが入り、歪み、稼働性が下がっていく。盾もアンチビームコーティングが剥がれ、ひび割れていく。


『生きろよ、凛斗……俺の、俺達の、代わりに』

「嫌だ、兄貴!兄貴!」


 その結果、兄貴のコクロウはミカエルに盾ごと両断されてしまい、ジェネレーターもやられて爆発した。

 ほぼ同時に、残りの3機も数の暴力に耐えられず、次々と散っていく。

 あの爆発では、生存は絶望的。それが分かってしまった。


「っ!このっ……!」


 そんな時、進路上に割り込もうとするバトラーが計12機。未だに中隊クラスの戦闘能力を保っている敵部隊。

 怒りを向け、八つ当たりをするには十分な相手だ。






「はぁ、はぁ、はぁ……」


 一方、ミカエルは苦戦しつつも、立ち塞がったコクロウを大刀型クルセイダーで真っ二つに切り裂き、爆散させた。


「あ、あ……わ、私、人を……」


 そして、それを行ったメイは怯えていた。

 軍人になった時から覚悟を決めていたとはいえ、これが初めてだったから。


「どうしよう、私……」

『メイちゃん、大丈夫?』

「う、うん……でも……」

『無理すんじゃねぇよ』

『……ダメなら下がれ。フォローはする……自分はこんな有様だが』

「うん、ありが……あっ!」


 こんな状態では戦えない。ルシファーの追撃もできない。

 少し冷静になり、そう認識したメイだったが……その時、ある中隊の動き目が入った。


『時間を稼げば良いから、逃がさないように動いて』

『了解です』

『はい!』

『この、今度こそ……!』

「レイカさん、待って!」

『どうしてだい?このままこいつを……』

「ダメです!逃げて!」

『それは出来ない相談だね』


 相手が悪い。たった12機(1ヶ中隊)では、足止めにもならない。

 しかし、それを完全に理解しているのはメイだけで、残念ながら間に合わない。






『こいつらは、ここで!』


 贄となってしまった、キリシマ大尉達のバトラー。


「邪魔を……するなぁぁぁぁ!!」


 それらをルシファーの全火力を持って消し去っても、凛斗の心を落ち着かせるには不十分で。


「ひっ、あっ、いやぁぁぁぁぁ!!」


 その光景は、メイのトラウマを刺激するには十分だった。












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