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少年少女の人型機甲戦闘機戦記 - Strong Armys of GigAntes  作者: ニコライ
第1部

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第25話「南の風」後編

 



「現在高度30m。ここから先は厳重警戒エリアだ。10mまで降りろ」

『了解です。スラスター出力を調整します』

『ったく、いくらなんでも低すぎんだろ』

『波立てたらレーダーに映るんだから、慎重にやってよ』

「そういうことだ。囮でも気は抜くなよ。今見つかるのは少しマズい」

『はい、分かりました』

『了解。大丈夫だよね、凛斗』

「伯父貴や兄貴にも見てもらったからな。信じろ」


 沖縄本島の東方の海上。そこにある7機の人影、デーモンシリーズ各機は予定通りの航路を進んでいた。

 高度は非常に低く、まだ見つかってはいないが、哨戒機などに見つかる可能性はある。雑談をしつつも、警戒は厳重だ。


『凛斗、一応確認しとくか?』

「ん?ああ、そうだな。要るか?」

『一応』

『欲しいですね』

「分かった。今は低空飛行で那覇基地へ移動する段階だな。ここで見つかっても問題無いけど、とりあえず予定通りだ」

『うんうん』

「そして作戦開始と同時に高度上昇、敵のレーダーにワザと引っかかる。その後は襲ってくる敵機を各個撃破しろ。下がりつつ、な?」


 作戦自体はそう難しくない。問題は敵の数とタイミング、そして時間。

 作戦を完遂できるかは、出てくる敵への対応次第だ。


『そういえば、敵が少なかった時は?』

「その時は力押しだ。それでさらに引きつける。まあ、そのまま基地まで押し込むのもありだけど」

『了解。じゃあ、見つかったら暴れよっか』

「そこまで気合を入れなくても暴れることになるぞ。敵の数は多い」

『ははっ、腕が鳴るぜ』

『前のには参加できなかったし』

『アラスカ?あー、確かに』



 ちなみにこの中には、アラスカ中央基地襲撃に参加できてない者もいる。大規模襲撃自体は以前に経験しているが、デーモンシリーズに乗ってからは初めてだ。

 というより……


「そういえば、7人揃っては久しぶりだな」

『隊を組むのは凛斗が帰ってきてからだと初めてですよ。いつも纏めて扱われているというのに』

「確かに」

『それって……』

『えっと、初陣?』

「初陣は違うような……いや、合ってるのか?」

『ある意味では』

『そうかも』

『え、そうかな?』

「まあ、どっちでも良い。時間だ。行くぞ」

『『『『『『了解!』』』』』』


 そんなこんなで時間になり、7機は高度1000mまで急上昇、那覇基地のレーダーに引っかかった。

 基地にある大型レーダーであれば、この距離のSAGA(サーガ)だろうと見つけられる。それを逆手に取った作戦だ。


「潤人は砲撃、智子は狙撃用意。他はミサイルの発射準備をしつつ、近接戦用意」

『はい!』

『分かった。凛斗は?』

「2人を突破してきたら俺も撃つ。近接戦闘になったら好きに動け。連携も随時な」

『了解』

『大口径プラズマ収束砲起動。長距離砲撃システム、展開しました』

『その、狙撃準備、終わり』

「了解。そのまま待機しろ。繭、聡、何か見えるか?」

『まだ何も……あ、見えたよ。11時方向、光学で確認』

『数は4、哨戒機なのかな?凛斗さん』

「だろうな。智子、撃ち落とせ」

『う、うん』


 アスモデウスは狙撃砲を構え、撃つ。

 そうすると1機あたり2本か3本の光線が飛び、4機とも気づく前に落とされた。


『全機撃墜確認っと、流石は智子』

『そう、かな?』

「ああ、誇れ。智子しかできないんだぞ?」

『そうかな……その、ありがと』

『気にすんな。特技だろ』

「そういうことだ。さて、そろそろ哨戒機の消失で動く頃か」

『早く……は無いか。空飛んでたし』

「ああ、帝国軍だって無能ばかりじゃないからな。派手にやれば反応する敵はいるはずだ。本格的なスクランブルまではもう少しかかるだろうけど……」

『けど?』

『先に足止め部隊が来るかも、ってとこ?』

「その通り。流石だな、香織」

『ふーん。あ、敵機確認。数は50以上、距離は100km以上』

「来たか」


 那覇基地はかなり規模が大きな基地だ。50機どころか、100機程度だろうと造作もないに違いない。

 哨戒部隊とは規模の違う数。まだ遠いが、確かな脅威だった。


「潤人、射程までは?」

『あとしばらくかかります。ですが、捕捉しました。計測完了、数は72機です』

『いきなり1ヶ大隊かよ』

「予想よりは少ない、先遣隊か。潤人、射程に入り次第撃て。薙ぎ払えよ。智子は潤人の後に狙撃開始、可能なら指揮官機をやれ」

『了解です』

『う、うん』

「残りは射撃戦用意。ミサイルはまだ使うな。温存しろ」

『おうよ』

『任せてください』


 だが、この状況はデーモンシリーズの得意分野でもある。

 ベルゼブブによって中隊(12機)単位で落とされ、アスモデウスにより10機ずつ落とされていく。しばらくすると、それにルシファーも加わった。

 その結果、高出力ビームライフルの射程まで近づけたのは……僅か10機。今から逃げようとしたところで、デーモンシリーズの方が速い。

 ミサイルを放ってきたところで、この程度の数なら避けるのも撃ち落とすのも容易い。


「これなら格闘戦をやる必要は無い……俺が前に出る。繭と聡は左右に分かれつつ近づけ。他はばらけて射撃準備、全員散開」

『了解!』

『やりましょう!』

「射程に入り次第撃て!逃すな!」


 そして、蹂躙劇となった。

 高速で駆け抜け、次々とコックピットを撃ち抜いていくルシファー。

 サタンのブリューナクによって四方八方から撃ち抜かれるシルフィード。

 全身のビーム砲を斉射し、敵機を吹き飛ばすリヴィアタン。

 ベルフェゴールのビームサブマシンガンとマモンのビームカービンライフル、多数のビーム砲で穴だらけになるバトラー小隊。

 凛斗達が逃げ腰の相手に負けるわけがなく、3分とかからずに殲滅した。


『敵の全滅を確認。第1陣は終わったようですね』

「第1陣というより、先遣隊だな。足止め目的か」

『え、じゃあ』

『まだ、って……』

「作戦通りだ。問題無い」

『……来たみたいです』


 この程度あれば、彼らにとって対処は容易い。ルシファー単独でもできるだろう。

 しかしこの直後、聡が報告する。敵の本隊、その数は多かった。


『12時の方向に敵機を確認。数は……200機以上!』

『多すぎだろ!』

『うわ、これは引くわ……』

『先遣隊が足止めしている間に、本隊で押し潰すつもりだったみたいですね。これだと後詰めもいそうですが』

『凛斗、下がる?』

「いや……」


 しかし敵の隊形を見て、凛斗は作戦を変えた。


「潤人、薙ぎ払え」

『退かなくて良いんですか?』

「密集隊形だからな。お前にとっては良い的だ。あの辺りで拡散するように設定を変えろ」

『了解です。設定完了、撃ちますよ』


 ベルゼブブの大口径プラズマ収束砲はルシファーのものと異なり、照射時間がかなり長い。それに拡散の調整もできる。

 敵が密集隊形なので、ある程度拡散させて薙ぎ払うようにすれば大きな戦果をあげられるはず。そう考えたのだが……


『えっ……5割近く撃墜、もしくは戦線離脱』

『マジかよ』

「……」


 流石にこれは予想以上だった。


「ま、まあ……あれだけ固まってたからな。智子、狙撃開始。俺も撃つ」

『りょ、了解』


 しかし、数的劣勢は変わっていない。なので手は止めない。

 アスモデウスが10機ずつ狙撃し、ルシファーもプラズマ集束砲で何機もまとめて撃ち落とす。

 未だに密集隊形を取り続けるのは命取りなのだが、混乱から立ち直れていない者達にそれは酷だろう。例え死が避けられないとしても。

 そして再度放たれたベルゼブブの大口径プラズマ集束砲により、さらに大きく数を減らした。全身が消滅した機体、コックピットかジェネレーターを失って落ちていく機体、黒煙を吹きつつ後退していく機体。原因は様々だが、戦力が減ったことは事実だ。

 しかし、作戦か何かなのだろうか。退く気は無いらしい。


『敵機、残り23機だよ』

「近接戦用意、突撃しろ」


 ならば殲滅するまで。そうと言わんばかりに、ルシファーもメインスラスターの出力を上げ、先頭に立って突撃を敢行する。

 途中で身軽なベルフェゴールとマモンに抜かれたが、それは戦闘能力と関わりない。敵から放たれたミサイルも、3機で全て迎撃した。

 そして、高出力ビームライフルを使い、2機ずつ的確に落としていく。


「真ん中を貫く。続け!」


 指示を出しつつ、さらにビームボーゲンで8機を同時に撃ち抜くと、右足の固定式ビームソードでバトラーのコックピットを貫く。

 またワンマンプレイだけでなく、連携も高度だ。


「繭!剛毅!」

『うん!』

『任せな!』


 ルシファーが蹴り飛ばした機体をベルフェゴールが斬り裂き、サタンが撃ち抜く。

 リヴィアタンが右腕を斬り落としたシルフィードをルシファーやマモンが撃ち落とし、ベルフェゴールとサタンが追い込んだバトラー小隊をルシファーが殲滅した。

 もちろん、ベルゼブブとアスモデウスも動いている。5機を背後から強襲しようとする機体を中心に砲撃と狙撃で撃ち落とし、自機への接近も許さない。


「殲滅するぞ。1機も逃すな!」


 そして、範囲内に入った敵機は1機残らず殲滅した。デーモンシリーズにはかすり傷しかなく、ルシファーにはそれすら無い。

 文字通りの完勝だ。


『上手くいきましたね』

『だね。ここまでとは思ってなかったけど』

「敵の隊形に助けられた形だからな。けど、多分次もあるぞ」

『やっぱり?』

「潤人が言った通りだ」

『そうなると、次は下がる必要もありそうですか』

「ああ。数次第で……」

『さっきより多いんですか?』

「かもな」


 しかし、凛斗の顔に安堵は無い。彼は残りの敵について、直掩機などを除いても、追加で最大1000機は出てくると予想している。

 常に最悪の想定をしておくべきだ、というのは伯父貴の教えだ。


『うぇ』

『それは嫌なんだけど』

「そうは言っても、敵の都合だ。俺達が合わせるしかない」

『はい、やってやります』

『任せて!』


 その想定を今も使い、そして役に立った。

 そう待つことなく、次の敵がやってきたためだ。それも2群も。


「来たな、後詰めだ。数は約150機、ん?……後ろにもいるぞ。200以上、いや300ちょっとか」

『また多い……』

『たくさんいる……』

「けど、増援も密集隊形だ。多すぎて密集しないといけないのか……まあ良い。とりあえず、やりやすくて助かる」

『距離は?』

「こっちと後詰めの間が約90km、後詰めと増援だと20km以上離れてる。早く潰せば同時は避けられるな。難しいかもしれないけど……後ろの方が速いか」


 しかも、2群は微妙な距離だけ離れている。増援が後詰めに追いつきかけている状況なのかもしれない。

 指揮系統的にはあまり良くない選択肢だが、圧倒的な数的優先があるなら別だ。そして、圧倒的な数というものは対処するのも難しい。


『でも多いって』

『凛斗さん、どうするつもり?』

「後詰めはさっさと潰す。増援と合流される前に……いや、後詰めと増援にはまとめて攻撃する。潤人、増援の位置でちょうど良い拡散具合になるように調整しろ」

『え?』

「追いつかれるなら、先に削った方が良い。増援の方が数は多いからな」

『あ、なるほど』

『そういう手ですか』


 そのため凛斗が執る手は、軍事の常識とは少し違うものだった。


「ああ。後詰めの射程に入った後は、牽制射をしつつ低空に下がって近接戦闘だ。良いな?」

『おうよ!』

『うん!』

『任せなさい!』

『僕の方はどうすれば?』

「さっきと同じだ、潤人。出来る限り削れ」

『後詰めは密集してませんけど、どうにかやります』

『私も、撃つ』

「頼む」

『潤人さん、すぐに射程に入ります』

『了解です。砲撃準備……完了しました』


 ベルゼブブから大口径プラズマ収束砲が照射される。それは後詰めの一部と増援のある程度を薙ぎ払った。

 すると後詰めの方は密集隊形を解き、散開し始めた。ある程度は撃ち落としたものの、これでは砲撃の効果が薄くなってしまう。


「ちっ、対応が早いな」

『学習されたみたいだけど……』

『凛斗、どうする、の?』

「潤人と智子は撃ち続けろ。増援部隊には効いてる」

『了解です』


 しかし、砲撃のメインターゲットは増援部隊の方だ。こちらは数が災いし、未だに密集隊形を解けていない。アスモデウスによって指揮官機らしき機体から先に撃ち落とされているのもあるだろう。

 そしてこれ幸いと、ベルゼブブは砲撃を続ける。少しでも数を減らすために。


「こっちもやるぞ、射程に入り次第撃て。それと剛毅」

『何だ?』

「ブリューナクを海中に待機させろ。奇襲に使える」

『了解。じゃ、今やっとくか』


 また、ルシファーからはプラズマ収束砲と高出力ビームライフル、他の機体も射程の長い武器で撃ち落としにかかる。

 後詰め部隊からの射撃およびミサイル攻撃もあるが、この距離ではほとんど意味が無い。避けられるか、防がれるか、撃ち落とされるだけだ。


『敵後詰め、残り約80機』

『増援の方は……100機くらい減ったかな?』

「まあ、流石に遠距離だけは無理か。全員、近接戦闘の準備はしておけ。キツイぞ、多分」

『はい』


 しかし、砲撃とミサイルで大きく数を減らしたとはいえ、敵は後詰めだけでも凛斗達の10倍を超えており、着実に接近してくる。

 後詰めと増援の距離がまだ離れており、性能で優っているとはいえ、数は力だ。

 そして、帝国軍は大部隊としての指揮系統が壊滅していても、基地などからの管制サポートを受け、小隊の集合として戦う。数の火力で押し切るのであれば、多少の問題は無視できる。

 戦力差は未だに圧倒的だ。そのため、辛い戦いに対する覚悟、さらに万が一に備えた覚悟も必要だった。


『敵増援、長距離交戦距離に入ります!』

『後詰めも来てるよ!』

「全機、敵増援へ向けてミサイル斉射。後詰めが近いな、低空に降りろ!」

『はい。あっ、後詰め部隊からのミサイル発射を確認!』

『撃ち落とすぞ!』

「潤人と智子は撃ちつつ北東へ下がれ。撃ち続けろよ。残りは壁になるぞ。1機も通すな、近接戦闘開始!」

『了解!』


 7機は低空へ降りつつ、ルシファー以外の全機は搭載しているミサイルを敵増援部隊へ向けて放つ。そして後詰め部隊との近接戦闘を開始する。

 まず、向かってきたミサイルのうち8割ほどをビームボーゲンで潰し、残りも撃ち落とすか避けた。

 続けて、ベルゼブブとアスモデウスの援護を受けつつ、突貫。

 ルシファー、ベルフェゴール、マモンの3機が正面から突入し、ビームソードとビーム砲で蹂躙する。四刀と二銃を構えたルシファーが敵の攻撃対象となっているが、凛斗の回避運動は巧みだ。1つの例外もなく、掠ることすらできない。

 また、サタンとリヴィアタンは敵群側面から攻撃を開始。ルシファーに気を取られていた敵機を横から撃ち落としたり、慌てた敵を叩き斬るなど、上手く動いて戦果を拡大していく。


『敵は中央に集まるような動きを見せています』

「繭、聡、10秒後に急速上昇。上から強襲しろ!」

『うん!』

『はい!』


 しかし戦果とは言うものの、それは殺人に他ならない。手を血で汚していることに変わりはない。

 凛斗にとって既に割り切った……いや、擦り切れた感覚だが、知識としては分かっていた。


『敵増援、近接戦距離に到達しました!』

「叩き落とせ!ミサイルが来たなら敵で防げ!」


 だが、手を止めることは無い。躊躇(ためら)えばそこで死ぬ。仲間が死ぬ、自分が死ぬ。

 それを理解しているがために、ルシファーは両手の武器を手持ち式ビームソードに変え、増援部隊へ向けて突撃した。


「落ちろ!」


 そして、バトラー4機とのすれ違いざまに2機を斬り裂き、ビームボーゲンで残りの2機も撃ち落とす。

 ビームボーゲンで何機もの頭部を潰した後、次々とジェネレーターを破壊していった。距離によってビームソードかビームボーゲンかは異なるが、全て排除されたことには変わりない。

 さらにバトラーのコックピットにつま先を叩きつけ、固定式ビームソードを発振。貫いた後に蹴り飛ばし、衝突させた機体もろともプラズマ集束砲で消し飛ばした。


『凛斗!』

「助かる」


 また、ルシファーの背後から積極していたシルフィードはベルフェゴールによって蜂の巣にされ、ベルフェゴールの背後に陣取った2機のバトラーはビームボーゲンで全滅する。

 他の全員も好き勝手に暴れているようだ。確認すると、敵後詰め部隊は残り20機もいない。これなら剛毅と香織だけでも大丈夫だと考え、凛斗は意識を前だけに集中させる。


「剛毅と香織はそのままやれ!残りはこっちだ、やるぞ!」

『了解!』

『こっちは任せろ』

『う、撃つよ』


 敵増援部隊はベルゼブブとアスモデウスによって隊形が崩されていたところへ、ルシファー達の突撃を受けていた。

 その結果、壊れかけていた統率は完全に消し飛び、各個で対応するしかなくなっている。同士討ちが起こっていないのが奇跡のような状態だ。

 これならば食い破ることも簡単であり、それでも容赦する意味は無い。


「第1目標は撹乱、撃墜は二の次だ。それと、絶対に落とされるな」

『うん!』

『はい!』


 ルシファーを先頭にした3機の編隊。それが蜂矢隊形を保ちつつ敵増援部隊の中をメチャクチャに動き、混乱を加速させる。

 もちろん、移動するだけではない。進路上の敵機だけでなく、少し離れた位置にいる敵も積極的に攻撃していた。


『凛斗さん!』

『凛斗!』

「任せろ!」


 ベルフェゴールがビームサブマシンガンで追い込んだ敵を、マモンのビームカービンライフルもしくは高出力ビーム砲で撃ち落とし、プラズマ収束砲が小隊ごと撃墜する。そして空いた穴へルシファーが飛び込んだ。

 そして近くの敵機を斬り刻み、離れた敵はビームボーゲンで蜂の巣にする。果敢に立ち向かってきた敵機は片っ端から撃墜し、逃げようとした敵はベルフェゴールかマモンの餌となった。


『聡、後ろ!』

『あっ、ありがと!』

「気をつけろ。ここで落とされたら伯父貴と兄貴に怒られるぞ」

『え、落とされたら会えないんじゃ……』

「いや、あの2人なら地獄まで連れ戻しに来る。だろ?」

『あはっ、そうかも』


 帝国軍にとって、この状況は悪夢だ。指揮官機と思わしき機体は全てアスモデウスに撃ち落とされ、時々ベルゼブブの砲撃で雑に陣形を削られる。

 そして近接戦となっても、速度と練度に差がありすぎて捉えることすら難しい。逃げようとすることすら難易度が高かった。


『だいぶ減ってきた?』

「もう少しで半分か。けど、油断はするな」

『はい』


 そういった混乱を作り出すことで、凛斗達は綱渡りを成功させつつある。

 そんな時、不意に無線へノイズが入った。


『……このっ……獅子……がっ……』

「ん?」

『……なん……こっち……超えてっ……』

『何これ?』

『混線、ですか?』

「かもな。連中、余程混乱してるらしい」

『……逃げ……なっ……』

『でも、答えないよね?』

「当然だ。蹴散らすぞ」

『了解』

『……ちく……な……誰……』


 混線か、ワザとか、それとも設定ミスか。暗号化すらされていない通信がそのまま流れてきた。どうやら、予想通り激しく混乱しているようだ。

 もっとも、それに答える意味はない。無線を繋ぐことはなく、意識することすらなかった。


『……やつら……なん……悪魔……か……クソッ……』

『……それ……より……ヤバ……こいつ……魔王……』


 だが不思議と、その言葉は耳に残る。

 それが何故か、凛斗は知らないが……反応したのは他にもいた。


『魔王?』

『魔王……悪くないよね』

「いや、悪いだろ。俺はそんなキャラじゃない」

『そうですか?』

『だって凛斗、まだ若獅子でしょ?』

『それと比べるなら魔王の方が……』

「比べるな」

『えー』

『えー』

「こいつら……!」


 混乱により、小隊規模での組織的戦闘すらほとんどできなくなっている以上、気を張り詰める必要は無くなった。

 だが雑談をしつつも、戦闘は続行する。敵を逃す必要性が無い故に。

 なので、後詰め部隊を殲滅し終えた2人も合流する。


「剛毅、今だ、やれ!」

『おうよ!』


 そしてそのタイミングで、海面から銃型ブリューナクが飛び出し、下方から奇襲を仕掛けた。

 これにより4機が、続いて3機が、さらに1機が撃ち落とされる。また、帝国軍の間に動揺が広がっているように見えた。


『脆くなってない?予想より』

『だな。何だこりゃ』

「確かに。それの理由が分かれば、ん?……良し!」

『どうしたの?』


 しかしどうやら、それはこの戦場だけでの結果では無いようだ。


「兄貴から通信だ。那覇基地への奇襲に成功したらしい。先制攻撃で格納庫の8割を破壊、スクランブル待機機以外は全滅みたいだ。弾薬庫を完全破壊……海上艦はほぼ全滅、飛行艦も半分は落としたらしい」

『それなら!』

「こいつらを潰せば終わりだ。さっさとやるぞ」

『しゃあ!』

『結局、こちらに艦隊が派遣されることはありませんでしたね』

「艦の動きが鈍いのは仕方ないだろ。というか、そんなことをしようとすれば兄貴達の的だ」

『ですね』

「まあ、向こうがとうだったかは後で確認すれば良い。今はここをやるぞ!」

『『『『『『了解!』』』』』』


 この時点で残存敵機は40機を下回っており、マトモに戦闘を続けようとする者は残っていないように見える。

 そんな連中相手で苦労することなく、凛斗達は敵の殲滅を成し遂げ……短くも濃く、体感時間の長い戦闘は終わった。


『終わった……』

『やったー……』

「気を抜きすぎるなよ。それは帰ってからだ」

『分かってるって。でも、少しくらいは良いよね?』

「まあ、一応言うべきだろ」

『心配性ですね』

「それが俺だ」


 機体がコクロウやハクゲイであれば、あるいはベルゼブブかアスモデウスがいなければ、親爺さん達がオリジナルより性能を上げていなければ、恐らく凛斗達の方が負けていただろう。

 まあ、そんな状況なら戦い方を変えるだけだが、作戦の成功率が下がってしまうことは確かだ。


「とはいえ、こんな作戦を立てた俺が言えることじゃないか。潤人、智子、助かった」

『いいえ、僕達は後方援護しかしていませんから』

『う、うん。凛斗、の方が、凄い』

「それが重要なんだ。2人がいなかったら、とっくに全滅してる」

『うんうん』

「だから……っと、兄貴からか」


 少数で多数の敵に当たる場合、指揮系統を完全に壊滅させなければ、勝ち目が見えることすらない。

 いくら対多戦に優れたデーモンシリーズとはいえ、限度はあるのだから。


『よう凛斗、無事か?』

「こっちに大きな被害は無しだ、兄貴。基地の破壊は?」

『概ね終わってはいる。が、少し火力が足りない。お前達も来い』

「了解。最後の一仕事だ、行くぞ」

『はい、行きます!』

『わたしも。すぐ行けるよ』

『ったく、兄貴も人使いが荒くなってね?』

『かもしれないけど、早くやって終わらせましょ。帰ってシャワー浴びたいし』

『私、は、大丈夫』

『行きましょう』


 そして、7機揃って西へ向かい……この日、那覇基地は完全に壊滅した。












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