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少年少女の人型機甲戦闘機戦記 - Strong Armys of GigAntes  作者: ニコライ
第1部

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第24話「疑念と想念と」後編

 



「はぁ……」


 自室に戻ったメイ。誰も見ていないというのもあり、浮かない顔に変わるのも早い。


「ミーフェルに言ったら……ダメだろうなぁ……」


 ミーフェルが凛斗を本当に嫌っていることはメイも分かっている。

 伝えてしまえば、凛斗は反逆者として今以上に狙われるだろう。そして、他の誰かによって殺されるかもしれない。

 それはメイが最も嫌なことだ。


「どうしたら良いんだろう……」


 だが、ミーフェルとも戦いたくない。凛斗とも、本気で殺し合うなんて考えたくない。そんな優しい性格故に、彼女は悩んでいた。

 悩んだ末、服の下からあるものを取り出す。


「リント、何でそんなにイジワルするの?」


 それは凛斗に送ったものと同じ指輪。普段は服飾規定に引っかかるため、シルバーチェーンに通して首から下げており、露出する機会は少ない。

 しかし、こういう時や夜は握りしめていることも多かった。


「教えてよ、ねえ……会いたいよ……」


 それを左手の薬指にはめると……


「ねえ、リント……」


 久しぶりに、意識を過去へ飛ばす。
















「リーント!」

「っと、メイ、急に来ると危ないだろ」

「ごめん。でも、楽しみだから」

「そりゃまあ、アレに乗りたくてここに入ったからな。楽しみなのは分かる。まあ、バトラーだけど」

「仕方ないよ、1番簡単なんだもん」

「メイは乗ったことあるんだよな?」

「うん。でも、難しかったよ」

「初めてなら仕方ないだろ」

「そうだね」


 1年生の真ん中くらい、高等士官学校で初めてSAGA(サーガ)に乗る日。あの日は……楽しみでちょっとはしゃぎすぎちゃってたかな。

 私とリントは成績優秀者だから、みんなより先に乗るためにパイロットスーツに着替えてたんだけど……授業前に怒られちゃった。


「さて、ケンザキ、ハイシェルト、何故呼ばれたか分かるか?」

「分かりません」

「同じです」

「勝手にコックピットに入るやつがあるか!時間まで走ってろ!」


 せっかくパイロットスーツに着替えて、1番最初に来たのに、他のみんなへの説明が終わるまでの30分位、ずっと走ってたんだよね。

 私達への説明が省略されたのは事前にやったからだけど……酷くない?


「リント、もしかして?」

「ワザとだぞ?」

「走りたいなら1人でやってよ。私も巻き込まないで」

「でも、2人きりだ」

「あ、それは……ううん、騙されないからね」

「嬉しいくせに」

「ううぅ……もう!」

「あ、おい!」


 ちょっと恥ずかしかったけど、嬉しかったよ。でもやっぱり、走りながらは嫌だったかな。

 で、それの途中だったっけ。


「なあメイ、人が人の未来を決めるってどう思う?」

「え?」

「他人に未来を全て決められて、人は幸せなのか。自分で決めるのとどう違うのか……そんなとこだ」

「それは……どうなんだろう?幸せって同じじゃないよね?」

「そう、幸せは人によって違う。決める人と決められる人もな」

「あ、そっか……じゃあ、知らない人が勝手に決めちゃうのは嫌かな。私も……」

「メイ?」

「ううん、何でもないよ。でもリント、急にどうしたの?」

「何となく思っただけだ」


 この時は気にしなかったけど、これもヒントなのかな。リントにそのつもりがあったのかは分からないけど。

 そうだ。この後に格納庫へ戻ったら、ちょうど良い時間だったよね。


「ケンザキ、ハイシェルト。時間だ、乗れ」

「了解」

「了解です」

「どっちに乗る?」

「じゃあ赤」

「なら俺は青か」


 色なんてあんまり関係なかったんだけどね。


「えっと、これが火器管制で、あれがスラスターで……これが脳波の方だっけ」

『おいメイ、ちゃんと覚えてるのか?』

「覚えてるけど、確認。だって間違えたら嫌だもん」

『まあ確かに。あ、俺は脳波接続まで終わったぞ』

「早くない?」

『ちゃんと覚えてたからな。操縦感覚もこれくらいの差なら……よし、いけた』

「え?凄い!」


 私は手間取ってたのに、リントはガントリーからすぐに出して、グラウンドを歩いていったっけ。

 でもそれを見て、もっと頑張ろうって思ったんだ。リントも知ってるけど、私だって負けず嫌いなんだから。


「私も……やった、繋がった!」

『無理するなよ』

「大丈夫だよ。私だって……わっ⁉︎」

『おいおい、大丈夫か?』


 いきなり転んじゃったけど。

 でも、リントが引っ張り上げてくれたよね。バランスも崩してなかったし、凄かったよ。

 ただ、あの時は上手だなって思っただけだったんだ。でも、ホントはリントも色々あったんだね。


『上手いな、ケンザキ。経験者か?』

『いえ、初めてです。ですが、似たような感じのゲームをやり込んでいたことがあります。操縦感覚は違いますが、応用すればどうにか。流石に戦闘は無理ですけど』

『そうか。ハイシェルトはどうだ?』

「リントほどじゃないですけど……やった、歩けてます」

『しばらく歩行練習だ。ケンザキ、補佐してやれ』

「はい」

『了解』


 慣れたら色々できたけど、この時はまだ歩けるだけ。焦っても仕方ないよね。

 でも早く上手になりたくて、無茶やっちゃったなぁ。


「ねえリント、走ってみようよ」

『いや、その状態で走るのは無理だろ。まだフラフラで……』

「できるもん!」

『はぁ……やってみるか?』

「うん。って、あわっ⁉︎」

『だから無理だって言っただろ』


 ……ごめんなさい。
















「リント、どうするの?」

「もう夕方だから、ここにするか。テントを広げるぞ」

「まだ歩けるよ?」

「夜の森は危ないからな。それに、料理と虫の対策もやっておきたい」


 そういえば2年生になってすぐの時に、3泊4日のサバイバル訓練だって言われてジャングルに放り出されたっけ。いくつか課題あるやつ。

 配られた食べ物と水は3日分、あとはテントやライトとかだけ。物は沢山あったけど、1人だと使いきれないから、私だけだったら死んじゃってたかも。


「できるの?」

「ガスとコンロはあるからな。水は確保したから、簡単な料理ならできる。虫除けも3日分はあるか……2人で3日って酷いよな?」

「ガスってこれだけで足りるんだ」

「多分。足りなくても最悪、焚火はできるけど……」

「けど?」

「面倒だからやりたくない」


 後でリントから聞いたんだけど、薪を探すのって簡単じゃないんだって。ジャングルの中だと水が多いから、乾いたのを見つけるのは難しいって言ってたね。

 リントが見つけたもの、もっと凄かったけど。


「ん?……お、ラッキー」

「どうしたの?」

「ちょっと待ってろ……よし、いけた!」

「え?リント?」


 ナイフを投げたら……おっきな鳥を捕まえてきたよね。ナイフ、2人で2個しかないのに。

 本当、ビックリしたんだよ?


「わ!え、これ今の?」

「上手く当たったからな。保存容器は無いから、丸焼きにするぞ」

「やった!」

「血を抜いて内臓を出して……水場はあるから洗うのは問題無い。調味料は足りないけど……カレー粉があればどうにかなるな。メイ、スープを作ってくれ」

「うん、任せて!」

「張り切りすぎだろ」

「だってリントに任せてばっかりなんだもん。あ、カレー粉は?」

「あるぞ。こっちでも使うから少なめにな」


 レーションは食べたくないもんね。リントが居なかったらレーションだったけど……

 でも、こういう時、リントはいつもカレー粉を持ってるし、私もコンソメスープの素を持って来たんだ。だから、私だって作れるもん。

 水を鍋代わりの缶に入れて沸騰させてから、貰った鶏肉と乾燥スープの具を入れて、調味料を入れたんだっけ。あ、川で取ってきた水だから、ちゃんと浄水器に通したよ。

 リントは鳥を焼いてたから、美味しそうな匂いだったね。


「美味い。流石だな、メイ」

「こっちも美味しいよ。ありがと、リント」

「どういたしまして」


 だってレーションは食べたくないもん。でも、全部これは無理だったね。

 リントが後で獲ってきたアレなら大丈夫だったみたいだけど……でも無理。私には絶対無理。


「リントってさ、何でもできるよね」

「そうでもないぞ。腕力だとレックスやトランには勝てないし、狙撃はアクト以下だ。情報処理はマイリアの方が上だろ?それに、家事全般はメイに負けてる。良いお嫁さんになれそうだな」

「お嫁さんって、えへへ……って、そうじゃなくて、リントを褒めてたんだよ?」

「ちっ」

「舌打ちした⁉︎」


 リントにしたは雑だけど、どこまで本気だったんだろう?前半分かな?

 それとも……分からなかったけど、好きなだけ願えるのは嬉しかったね。


「あ、流れ星」

「こういう場所なら珍しくもない……月だと見れないか」

「うん。森もだけど、流れ星も綺麗だよ」

「流れ星か……小さい頃はお願い事だとか言われて、必死に頑張ったこともあったな」

「お願い事?」

「流れ星が消える前に3回お願い事を言えば叶う、なんて話だ。子どもは無邪気に信じて、失敗して勝手に落ち込んでた」

「え、でも、無理だよね?」

「無理だぞ?でも願うんだよ、子どもは」


 そういえば、この時のリント、ちょっと変だったかな。

 流れ星で何かあったのかも。


「想いは強く、誇りは気高く、声高らかに、人は前に進み続ける。それが叶わぬ願いと知りながら」

「なにそれ?」

「昔読んだ本にあった言葉だ。人はどんなに辛い道でも歩き続ける力を持っている。だから諦めるなって話……叶わない願いなんて、持ってるだけで辛いのにな」

「リント……その、昔、何かあったの?」

「いや、何もない。ただの感傷だ、これはな」

「ふーん」


 本当に何かあったみたい。流しちゃダメだったよね。答えてくれたかは分からないけど……でも、聞いた方が良かったのかも。

 もしかしたら、ここで全部教えてくれたかもしれないのに。


「でもさ、叶わない願いを持ってたって良いよね。想ってるのは本当だもん」

「……え?」

「あれ、リント聞いてる?もしかして驚いた?」

「まあ、な……でも、いつもメイは聞いてくる側だっただろ?」

「だからだよ。ずっと聞いてるから、リントの考え方も分かってきたもん。で、リントならこう返すよね?」

「まったく……口も達者になったな」

「ふふん、成長したのは外だけじゃないんだよ?リントは体ばっかり見てるけど」

「本当に襲うぞこの野郎」

「野郎じゃないもん」


 偉そうだったかな?ごめんね。

 でも、リントが寂しそうな顔をするのは嫌だもん。


「片付け終わり、夜営準備良し。問題無いな」

「寝ずの番は?やるって聞いてるけど」

「いらないだろ。今回はただのサバイバル訓練だから。警戒する敵なんていないんだし」

「そっか。じゃ、おやすみ」

「おやすみ」


 この日の夜は課題が無かったから、朝までぐっすり寝れたね。虫とかの対策もしっかりやってたし、意外と快適だったっけ。

 そうだ。初めてのサバイバル訓練で色々大変だったけど、リントのおかげで乗り越えられたよ。ありがと。

 でも……うん。アレは嫌だったかな。


「おはよう……あ、美味しい。これ何?」

「蛇」

「えっ……えぇ⁉︎」


 ヘビだけはやめて!
















「やっ!このっ!」

「っと、やるな」

「どう?上手になったでしょ」

「まだまだ甘い、面!」

「あっ、あー……」


 リント、入学してすぐの時から竹刀を借りて練習してたよね。部活に入ってないのに。

 でも、それが格好良かったから、私にも教えてっておねだりしたら、笑って教えてくれたっけ。1年生の4月からだったかな。

 防具は無いけど、リントって当たる前に止めてたから、痛い思いはしなかったね……乱入してきたトランは叩かれてたけど。


「また負けちゃった」

「そりゃ、俺は教えた側だからな。簡単に負けられるか。半年でこれなら早い方だぞ」

「でも勝ちたいんだもん。リントだって本気じゃないし……ねえ、やっぱり防具買う?」

「いや、要らない。寸止めできる方が上手いからな。わざわざ変えなくていい」

「そうなの?私はよく分からないんだけど」

「そんなものだ。それと、俺の本気が見たいんだったらもっと上手くなれ」


 もちろん、練習は厳しかったよ。叩かれないからかも。手慰みなんて嘘じゃないの?

 でもリントに教えてもらったから、ミカエルもあれだけ動かせるようになったんだよね。だからもう1回言いたいんだ、ありがとうって。

 でもさ……ハワイってずっと暑いから、動いたらすぐに汗だらけになっちゃうんだよね。


「リント?」

「何でもない」

「ふーん。あ、そうだ。この間下着買い換えたよ。1つ大きいのに」

「ぐっ、しっかりバレて……ああ、そっか。ここは人目につかない場所か」

「え、その、リント?」

「そんな格好のメイが悪い」


 た、確かに薄着だし、先に言ったのは私だけど、で、でも、こんな風に壁まで追い詰められちゃったら……

 ……いつも通り、からかわれただけだったけど。


「毎回毎回面白いよな、メイは」

「むう、女の子をからかうなんてよくないよ」

「メイが可愛いのが悪い」

「か、かわっ、ってもう!遊ばないでよ!……でも、本当にそうなっても……」

「メイ?」

「な、何でもない!」


 リントって時々聞こえないふりをしてくれるよね。やっぱりワザとなのかな?

 本当だったらからかってこないと思うし……


「けどまあ、悪くない」

「え?」

「なあメイ、地球の景色はどうだ?」

「凄く綺麗だよ。月だと自然なんて無かったし、海みたいな沢山の水も無かったもん。星空も綺麗だし。でも、急にどうしたの?」

「俺は月の方に行ってみたいな。コンクリートジャングルなんて言葉はあっても、本当に全部が人工物なのはコロニーしかない」

「リント?」

「メイ、人ってのは違うのが普通なんだ」

「え?」

「見方が違えば思いは変わる。誰1人として同じ人間はいない。そういうものなんだよ」


 あ、そうだ……リント、こんなこと言ってたんだ。

 私、ずっと前に聞いてたんだ。だからあんな風に……


「そんなの当たり前だよね?」

「ああ、当たり前だ。でも、意外と重要なんだぞ?」

「そっか。じゃあ、リントも私のこと、違うって思ったりするの?」

「さて、どうかな」


 変なこと言うねって思っててごめんなさい。

 私、全然理解してなかったんだね、リントのこと。優しく教えてくれたのに。

 でも……


「オラァ!道場破りだー!」

「よし、しばく。その首置いてけこの野郎」

「はっ、今度こそ、ギャー⁉︎」

「これで終わると思うなよ?」


 ホント、この時だけは容赦無かったよね。
















「やっぱり……リント、ヒント出してくれてたんだね」


 過去の思考から戻り、再び指輪を見たメイ。

 その目は輝き、新たな決意に満ちている。


「見方が違うと思いも違う、か……私、できてなかったんだ」


 そう、今までのメイ達の見方には偏りがあった。

 得る情報は全て帝国側が発信しているものであり、対抗勢力からの、および現地人からの情報が含まれていない。

 状況分析の手法としては、とても拙いものだった。


「見つけないと……」


 しかし、それは自覚すれば変えられる。


「リントが待ってるんだもん。追いつかないとダメだよね」


 そう決意し、メイは思考を新たにしていく。


「だから……」


 だがこの決断は、ほんの少しだけ遅かった。

 時代の流れは、ここから加速していく。












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