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少年少女の人型機甲戦闘機戦記 - Strong Armys of GigAntes  作者: ニコライ
第1部

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第24話「疑念と想念と」前編

 



「……無いな」

「ってことは、隠されてるって言うの?」

「てか、あれホントなのかよ?」

「リント君が嘘吐くと思うの?」

「無いな。あいつはそんなまどろっこしいこと何てしないぜ」

「でも、だったら何であんなこと言ったのかって話になるよ?」

「うーん、どうなんだろう……」


 明けの明星により、武装法務隊の補給基地と輸送艦隊がやられたことについては全員が知っている。自分達が囮に引っかかったことも。

 しかし、そんなことより7人の興味を引いているのは、凛斗が言っていたことだ。なので、端末を片手に調べ物を続けていた。


「どんな理由かな?」

「理由ったって、何も出てこねぇんなら始まらねぇぞ」

「けどさ、ヒントくらいは見つかるんでしょ。じゃなきゃ、リントがあんな曖昧に答えるわけないし」

「なら、俺達の精査が甘いってことだろ」

「でも見つかってないし、普通にやっても無理なんじゃない?」

「うーん……」


 だが、それらしい情報は一切出てこなかった。推測の根拠となるようなものも。

 いや、簡単に出るようなもので無いからこそ、凛斗は問いかけたのだ。誘いを断るなら、自身の力で答えを見つけろと、そういう意味で。


「……ある程度、情報を整理するべきだろう」

「あ、そうだね。じゃあ、リントの話から?」

「でしょ。そっからやらないと始まらないし」

「ねえメイちゃん。遭難してた時に何か聞いて無いの?」

「遭難って、あ……」

「メイ?」


 不意にあの時のことを思い出してしまい、頬を赤らめるメイ。

 当然ながら不審がられるが……いや、ほとんど気づかれていた。


「う、ううん。変わらないよ、全然」

「そっか。じゃあ、アレだけなんだね」

「パルチザンが生まれる理由、か……あ、そういえば、レジスタンスのこと言ってなくない?」

「……そうだな。パルチザンとしか言ってなかった」

「忘れた……って言うには早計だよな?」

「うん。リントなら理由があるはずだし」

「けどよ、もうちょい教えてくれよ。こんなんじゃ足りないぜ?」

「ま、仕方ないんじゃない?リントだって悩んでたっぽいし」

「悩んでた?」

「あれ、気づかなかった?リント、何か悩み事があったっぽいよ。少し言い淀んでたし。中身までは分からないけど」

「気づかなかった……」

「メイは一途過ぎるからね」

「うぅ……」


 そして弄られる。まあ、彼女達の間では普通のことだ。問題は無い。

 ただし、他人にとっては別だ。不意にメイの端末が鳴った。


「ごめんね、もしもし……え?あ、はい、分かりました。場所はどこですか?……了解です。すぐに行きます」


 その通信を受けたメイはいくつか言葉をやり取りし、了承だけを返す。

 どうやら、簡単なことらしい。


「メイちゃん?」

「哨戒任務だって。南が200kmで北に100kmくらいをぐるっと回る感じで、1時間くらい」

「……珍しいな」

「だな。けど、任務は任務だぜ」

「切り上げかよ」

「うん。早く行こ」


 エンジェルシリーズは切り札扱いだったため、哨戒任務に駆り出されることはほとんど無かった。

 しかし、今その扱いをする必要は無いようだ。明けの明星が大規模な襲撃を連続して行うことはないと考えてのことか、気にしたところで意味は無いと考えたのか、そこまでは分からないが。

 なお、ミカエル以外はまだ修理が終わっていないため、メイ以外の6人はシルフィードで出撃する。また、ニーネとアクトは追加のレーダーユニットを背負っている。


『って感じ。ニーネ、何か分かった?』

『足りないよ、これだと。やっぱり話聞けたら良かったね』

『でもよ、そのために軍を抜けるなんて無理じゃねぇか?んなことやったら銃殺刑だろ』

『でもさ、あの話ってそのままの意味なのかな?』

『……クリス、どういうことだ?』

『リントの言うこっちって、どこなのかな?』

「それは……そういえばどこなのかな?」

『パルチザンの方って意味でしょ?それ以外に無いし』

『それとも、別?』

『考えすぎじゃないのか?リントが明言してないだけだろ』

「そこは分かんないけど……でもみんな、もう行くよ」


 ミカエルの損傷は翼の先だけだったこともあり、1日と経たずに終わった。

 ただし、中身は少し変わっている。専属整備士により定期的なシステムアップグレードが行われ、そのピーキーさは日に日に増していた。

 そのため、他のパイロットではミカエルをまともに立たせることすら不可能な状態だ。


『ミカエル、リニアカタパルト固定。電圧正常、リニアボルテージ上昇中。コントロールをパイロットへ譲渡。電圧規定値へ。ミカエル、発進準備完了』

「メイルディーア・ハイシェルト、ミカエル、行きます!」


 そんな機体は翼を(ひるがえ)し、空へ飛び立つ。そして2000mまで一気に機体を上昇させた後、海面ギリギリまで急降下した。

 その後、シルフィードの発艦を待っている間に、メイは飛行行程表をサブモニターに表示させる。


「最初は南に向かって、200km進んだら反時計回りに1周、と。これで良いよね?」

『良いんじゃないかな?』

『……指示通りだ。それで良い』

「じゃあ行こっか。そっちに合わせるね」

『ありがと』


 そうこうしているうちに他の6機も上がってきたため、メイは編隊の先頭に立って進み始める。

 ただし、速度はシルフィードに合わせており、ミカエルのスペックからすれば暇な行程だ。暇すぎて、時々曲芸飛行をしていたりする。


『メイ、それはやりすぎだろ』

「えー?でも楽しいよ?」

『今任務中なんだけど?』

『あ、ボクも!』

『……クリスは大人しくしてろ』

『メイ、そんなに動いてたら哨戒任務にならないよ』

「はーい。じゃあ、戦闘機動にしとくね」

『分かってねぇじゃねえか』


 まあ、ワザとやっていただけなので、それ以降はふざけるのもやめた。基地の絶対防空圏外に出るというのもある。

 何も起こらないためずっと暇ではあるが、流石に怒られたくはないらしい。


「何も無いね」

『海の上だもん』

『こんな近くにいるけねぇだろ』

「でも、攻めて来るかもしれないよ?」

『それだったら基地の方が先に見つけるでしょ』

『……臨時の哨戒で捉えられる方がおかしい』

『まだまだ近いんだし、そんな心配はいらないよ』


 そんな話をしつつ、7機は八丈島の近くを通った後に房総半島の沖を進み、銚子あたりから陸の上を飛び始めた。

 この辺りになると下には市街地が広がるが、所々に廃墟も見える。


『壊れたままなんだね』

『流れ弾で壊れたのがまだ残ってるんだってよ』

「直せばいいのに」

『金がねぇわけねぇよな』

『じゃ、何かあるんじゃないの?』


 そんな市街地を抜け、平野から山地の方へ向かっていく。

 この辺りに高い山はほとんどないが、SAGA(サーガ)が隠れられるようなスペースはいくつもある。

 そして……


『そういえばさ、この辺りにパルチザンがいるって聞いたよね?』

「あ、そういえばそうだね。キリシマ大尉が言ってたっけ」

『じゃあさ、リント君もいるかな?』

『いねぇだろ。あいつには母艦があるんだぜ?』

『……この辺りは独立党だったはずだ。援護に来る可能性はあるが……』

「ほとんど無い、のかな」

『さあ?パルチザンの事情なんて知らないし?』

『それより、下から撃たれないか心配した方が良いよ』

「はーい」


 ここは日本系パルチザンが実効的に支配しているエリア、と言われている。

 このあたりを捜索しようとした帝国軍小規模部隊の多くが消息を絶っており、危険地帯に指定されている。そして大規模な山狩りを行なっても確証は得られず、その後も被害が繰り返されるだけだ。

 慎重になるのも無理はない。


「見た感じ、変なのは無いね。そっちのレーダーは?」

『何も無いぞ』

『同期させて調べても出てこないし……』

『……集中探査にも反応は無い。違うか?』

「かも。だって分かってないんだもん」

『んなこと言ったら元も子もねぇな』

「でも……」

『あー、泣かしたー』

『ひっどいねー、トランったら』

『艦長に告げ口しないと』

『おい!泣いてねぇだろ!』


 こんな軽口は続くものの、レーダー監視や目視はしっかり行なっている。全員が確かな実力を持つ証拠だ。

 ただし、諜報系に向いていないということは断言できる。


『まあ、冗談はここまでにして、と』

「酷くない?私も合わせないといけなかったのに」

『オレの心配は無しかよ』

『あるわけないだろ』

『でもメイちゃん、こっちの方が危険なんだよね?』

『……参謀部の予想だ。確証が無さすぎて、だそうだが』

『それって大丈夫なのか?』

「目安としては良いと思うよ。捜索には役に立たないって聞いたけど。拠点が見つかることもあるけど、ハズレの方が多いんだって」

『それって手玉に取られてるってことじゃねぇか』

『だからこそパルチザンなんだろ。正面から戦えるわけないからな』

「そういうこと。明けの明星が基地を落とすも、いつも奇襲なんだって」

『リントが1人で落としてる所もあるけどねー』

『あれ見りゃ納得だぜ』

「強かったよね、リント。あ、レーダーは?」

『何も無し。他は?』

『無いね』

『無いよ』


 実力があろうと、労力が報われるとは限らないのだが。
















「隊長、射撃準備完了しました。いつでも撃てます」

「そのまま隠し通せ。間違っても撃つなよ」

「え、な、何故でしょうか?敵機は少数なんですよ?落とすチャンスをわざわざ……」

「編隊の先頭、あの白い機体が見えるか?」

「はい。見慣れない機体ですね。新型でしょうか」

「帝国軍の新世代型試作機だ。名前はミカエルだったか……報告書通りなら、明けの明星のエースと互角にやり合えるそうだ。若い奴な?」

「まさか……あの若獅子とですか⁉︎」

「そうだ。そして、若獅子も同系統の機体を帝国軍から奪って使っている。彼の方が強いらしいが、撃破には至っていないらしい」

「そんな相手が……」

「なに、7機だけなら哨戒だろう。編成は半端だが、無視しておけ。天使狩りは専門家(悪魔)に任せればいい」

「は!」
















「到着、っと」

『メイ、早く空けて。降りれないでしょ』

「はーい。あ、ガントリー来たからもう動くよ」

『了解、最初と同じでやるよ』

『メイ、またやるってことで良いんだよな?』

「うん。じゃあ、30分後かな?」

『はーい』

『……大丈夫だ』


 哨戒を終えた7機はミカエルを先頭に順次着艦していく。

 そしてシルフィードの場所を空けるため、ミカエルは一足先に格納庫へ運ばれた。ガントリーが止まってから、メイはヘルメットを脱ぎつつコックピットを開ける。

 すると、整備士が覗き込んできた。


「よ、嬢ちゃん。チューニングはどうだ?」

「良い感じです。いつも調整ありがとうございます」

「本音は?」

「もう少し欲しいかも……まだ違和感があるので」

「これでも異常なくらいなんだが……ま、嬢ちゃんの要望だ。最優先で終わらせてやる」

「ありがとうございます」


 ミカエルのチューニングは試行錯誤の繰り返しとはいえ、整備士の腕が良くなければ不可能なことだ。

 そのため、顔を合わせる機会も多く、メイはこの整備士のことを頼りにしていた。階級をあまり気にしないメイにとって、世間一般で言う叔父と姪の関係に近いのかもしれない。メイにはよく分からない感覚だったが。

 しかし、どうやら本題はチューニングに関してではないらしい。


「っと、忘れちゃならんな。艦長から伝言だ」

「艦長から?」

「哨戒結果について報告せよ、だそうだ。多分、何か話したいこともあるんだろうな」

「あー、そうですか……予定、ちょっと変えないと」

「ん?予定が入っているのか?なら……」

「大丈夫です。私事ですから」


 というわけで他の6人に連絡してから、着替えて艦長室に向かう。

 メイ達の帰還に合わせるような形で、艦橋から移動したらしい。


「入りな」

「メイルディーア・ハイシェルト少尉、入ります」

「お、来たね。ちょうど良いったらありゃしない」


 艦長室の中にいたのはバーグナー艦長、そして……


「先輩?」

「ミーフェル?」


 何故か武装法務隊所属のミーフェルもいた。

 手には端末を持っており、何か打ち合わせをしていたような様子だ。


「艦長、どうしてミーフェルが?」

「彼女が明けの明星の行動予測を立てたって言うんでね、話を聞いてたんだよ。で、今さっきわたし達との話し合いが終わったところさ。説明は聞くかい?」

「いえ、この資料だけで十分です。綺麗な式だけど、どうやって出したの?」

「はい。今までの会敵データと、推定航路から出しました。航路は雑ですけど……」

「こっちとしちゃ、なかなか面白い話だと思ってるよ。で、メイルディーア少尉の意見も聞きたくなってね」

「よく出来てますけど、うーん……」


 ミーフェルが完成させた行動予測。式とグラフと図で綺麗にまとめられており、分かりやすいものだった。そしてそれによると、明けの明星はしばらく輸送艦隊狩りを続けるらしい。

 確かに、一昨日補給基地と大規模輸送艦隊への襲撃を行ったばかり。普通に考えればそうなるだろう。

 しかし……


「無理、かな」

「えっ、どうしてですか?先輩」

「だって、そんな単純な相手じゃないから。この乱数、指揮官の思考を読み切れてないからだよね?」

「は、はい……じゃあ、もっと統計処理をやればできますか?」

「難しいかな。多分この指揮官、凄く上手いよ。統計データなんて役に立たないかも。だから、次はもっと大きな作戦になるかな?可能性の話だけど」

「そうですか……」


 たったこれだけのデータで指揮官の思考まで統計に組み込むことは無謀だった。現段階では外れる可能性は高く、参考にはできるものの信用するのは難しいデータだ。

 とはいえ、この資料自体はよくできている。何故ここにいるかの疑問はあるが。


「でもミーフェル、何でここにいるの?普通、キュルト中佐に見せるんじゃない?」

「だって、早く先輩に見せたかったんです。今来るなんて思ってませんでしたけど……ダメでしょうか?」

「それ、私だと判別つかないんけど……でも、ありがと」

「先輩のためですから!」


 そんなセリフを聞き、メイは少し顔を赤くした。慕われていることを見せつけるのは恥ずかしいらしい。

 凛斗と一緒の時は気にしないというのに、不思議な娘である。


「さて、と。指揮官のことが考慮されてなくても、このデータは参考にはなるね。こっちから上に回しておこうかい?」

「はい、お願いします」

「良いの?管轄が違うのに」

「有効活用してくれる方が優先です。先輩を傷つけるなんて許しません!」

「ええと、ミーフェル、その、ね……」

「艦長、失礼しました!」

「あ、ちょ、待っ」


 ミーフェルに腕を引かれ、メイも艦長室から出る。敬礼する間もなかった。

 バーグナー艦長は笑いながら見送ったが、これは良くないことだ。メイが怒気を強めるのも当然である。


「ミーフェル」

「あっ……ごめんなさい。つい」

「つい、じゃダメでしょ。もう」

「はい、もうやりません。それで先輩、この後はどうしますか?訓練ですか?」

「えっと……ごめん、ちょっと部屋で休んでも良いかな?疲れちゃって」

「分かりました。じゃあ先輩、またお願いします」


 そしてミーフェルと分かれた後、この後の予定を変え、集まるのは明日にすると6人に伝える。


「何でなの、リント……」


 そしてメイは自室へ向かった。













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